稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

カムカムミニキーナ『>(ダイナリィ)』

性の変換を逆手にとって魂の普遍性を表現するヴァージニア・ウルフの『オーランドー』間もなく開幕! 白井晃インタビュー

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白井晃演出による『オーランドー』の日本初演が、9月23日初日のKAAT神奈川芸術劇場を皮切りに、松本、兵庫で公演、そののち新国立劇場 中劇場で上演される。
この作品は20世紀モダニズム文学の重鎮で、最も有名な女流作家のひとりであるヴァージニア・ウルフの代表作を、アメリカの劇作家サラ・ルールが翻案。青年から艶やかな女性に変身し、16世紀から20世紀まで400年にわたって生きたオーランドーを、現代に甦らせる。

【あらすじ】
16世紀のイングランドに生を受けた少年貴族オーランドーは、エリザベス女王をはじめ、あらゆる女性を虜にする美貌の持ち主。しかし初めて恋に落ちたロシアの美姫サーシャには手ひどくフラれてしまう。傷心のオーランドーはトルコに渡る。その地で30歳を迎えた彼は、なんと一夜にして艶やかな女性に変身! オーランドーは18世紀、19世紀と時を超えて生き続け、またもや運命の人に会い、それから……。
 
女性を虜にする美貌の青年貴族・オーランドー役に多部未華子、エリザベス女王に小日向文世、そのほか小芝風花、戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹という、たった6名の俳優で奇想天外なストーリーを演じる。この異色作について、演出の白井晃に語ってもらった「えんぶ10月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介。

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長い時間の中に空想を巡らせた伝記物語

──この戯曲を上演しようと思った動機から伺いたいのですが。
20世紀初めの近代古典と呼ばれる戯曲、それをもう一度読み直して上演する作業を、KAATで継続してきたわけですが、今回の『オーランドー』もその1つで、作者のヴァージニア・ウルフは、ちょっと幻想的な小説を書く人として、興味はありました。そして、この作品をアメリカの翻訳・脚本家のサラ・ルールが翻案していると知り、その脚本を読んだところ、非常に演劇的な仕掛けになっている。そこで舞台として立ち上げていくのも面白いだろうなと。それから、ヴァージニア・ウルフが生きた時代は、ジェンダーの意識が大きく変遷しようとしていた時期で、その中で女性とか男性とか、そういう社会の枠組みから抜けたところで生きていく1人の人間を描こうとしている。そこに興味を持ちました。
 
──オーランドーは性が入れ替わることで、恋愛や政治を複眼的に見られるようになりますね。ヴァージニア・ウルフも当時としては自由な生き方をしていた女性ですが、それでもヴィクトリア朝から続く時代の息苦しさへの抵抗もあったのでしょうか。
それはあったと思います。彼女がこの作品を書いた動機の1つは、かつて恋人であった女性ヴィタ・サックヴィルの存在があって、ヴィタを1つのモデルにして、2人がこの時代に巡り会ったことの意味、そして人間の魂について、300年とか400年の時間の中で空想を巡らせて書いた、ある意味、空想的な伝記物語でもあるんです。ですから、今回の上演でも、ジェンダー論をとくに課題にはしないつもりですし、むしろ性の変換を逆手にとって、1人の400年生きた人物が、男になったり女になったりしたけれど、その魂は普遍だというようなことが描ければいいかなと思っています。
 
──原作と翻案ではラストが違っていますね。そこはどんなふうに捉えていますか?
原作のラストでは、オーランドーは結婚して幸せに生きてますが、それは同性愛者であるとともに結婚もしていたヴィタへの、ウルフの愛に満ちた肯定だったと思うんです。もちろん自分への肯定でもあったと思いますが。サラ・ルールの脚本は、その先にある人間そのものの孤独を感じさせるラストで、そこに現代の作家であるサラ・ルールさん自身が投影されているのを感じます。

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ウルフもきっとクスクス笑いながら

──キャストはたった6人で、色々な役を演じるのですね。
これぐらい力のある方たちでないと難しい戯曲で、本当に面白い俳優さんが揃いました。コーラスというコロス的な役割も、全部この方々でやります。皆さん大変ですが、僕としてはほぼ最小限の人数だからこその自由さ、面白さを出したいと思っています。かなり荒唐無稽な物語なのですが、最近の演劇は、そういうものが少なくなっているような気がするので、とんでもないところからスタートした大きなフィクションの中に、人間の存在のリアリティみたいなものが見えてくる、そんな作品を作ってみたいと思っていたところなので。
 
