観劇予報

えんぶ4月号

平幹二朗インタビューVOL.1

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今、まさに平幹二朗がである。
俳優歴は50年以上という大ベテランでありながら、つねに新しいジャンルの芝居や役柄に意欲的なその活動は、2008年度の朝日舞台芸術賞と読売演劇大賞の個人賞をダブル受賞するという快挙へとつながった。
今年もそのチャレンジはますます盛んで、ジャニーズの人気グループ、嵐の相葉雅紀と『グリーン フィンガーズ』で共演したり、上川隆也の剣の師匠役を演じた『その男』、そして寺山ワールドを見事に体現した『中国の不思議な役人』などの舞台に出演した。
そして来年1月には、自身の企画をもとに上質な舞台を見せる「幹の会+リリックプロデュース」公演『冬のライオン』の主役が待っている。その平幹二朗に、作品や 演技へのアプローチ、最近の舞台について語ってもらった。

【冬のライオンの光と翳り】

ーーこの作品を選ばれたのは平さんご自身ですか?

そうです。「幹の会」の公演では全国に行きますから、まず登場人物が少ないというのはコンパクトで動きやすい。そして、シェイクスピアの描くような時代劇でありながら、ほとんど密室の家庭劇という形で進みます。 
シェイクスピアにも家庭劇はありますが、これは現代劇ですから、家庭内の人間同士の葛藤とか愛憎の格闘が描かれています。たとえば『マクベス』とか『オセロ』の悲劇よりも身近な感じですね。「うちの隣の大企業の社長さんもこんなふうだわ」とか(笑)、大きな財産を持っている家族のドラマに重ねられるので、とてもわかりやすい。
そして、神の存在はあってもほとんど信じてないところも、現代のドラマです。この夫婦も子供たち もまったく信じてない。そこがまさに現代的ですし魅力的な戯曲だと思います。

ーー先ほど、シェイクスピアとテイストが似てるというお話が出ましたが、妻や息子たちと対立するヘンリーの孤独など、『リア王』と重なる部分があるようですね。

劇中でヘンリー自身「リア王とよく似てる」と言ってます。また作者も、12世紀の史実に基づいて書いてはいますが、芝居に作り上げる過程では『リア王』を意識したり、シェイクスピア劇らしさを入れつつ、現代劇でウエルメイドな芝居というものにしています。シェイクスピア劇を見終わったときの深い宇宙観とはまた違った、 人間の限りない業というか、そういうものは十分味合わせてくれる作品だと思います。

ーー昨年の『リア王』もそうですが、王とか父とか権力を持つ者の孤独を陰影深く表現するという点では、現在の平さん以上のかたはいないと思います。DSCF0530

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月に出演した『反逆児』という舞台でも、息子の信康を切腹させる家康をやりました。家のため、家臣たちのために妻も殺さなければならない。権力志向の男の孤独ですね。
これまで僕は、舞台の主役としては恋と愛と憎しみを抱くヒーローを多く演じてきました。時には王女メディアのようなヒロインもありましたが(笑)。そういう意味では、父親とか滅んでいく弱者はあまりやってこなかった。たとえば『テンペスト』なども演じましたが、復讐という思いに生きるので少し違います。そういう意味では、責任を持った家長の重責とか横暴、そして家族を思う気持ちなどを演じることが、ここにきて多くなったのは、ようやくそういう年齢に達したのかなと思っているんです。

ーーリア王の落魄には、華やかさを知るがゆえの翳りも必要なんでしょうね。

喪失感というか、僕も、もう若々しいヒーローなどはできないと自分自身に言い聞かせている部分がありますから。でも、真昼の太陽を知っているからこそ、夕暮れの寂しさが出るのかもしれません。

 

【中国の不思議な役人の秘密】

ーー役者の平さんの現在の深みと陰影を改めて感じたのが、9月に上演された寺山修司の『中国の不思議な役人』で、笑い声1つで役人の強大な力とか禍々しさを感じさせてくれました。

寺山さんの世界は初めてでしたが、わからないということがずっとつきまといました。昨年のピランデルロの『山の巨人たち』もそれは同じでしたが、あちらよりは寺山さんのほうが、感覚的とか断片的にはわかるし共感できました。
ただ寺山さんの場合は、一瞬一瞬はわかるんですが、これがどうしてこう繋がっていくのか、その末に何が見せたいのかというのが掴みきれないんです。寺山さんの頭の中にはシーンシーンに鮮やかなイメージがあって、そこをどれだけ効果的に見せるかを、きっと考えてらしたんだと思います。
その世界を感じるために、演出の白井晃さんが中国の裏通りなどアジア的なものを多彩に持ち込んでくれたことや、三宅純さんの音楽の力などが助けに なりました。僕のどこかにあるノスタルジックなもの、確かに血の中にある東洋の雑然とした世界と、寺山さんとを近づけてくれたと思います。

