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えんぶ4月号

三谷幸喜の新作舞台は不条理サスペンスコメディ?『不信〜彼女が嘘をつく理由』が開幕!

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はたしてコメディかサスペンスか、はたまた不条理劇か、不条理サスペンスコメディか?と注目の、三谷幸喜の新作が3月7日から東京芸術劇場シアター・イーストで開幕した。

人はなぜ、嘘をついてしまうのか。自分のため?ひとのため?それとも…。
ひとつの小さな嘘が、さらなる嘘を引き起こす。坂道を転がるように暴走を始めてしまう嘘。その結末は、誰も予想できない。
今、目の前で起こっていることは嘘なのか、真なのか…。

出演者は『ホロヴィッツとの対話」(13年)『国民の映画」(11年、14年)など三谷作品の常連・段田安則、『酒と泪とジキルとハイド」(14年)で初舞台を踏み、三谷作品2本目で2度目の舞台出演となる優香、昨年のNHK大河ドラマ『真田丸』で真田信尹を演じた栗原英雄が初参加、そして戸田恵子が久しぶりに三谷幸喜の舞台に帰ってきた。
この4人のキャストが密接な空間で三谷幸喜が緻密に計算されたサスペンスを描き出す。

開幕にあたり、作品の作・演出を手がけている三谷幸喜、そしてキャストの段田安則、優香、栗原英雄、戸田恵子からのコメントが届いた。

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栗原英雄、優香、段田安則、戸田恵子、三谷幸喜

 
【コメント】

三谷幸喜 
去年1年間大河ドラマをやらせて頂き、やっとホームグラウンドに戻ってきたという感覚です。やったことのないものをやりたいということで、僕は今まで1シチュエーションの舞台をずっと作ってきたのですが、今回は全34幕の作品に挑戦しました。映画を見ているようなスピード感にしたかったので、なるべく舞台転換に時間をかけたくありませんでした。そこをどうやってタイムを0にするかということに苦労しました。(冗談で)そして最終的にものすごいお金をかけてこのコンピューター制御の舞台になりました。両サイドで、A面とB面だと見方が違うので、ぜひ2回見にきてくださいね(笑)。

段田安則 
三谷さんの作品はこれで5回目くらいだと思いますが、今回は一切笑いなしのサスペンス! シリアスドラマなのですが、なぜかこれまで観た方々はみんな笑っているんです。台本を読むと、(展開が)映像のようになっていて面白く、読み手としても先が気になりました。(ここからは冗談で)最初は転換装置としてベルトコンベアーが舞台の上にありましたが、どんどん洗練されていってこの素晴らしいコンピューター制御の舞台になりました。その稽古の過程を見ているのも楽しかったです(笑)。

優香 
三谷さんの作品は2度目なんですけど、場面転換がたくさんあるので、出口を間違えたり、自分がどこにいるのかわからなくなったりして大変でした。でも、こんなに素敵な方々とご一緒できて嬉しいです。

栗原英雄 
三谷さんに『真田丸』で推薦していただいて、また三谷さんにお世話になることになりました。初日を迎えて、緊張しかないです。昨日全部台本が出来上がったので(笑)、ずごく刺激的で面白い経験をさせていただいております。三谷さん、怒ってませんよ(笑)。それに柔軟に対応する2人の先輩や、笑って対応している優香さんてすごいなぁと思っています。

戸田恵子 
三谷さんのオリジナル作品では9年ぶりに出演することになるそうで、覚えて頂いていてよかったなぁと思います(笑)。今回は新しいことに挑戦するということで、まず、役名が皆ないんです。「男1、女1」みたいになっていて。戸惑いながら稽古をしておりましたが、その戸惑いが楽しみに変わるのにはまだ時間がかかるかなぁと思っています。三谷さんは作家としても素晴らしい方ですし、演出力も素晴らしいので、それに乗っかってここまで来られました。素晴らしい役者さん達と共演できてよかったです。

〈公演情報〉
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PARCO Production
『不信〜彼女が嘘をつく理由』
作・演出◇三谷幸喜
出演◇段田安則 優香 栗原英雄 戸田恵子
●3/7〜4/30◎東京芸術劇場 シアターイースト
〈料金〉9,000円(全席指定・税込)(全席指定・税込)U-25チケット6,000円(25歳以下対象、当日指定席券引換、東京芸術劇場ボックスオフィスにて前売販売のみの取扱い)高校生割引チケット 1,000円(東京芸術劇場ボックスオフィスにて前売のみ取扱い・枚数限定・当日指定席券引換・要学生証)
〈チケット〉東京芸術劇場 ボックスオフィス 0570-010-296(10:00〜19:00 休館日除く) 
〈お問い合わせ〉パルコステージ 03-3477-5858(月〜土11:00〜19:00/日・祝11:00〜15:00) 




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山田洋次×今井翼のタッグで心に余韻残す舞台に。音楽劇『マリウス』開幕!