──戯曲は詩的な言葉で綴られていますが、ブラックなユーモアもあって、遊びが沢山入っていますね。
この作品が本来持っている、「コミカルかつ詩情豊かに出していく」というところが、なかなかハードルが高いのですが。ウルフはこの作品を結構クスクス笑いながら書いている気がします。「というわけで、ここで私は伝記作家としては、こんなことまで言及していいのかわからないけれども」とか、原作ではくだらないことを書く言い訳みたいなことをいっぱい書いてて。いっぱい書いた上で、そのまま次に行ってしまうとか(笑)。だいたい300年も生きた人間なんかいないわけで、そういう体裁を作りながら、でも、人間の存在とはなんだろうとか、何故人は言葉を残そうとするのだろうとか、そういうことを考えさせてくれるので、そこをうまく浮き彫りにさせていきたいと思っています。

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しらいあきら○京都府出身。早稲田大学卒業後、83年〜02年まで遊◉機械/全自動シアターを主宰。現在は、演出家として作品を発表する一方、俳優としても舞台・映像ともに活躍中。第9回、第10回、読売演劇大賞優秀演出家賞受賞。平成17年度湯浅芳子賞(脚本部門)受賞。2016年4月よりKAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任。最近の舞台作品は『春のめざめ』ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』『マハゴニー市の興亡』『レディエント・バーミン』、『No.9−不滅の旋律−』『ペール・ギュント』『マーキュリー・ファー』(以上すべて演出)、『夢の劇-ドリーム・プレイ-』(演出・出演)など。


〈公演情報〉
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KAAT×パルコ プロデュース公演
『オ
ーランドー』
原作◇ヴァージニア・ウルフ 
翻案・脚本◇サラ・ルール 
翻訳◇小田島恒志/小田島則子 
演出◇白井晃 
出演◇多部未華子 小芝風花 戸次重幸 池田鉄洋 野間口徹 小日向文世 
演奏◇林正樹 相川瞳 鈴木広志 
●9/23〜10/9◎KAAT 神奈川芸術劇場ホール
〈料金〉S席8,500円 A席 6,500円 U24チケット 4,250円(全席指定・税込)
●10/18◎松本市民芸術館 主ホール
●10/21・22◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 
●10/26〜29◎新国立劇場 中劇場
〈お問い合わせ〉
チケットかながわ  0570-015-415  (10:00〜18:00)
http://www.kaat.jp/d/orlando_kaat 
 パルコステージ  03-3477-5858  (月〜土11:00〜19:00/日・祝11:00〜15:00) 
http://www.parco-play.com





【文/宮田華子 撮影/岩村美佳】



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森新太郎演出、溝端淳平・忍成修吾・温水洋一で三人芝居『管理人』を上演!

『管理人』ビジュアルs(撮影:細野晋司)

ノーベル文学賞作家ピンターの代表作『管理人』、その登場人物はわずかに3人。ガラクタを拾い集める男と、ガラクタを処分したい男と、ガラクタ同様に拾われてきた男……。
常軌を逸したやりとりを繰り広げる男たちの不条理劇には、息詰まる緊迫感と、不格好なまでのペーソスがあふれ出し、それゆえに人間存在の脆さとたくましさが表裏一体となるおかしみ!森新太郎のエッジの効いた演出、絶妙にアンバランスな3人の男による狂気とユーモアの“ピンター・ワールド”が、11月〜12月、東京と大阪で上演される。

この三人芝居に名を連ねるのは、青年ミック役の溝端淳平(=ガラクタを処分したい男)、その兄アストン役の忍成修吾(=ガラクタを拾い集める男)、宿無し老人デーヴィス役の温水洋一(=ガラクタ同様に拾われてきた男)。それぞれに異なる個性を持つ、森いわく「完璧」な顔合わせで、絶妙にアンバランスなトライアングルを作り出す。

【ストーリー】
舞台はロンドン西部にある家の小さな一室。住み込みで働いていたレストランを首になったばかりの宿無し老人デーヴィス(温水洋一)は、偶然知り合ったアストン(忍成修吾)に自分の家に来ないかと誘われ、これ幸いとついていく。だが翌朝、いきなり現れたアストンの弟ミック(溝端淳平)に不審者扱いされ激しく責め立てられる。口の減らない図々しいデーヴィスの前に交互に現れる、無口で謎めいた家のリフォーマーと称するアストンと、家の所有者であると主張する切れ者のミック。彼らはそれぞれ別々に、この家の「管理人」にならないかとデーヴィスに提案してくる。兄弟に見込まれたデーヴィスの態度は、次第に変化していき――。

