稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『ストリップ学園』

関西から「真夏の會」と「極東退屈道場」がやってくる!

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左が『エダニク』の脚本を書いた売込隊ビームの横山拓也、右が極東退屈道場主宰の林慎一郎

8月、夏の暑い盛りに関西から真夏の會と極東退屈道場という2ユニットが東京にやってくる!「真夏」「會」と「極東」「道場」って・・・。なんだか文字だとちょっと強面ですが・・・。まったく異なる作品が関西から一度に東京にやって来ます。どんな作品なのでしょうか?

——真夏の會『エダニク』と極東退屈道場『サブウェイ』と文字情報だけだといかつい感じがして、おびえていたのですが、チラシを拝見するとポップな感じで親しみやすそうですね。

林 伊丹のアイホールで活動していた関係で、その人脈を使って、2つの作品を同時期に、同じ装置を使って上演するという企画が実現しました。東京公演については、王子小劇場の玉山さんがたまたま『サブウェイ』をご覧いただき、ぜひ王子で、というお話をいただきまして。せっかくだから真夏の會と一緒に行こうということになりました。

——真夏の會というのは、夏と関係があるのですか?

横山 いえ。元クロムモリブデンの役者の夏君と水の会代表の原真(はらまこと)君の二人の名前から来ています。役者が主体のユニットで、毎回脚本と演出を外部から呼んで作品をつくっています。今回、演出はスクエアの上田一軒さんで、僕は脚本家としての参加なので作品がどういう形で立ち上がってくるのか、楽しみにしています。

——『エダニク』というのはエダと肉のお話でしょうか?

横山 とある屠畜の職人達の休憩所が舞台になっています。そこには刃物を研ぐ機械もあって、ちょっと特殊な環境なんです。屠畜という生き物が食料品として物体に加工されるという強い磁力を持つ場です。そんな場所にも、普遍的な人間関係は入り込むというお話です。

——『サブウェイ』はコンテンポラリーダンスと会話劇の融合とありますが、ストーリーのようなものはないのですか?

林 地下鉄の乗客の1週間の断片で構成をしています。乗客の発言から、今どの辺を走っているとか、その人がどういう状況にあるのかとかはわかります。

——地下鉄を舞台にしたのは、どうしてですか?

林 地下鉄は窓があるのに風景が見えなかったり、新しく作られた地下鉄ほど地中深くなるというのも、地層から考えると新と旧の時間の流れが逆だったり。遅延や事故も少なく、安全・早いと思われる乗り物というのも気になって・・・。

——確かに。当たり前に使っているのが、ちょっと不思議な気分になってきました。まったく違う作品が、同じ舞台装置で上演されるんですよね?

横山 真夏の會はシンプルなスタッフワークでの作品作りが特長なので。前回の上演時には、素舞台と机と椅子のみでした。

林 映像をどう使うか、スタッフと相談中です。

——同じ劇場で、続けてまったく違う作品が楽しめるなんて、わくわくします。

【公演情報】
manatsu

真夏の極東フェスティバル
http://www.manatsu-kyokuto.net/

8/11〜14◎アイホール 8/25〜28◎王子小劇場

真夏の會『エダニク』
作◇横山拓也(売込隊ビーム) 演出◇上田一軒(スクエア)
出演◇夏 原真(水の会) 緒方晋(The Stone Age

極東退屈道場『サブウェイ』
作・演出◇林慎一郎 振付◇原和代
出演◇あらいらあ 井尻智絵(水の会) 小笠原聡 門田草(Fellow House) 後藤七重 猿渡美穂 中元志保 ののあざみ

【インタビュー・文/矢崎亜希子】

宅間孝行の処女戯曲を再演『傷』レビュー

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東京セレソンデラックス番外公演『傷−KIZU』が、シアターサンモールで7月6日から始まった。

2001年初演作品の再演で、宅間孝行の処女作が観られるチャンスとなっている。

 

