稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

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劇団体制から新しいプロジェクトへの第1作。 『グッド・デス・バイブレーション考』 松井周インタビュー

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10周年だった2017年6月のKAAT公演をもって劇団体制を終了し、この5月公演『グッド・デス・バイブレーション考』から個人プロジェクトとして指導する松井周のサンプル。「変態」していくことをテーマに、松井のややアブノーマルな妄想を遊んできたのは変わらない。
松井が「誰かと少しずつお互いの「変」を認めあう、というよりも触りあうという感覚で何かをつくっていきたい。それが一番楽しいことだし、たとえ苦しくても触りあった感覚を信じてつくっていきたい」との言葉を読むと、むしろ純度を高めていくのかもしれない。新作『グッド・デス・バイブレーション考』は、松井のバイブルという深沢七郎の小説「楢山節考」が色濃く共鳴している近未来の物語だ。

【ものがたり】
閉ざされた地域に暮らす一つの家族。貧困家庭の65歳を過ぎた人間は、肉体を捨てることを強く望まれる社会。元ポップスターの父と、介護と子育てに疲労する娘と孫が直面する現実とは? 別の集落からやってくる孫の嫁、隣人、謎の男が加わることで、家族の形が少しずつ変化していく。彼らはどのように生きていくのか?

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「楢山節考」がいつも
自分の中でざわざわしている

──サンプルが松井さんの個人ユニットになりました。そのことで松井さんの中にあるイメージをより実現していきたいとのことですね?
そうですね。でも自分のイメージといっても、演劇は役者やスタッフみんなで作るものなので、いろんなアイデアに助けられたり、気づきはやはりたくさんあります。変化を挙げるとすれば今、あまり自分に迷いがないかな。スタッフが出してくれたアイデアの方がいいかもと思ったら、すぐに実現したいと思うようになりました。そういう意味で、僕自身がつくりたい世界がくっきりあるんでしょう。今つくりたいのはずっとこだわってきた「楢山節考」みたいなものなので、よりくっきりしているかもしれません。
──「楢山節考」は松井さんにとってバイブルなんですよね!
なんでしょうね、昔読んだ絵本なんかですごく印象に残っている絵とか場面があったりするじゃないですか。そういう感じなんですよね。どうしてかなあと考えたんですけど、割り切れないんです。「楢山節考」は山深い貧しい部落の因習で、年老いた母を真冬の楢山へ捨てに行くという話。自ら“楢山まいり”の日を早める母と、優しい息子の切っても切れない絆を描いたいい話に見えるし、一方で人権を無視した慣習で殺されていく話のようにも見える。小説はそのどちらにも寄らずに淡々と書かれているからこそ、僕の中で、いつまでたってもざわざわしていて、ずっと気になっているんです。そして作品をつくるときに、いつも頭のどこかにある。さいたまゴールド・シアターに書いた『聖地』も、安楽死法が施行され、ある年齢になると強制的に安楽死させられる世の中で老人たちが老人ホームに立てこもるという話でした。サンプルでも『自慢の息子』などよくベテラン女優の羽場睦子さんに出演していただいているんですけど、老人にこだわっているからなんです。それは僕がおばあちゃん子だったということもあると思うんですけど、なんなんだろう、なんだろうとずっと考えていますね。

