観劇予報

えんぶ4月号

『真田風雲禄』制作発表 vol.2 (蜷川コメント) 

DSCF0086 蜷川幸雄&福田善之コメント



【安保なんて知らなくても】

ーーこれは60年安保闘争の頃の話ですが、それが今の時代にどう受け止められるか、また作るうえでの仕掛けは?

蜷川「60年代に限定して見る必要はないと思います。ただテレビなどを見てても、多くの番組は芸人たちがクイズに答えて、笑って食べてというものばかり。そんな文化の中で、もう少し考えることを恥ずかしがらなくてもいいじゃないかと。いま稽古してる『コースト・オブ・ユートピア』も、出てくる人間たちが何を思って生きてきたのか、それを考えてほしいということです。小さな劇場にしたのは小さなウソでも観客は見抜く。それを役者には知ってほしい。また逆に同じ世界を共有しやすい。そういうところで演技中心の芝居を作りたい。一応退屈してもいけないのでビジュアルは重視すると思います」

福田「僕は安保を書いたつもりではないんです。書きたいものが時代と素直に混ぜ込ぜになっただけです。それでいろいろ認めていただいたりもしましたが。この作品はそのあともぽつんぽつんと上演してるんです。でもある時期まで「こんな芝居はヤダわ」というお客さんの空気で始まる前に硬直していたんです。ただその空気が最初のセリフの「誰が好きなんだ、お霧さん」というのでフッと緩むんです。「あ、いつものお芝居なんだ」という空気になる。それは杉村春子さんが新しい『櫻の園』をやったときも、後半の江守徹のセリフで「あら文学座なんだわ」という空気が流れた。お客さんのほうが変わるんです。そして、ある時期からは安保なんて知らないから、やるほうの学生が非常に素直に受け止めて、お客さんも素直に受け止めてくれるようになった。その時期は今でも続いてると思います」

ーー今回の応募の中から選ぶにあたっては?

蜷川「似たような俳優が今のテレビでは出てくるけど、ここではもう少しノイズの多い顔にしたいと。ゴールドシアターはノイズばっかりだけど(笑)。若者たちに、いま情報に流布されているような顔ではなく、もう少しノイズがあっていいんだと言いたい。均一化された俳優ではなくて、少し悪そうだなというのも入れたし、もちろん二枚目も入ってますが、比較的個性的な美しい人ばかりではないのを集めました。(若者たちを振り返って)ざまあみろ(笑)」

DSCF0097【生身の他者を必要とするのが演劇】

ーーネクストは80年代以降生まれの人たちばかりですが、身体性と精神性の問題点は?それをどう変えようと。

蜷川「いま時代劇の所作とか日本舞踊とか殺陣とかしてるけど、それはすごく一生懸命なんです。でもすぐそばで『コ−スト〜』の稽古してるんだけど、自分たちと近い世代でもう少しマスコミなんかで活躍してる俳優が、そこでどんな稽古してるかというところを素通りして行っちゃう。バカだなと思う。これから何年間か何か月かを、ここで共有しなくてはいけない人たちが通路のすぐ向こう側にいるのに、帰っちゃう。それについてはがっかりしてる。こいつらには他人の生き方や、いろんなものが同時に進んでいることへの“共有したい”というのがない。関心がない。つまり道を歩いているときにぶつかりそうになる人に配慮がないし、自転車でぶつかりそうになっても配慮がないんだ。でもそれは間違いなく時代を象徴してるわけで、インターネットにしろパソコンにしろケイタイにしろ、機械は他者と間接的でも成り立つからね。でも演劇はそうはいかない。

そういうやつらに対して、僕は絶望したらやめりゃいいんだと思う。生身の他者を必要とすることに直面できなければ演劇なんかできないんだから。でも、そういうやつらから新しい時代の感性を持った俳優が生まれる可能性もある。だから僕としては、慎重に大切にその時代を象徴しうる身体、精神というものは残しながら、でも他者への関心がなかったら演劇は成り立たないから、その2つを共存させること、あるいはその方法を、どうやって発見していくのかが僕の任務だと思ってます。