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名匠山田洋次監督が、代表作である『男はつらいよ』を生み出す原動力ともなったほどに、深く愛し続けてきたフランスの国民的人情喜劇が、山田洋次演出×今井翼主演の音楽劇『マリウス』として3月6日、日比谷の日生劇場で開幕した(27日まで)。

フランスの人気作家、マルセル・パニョルによる戯曲『マリウス』『ファニー』『セザール』は、陽気でのんびりとした港町マルセーユに生まれ、その平凡で穏やかな暮らしに飽き足らず未知なる世界に憧れる青年と、彼を取り巻く人々を、優しく時に切なく描いたマルセーユ劇三部作と呼ばれて親しまれている人情喜劇。この作品に学生時代に接して以来、自身の心の故郷とも、また創作の深い鉱脈とも呼び、愛して来た山田洋次監督が、今井翼を主演に得て、今回満を持しての舞台化に着手。監督自身、自分が外国を舞台にしたオリジナルバージョンを演出する機会がくるとは思っていなかったという、奇跡の出会いが実現している。

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【STORY】
1931年、フランス・マルセーユ。あらゆる景色が大口を開けて笑っているかのような陽気なプロバンスの港町。セザール(柄本明)が経営するカフェ・ド・ラ・マリーヌは、暇を持て余した男たちが集まる町のサロンだ。店を手伝うセザールの1人息子マリウス(今井翼)と、魚介類を屋台で販売しているオノリーヌ(広岡由里子)の1人娘ファニー(瀧本美織)は、相思相愛の仲だが、互いにそれを打ち明けられず、2人が幼馴染の域をいつまでも出ないことに、周りの大人たちはやきもきしている。と言うのもマリウスは心の内で、こののんびりとした田舎町で一生を過ごすことに焦燥感を抱いていて、いつか船乗りになって大海原に出て世界をめぐるという夢を捨てきれずにいたのだ。
そんなある日、妻に先立たれた裕福な商人パニス(林家正蔵)がファニーを後添いに迎えたいと言い出したことから、2人は互いの思いをぶつけ合い、ついに結ばれる。ところがその折も折、マリウスに船に乗るチャンスが訪れる。ファニーを置いてはいけないと、夢を諦めようとするマリウス。だが、このチャンスを自分の為に逃したら、マリウスは一生後悔するだろう。そう察したファニーはマリウスの夢を叶える為、恋愛と結婚は別だと心にもない愛想尽かしをして、マリウスを長い航海へ送り出してしまう。しかしその後、ファニーは自分がマリウスの子供を宿していることを知って……

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上手から中央にセザールの店「カフェ・ド・ラ・マリーヌ」があり、下手には広がる海と、オノリーヌの屋台などがある町並みを配した舞台は、マリウスの乗る大型船の一部が登場するわずかな動きがあるのみで、ほぼ舞台転換もなく進んで行く。しっかりと作りこまれた風景は、美しくかつ正攻法で、所謂ケレン的な派手さはないに等しい。それは、映像やワイヤー処理などが組み込まれる舞台が増える一方の今の目で観ると、どこか懐かしさを覚えるような舞台作りに違いない。けれどもだからこそ、この舞台で生きている人々の心の機微が、手に取るように伝わる様が尊い温かさを生んでいく。

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父と息子、母と娘、愛する人の為をひたすら思う恋人同士、彼らを見守る町の人々。それらが醸し出す、温かで深く、また切ない愛が、胸に迫ってくる。この世界には本当の意味での悪人は1人も登場しない。それぞれが、それぞれを思い、良かれと信じて行動し、他人のことを自分のことのように案じ、思い合う。この真摯で温かい視線は、山田洋次監督のものづくりの中に常に脈々と流れている人情の世界そのままで、まだ100年にもならない近い過去に、フランスにこんな戯曲があり、それを愛した大衆がいたことに感動すら覚えた。しかもその世界を、山田監督が大切に心に深くおき続け、今、こうして日本で舞台作品として幕を開けている。それ自体が、まるで美しい夢のようだ。