ーー役人は死ねない存在ですが、少女を愛してやっと死ねる、その最期がとてもドラマティックで印象的でした。

少女との関係ですが、役人はいわゆる宦官ですから、いわゆる男女の交わりとか愛の交歓はできないわけです。それがないエロチシズムというものを、中国文学の「金瓶梅」とか「聊齋志異」などを読んでイメージを探してみたり、エロティックなものをどう少女との交流の中で表現できるか、いろいろ考えてみたりしました。清潔だけどHというイメージをどう出せばいいのかと。
また、役人は最後に砕け散ってしまうのですが、愛されたらなぜ砕け散ってしまうのかということを考えながら、そのシーンはいちばんエロティックな表現をしたいと思ったんです。そして行き着いたのが、つまり宦官ですから少女への愛がいっぱいになっても、いわゆる性行為はで きない。でも役人の愛が極まったとき、脳が射精を命じた。宦官の彼は射精することはできないので、代わりに自分の身体を飛び散らした、そう自分に決めたわけです。

ーー説得力のある解釈ですね。

そういうイメージで彼の愛が完結するのは、哀れでもありカタルシスでもあるのかなと思ったし、白井さんもそれでいいと言ってくれたので。
それを具体的に表現するのはまた難しいことなんですが、僕の心の中で整理されていればいいので。整理されてないものを表現しようとすると演技も曖昧になってしまう恐れがありますから。

VOL.2はこちら
http://blog.livedoor.jp/enbublog-forecast/archives/51361515.html


〈公演情報〉

 幹の会+リリック プロデュース公演

『冬のライオン』

●2010/01/15〜24◎:東京グローブ座

●1/31〜6/19◎地方公演(1/31〜3/2中部北陸、3/9〜4/29九州、5/6〜6/7東北、6/13〜19千葉)

作◇ジェームズ・ゴールドマン 

訳◇小田島雄志

演出◇高瀬久男 

出演◇平幹二朗、麻実れい、廣田高志、城全能成、高橋礼恵/小林十市、三浦浩一 

<料金>

東京グローブ座  S席\8500 A席\7000 当日学生割引\5000(全席指定/税込)

<チケットに関するお問い合わせ>

東京公演/03- 3360- 0353 リリック  http://lyric-aki.com

地方公演/全国演劇鑑賞団体

 

【文/榊原和子】

これは新しい時代劇だ! ゲキ×シネ『蜉蝣峠』

蜉蝣峠
「演劇を映像で見る」とはどういうことだろう?
メリットは? デメリットはあるのか?
そんな気持ちで足を運んだ試写会でした。

初めて間近で見る舞台上の人物たちは、
想像以上に細かいところまでヘアメイク、衣装ともに作り込みつつ、
生身の人間が演じている息づかいが匂い立ってきそうな迫力。
全体を俯瞰しながら聞く登場人物のセリフは、
彼の感情や状況を説明しているにも関わらず、
まるで自分の思いが語られているような錯覚に。

時に舞台上の人物達に混ざり、その場にいるような気になり、
時に夢を見ているような気がする不思議な感覚。
まるで、劇場での観劇と映画鑑賞と読書を一度にしているような未経験の刺激的な体験でした。

高岡早紀、勝地涼のかわいさにキュンとなり、
堤真一、古田新太の迫力にブルッと震える。
舞台を観た人も、観ていない人も、
劇団☆新感線を知っている人も知らない人も、
みんな楽しめる新しい時代劇です!

小道具画像
おまけ情報
2009年6月号の雑誌『演劇ぶっく』に、劇団☆新感線のインディ高橋さんの連載(「Patchy小道具研究所」)があります。
その回では『蜉蝣峠』の記事が掲載されていて、冒頭、古田新太が食べているにちゃにちゃした物(ウンコ)や軍鶏や死体の秘密など、小道具がカラー写真とともに紹介されています。
これを読んでから見ると、アップの映像が倍楽しめます。

ゲキ×シネ  いのうえ歌舞伎☆壊<PUNK>『蜉蝣峠』
2010年2月13日(土)より新宿バルト9・梅田ブルク7他、全国ロードショー
演出◇いのうえひでのり
脚本◇宮藤官九郎
出演◇古田新太 堤真一 高岡早紀 他
<料金>前売一般¥2000 当日一般¥2500 学生・小人¥1800

ゲキ×シネ公式サイト
http://www.geki-cine.jp/

【文/矢崎亜希子】

ミュージカル『キャバレー』公開稽古(12月18日)

