稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

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生きて死ぬことは進化の過程かもしれない。はえぎわ『ガラパコスパコス』


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鳴り響く壮大なボレロ。
パジャマのようなピエロ姿からスーツに着替える男。
進化してんのかしてないのか。

ピエロを職業としながらも、人と目を合わせて話すことができない、
引きこもりの青年・木村太郎(坂口辰平)。
彼が手から紙で出来た花を出すというような、よくあるパフォーマンスをしていたとき、
一人の老女・まっちゃん(井内ミワク)が通りかかる。
太郎は、そのまっちゃんにも、一輪、花を手渡す。
誰よりも喜んでくれた、まっちゃん。
大切そうに花を抱え、歩くまっちゃんを風が襲い、花が飛ばされる。
花を追いかけようとして、転ぶまっちゃん。
老いた身体では自力で立ち上がることができない。
その様子を見ていた太郎は、いてもったってもいられなくなり、まっちゃんに駆け寄り、手を差し伸べる。
太郎はそのまま、その赤の他人である一人の老女を自分の家に連れて行き、
一緒に暮らし始める。

人間に唯一つ共通していることは生まれて死ぬこと。
人間の先祖はみんな同じ。
進化には痛みを伴う。だとしたら年をとって腰やらが、間接やらが痛くなるというのも、
もしかしたら、何百、何千年と続く進化の過程の一つかもしれない。
代わり映えのない毎日の気苦労も、心の痛みも、全て進化の過程、
ただ生きて死ぬ、その過程なのだとしたら、私たちのなんてことのない「今」も、
小さな、小さな一歩だとしても、想像もできないような進化や未来に繋がっている…かもしれない。

床も壁も一面、黒板になっている舞台美術にチョークで絵や文字を書き込めば、
そこは太郎の部屋にもなるし、会社にもなるし、老人ホームにもなる。
椅子も机も食べ物も、チョーク一本で自由自在に生み出せるのは演劇ならではの面白ろさ。

途中途中で出てくる、バスにいつも乗れない女(川上友里)が、
ノスタルジックな空気感と、勢いを作品に与えていた。
3度目の挑戦で彼女がやっとバスに乗れたとき、
なんだかわからない達成感がこみ上げてきたのだが、それ自体も少し笑える。
彼女がやっと止めたバスに太郎も乗り込み、バスの乗客全員で合唱するのは、We Are The World。
更に、もうなんだかわからない感動がこみ上げてきた。

心を閉ざしている青年が、痴呆の進み始めている老人に触れる。
いずれ誰もが老いて死ぬんだと言う実感がそこにある。
生きていることに対する愛情もそこに。
最後、まっちゃんの真っ直ぐな目に見つめられても、逃げ出すことのなかった太郎は、
まっちゃんに手伝ってもらって、ピエロ、道化の化粧を落とす。
そこで、ちゃんと人と向き合って生きていく決意、責任を負う決意が生まれたように感じた。
太郎は少し進化したのかもしれない。


はえぎわ第22回公演
『ガラパコスパコス』

作・演出◇ノゾエ征爾
出演◇町田水城 鈴真紀史 滝寛式 竹口龍茶 踊り子あり 川上友里 鳥島明 井内ミワク ノゾエ征爾 富川一人 山口航太 星野美穂 金珠代 笠木泉 坂口辰平(ハイバイ)

●12/17〜12/29◎こまばアゴラ劇場

<料金>
全席自由 前売3,000円/当日3,300円
高校生以下:1,500円
学生・65歳以上:2,000円

<問い合わせ>
Little giants 090-8045-2079(11時〜19時)
090-1815-8974 /
info@haegiwa.net




【文/岩見那津子】

山本耕史の初演出作品『GODSPELL』福田転球・明星真由美インタビュー

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俳優・山本耕史が初めて演出を手掛けているロックミュージカル、『GODSPELL』が125日から三軒茶屋のシアタートラムで公演中である。

この作品は「新約聖書マタイ伝」の福音書を題材に、舞台を現代のNYに置き換え、イエス・キリストの最後の7日間を描いている。1971年にブロードウェイで初演、大ヒットして日本でも78年に初演。以来何度も上演されていて、山本耕史も01年に主役のジーザスを演じている。

70年代アメリカならではのエネルギッシュでソウルフルなミュージカルで、リードボーカルの歌う「Day by Day」などなじみやすい楽曲が多く、観客と一体となれるショー的要素もある。また、登場人物はジーザスとユダ以外は役名がないという自由でユニークな舞台だ。

山本を囲む出演者は、映像で活躍する内田朝陽、ミュージカルに進出がめざましい原田夏希、小劇場出身の実力派である福田転球や明星真由美などに加えて、オーディションで選ばれたキャストが半数を占めている。

今回が舞台初演出となる山本耕史の演出家ぶり、そしてこの作品への取り組みについて、福田転球と明星真由美に稽古中に話を聞いた。

 

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【ミュージカルとの深い縁?】

ーー稽古の進み具合はどんな感じですか?