【コメント】

森新太郎(演出)  
舞台の出来事はロンドン西部にある小さな一室で起こります。
戯曲冒頭のト書きによれば、その部屋は大量の廃品=ガラクタで溢れかえっており、今日の日本で言うところのいわゆる“ゴミ屋敷”です。
登場人物は三人。この部屋にガラクタを拾い集めてくる男と、この部屋からガラクタを処分したい男と、この部屋へガラクタ同様に拾われてきた男です。彼らが何者でどんな人生を送ってきたのか、ピンターは何一つはっきりとは提示してくれません。全てが曖昧。ただひとつ確かなことがあるとすれば、それは彼らがこの部屋において、常にある種の緊張状態に置かれているということでしょうか。
そこでは、自分の居場所を巡っての駆け引きや闘争が、延々と容赦なく繰り広げられます。「アホらしい!」と笑えてしまうくらいに。そんな滑稽なせめぎ合いの様は、我々が生きている現代社会そのものかもしれません――。
徐賀世子さんによる切れ味のいい新訳のもと、ユーモアと臨場感に満ちたピンター劇をお届けできたらと思います。どうぞお楽しみに。



〈公演情報〉
『管理人』
作◇ハロルド・ピンター
翻訳◇徐賀世子
演出◇森新太郎
出演◇溝端淳平 忍成修吾 温水洋一
●11/26〜12/17◎シアタートラム
〈料金〉一般  6,500 円  高校生以下・U24 3,250 円(一般料金の半額)(全席指定・税込)
〈一般発売開始〉 2017年9月17日(日)10:00〜
〈お問い合わせ〉世田谷パブリックシアターチケットセンター03-5432-1515  (10〜19時)
  http://setagaya-pt.jp/
 
●12/26〜27◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈料金〉一般  7,500 円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-025
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【撮影:細野晋司】


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結成25周年となるTRFのSAM、CHIHARU、ETSU、初のダンス公演『DANCE REPUBLIC〜The devotion〜』今日から開幕!

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今年、結成25周年となるTRFが、ストリートダンス界を盛り上げるべく、ダンスだけで表現される、セリフのないストーリーを綴る初のダンス舞台公演『DANCE REPUBLIC〜The devotion〜』を、9月16日から18日まで、NEW PIER HALLで開催する。
様々なジャンルを融合させつつ、ダンスの可能性を更に広げたエンターテイメントを生み出そうとする新しい世界観の試みだ。
そんな刺激的なステージの総合演出を務めるTRFのSAM、ETSU、CHIHARUが、新たな企画への意気込み、お互いのこと、またダンス界の更なる発展への想いを語ってくれた「えんぶ10月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。 

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ETSU、SAM、CHIHARU

シンプルなストーリーに、ダンスの楽しさを詰め込んだステージ

──TRF25周年記念に、ダンスの舞台公演を企画した意図から教えてください。
SAM 15年ほど前から、舞台でしかできないダンス公演をやりたいと思い続けてきて、やっと実現することになった念願の企画です。ダンサーが名前と顔を認知されて、そのダンサーを観る為にお客様が集まってくる。そんな土壌を作る場にしたいというのが一番の趣旨で、ここをスタートとして何十年もかけて、舞台公演として定着するものに創り上げていきたいと思っています。
CHIHARU ダンサーの仕事というのは、バックダンサーか、振付か、教えるか、という選択肢しかほとんどないのが実情なんです。でもミュージカルの舞台や、劇団四季や宝塚歌劇のようなカンパニーには、舞台に出演することでギャランティを得て、食べていける道がある。それをダンサーにも広げたくて、ダンス公演をして、ちゃんと収入になるようにしていく道を作るのが目標です。
ETSU 自分を含めてなのですが、やはりダンスの舞台があると、技術を向上させる為のレッスンに向かう姿勢も違って来ますし、考え方も変わってくるので、色々な仕事をしていても、まずは1年に1度なり、必ずダンスの舞台があって、そこを目指してレッスンすることができる場にしたいという気持ちです。
──それは若いダンサーの方たち、更にこれからダンスの道に進もうと思っている人たちにとっても、素晴らしい目標になると思いますが、その第1回目である今回の公演の内容はどんなものに?
SAM はじめはダンスの作品集にしようかとも思ったのですが、もう1つの趣旨として、ダンスをやっている人たちだけではなく、ダンスを全く知らない人たちにもダンスの楽しさを知らせたい! ということがあるので、観やすいストーリーを作っていて、日本昔ばなしがモチーフになっています。仲間ができ、対立もありというシンプルで分かりやすい世界観の中に、今ダンス界で大きなムーブメントになっているバトルダンスも組み入れて、敢えてTRFのヒット曲ではなく、アルバムに入っている曲などを軸に構成しています。