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現代日本のあらゆる問題が
組み込まれている作品

──『グッド・デス・バイブレーション考』は現代、近未来の物語として描かれていますが、現代日本のもやもやするようなさまざまな問題が組み込まれていますね。
僕自身の今の環境も大きかったと思います。僕の両親など周囲に体調を悪くしていたり、一方で子育ても始まっています。日本自体が晩婚化して、介護と子育てが同時にくるというのは現代的なテーマだと思います。「楢山節考」にも関連する要素でもあるなと思って、上演してみたらいろいろ感じてくださる方もいるんじゃないかという狙いもあります。それから、いろんな場面で、実態と関係なくどんどんどんどん情報だけが流れていく時代に、自分の物差しが持てない、自分はこうだという立場を自身で客観的に見ることができずに、多くの人がわっと流れる時代だと思うんです。そういう状態だから国が個人を管理下に簡単に置いてしまう。例えばほんの少し前は管理社会、セキュリティということに抵抗していたはずなのに、あっという間にマイナンバーカードを持ったり、監視カメラがあるから安全だというふう変わりましたよね。逆に管理される方が楽だという考えもあって、そうなったら生も死も性も管理されるだろうなと妄想を考えているうちに、そうした世界を描いてみたいなあと。でも、流されることに抵抗している人もいるんだけど、普通に暮らしている人はそれがなんとなくいいことかもしれないという風潮もある。そういう人たちがダメだというわけではなく、彼らこそが流されながらもサバイバルしていくとどうなるのかなと。空気が読めなかったら、それはそれで日本では生きにくいと思うんです。でも空気を読みすぎると、それが集団になってスケープゴートを生み、いじめの構造が生まれるのも気持ち悪い。生きる上でほどほどをどう表現したらいいのかなというモヤモヤを、僕はそのまま演劇にしているような気がします。
──楢山まいりを「船出」と置き換えているところが、未来を感じますよね。
楢山まいりで山に行く。積極的な意味というか末広がりになるような意味でもあるんですけど、慣習ということでごまかされているかもしれないなというような、両義的になるように付けているんですよね。
──生まれて来る子どもについては「ひよっこ」と表現しています。
子どもを産むこともコントロールされていて、子ども自身は人権がない存在として描いています。中央にいる裕福な人たちは、ひよっこが大人になったら自分の世代を受け継ぐ存在になるかもしれないけれど、基本的にはペットのような存在として飼っている。その時代になると子どもも遺伝子操作で自分の好みに育てられるようになっていて、産んだ子どもは所有物であるかのような感覚になっているのかもしれません。そこからはずれた貧困層の人びとは産んだ子どもを売ることで生計を立てる。その子どもたちは動物実験に使われる。でも家族はそこに情のようなものを感じていたりもして、なんか矛盾の中で生きているんです。
──でも特定の人を愛することが差別禁止法で取り締まられてしまうという設定と、子どもの問題が加わると、現代のバランスが悪い日本の人口構成がよいバランスになっていくかもしれない。なんか、社会問題を解決できるかもという期待もあって、いよいよ松井さんならではの気持ち悪い世界になっていきますね。
そうなんですよ。多様な遺伝子を持つ人間同士をもうざっくりとマッチングすることによって、子どもを増やしていけば国が復興するという世界の物語ですよね。それにしても、なんで僕こんな設定ばかり考えているんでしょうね!(苦笑)

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おじさんにも少女にも
女性的にもパンクにもなる戸川純

──歌ってもいけない、夢を見てもいけない、もはやすべてが管理されている時代だからこそ、戸川純さんが演じる元ポップスターの父という役どころが輝いてきます。物語の世の中に迎合しないというポジションが、そのままインディーズからデビューして、自分の生き方を持っている戸川さんがリンクしていきますね。
戸川さんには僕より一世代上の皆さんが熱狂してたと思うんですけど、僕の世代も下の世代も聞いている人はすごく多い。つまりすごく突出した存在なんです。一方で、戸川さんは「これは普通なんですよ」と言い続けていらっしゃったし、私は変化していないし、ヘンだと言われることにすごく抗って来た。実際にお話しすると常識的な感覚も持っているし、すごく聡明。80年代に戸川純というキャラクターだけが勝手に歩き出した部分もあるんでしょうね。そのキャラクターに対し、すごく地に足がついた考えをお持ちで、俳優ということも真面目に考えている。メディアの中での戸川さんと実際の戸川さんにはズレがあって、そういう感覚がすごく好きで僕は惹かれるんです。パンクな部分もあるけど、すごく常識的。そういう矛盾を抱えた面白さを、芝居に生かしたいと思ってます。そしていろいろな矛盾を抱えるからこそ、いろいろなものを超えて何にでも変身できるんですよ、戸川さんは。おじさんにも少女にも、女性的にもパンクにも。そういう魅力を出していきたいですね。
──この管理された社会における元ポップスターの父とその家族がどう生きていくかが描かれるわけですね。松井ワールド全開で!
「楢山節考」は、楢山まいりをして、親を捨てたところで終わるんですけど、僕はそこにどうしても抵抗があって。どうそれをうまく見せられるのかをずっと考えていたんですよね。第三の道はないだろうかということで考えたラストですが、自分なりの決着は付けられたんじゃないかとは思っています。「カムイ伝」という白土三平さんの漫画があるんです。人間の世界も描かれているけれど、動物の世界も描かれていて、人間がトライ&エラーを繰り返す物語なんです。それは少しずつ進んでいるとも言えるんですけど、その繰り返しが永遠に続くというイメージが僕の中にはあって、人間を描くというよりは、何かの生態を描いたり、この類はどうやって生き残っていくんだろうかという生存戦略みたいなことを考えるのが好きなんです。そういう意味では「楢山節考」もそう。今回は小さく、家族だけの話として描いていますが、いずれ、もっと何世代もかけて変化していくみたいな大きな話として描きという思いはありますね。
 