明星 歌稽古が最初に1週間くらいありまして、そこから進んで、今はピアノだけですがこれから楽器がどんどん増えていくのかなというところです。歌う曲がとにかく多くて、全16曲ある中で歌わないのが2、3曲ですか。

福田 僕もそんなもんです。僕はソロはほとんどないんですが。

明星 私は1曲ソロがあって、あとはとにかくみんなでハモってます。

ーー明星さんは、氣志團のマネージャー兼シンガーという歌のキャリアがありますね。

明星 いやいやマネージャーだけでした。本当にたまに飛び入りで、好きな曲を好きな衣装着て歌っていただけで(笑)。

福田 でも、すごいね!

明星 高校時代はヘヴィメタを毎日歌ってました(笑)。歌は好きだったから、2年ぐらい前にミュージカルに出たい宣言して、それから少しずつ出していただくようになって。本格的なのは宮本亜門さんの『三文オペラ』(09年)が最初で今回が2作目です。でも、こんなに曲が多いと思ってなかったので、ちょっとたいへんです。

ーー転球さんは大阪芸大のミュージカル学科出身ですね。

福田 でも、ちゃんとしたミュージカルはほとんど初と言っていいですから、パロディでいやというほどやってはいるんですが(笑)。むっちゃ新鮮な稽古場です。

明星 どうしてミュージカル科を選んだんですか?

福田 信じられへん話だと思うんですが、受験したときに演技コースもあったんですが、ミュージカルコースは体力テストと書いてあったんですよ。で、僕はなんにもできないで受けたから、とりあえず走ったり飛んだりするのならなんとかなると思って。そしたらなんとダンスで(笑)、試験場で先生がいきなり踊りだしたときはびっくりしました(笑)。

ーーそれでも受かったんですからすごいですね。

福田 男はほぼ全員入れました(笑)。

明星 授業は歌とかダンスとかですか?

福田 そうなんですが、全然まじめに出てませんでしたからね。でも発表会は『コーラスライン』とか『ウエストサイドストーリー』とか。

明星 めちゃめちゃ出てるじゃないですか(笑)。

福田 もうすっかり忘れてます(笑)。

 

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【体力も熱量もすごい演出家】

ーーこのミュージカルは山本耕史さんの演出ですが、山本さんと共演は?

明星 私は初めてご一緒します。『オケピ!』とか舞台は拝見してるんですが。

福田 僕は『BOYS TIME』(99年)という亜門さんのミュージカルで共演してるんです。まだ彼が24歳くらいで、でも才能ある若い人だなと。

ーー演出家・山本耕史はどんな感じですか?

明星 いろいろ探りながらというか、今回の出演者は舞台は初めての人もいますし、芸歴の長いかたもいます。ストレートプレイが多い人、ミュージカルしかやったことがない人、いろいろ混じっているんです。だから演出家の言った一言に対しても捉え方がすごく違う。それを敏感に察知してそれぞれの様子を見ている感じがします。御自身の確固たるイメージよりも前に、まずはそれぞれに好きにやらせてみようかというような、そういう空気でしばらく進んでいって、終盤にはきちんと締めていくんだろうなと思ってます。

福田 よく自分でやって見せてくれるんですが、それがすごい。

明星 なんでも一番うまいですからね(笑)。私は今回、耕史節を身につけたいと思ってるんです(笑)。

ーーミュージカルはすごく好きなかたですから、作りたいイメージはきちんとあるんでしょうね。

明星 そうだと思います。でも作る行程が私と違うのもよくわかるので、そのへんの隙間を自分でどう埋めるか、それが稽古しててすごく楽しいですね。なんか、ただならぬ包容力を感じるんですよ、山本さんって。

福田 そうだね。

明星 たぶん人間が好きなんだろうなと思うし、「そこで自由にやってみて」と言われると、何をやっても助けてもらえるなというそんな安心感があって。

ーーすごい仕事量なのに、けっこう人付き合いもいいと聞きますね。

福田 朝までずっと一緒に遊んでても次の日は切り替えてるし、1週間して会ったときにはもう違うワザを覚えてはる。いったいどこにそんな時間があるんかなと(笑)。そういうすごさは、会うたびに思いますね。

明星 いわゆる人間力が大きいなというのは会ってすぐわかりました。氣志團のリーダーもそうなんですが、体力が違うというか熱量が違うというか。そういう人に会うとわくわくしますよね。