若いやつらには不満はものすごくあるんだ。アルバイトのほうが職業になってる。もちろんエリートでないと演劇できないなんてのは馬鹿げてる。でもどこかで、自分の時間をあるいは経済的なリスクを負わないと何かを得られないというのも確かなんだ。この矛盾をこの若者たちはどう解決していくか、これはもう見応えのあるドラマだね。

彼らはこれからどうなるんだろうね。『コースト〜』を通過したお前の時間はどうなんだと、同じ世代の人間が稽古場で苦労している、それを通過したお前の時間はどうなんだと。それはこれからの稽古でビシバシやって立証させてやる。お前が失った時間はどうなんだと、何人落伍者が出るか見ものだね(笑)」

DSCF0088【欲望を持った言葉を語るために】

ーーゴールドでは本公演までにプロセス公演が行われたが、ネクストでは?

蜷川「初めにカリキュラムを用意するとこいつらは、この人たちは(笑)こなすわけだよ。じゃ、なぜ発声が必要なのか、なぜ身体的な動きが必要なのかということで、これからそれを身に沁みて発見していくわけだ。なぜ「い・え・あ・お・う」は成立するのに、欲望を持って語る言葉はきちっと言えないのか。あるいは、どういうふうにしてそれを作っていくのか、これからできあがるわけです。そこからまた日常的な課題というものに立ち戻ることが必要になってくる。だから昔と逆なんですね。昔は発声の前に言葉がちゃんと身体にあったんだよ。

それに外国と日本の違いもあるね。だから日本的であるということも併せて考えながら、若者をオルガナイズしていきます。もちろん僕も自分を絶対だと思ってませんから、修正したり、自分を問うための反対側の軸として若者を置いてるというのもあるから、その相互作用が出てくるといいなと思ってます。それだけエネルギーがあるじじいであればいいなと思ってる。やらしてみて出来なかったら、あそこを素通りしたことをバカだと言ってやる。バカは長生きしないんだよ。バカが生き残ることはないんです、この世界は」

ーーゴールドとネクストの向き合い方は違いますか?

蜷川「ゴールドは高齢だけど、決して笠智衆ではなく原節子でもなく、僕が40人いるんだから迷惑な話だよな(笑)。自己主張が絶えない。ゴツゴツしたジャガイモがザルの中に入ってる。でも正しいことを言うとすぐに聞いてくれる、その代わりすぐにはできないから、なかなか煮えない新ジャガかな。ネクストの若者たちはこれまで優れた指導者に出会ってないという気がする。その個性を消さないまま、もっともっと違う世界があるという関心を持つともっとよくなる。

怒っちゃダメなのか寄り添うべきか、まだ性格がわからないのをそれぞれ見ながらだから、ものすごく手間暇かかるんだ。その人固有の感性とか生き方を見極めながらダメだしして付き合っていくからね。結局は普遍性ではなく個別性しかないんじゃないかと思うし、個別性をもって接しながら、それを束ねながらで、こちらは疲れ果てます。僕から見たら1対44だからね(笑)。

この前、寺山さんの本を読ませたんだけど、つまんなかった。愚かしくつまんない。勉強してないからね。自分のたいしたことのない経験を絶対だと思ってるから、想像力がないんだ。いいのがいたら抜擢してやろうと思ったのに。他所にはいるからね、そういう役者が。おっこの役を若いヤツはこう捉えるんだと、僕の考えてるイメージと全然違う動きすれば面白いんだけどね。いまの若い人はこういうふうに考えてるんだと思わせてほしい。僕がいっぱいいてもしょうがないんだから」

DSCF0095【場だけは確保しておく】

ーーこれから彼らをどんなところまで育てようと思っているか。

蜷川「まず3年間を考えてます。ゴールドが3年目にすごく面白くなってきたんです。彼らでないと発見できないものが出てきた。このネクストから何人残るかわからないけど、この人たちの時代の固有の空気をちゃんと身体に宿して、なおかつ古典的なーー人間が普遍的に持続してる時間の中で学んだーーものを併せて演じきれる、そういう俳優が何人いるかだね。