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その奇跡に大きく貢献したのが、主演の今井翼の存在だろう。アイドルであり、また実直な演技者であり、長くフラメンコダンスに取り組んできた彼が主演者として登場したことが、元々ストレートプレイだった戯曲を「音楽劇」に再構築しようという、山田監督のインスピレーションの源になった。舞台にはジプシーが登場し、マリウスがギターの調べに合わせて踊り出すことに、なんの不自然もなく、台詞が歌になり、また歌が台詞になる作劇を見事に支える力となった。この効果は絶大で、舞台に華やぎと、感情の大きな発露とを共に呼び起こしている。

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その今井が表現する感情の振幅が大きいからこそ、マリウスが、愛するファニーや父親の存在に心を残しながらも、止むにやまれぬ未知なる世界に焦がれる気持ちが、決して自分勝手なものには堕ちない。平凡な日々こそが幸せだと思えるまでには、人はかなりの年輪を重ねる必要がある。ここではないどこかに、バラ色の未来を夢見るのは、若さ故の情熱に他ならない。きっと誰もがマリウスの思いに、自らの青春時代を重ねるだろう。マリウスをそんな愛すべき青年として表出した今井の力が、作劇の温かさと苦みとを共に引き出した見事な主演ぶりだった。こうしたケレンのない舞台の中心を担えると改めて証明したことは、今井翼という役者の将来にとって、さらに大きな成果になった。
 
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対するファニーの瀧本美織は、ひたすらに可憐でどこかに儚さもある美貌が、役柄の根幹を支えていた。愛する人の為に自らの思いを殺して身を引くというファニーの美学は、「如何に女性側から重さを家事させずにアプローチをするか?」といった趣旨の指南書がもてはやされるほど、恋愛における男女のパワーバランスが変化を見せている今の時代には、ほぼ絶滅危惧種と言ってもいい行動だと思う。にもかかわらず、それを古いとも、有り得ないとも思わせずに、ひたすら美しく舞台に描いた瀧本の、真っ直ぐな芝居と在り様はみごとの一言。特に瞳の力強さが印象的で、ファニーの決意を雄弁に語ってくれていた。初挑戦だというフラメンコも、今井にきちんとついてこなしていて頼もしい。

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この2人を取り巻く大人たちは、やはりセザールの柄本明が圧巻。息子であるマリウスを深く愛し、ファニーを嫁にと念願している父親が、思いもかけなかったマリウスの行動に、悩み、ファニーを気遣い、それでもやはり息子を愛し続ける。その表現の中に、空威張りや、意地の張り合いをコケティッシュに見せる呼吸が絶妙で、セザールの喜怒哀楽を見ているだけで、ホロリとさせられる力を放っていた。今更言うまでもないことだが、なんとも上手い、素晴らしい演技者だ。

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更に、マリウスとファニーの関係に大きな動きをもたらしていく、このドラマになくてはならない存在のパニスの林家正蔵が、実に良い味を出している。『東京家族』『家族はつらいよ』など、近年の山田監督作品常連の顔だが、その重用の理由がよく分かる、朴訥な演技とキャラクターが、パニスという役柄に生きていた。

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そうした、キャラクター性という意味では、セザールの友人のブランの綾田俊樹、ファニーの母オノリーヌの広岡由里子、オノリーヌの妹クロディーヌの田中利花、マリウスの友人ピコアゾーの阿南健治、渡し船の船長エスカルトフィグの有薗芳記などなど、登場人物たちが、マルセーユの港町に確かに存在していると感じさせる実存感を醸し出していることも見逃せない。

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山田監督が製作発表会見で、キャスティングの仕事は演出家の仕事の中でも非常に重要なもので、良いキャスティングができれば、作品の成功はほぼ約束されている、という趣旨の発言をしていたことに改めて思い当たるものだった。しかも、ソロもある役柄として作品に華を添えたジャニーズJr.の七五三掛龍也や、アンサンブルメンバーの中には元宝塚の則松亜海もいてコーラスを支えるなど、音楽劇としても、また人情物語としても隅々にまで山田監督の目が行き届いている。カーテンコールの粋な仕掛けも含めて、どんな世代の人が観ても、誰かに共感でき、また青春時代を思うことができる、心にしっとりとした余韻を残す舞台となっている。

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【囲みインタビュー】

初日となる3月6日の昼に通し舞台稽古が行われ、脚本・演出の山田洋次監督、出演者を代表して今井翼、瀧本美織、柄本明、林家正蔵が囲み取材に応えて公演への抱負を語った。