ーー若い年代には珍しく熱いですよね。だからこの『GODSPELL』が似合うのかもしれませんね。

福田 稽古してて山本さんのジーザスと接していながら、どこか山本さん本人の部分も感じるんですよ。役柄的にもジーザスと重なる。

ーーこの作品ですが、ジーザスとユダ以外は役名がついてないということですが。

明星 自分の名前が役名になるんです。私は明星で。

福田 僕は109(笑)です。

明星 でも役名で呼ばれることはないんです。そういう漠然とした台本なので、自分たちがどう役を作っていくかということも、それぞれに課せられているんです。

福田 あまり経験してない形だから、なかなか難しいんですが。

明星 でも、ただの有象無象になってしまっては面白くないので、探りながら自分たちで役割りを作ってますが、それも楽しいです。

福田 役者にはすごく難しいけど、そのぶん面白い作品です。

 

ロックミュージカル

GODSPELL

●201012/526◎シアタートラム

作詞・作曲◇スティーブン・シュワーツ
脚本◇ジョン・マイケル・テべラク
翻訳・上演台本・訳詞◇Team YAMAMOTO

演出◇山本耕史
音楽監督・演奏◇前嶋康明

出演◇山本耕史、内田朝陽、原田夏希、福田転球、明星真由美、中山眞美、上口耕平 他
〈料金〉7000円(全席指定・税込)

〈問合せ〉世田谷パブリックシアター劇場チケットセンター 03-5432-1515

10:0019:00  

 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】

 

 

 

 

 

ネクスト・シアターの2作目が開幕。『美しきものの伝説』

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彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督である蜷川幸雄、彼が率いる無名の若手俳優の集団「さいたまネクスト・シアター」が、2作目の幕を開けた。

昨年10月の旗揚げ作品『真田風雲禄』に出演していた44名は、1年の間に蜷川の厳しい指導で22名に絞り込まれ、いっそう気合いの入った集団となっている。

今回の作品は、1968年初演の宮本研の戯曲『美しきものの伝説』で、大正時代を駆け抜けた実在の人物たちの理想と現実を描いた傑作青春群像劇である。

s_DSCF6483登場するのは、新しい演劇を求め身をささげる演劇人。社会主義に憧れ、労働者の解放を訴える文学者や思想家たち。女性解放運動を実践し男女同権を唱え、恋に生きる女性たち。モデルとなっているのは松井須磨子、島村抱月、小山内薫、大杉栄、伊藤野枝、平塚らいてう、神近市子、辻潤、荒畑寒村、中山晋平、そのほかにも歴史に名を残す人々ばかり。

物語は大正元年(1911年)から始まる。大逆事件という国家権力による弾圧で、民衆の自由な気運が閉塞しつつあったなかで、自由と革命の思想を謳う知識人や演劇人の闘いが、やがて関東大震災後の混乱に乗じた大杉栄、野枝夫妻の虐殺で、より時代の闇を深めていく様を描いている。

大正という短い時代に国家権力に翻弄されながらも、変革を求め闘った「美しきものたち」の姿が、演劇という闘いに命がけでぶつかるネクスト・シアターの、無名の若き俳優たちの闘いと重なる。

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【蜷川幸雄囲みインタビュー】
 この初日を迎えた16日に、取材陣の前で蜷川幸雄のインタビュー取材が行なわれた。その内容を要約して以下にレポートする。

s_DSCF6535「稽古開始の直前にゴールド・シアターに応援を頼みました。ここには高齢者と若者のふたつの集団があって、これが融合すると劇の幅が広がって、そしてお互いにいい影響を与えられるんじゃないかと思ったので。この作品は一種の演劇史の戯曲であり、こんなに美しく語られているものは他にない。そして縦軸の歴史の中に自分が存在していることを知ってほしいと思っていました。中身はさることながら、演じるのもとても難しいんです。若者は自分自身の体験にないので、何でもないように下駄や手ぬぐいを扱うといのができないんです。ちゃんと下駄を履けないから稽古場に入ったら常に下駄を履くようにしました。キャスティングは、当初、自分の頭の中で考えていたのでやってみたらあまりよくなくて。前回の『真田風雲録』の時に台詞がほとんどなかったような若者たちにやらせてみたら、よかったんです。稽古をやりながらキャスティングが決まっていく。とんでもないことが起きてると思いました。今まで絶対だめだと思っていた連中にもチャンスがあった。上手くなったら希望が叶えられるというのが、みんなの中に芽生えてきたんじゃないかな。ぜひ若者たちがどれだけ成長したか見てほしいです。それだけしかお返しするものはないから。今の時点では、これが目一杯だと思うんですが、ここからいい俳優が飛び立ってくれるといいなと思います。いわゆる無名の若者でもこんなに心を打つことができるんだと」

 

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さいたまネクスト・シアター
『美しきものの伝説』
作◇宮本研
演出◇蜷川幸雄
出演◇さいたまネクスト・シアター(22名)、さいたまゴールド・シアター(21名)/原康義、横田栄司、飯田邦博

20111216日〜26日◎彩の国さいたま芸術劇場 インサイド・シアター(大ホール舞台上特設劇場)

<料金>¥3800(全席自由・税込)

<お問合せ>彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(10時〜19時)

 http://www.saf.or.jp

  

【取材・文/榊原和子】

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