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まついしゅう○劇作家、演出家、俳優。1972年生東京都出身。1996年劇団「青年団」に俳優として入団後、作家・演出家としても活動を開始する。2007年『カロリーの消費』より劇団「サンプル」を旗揚げ、青年団から独立。バラバラの自分だけの地図を持って彷徨する人間たちの彷徨を描きながら、現実と虚構、モノとヒト、男性と女性、俳優と観客、などあらゆる関係の境界線を疑い、踏み越え、混ぜ合わせることを試みている。2011年『自慢の息子』で第55回岸田國士戯曲賞を受賞。脚本提供も多数。また小説やエッセイ、TVドラマ脚本などの執筆活動、CMや映画、TVドラマへの出演なども行う。

〈公演情報〉
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サンプル『グッド・デス・バイブレーション考』
作・演出◇松井周
出演◇戸川純 野津あおい 稲継美保 板橋駿谷 椎橋綾那 松井周
●5/5〜5/15◎神奈川芸術劇場中スタジオ 
〈お問い合わせ〉チケットかながわ 0570-015-415(10:00〜18:00)



【取材・文/いまいこういち 撮影/アラカワヤスコ】



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「贋作 女優 / 池谷のぶえ〜涙の数だけ、愛を知る〜」出版記念 一人芝居イベント報告  池谷のぶえインタビュー

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池谷のぶえ


「演劇キック」のコラムコーナーで、
 2013 年から約年半連載した、「贋作 女優 池谷のぶえ〜涙の数だけ、愛を知る〜」が、単行本となって出版されたのを記念して、池谷のぶえが下北沢風知空知で「この際、自分のまったく興味がないことや、自分のやりたいことばかりを詰め込んだお祭り」を1人で挙行! その快演ぶりに観客は大喝采! はたしてどんな経緯でここまでたどり着いたのか、今回の単行本の編集を担当した雑誌えんぶ編集長の坂口が、ご本人にインタビュー!
以下は、「ちょっと並べてみただけでも、恐ろしい企画ですね」と本人が語る当日の演目。カッコ内は池谷さんの興味度。

--
演目--

獅子舞 ( とても興味がある ) 
対談/ゲスト ブルー&スカイ ( ふつう ) 
初の自作自演ひとり芝居 ( まったく興味がない ) 
公開人生相談 ( あまり興味がない ) 
 ( 少し興味がある ) 

すべてがこう、ぴぴぴと

──なんでイベントをやろうと? うち(えんぶ)で出版させてもらった本がきっかけ、までは分かってるんですが、その後…。
池谷 わたしのもろもろの予定が、思いの外、スコッと空いたんですね(笑)。で、なんかできないかなぁとも思ったんですけど。またね、人をいろいろ集めなきゃとかあるじゃないですか。そんときに「あれ? 本があれじゃないですか。本がもうちょっとで出版できる?」と気が付いて。1月の頃は途中まで進んでたくらいでしたね。
──校正のゲラができた頃ですね。
池谷 「あ、これはもしかして本の出版と同時に何か自分がやりたい物とかと組み合わせられたらいいなぁ」と思って。「じゃあ、いつ頃?」と考えたときに、本の中にもいっぱい出てくる宿敵・父の誕生日がちょうど3月の下旬くらいで、「あ、そのあたりとてもちょうどいいんじゃないか」って。すべてがこう、ぴぴぴと、ちょうど3月20日のイベントっていうところに繋がったっていうか。
──なるほどねぇ
池谷 普段は、こんな「イベントやろう!」なんてとてもじゃないけど思わないんですけど、なにかいろんな要素が集まって。たまたま
──イベント観ていて、最後「お父さんの誕生日」って告げられて、「そんな落としどころがあったんか!」って(笑)。
池谷 (笑)。
──本当にね〜。本当によくやる気になりましたね!
池谷 本当に! でも最初に、ここ(編集部)にご相談に来たじゃないですか。あんときもフワフワっていうか。人に話していけば、どんどん逃げられないようになるからっていう状態でした。自分一人だとどうしてもね「ま、いっか。やめちゃおう」ってすぐに思うから。
 