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前列/山田洋次、瀧本美織 後列/柄本明、林家正蔵
 
──いよいよ初日ですけれども意気込みを
今井 今回は改めて監督のもとでこういった役回りを頂きまして、尚かつ素晴らしい役者の方々のお胸をお借りして、本当に僕は大船に乗った気持ちで今いますね。
──今回はずいぶんフラメンコの披露もあるそうですが。
今井 南フランスのマルセーユを舞台にした物語ですけれども、監督がこれまで僕の踊りを見てくださっていて、今回このように生かしてくださって、そこにも感謝しております。
──監督、今井さんを見ていていかがですか?
山田 一番最初の読み合わせに比べると、別人のように素晴らしくなりましたね。彼が稽古の段階でこんなにも成長していくとは予想もしなかったです。本当に素晴らしいマリウスを作ってくれたと思います。

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──瀧本さんはいかがですか?
瀧本 初日という実感がまだないのですけれども、稽古でやってきたことを信じて皆さんと、監督、そしてスタッフさんと自分を信じて、今までやってきたことを大切に、ファニーとしてこのマルセイユで生きたいと思っています。
──新たなタッキー(瀧本)&翼として。
瀧本 とんでもないです!
今井 タッキー(滝沢秀明)も見に来てくれるかと思いますので、タッキーとタッキーが揃うことになりますね。
──嫉妬してしまうかも知れませんね!
今井 そうですね(笑)。
──お2人でフラメンコを踊るシーンもあるとか。
今井 そうなんです。あります。
瀧本 私は初めてなのですが、今までやってきたダンスの中で一番難しいなと思っているのですけれども、翼さんがすごくリードしてくださって楽しく踊っています。
──それはどういうシーンなのですか?
瀧本 最後の方ですかね。楽しみにしていてください。
──翼さんからどんなアドヴァイスが?
今井 いえいえ、そんなことは全然。先生がいらっしゃいますから、僕も生徒として。
瀧本 でも色々教えて頂きました。
今井 いやいや。マルセーユっていうのは、色々な国籍の人たちが行き交うところなので、当時ジプシーの人たちから教わった流れから発生した踊りを、2人で踊ったりというシーンもあります。
 
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──情熱を表現されたり?
今井 表現されたり(笑)したいですね。どうでしょうか。
──柄本さんはいかがですか?
柄本 驚いたのは、映画の時、山田監督の『男はつらいよ』にも出させて頂いたのですが、山田監督の毛の量が変わらない(爆笑)、翼さんと山田監督がこうして並んでいて、毛の量が変わらないというのが。
山田 いや、でもあの頃はまだ黒かったですよ(笑)。
柄本 まぁ、そういう話はいいとして(笑)。『マリウス』という普遍的な話で、山田監督はやはり映画の監督ですので、演出的に舞台の方よりも丁寧な演出をされていて、もちろん色々なやり方があると思うのですが、やはり本(脚本)というものが我々の大きな船になる訳ですが、その本がやっぱり大変に面白いと思っております。ですから山田監督が船長さんで、我々が乗組員になって、今日から良い船旅ができたらいいと思っています。

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正蔵
 そうですね。とにかく監督の演出で翼君、美織ちゃん、そして更に僕は昔からずっと柄本さんのファンで、客席で柄本さんの芝居を見て育ってきたので、本当に柄本さんの傍にいられるのが嬉しいですね。稽古場で汚いジャージとランニングでいると本当に汚いんですが(笑)、芝居がすごくてすごくて、本当に勉強になるなぁと思います。『マリウス』は船の物語なのですが、良い飛行機に乗っているような気分です。というのは翼の良さです(拍手と笑)。
今井 あ、ありがとうございます!
──お2人で踊りたいというような話も?
柄本 正蔵&明という話は1つもなかったですね(笑)。
──正蔵さん踊りは?
正蔵 ないです!
──歌は?
正蔵 ないです!
──ないんですね。ちょっと期待していたのではないですか?
正蔵 いえいえ、頑張ります(笑)。
──メイクは誰よりも濃い顔をされていますね?
正蔵 あ、そうですか?
瀧本 チークがね。
正蔵 あ、チークはこんな感じで仕上げてみました。くいだおれ人形みたいな感じで(笑)。