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ミュージカル『キャバレー』の稽古風景が公開された。この場で演じられたのは、藤原紀香演じるショーガール、サリーが中心となるナンバーの「ママには内緒よ」と、Emcee役の諸星和己が中心となる「ヴィルコメン」の2曲。

「ママには内緒よ」はショーガールであるサリーのコケティッシュさや、セクシーさで魅せるナンバー。キャバレーに集うお客に向って「私がここで働いているのはママには内緒にしてね。」「ママは私が修道院にいると思っているの。」などと、サリーが歌いかける場面だ。DSCF1259

注目は藤原紀香の衣装だが、最初は野暮ったい白のワンピース姿のサリーが、曲の途中でワンピースを脱ぎ捨て、黒のランジェリー姿になって踊る姿はさすがにセクシーで美しい。周りのダンサーともども、絵になる光景だ。

DSCF1289一方、諸星和己のEmceeが中心となる「ヴィルコメン」は、観客をキャバレー「キット・カット・クラブ」に惹き込むナンバー。1929年のベルリンが持つ、退廃的な空気とその裏側に存在した享楽を象徴するシーンだけに、稽古場にいるギャラリーたちを挑発して、諸星もいつにも増して気合いの入った役作りを見せてくれた。

 

公開ゲネのあと、サリー役の藤原紀香、Emcee諸星和己、クリフ役の阿部力の3人が記者たちの質問に答えた。

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藤原「今年の『ドロウジー・シャペロン』に続き、2年連続の日生劇場お正月公演ということで嬉しいです。前回はアクロバティックな動きもあって大変でしたが、今回はセクシーでゴージャスなエンターティンメント。そのショーガールとしていろいろな衣装も着られるし、また歌もたくさんあるので、そちらも歌姫としてもがんばります。演出の小池修一郎先生の稽古についていくのがたいへんですが、クオリティの高い舞台になるのが見えているので、安心してついて行ってます。サリーとクリフは時代に引き離される恋人同士、その切ない心情を見せたいと思っています。阿部さんのクリフとはラブシーンというか熱いシーンがありますが、そこで衣装が脱げないように(笑)、がんばります」

DSCF1285諸星「今日のように観ている人のところまで入って行く、それも含めて、その日、その日のライブ感をどう見せるかが僕の役目ですね。この3人も、またスタッフやキャストも信念を持って作品を作っているし、新鮮な目で観てもらえる『キャバレー』にしたいと思っいます。諸星和己をいかに出さないでEmceeに、そして進行係に徹するか、そこを意識しています。紀香さんとは仲が良くて、今更ラブシーンとかできないですね(笑)。(記者にかっこいいと言われ)わかってます(笑)。マイケル・ジャクソンにはかなわないけど(笑)」

DSCF1282阿部「日々進化する稽古に一生懸命ついていってます。紀香さんや諸星さんがショーの部分を見せてくれるので、僕はお芝居担当だと思ってます。サリーとクリフの関係の変化が見どころで、プレッシャーはありますが、がんばります。きちんと伝えようとするものがある作品ですし、今の日本にも通じる人間ドラマだと思います。ラブシーンは、紀香さんに激しくしすぎて衣装からポロリとさせないように気をつけます(笑)」


また今年振り返ってという質問にはDSCF1277

藤原「いろいろなことがありましたが、すべての経験が糧になると思っています。とにかくこのサリーをセクシーにゴージャスに演じて楽しみたい」

諸星「これから、という言葉を噛み締めている感じですね。これからスタートをきるこの作品も含めて、来年はいいスタートになりそうです」

阿部「新しいことをした1年でした。来年1月もこの『キャバレー』という作品を通して、また新しいことに挑戦できるのが楽しみです」

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ブロードウェイ・ミュージカル『キャバレー』

●2010/01/7〜29◎日生劇場

●2010/2/5〜7◎梅田芸術劇場メインホール

●2010/2/12〜14◎ 愛知勤労会館

●2010/2/20〜21◎北九州芸術劇場大ホール

 

修辞・訳詞・演出◇小池修一郎

出演◇藤原紀香 諸星和己 阿部力 高嶺ふぶき 戸井勝海 杜けあき 木場勝己 他

 

<料金>

日生劇場 S席¥12600 A席¥8400 B席¥4200(全席指定/税込)

キャバレーシート¥30000(ペアシート/プログラム1冊付)

梅田芸術劇場 S席¥12000 A席¥8000 B席¥4000(全席指定/税込)

<チケットに関するお問い合わせ>

東京公演/ホリプロチケットセンター03-3490-4949 http://hpot.jp

大阪公演/梅田芸術劇場 06-6377-3800

愛知/キョードー東海 052-972-7466

北九州/北九州芸術劇場 093-562-2655

           【取材/岩見那津子 文/榊原和子】

 

 

 


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