 やりたいこと、今回で全部使ってしまった

──70席くらいの小さい場所とはいえ、予約も1分くらいで満席になっちゃいましたね。で、回の予定だったのを2回目もやって。それでも来れない方がたくさんいらっしゃって。
池谷 そうですね。1日だけだからその日に用事があったら来れない方もいらっしゃるかもしれないし。
──だからって、あんなもん何日もやってらんない(笑)。
池谷 モチベーションが持たないですね(笑)。
──簡単にできたんですか? 構成というか内容は。
池谷 構成はわりとすぐできました。あんまり迷わないでできましたね。
──あ、そうなんですね。
池谷 いろいろ、やりたいこととかを並べているうちに、なんか。だからもう、これ以上はあんまりないんですよ、やりたいことは(笑)。本当にやりたいことが少ないから、微々たるものを全部今回で使ってしまったので。
──なるほど。
池谷 歌をカラオケ以外でちょっと歌いたいなとか、獅子舞やりたいなとか。鈴木雅之が獅子の中から出てきたらおもしろいだろうなっていうくらいで。うーん。一人芝居は特にやりたくないけど、イベントを考えたときに、わたしトークとかで持たす自信がないから、じゃあお芝居をやるしかないかなと無理くり。人を呼ぶとまた大変なことになっちゃうから、じゃあ一人で、やってみようかなと思って。

獅子舞でお客さんを掴んで

──でも、上手に構成されてましたよね?
池谷 本当ですか?
──ブルー&スカイさんの出てくるところとか。
池谷 ブルー君は絶対に出てもらおうと。この(本に書かれている)半生の中では一番、演劇的にお世話になっているので、どうしても呼びたいなとは思っていたんですけど。
──そうですよね。構成から言っても獅子舞があって、お客さんを掴んで、客席を温かくして。
池谷 温かく(笑)。でもあんなにみんな、獅子舞が好きだとは思ってなかったです(笑)。
──いやいや、池谷さんがあんなんで出てくるから。
池谷 いや、いやそうなんですか!(笑)。みんな獅子舞好きだ〜って。
──でも、嫌いじゃないかも。
池谷 嫌いじゃない! みんな噛まれたそうにしていたし(笑)。それはちょっと新しい発見。獅子舞獅子舞いいかもしれない。
──獅子舞って参加する要素っていうか。ただぼやーっと見てるだけじゃないなにかがあるような。あれナイスな発想でしたね。
池谷 (笑)。獅子舞ね。こんなに受け入れられるものだとは(笑)。
──本当にね。あそこで客席を温めて、獅子舞のかぶり物を取ったら、鈴木雅之が居て、またちょっと波風を起こしておいて、さらに鬘とサングラスと髭を取ったら、池谷さんが出てくるっていう構成って、なかなかのもんじゃないですか!
池谷 本当ですか?(笑)。よかった。でも、ほんと鈴木雅之さんに助けられました。
──獅子舞は借りた?
池谷 借りました。しかるべき場所があって、ネットで探したんですけど。やっぱり、ね、神みたいな扱いなんですね。神聖な物。
──はははは!
池谷 高かったですね。
──でも、楽しく考えてたんですね。
池谷 うん、あんまり「どうしよう!」とかはなかったような気がします。わりとスムーズに。辿り着いたような気がする。


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                     池谷のぶえ・ブルー&スカイ