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──山田監督は大変思い入れのあるこの舞台が、今日初日を迎えるということでどんなお気持ちですか?
山田 初めてこの作品に触れたのはもう60何年前ですからね。その時になんて面白い本だろう、こんな芝居観たいなと思ってから、60何年ぶりにこうして実現して、なんだか夢みたいですよ。嬉しいです、とっても。
──『男はつらいよ』もここから着想されたということで、もしかしたら渥美清さんもご覧になっているのでは?
山田 そうですね。渥美さんが観て「面白いよ」と言ってくれる作品でありたいなと、僕は今でも映画を作る時にもいつも思いますね。あんなに見巧者な人はいない。この芝居も彼がいて「良かったよ」と言ってくれたらいいなと思っています。
──そういうお話を伺うと、翼さんも身の引き締まる思いではないですか?
今井 本当に先月の稽古場1ヶ月間と言うのは、毎日目が覚めるような思いで。また劇場入りすると、色々なものが具体的になっていくと共に、また背筋が伸びる思いです。繰り返すようですが、これだけ素晴らしい方々に支えて頂いて、僕は本当に毎日幸せだなと、喜びを噛みしめてやらせて頂いております。また、ちょっと話は変わりますが、僕は個人的に監督と連絡先の交換をできたことが、女の子に連絡先を聞いた以上に嬉しいことでした(全員から笑)。
──翼さんの方から監督に?
今井 あぁ、まぁそうです。話すと長いんですけれど(笑)、僕から連絡先をお渡しして、後から頂きました。
──監督とは毎日お会いになっていますけれど、連絡はしてみました?
今井 はい、1度しました。恐れ多いので…(笑)。

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──公演中は毎日お会いできますものね。これからですね(笑)。でも、このセットも床までが本当に素晴らしくて、これだけのものはなかなかないですよね。
今井 瀧本さんもそうなのですが、僕も本当に一瞬でしたけれども、昨年末にマルセーユに行って来まして、まさに映画でセザールのカフェになった場所に行ったのですが、本当にここから見える景色といい、中のこういった風情ある空気感にブレがないと感じました。
──この床でフラメンコをするんですね!今日は翼さん少し大きくなったかな?という風に見えるのですが、その靴のせいでしょうか?
今井 フラメンコシューズなので、普段より少し背が高くなっているかも知れません(笑)。
──気合いの入っているところで、何か少しステップを見せてもらえませんか?
今井 えっ?あ、急に言われても…(と言いながら、すぐさまステップを踏みはじめ、瀧本を促して2人でステップを鮮やかに決めて、大拍手が起こる)。
──もうバッチリですね!急にありがとうございました。踊りながら芝居も歌もということで、大変な時間になりますけれど。
今井 いえ、僕はもうこれほど幸せな時間と言うのはないと思っていますし、1日1日を大事に昨日よりも今日、という積み重ねが、僕の新たな道として開けるように精一杯頑張っていきたいと思っています。

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※えんぶ4月号(3/9発売)では、「今井翼・瀧本美織 対談」を掲載しています。お楽しみに!



〈公演データ〉
音楽劇『マリウス』
脚本・演出◇山田洋次
原作◇マルセル・バニョル
音楽監督◇長谷川雅大
出演◇今井翼、瀧本美織、綾田俊樹、林家正蔵、柄本明 他
●3/6〜27◎日生劇場
〈料金〉S席12,500円、A席7,500円、B席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(10時〜18時)
松竹ホームページ http://www.shochiku.co.jp



【取材・文・撮影/橘涼香】



☆『マリウス』出演へ向けた今井翼・瀧本美織対談も掲載!
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劇団スタジオライフ『エッグ・スタンド』開幕レポート

男優劇団スタジオライフが萩尾望都原作の『エッグ・スタンド』を初舞台化。3月1日に初演の幕が開いた。

『ポーの一族』の40年ぶりの連載開始で現在も日本中から熱い視線を集め続ける萩尾が、1984年に発表した100ページの中編漫画『エッグ・スタンド』。『トーマの心臓』『11人いる』など萩尾作品を数多く取り上げてきたスタジオライフが、本作の上演許可を萩尾からもらったのは今から10年以上前のこと。脚本・演出の倉田淳が構想をあたため続け、「今だからこそ」と満を持しての初舞台化となった。
 
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Noirチーム(マルシャン:岩大、ルイーズ:曽世海司、ラウル:松本慎也)

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Rougeチーム(マルシャン:笠原浩夫、ルイーズ:久保優二、ラウル:山本芳樹)