場面は90年代の大学生の居室から始まる。
一部上場企業に就職が決まった陵と少年院出の圭介は、小学生の時からの友人だった。

時が経ち、陵はデリヘルを開業していた。そこへ刑務所から出てきた圭介が…。デリヘルをやっていることがバレたら大変なことになる! 
圭介と遭遇した陵の恋人・若菜は大慌てでデリヘル事務所を葬儀屋の装いに変え、取り繕おうとする。デリヘル嬢たちは事務員、電話番である鳩山は社長に変身させられて挙動不審。そして、癒着している錦織刑事や、何も知らずに帰ってきた社長の陵も話を合わせて、圭介を騙すことに。
圭介を帰してホッとしたところへ、北条という男が事務所に飛び込んで来た。市役所勤めの彼は自分の妻がここで働いていると大騒ぎする。皆で誤魔化すのだが、興奮した北条はナイフを振り回す……。
圭介は何故刑務所に入ったのか、何故デリヘルをそこまで嫌悪するのか。そして、事件はその後も起こり続ける。事態は収束するのだろうか?


作・演出の宅間ならではの、最後まで息をつかせない笑いと涙の舞台で、スピーディな展開で観る者を巻き込む力がある。
それを支えるのが盆回しのセットだ。陵の居室、デリヘル事務所、バーなどの空間、そして時間を、盆を回して自在に行き来する。音楽もそれを助ける。セレソンの音楽は、スピード感を出したり、場を盛り上げるのがうまい。

 

首尾よく就職が決まったとみえた大学生の陵が、デリヘル社長となっている現実。また、圭介との絆は堅いはずだが……人間の弱さと友情の狭間で揺れる、どうしようもなさが切ない。

陵の愛を得て、その関係を守るためになんでもする恋人の若菜。その小さな世界観としたたかさで、陵を自分の方へ引っ張る姿は女そのものだ。

茫洋ともみえる圭介のうちにある、大きな心、真の友情…愛とはなにかを考えさせられる。

他に、明るいトークが冴えるサリー、気風のいいマリア、人妻ビビアン、チェンジ女王ティファニー、無口な用心棒しげる、デリヘル志望の高校三年生みなみ。そして、思い詰めた北条、追い詰められた汚職刑事錦織、それぞれの人生の奥が垣間見られる。


一條俊の陵は、優しさや弱さが滲み出る人物像。状況に流されていく人の苦悩を感じさせる。

圭介役の伊藤高史は抜群の存在感で、少ないせりふで表現しなければならない難役をこなしている。

若菜を演じる江田佳代は、女の怖さをみせる。

キーパーソンとなる錦織の越村友一、北条の清田智彦も目の離せぬ演技。

また、関西弁デリヘル嬢マリアの小谷早弥花が目を引いた。


悲しみに包まれるラストシーン、リフレインが余韻を残した。


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東京セレソンデラックス エクストラステージ

『傷−KIZU』

作・演出◇宅間孝行

出演◇一條俊 伊藤高史 越村友一 尾畑美依奈 小谷早弥花

菊池優 江田佳代 池田沙耶香 畠山雄輔 天野暁兒

清田智彦 栗田愛巳 高橋郁恵 阿部恭子/柳沢有紀

●7/5〜7/10◎シアターサンモール

<料金>全席指定3,500円

<問合せ>

キョードー東京 0570‐064‐708  

http://kyodotokyo.com

オフィスセレソン 03‐3373-0601

http://www.ts-dx.com/


【文/佐藤栄子】

不条理感に満ちたサスペンス『おもいのまま』レビュー&インタビュー

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女優の石田えりが企画し発案した舞台『おもいのまま』が、東池袋のあうるすぽっとで6月30日から7月13日まで上演中である。
 

演出を手がけるのは飴屋法水で、脚本は中島新。サスペンスと不条理感に満ちた心理バイオレンス劇に仕立ててある。

ある裕福な夫婦が暮らす居間に「記者」と名乗る侵入者が不意に侵入してくる。

近所で起きたある事件を調べているという2人は、夫婦の過去を探るような質問を繰り返し、しだいに暴力的に2人を支配していく。そして焙り出されていく夫婦の秘密。
 

2幕形式になっていて、サスペンスだけに詳細が紹介できないのが残念だが、1幕の終盤の重さを、ぬぐい去るとまではいかないが、ある意味薄めてくれて、コミカルにさえ思えてくる2幕の展開に救われる。