ちょっと空回りしてるのもおもしろい
 

──で、そのあとが朗読ですね
池谷 せっかくね、本を売るからちょっとくらい読んどいた方がいいかなって(笑)。
──ただの朗読じゃなくって、ブルー&スカイさんにつながるっていうのが。どんどんどんどんそういう繋がりがイメージとして湧いてきたんですね。
池谷 初めは、違う。一番最初の文章を読もうかなと思っていたんですけど。ブルー君に繋がらないとなぁと思って。そこをトークでつなげればいいんだけど、上手じゃないから。じゃあ、読んでつなげようかなぁって。
──なるほどね。で、ブルー&スカイさんとの対談ですね。どうでしたか?
池谷 本当に、変なあれなんですけど。普通、ゲストを呼ぶっていうときに、「あれ聞こう、これ聞こう」って準備をするじゃないですか。わたしもそんなにとっさに出てくるタイプではないので。だけど、今回はすごいあれですけど、「もう、いいや!」っていう気持ちで。出たところ勝負というか、ブルー君も絶対にそんなにうまくしゃべれないっていうことも分かっているんですけど、全然なんかそういう怖さとか、なかったですね。
あれはですね…
池谷 15分でした。
──15分間話で繋ぐのって、けっこう大変ですよね?
池谷 大変。だけど全然何にも準備もしないで、そのときのブルー君としゃべってみようかなって。
──そうなんですか。
池谷 でも客席が味方でいてくれたからアレですけど。うん
──客席もね全然知らない人じゃないのでね。
池谷 そうそうそう。ありがたかったというか。
──ブルー&スカイさんもなかなか大変。大変だけど、一所懸命会場を盛り上げようという努力が空回ったり、しなかったり(笑)。
池谷 そうそうそう(笑)。ちょっと空回りしてるのもおもしろかった。
──そうですね(笑)。
池谷 がんばって2回もしゃべってくれて。得意じゃないでしょうに。ああいうこと。
──不思議なっていうか、今まで経験したことのない空気感が漂っていたというか。おもしろかったです。
池谷 本当ですか? でももうちょっと時間をもっとしゃべりたかったですけどね。それはそれでね。もっとちゃんとうまく構成して話せればよかったかなぁ。時間をもうちょっと取ればよかったかなぁと思いました。
──でも、まあ、細かいことをしゃべってもしょうが無いですしねぇ。ちょうどいいんじゃないですか。
池谷 大丈夫ですかねぇ。

演劇に対する愚痴が言いたかった?

──で、次は一人芝居?
池谷 そうですね。休憩して一人芝居に。
──一人芝居はどうだったんですか? 出来としては。
池谷 あれは、本当にやる気がまったく始めからなくて。何も書きたいことがないっていうか。一人芝居で書きたいことがないから。さあ! と思って、パソコンに向かったときに、「何か、じゃあ、日々思っていることを箇条書きにしてみよう」と思ったら、演劇に対する文句ばっかりが出てきて。もうこれで書くしかないかなぁと思って。自分が文句を言うようなお芝居にしようかなぁとか何かやっていくうちに、「おばあちゃんが出てきたらおもしろいかもしれないな」と思って。で、なんかただのおばあちゃんじゃなくて、自分がおばあちゃんになったときのとかが出てきてそれが何か交錯したらいいかなって。だんだん、文句を書いているうちに、そういうふうな構成になって。だから、わりと流れで書いていったというより、書きたいことをポンポンポンポンって書いていって、あとでそれを整えていったみたいな。そんな感じでした。
──年後の自分と今の自分の会話になる、あれおもしろかったですよね。あれになって、あ、なるほどっていう感じ。その前までは何だか。
池谷 その前までは「つまんない劇を観に行った後のただの飲み会」から始まって。
──はい。
池谷 なかなか「つまんなかった」って言えないなって。いうのがあって。その一方で大女優になって、インタビューを受けているような2つの場面が対になるっていう。
──その、何か、妙な文句のリアリティっていうの、愚痴があって。
池谷 愚痴(笑)。愚痴が言いたかった。
──それは客席の方達もけっこう面白がっていましたよね。「みんな好きでしょ」って。
池谷 あれも愚痴。


白塗りのミュージカル

──その流れで白塗りになりますね。
池谷 そう。流れで白塗りになってましたね。歌って、ミュージカルになりました。
──白塗りのミュージカルになってましたね。あそこらへんは本領を発揮されていましたね(笑)。
池谷 一人芝居を書いていて、これどうやって終わらせればいいのかなと思ったときに、あの場面の最後に歌った歌、『リトル・マーメード』の歌なんですけど、あれなんか、変てこりんで好きなんですよ、前から。電車の中で聴いていたときに、「あ、これで無理くり終わらせちゃえばいい」と思ってついでに「あ、白塗りもやってみたかった」んだと思って。そのままなし崩し的に白塗りを挟んで歌おうかなって。だからあそこらへん、ちゃんと繋がってないです。力業です。
──白塗りになって歌って、力業だけどすごくナイスなアイデアというか。すごいなって思いましたよ。あれ普通に歌っても。おもしろくないことはないけど。
池谷 歌うだけじゃ、あ、そうですか、ってなっちゃいますもんね。