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同じ世界を観ている、なくてはならない存在

──そうした大きな企画を共に立ち上げるお互いについてどう感じていますか?
SAM 僕が世界中のダンサーの中で一番尊敬しているのがこの2人です。ダンスに賭ける情熱と真面目さ、ストイックさが素晴らしくて、常に襟元を正す気持ちにさせてくれるお手本です。2人の間の役割分担もきちんと出来ていて「人」という字のように支え合っているよね?
CHIHARU 支え合っています。どちらかが倒れたら確実に倒れる。
ETSU そこにSAMさんから豊かな発想のアイディアが投げられてね。
CHIHARU その発想を形にするのが私たちで、結局3人とも観ている絵が同じなんだなって、今回の舞台を創っていて改めて感じます。これだけ共通するものがあるって強いなと。
ETSU お互いがなくてはならない存在ですね。
SAM そんな3人の共通の想いが、レッスンを積んで上手くなったダンサーたちの、磨いた技術を発表できる場を継続して作りたいということなので、ゆくゆくはカンパニーにしていきたいし、いずれは専用劇場も持ちたいという大きな夢があります。今回その夢の第一歩を刻むことができるので、まずこの公演をダンスってカッコいい! また観たい! と思える舞台にしていきたいので、是非期待していてください!

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ETSU、SAM、CHIHARU
 
さむ〇15歳でダンスに開眼。単身NYへダンス留学し、スタジオでクラシックバレエやジャズダンスの基礎を学ぶ一方、ストリート・ダンス、ハウス・ダンスなどを修得。あらゆるジャンルのダンスをバックボーンに持つダンサーとして、活躍を続けている。また、TRFはもちろん、SMAP、東方神起、BoA、V6その他多数のアーティストの振付、コンサートプロデュース、更にダンス・イベントのオーガナイザーや新人アーティストのプロデュースなどその活動は多岐に渡っている。
 
えつ〇6歳で民族舞踊(インド舞踊,日舞)を習い始め、18歳でジャズダンスに魅せられNY、ロサンゼルスなど様々な公演に出演。その後MEGAMIXに参加。TRFコンサートはもちろん、野猿、安室奈美恵などの振付、演出、構成に携わるなど、クリエーターとしても才能を発揮。02年には(株)オリコン内“weekend gallery”にて1ヶ月間、初の個展を開き、03年にも赤坂「CAFE LOLITA赤坂店」にて3ヶ月間個展を開催した。

ちはる〇5歳からクラッシクバレエ、18歳でジャスダンスに目覚め、1年間NYにダンス留学。92年「TRF」に参加。同時に安室奈美恵、工藤静香、浜崎あゆみなど多数のアーティストの振付、コンサート演出など、クリエーターとしても多彩に活躍。TRFの活動を通じ、パフォーマンスの場を提供すべく全国各地でダンサーを募集。その試みは、04年、全国5大都市のa-nationステージのオープニングを飾った。

〈公演情報〉
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『DANCE REPUBLIC〜The devotion〜』
総合演出◇SAM ETSU CHIHARU(from TRF)
構成◇岡村俊一 
出演◇SAM ETSU CHIHARU TATSUO PlnO GENKI TAiCHi KTR  Anna  麻衣子 SHOOT KODAI SANTA DJ OBA
友情出演◇YOSHI2 
特別出演◇KENZO(DA PUMP) Miracle Vell Magic VO2MAX ほか 
●9/16〜18◎NEW PIER HALL 
〈お問い合わせ〉イベントインフォメーション 0570-550-890(平日13時〜17時) http://www.dancerepublic.jp/



【取材・文/橘涼香 撮影/友澤綾乃】



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