登場人物はたった4人きり。夫婦役に石田えりと佐野史郎、侵入者に音尾琢真と山中崇が扮し、室内劇ではあっても客席も使って、外部や社会も感じさせる演出。

妻の「もし、あのとき」という言葉がこの作品の大きなキーワードで、人生において他の選択肢があったのではないか?とは誰しもが思うことだが、その先を想像力で検証するのがこの舞台の狙いかもしれない。

次第に緊迫感を増していく空間を、ノイズや音楽でより劇的に追い込んでいく飴屋演出の「音」。リアルでもあり同時に妄想かもしれない展開の中で、人間同士のぶつかり合いを全身で表現しようとする4人…役者の底力を強く感じる舞台だ。

 
この作品の初日前日に公開稽古があり、この舞台に挑む気持ちを、石田えり、佐野史郎、音尾琢真、山中崇が語った。


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【一問一答】


ーーいよいよ初日ですが、どんな作品になっているかを。


山中「ライブに近いと思います。毎日毎日微妙に変わっていくと思います。楽しんでいきたいと思ってます」

佐野「体力とか気力がいる舞台です。飴屋演出は言葉と身体と音と、丸ごとライブだなと。手応えは感じてます」

石田「人生の選択を迫られるということがテーマですから、舞台上で4人が、いろいろな選択によって変わっていくような仕組みになってます。そこを見ていただきたいですね」
 

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音尾「俳優としてどこまで見てるかたにわかるか、わからないかもしれないという、すごい挑戦をしています。稽古中に自分のなかでたくさんのハードルを越えて来ましたし、これからも越えて行くと思うので、それを見ていただければ。回を重ねるごとによくなってるので、さらに素敵な舞台にしたいと思ってます」


ーー石田さんは佐野さんと夫婦役ですが、制作発表で言っていたように仲良くなってきましたか?


石田「仲良くはないです(笑)。でもいい感じです」

佐野「何でも話してるね」

石田「そうですね。それはいいことですよね。機嫌がいいとよく話しますけど、機嫌が悪いときは、私なんかした?って思うくらいです(笑)。今日から劇場入りという日は、ぞっとしたとか機嫌が悪かったし(笑)」

佐野「ちょっと緊張するからね(笑)」
 

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ーー石田さんの思いつきで始まった仕掛けはどうですか?

石田「予想を越えてすごいところまできてます。みんなの力で、本当にすごいところまで来れるんだなと。最後までドキドキするようになってますし、みんなが主役ですから。多重的な舞台です。俳優としても役柄としても、役をやってる人とか、個人とか、ものすごく重層的な作りになってます。いろいろなものが見えてくると思います」

佐野「いちばん印象的なのは、僕らのセリフも含めて音ですね。いわゆるSEとかじゃなくて、音が芝居と一体となってるライブで、楽器の音楽じゃなくて音なんです」
 

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山中「僕はこれほど佐野さんをいじめたり殴ったりということはもうないと思うので、30ステージですけど毎回毎回一生懸命いじめていけたらなと(笑)」

音尾「夫婦の秘密が、いろんな秘密が明らかにされていきますので、それを楽しんでいただければ。なんだこれ?みたいなことが続出ですから(笑)」

石田「すごい秘密が暴かれるだよね(笑)」


ーー8月中旬まで旅もありますが体力作りは?


佐野「目の前のことに一生懸命になる。そしてよく食べてよく寝て」

石田「それしかないよね(笑)」
 

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ーー佐野さんは殴られる側ですが体力いりそうですか?


佐野「まあ、見てください(笑)」

石田「ずっと縛られるし(笑)」
佐野「あまり言えないのがね(笑)」

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『おもいのまま』

●6/30〜 7/13◎あうるすぽっと

演出・美術・音楽デザイン◇飴屋法水

脚本◇中島 新

キャスト◇石田えり 音尾琢真(TEAM NACS) 山中崇 / 佐野史郎

〈料金〉前売・当日(全席指定) 6,000 円 豊島区民割引 5,500 円
当日限定 20歳以下3,500 円(身分証提示)

〈問合せ〉03-5829-8031オフィス・REN(平日12:00〜18:00) 

※ 東京のほか、愛知、兵庫、山口、佐賀、北海道、岩手など全国でも公演

http://www.omoinomama.info/



【取材・文/榊原和子 撮影/冨田実布】

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