白塗りを落としながら人生相談

──その後、人生相談ですね。
池谷 人生相談。あれ、もっとちゃんとやりたかったんだけど、あれくらいでよかったのかな。今思うと。
──あれくらいで! あれもすごい。白塗りを落としながら人生相談をするっていう。あんなところで人生相談なんてできないもん。目の前に相手がいるわけでもないし。
池谷 本当はちゃんとやろうと思ってたんです。で、構成を考えたときに、時間が全然足りないと思って。だったらまぁ、メイク落としながらになっちゃうかなって。
──あれ一番すごいと思った。
池谷 あれが一番! はははは。
──だってメイク落としながら、人生相談をして、池谷さんがいい加減な回答をしていくっていう。全体にいい加減オーラがね。
池谷 そう! いい加減なね、そういうのはちょっとやりたかったんですけど。
──普通、思いつかないです。メイク落としながら人生相談するってあんまり。よくいろいろ思いつきますね?
池谷 いえいえいえいえ。適当な

最後に良いこと言って終わる

──で、中島みゆきですね。
池谷 最後に良いこと言って終わろうかと思って。
──やりたい放題!(笑)。
池谷 良いことをね。一応。最後に言っておけば、「いいとこ来たな」って思うかなと(笑)。
──最後に自分の歌いたい曲を思い切り歌って。お客さんも納得してっていう。素晴らしい構成でしたね。
池谷 ありがとうございます。
──大変だけど、楽しかったんですね。
池谷 楽しかったです。苦痛ではなかった。「一人芝居ちゃんとできるかな」とか、歌の練習とかは、日々「うーん」と思いながらやっていましたけど、でも、うわあああっ! ていう苦痛は全然なかったです。当日もすごい、ね、お客さんがすごく温かくて。だから楽しかったなぁ。楽しかったっていうか、何だろう。「あ、見守ってくれている人たちというか、気にかけてくれている人たちが、ああ、いるんだなぁ」っていうのを生で実感できたっていうか。今まであんまりそういう実感がなかったんですけど。
──よかったですね!

次回は
36年後
 

池谷 やってよかったです。本が出版されたおかげですけど。
──いえいえいえ。
池谷 本がなかったら、わたしやってないと思うから。本当にありがたかったです。
──また何かの機会があったら。何十年か後に。
池谷 何十年か後で
──じゃあ、大女優の年になったら、
池谷 82歳って、もういないかもしれない。坂口さん(笑)。
──(笑)。じゃあ、予告しましょう。次回は池谷さんが82歳になったときに一人芝居をやる!
池谷 今度は若い方、46歳の方を演じるわけですね。
──いいですね〜。
池谷 (笑)。

 

【構成・文/坂口真人(えんぶ編集長)】


〈池谷のぶえ出演情報〉
【テレビドラマ】 
NHK総合 連続テレビ小説「半分、青い。」
 月〜土曜_日8:00〜放送中
テレビ東京系「執事 西園寺の名推理」
 毎週金曜20:00〜放送中
【映画】
2018年5月19日(土) 公開
モリのいる場所」(監督:沖田修一)


 

池谷のぶえ単行本販売中!


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溝端淳平・堤幸彦・マキノノゾミが『魔界転生』由縁の島原・天草で、天草四郎の命日に成功祈願!