第二次世界大戦下、ナチスドイツ占領中のパリで少年ラウルと踊り子ルイーズ、レジスタンスの青年マルシャンが偶然出会う。緊迫した情勢の中でも、孤独な魂を寄り添わせるようにして結びついた3人は束の間心を通わせ、思いを温め合う。しかし、マルシャンはラウルの不思議な行動に気づき始める…。 
 
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「なにもかも きわどいところにある 愛も 憎しみも 生と死も」 

人間が人間でなくなってしまう戦争の時代。萩尾は「反戦」を声高に訴えかけはしない。そこにも確かに今の私たちと同じようにちょっとしたことで笑い、あるいは泣く人間がいたのだということを、独特の繊細な筆致で描く。

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そして、そんな些細な哀歓をもすべて吹き飛ばしてしまう戦争の過酷さ。浮かび上がる少年ラウルの心の闇…。薄いベールのように様々な要素が重なり合う作品の奥に横たわるものを、脚本・演出の倉田淳は一つ一つ丁寧に解き明かす。

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萩尾の代表作の数々を20年間上演し続けてきたスタジオライフだけに、倉田は萩尾作品の奥深い部分まで分け入り、新たな息吹を吹き込むことができるのだ。製作発表での萩尾の言葉を借りれば、それはまさに「倉田マジック」だと言えよう。

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舞台美術は極めてシンプルで象徴的だ。グレーの床面は奥に向かって高くなる。上部にエッグ・スタンドを象徴するオブジェが吊り下げられている以外は何もない空間(美術は乘峯雅寛)。そこに登場人物が現れることで、命のきらめきの色合いが様々に加わってくる。

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彼らは冬のパリの凍てついた公園から踊り子たちがひとときの華やぎを見せるキャバレー“花うさぎ”、そしてパリを一望できるアパルトマンの6階へと観客を導く。倉田の丹念で真に迫る演出にキャストが応え、緻密な演劇空間が成立した。

メインの3役はダブルキャストでの上演で、初日はNoirチームが出演した。

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ラウル役の松本慎也は『トーマの心臓』のエーリクやユーリを演じた経験を糧として、新たな少年像を描き出す。母親の束縛から逃れ、パリに移ってきた少年の内面に宿るものを透明感のある演技で表現。ラウルがピュアであればあるほど、戦争の狂気は人間の中にも宿っているのだということを感じさせられた。

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曽世海司はドイツから逃れてパリに移り住んできたユダヤ人女性ルイーズを瑞々しく演じた。ルイーズの生命力が作品全体に鮮やかな彩をもたらす。

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マルシャン役は岩大。包容力のある演技で、これまでにない姿を見せる。マルシャンがラウルの謎に迫る過程が観客の心に寄り添い、ドラマティックな効果を上げた。 

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この3人が誕生日パーティをするシーンが印象深い。戦時下であっても人は何気ない日常を守り、喜びを分かち合おうとする。彼らの生きた姿にリアリティがあった。それだけにその後の展開は胸に迫るものがある。 
 
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作品のタイトルになっている「エッグ・スタンド」は、孵化しなかった卵が間違えてゆでられて、卵の殻をむくと中には真っ黒にゆでられたヒヨコがいたという作中のエピソードから。ゆでられてしまった卵は、親の愛にがんじがらめになった少年であり、戦争を繰り返す世界そのものでもあるのだろう。

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不安定な世界はエッグ・スタンドに乗ることでどうにか均衡を保っている。世界を支えるエッグ・スタンドが壊れそうな気配も感じる昨今、本作の上演の意義は大きい。そして、ラストのマルシャンの姿からは戦争のない未来をただ思い描くだけでは済まないという世界の複雑さが感じられ、彼の震えに共振させられた。
 (文/大原薫) 

〈公演情報〉
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スタジオライフ『エッグ・スタンド』
原作◇萩尾望都(「エッグ・スタンド」小学館文庫「訪問者」収録)
脚本・演出◇倉田淳
キャスト◇松本慎也 / 山本芳樹、曽世海司 / 久保優二、岩大 / 笠原浩夫
船戸慎士 奥田努 仲原裕之 宇佐見輝 澤井俊輝 若林健吾 田中俊裕 千葉健玖 江口翔平 牛島祥太 吉成奨人 藤原啓児
●東京公演 3/1〜20◎シアターサンモール
大阪公演 3/24・25ABCホール [OSAKA SPECIAL EVENT]  3/26ABCホール




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