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マキノノゾミ・溝端淳平・堤幸彦

山田風太郎の最高傑作『魔界転生(まかいてんしょう)』が、堤幸彦の演出、マキノノゾミの脚本で舞台化、10月に福岡・博多座、11月に東京・明治座、12月に大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される。すでに主人公・柳生十兵衛役に上川隆也、天草四郎役に溝端淳平、柳生但馬守宗矩役には松平健、ほか豪華配役陣も発表されている。その作品の由縁の地、島原・天草に、4月12日、 溝端淳平・堤幸彦・マキノノゾミが成功祈念に訪れた。

原作となる『魔界転生』は、1967年(昭和42年)に『おぼろ忍法帖』として単行本化された山田風太郎の人気伝奇小説。壮大なスケール、雄大な歴史ロマン、そして、奇抜かつ摩訶不思議な展開、時空を超えたアクション・エンターテインメントの最高傑作であり、1981年の映画化以降、舞台、漫画・アニメ、ゲームなど、数多くのジャンルでリメイクされた山田作品の最大のヒット作。
演出を手がけるのは、ドラマ『SPECシリーズ』、映画『20世紀少年』等、多くの名作を手がけた巨匠・堤幸彦。脚本は演劇界の重鎮・マキノノゾミ。2014年に大ヒットした舞台『真田十勇士』を生み出した2人の強力タッグによって、ド派手なアクション、変幻自在なフライング、プロジェクションマッピングを駆使し、実力と個性が冴え渡った華のあるキャストで、スペクタクル時代劇の決定版となる。

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【由縁の地訪問レポ】

劇中で「魔界転生」という妖術を使い、錚々たる剣豪たちを甦らせ、幕府への復讐を誓う天草四郎。4月12日は、その没後380年の命日にあたる。
早朝より九州の地を訪れた、天草四郎役に挑む溝端淳平、演出の堤幸彦、脚本のマキノノゾミの3名。最初に訪れたのは、島原の乱の主戦場となった長崎県南島原市の原城跡。古戦場の城跡、天草四郎の銅像、天草四郎のお墓などを巡り、想いを馳せ、慰霊・鎮魂の祈りを捧げ、九州・博多座を振り出しに上演される舞台の成功を祈願した。その後、一行は天草四郎の生まれ故郷である熊本県の天草諸島へ移動。天草キリシタン館や殉教公園、天草四郎ミュージアムなどを訪れ、キリシタンの歴史資料に触れ、作品のイメージづくりや構想を練った。

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天草四郎
1621年熊本県上天草市出身。本名・益田四郎。諱は時貞。四郎が生まれる前に、宣教師ママコフが「25 年後に起こる天変地異の際 、16歳の天童が現れ、キリスト教に準ずる者は救われる」との予言を残したことにより神の子の再来であると言われ天童と呼ばれる。父:甚兵衛とともに隠れキリシタン。1637年,島原(長崎県)・天草地方に一揆がおこると、わずか16歳ながら、3万余名の一揆勢の総大将となる。(実際の指揮は、父親の甚兵衛をはじめとする浪人や庄屋たちで、四郎はその人気度から島原の乱の最高指導者として祭り上げられたと思われる。)原城に立てこもり、幕府軍と戦うも、約4ヵ月間の籠城ののち,負傷して捕えられ,斬首された。

島原の乱 
江戸時代初期1637〜38年、キリシタン弾圧や過酷な年貢に苦しむ島原(長崎県)と天草(熊本県)の農民が、16歳だった天草四郎時貞を指導者として蜂起。約3万7千人が原城(現在の南島原市南有馬町)に立てこもり、幕府や諸藩の制圧軍と戦った末、ほとんどが殺害された。 1638年4月12日( 旧暦2月28日)、島原の乱で総攻撃が行 われ 、原城が落城。 総大将の天草四郎が討ち取られた。
 
原城跡
原城は戦国末期に島原半島などを治め、キリシタン大名でもあった有馬晴信により、1599年から1604年にかけて築城された。周囲4キロの三方を有明海に囲まれ難攻不落の天然の要塞で、本丸・二ノ丸・三ノ丸・天草丸などからなり、別名「日暮城」とも呼ばれた。1637年、島原の乱で原城に天草四郎を含め一揆が籠城。島原の乱の主戦場とされており、最後の舞台となった原城は、幕府の命令で徹底的に破壊された。昭和13年5月30日、国の史跡に指定。


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【コメント】
 
溝端淳平/天草四郎役 
天草四郎役をやらせて頂くうえで、ちょうど380年の命日にこうやってその場所に来られて、役作りの上でこんなに贅沢でありがたいことはないと思います。墓前には、「今度天草四郎さんを演じさせて頂きます」という謙虚な気持ちで手を合わせました。言葉で言い表すのは難しいですが、この場の風や空気・においなど色んなものを感じ取って、持ち帰って、天草四郎を演じる時に役立たせたいと思います。(誰かを蘇らせることができるとしたら)天草四郎ご本人にこの場でひと目お目にかかれたらこんなに素敵なことはないと思います。
台本はまだこれからで、どういう舞台になるのかとても楽しみで仕方がないですし、こうやって堤さん、マキノさんと一緒に、実際に天草四郎の、島原の乱の地に立ったという経験は、絶対にいい舞台を作るのに繋がると思います。あとはお二人に身を委ねながら精一杯天草四郎を演じたいと思います。素晴らしい舞台になると思いますので、是非たくさんの方に観に来て頂きたいです。

堤幸彦/演出 
以前、島原で『まぼろしの邪馬台国』という映画を撮らせて頂いたことがあるのですが、改めて芝居を作るにあたってこの場所に来て感じるのは、風と海の音に強い印象があります。380年前も500年前も同じ音がしていただろうし、この日差しも同じだっただろうと思うと、本当に来てよかったです。これを出発点にして、どんなストーリーができるのか、どんな人がいて、そして死んでいったのかと、それがこの舞台の始まりになると思います。
『魔界転生』はお芝居なので架空のストーリーですし、多くの方がご存知の話ではありますが、墓前には、天草四郎さんに「お名前をお借りします。最後まで人々に感動を与えるものを作りたいと決意しています。」とお伝えしました。また、四郎の美しさが見どころになると天草四郎さんの前で誓います(笑)。
皆さんがご存知の話に、マキノさんが大胆にアレンジを加えて頂き、3時間ほどの息をもつかせぬ、「なるほどそう来たか」という話になると確信しています。私はキャストの皆さんと面白おかしくテンポよく作り上げていくことが勝負であり、いま舞台でできる最新のテクニックやマジックに近いような演出を取り入れ、スピーディーでスリリングな舞台にしていきますし、それが最大の見どころになると思います。

マキノノゾミ/脚本
印象的だったのが、風の音と海の音、そして日差しです。380年前の今日という日に戦が終わり、天草四郎が討ち取られたのだとするなら、歴史上はとても血塗られた日だったけれども、実際にはこんな風光明媚な場所でこんな穏やかな日だったかもしれないと思うと、実際にこの場所に来て、この空気を吸い、この音を聞くと、想像力が掻き立てられるものがあります。
天草四郎は実在し、非業の最期を遂げられた方ではありますが、もともと芸能の出発点が死者を慰撫するものという原点があるので、我々がワクワクする芝居を作ることによって天草四郎の御霊が慰められるのではないかと思います。私は、実在した方を登場人物に物語を書くことが多く、本人たちに草葉の陰で見て頂き、その人が苦笑いされるのを夢想しながら書きますので、今回もできることなら天草四郎や(柳生)但馬守、柳生十兵衛たちが芝居を観て、少し苦笑いで帰ってもらえたらと思います。
山田風太郎さんの原作が小説として抜群に面白いので、それをどうやったら舞台で面白くなるのか、かなり大胆な再構築しないと面白さを伝えきれないものになってしまうので、作品と格闘する気持ちで新しい『魔界転生』を作り出そうと意気込んでいます。それを堤監督の最新の演出術を駆使して頂いて、全編見どころの作品になると思います。
 
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〈公演情報〉
日本テレビ開局65年記念舞台
『魔界転生』
原作◇山田風太郎(角川文庫刊)
演出◇堤 幸彦 脚本:マキノノゾミ
出演◇
上川隆也 溝端淳平 高岡早紀 村井良大 松田 凌 玉城裕規 木村達成 猪塚健太 山口馬木也 藤本隆宏 浅野ゆう子 松平 健 ほか
●10/6〜28◎博多座
〈料金〉 A席14,000円 B席10,000円 C席6,500円(全席指定・税込)
〈チケット発売〉7月7日(土)10:00〜
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センター 092-263-5555(10:00〜18:00)
●11/3〜27◎明治座
〈料金〉 S席13,500円 A席7,000円(全席指定・税込)
〈チケット発売〉7月7日(土)10:00〜
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00〜17:00)
●12/9〜14◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉 S席13,500円 A席9,500円 B席6,000円(全席指定・税込)
〈チケット発売〉7月29日(日)10:00〜
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800(10:00〜18:00)
〈公演HP〉http://makaitensho.jp








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