最近の僕の関心は「俳優だ」と思っていて、いい俳優が育っていい俳優が戯曲をリードしていく、または逆に戯曲の言葉で俳優が前面に出てくる。どちらにしろ演出家はそこでアジテーターであり続ければいい。と同時に、このゴールドとネクストの2つの劇団を用意することで、若いスタッフ、演出家たちも育っていく。老害のようにはびこっている老人たちは、そういう若者たちの場所を、文化的に追いつめられている中で、少なくとも場所だけは確保しておいてやる。それは先行する世代の演劇人の大事な役割りだと思ってる。だから経済性だけでなくさまざまな問題を抱えながらも、若者の場だけは確保してやること。いずれ若い演出家、作家、スタッフたちが僕らに取って代わって出てくるまでは、それまではなんとか場所は確保しておいてやる。それが野心といえば野心です」

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さいたまネクスト・シアター 開館15周年記念公演

『真田風雲禄

●10/15〜11/1◎彩の国さいたま芸術劇場インサイドシアター(大ホール内)

作◇福田善之

音楽◇朝比奈尚行

演出◇蜷川幸雄

出演◇さいたまネクスト・シアター 横田栄司 原康義 山本道子 妹尾正文 沢竜二

<料金>¥3800

<お問合せ>彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(10時〜19時)

                http://www.saf.or.jp

                                             【取材・文/榊原和子】

この公演のチケットを「えんぶ特選チケット」として、会員の方を対象に割引価格で販売しています。

http://www.enbu.co.jp/kick/shop/index.html

 

『真田風雲禄』制作発表 vol.1  

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【「カッコよく死にてぇ」が合言葉】

彩の国さいたま芸術劇場では、芸術監督である蜷川幸雄の演出で、10月15日から『真田風雲録』を上演するが、その製作発表が9月4日開催された。

この作品は戦国の武将、真田幸村と、それを取り巻く真田十勇士の活躍など描いた青春群像劇で、1962年、安保闘争の時代に、劇作家の福田善之が書き下ろしたもの。「カッコよく死にてぇ」を合言葉に、敗北を覚悟しながらも、大坂(現・大阪)での戦いに青春と命を燃やす若者たちの姿に、生きることの意味を問いかける問題作だ

【無名の44人】

今回この舞台のほとんどのキャストを占めるのは、無名の若手俳優44人で結成した劇団「さいたまネクスト・シアター」。全国からの応募総数1225人の中からオーディションで選ばれた44人で、平均年齢24.8歳という若い世代ばかり。

彩の国さいたま芸術劇場の劇団には、55歳以上の中高年者で結成した「さいたまゴールド・シアター」があり、2006年の創設以来、本公演3回を成功させている。その実績もあるだけに、今回の「さいたまネクスト・シアター」も、その成果が大いに期待できそうだ。

上演する劇場は、彩の国さいたま芸術劇場の大ホールの舞台上に作られる300席のインサイド・シアター。舞台と観客が一体化した密な空間で、蜷川演劇の醍醐味を身近に体験できる公演だ。

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【公共の劇団になるということは】

この日の会見も、大ホールの舞台上で行われた。

まずは出席者の挨拶がある。

財団法人埼玉県芸術文化振興財団の竹内理事長から、設立15年目の記念の年であること、2つの幅広い年代の劇団を持つことは世界でも珍しいということ、そしてこの「さいたまネクスト・シアター」が日本の演劇界に新しい風を巻き起こす存在になってほしいという希望が語られた。

続いて演出家の蜷川幸雄が挨拶する。

「ネクストシアターの構想は、ゴールドを作ったときから当たり前のようにあった。若い人たちと高齢者という2つの劇団は車の両輪です。東京の劇場が有名な売れている俳優たちに場を与えるとしたら、無名の人たちが表現の場を獲得できる、自由に表現できる場も必要ではないか。それをこの劇場なら可能にできる。彼らをどういう形で支援してもらうか、たとえば給料制にするか出来高にするかとか、経済的には難しい問題ではあるけれど、これからの活動で埼玉の市民が支援するのは当たり前だと思ったときに、支援してもらえばいいと思ってます。

ゴールドもそうです。初めは素人の集団が、岩松了さんが本を書いてくれて、この間はケラリーノ・サンドロヴィッチが書いてくれた。これこそ埼玉でしか出来ないことだし、既成の演劇とは違った演劇の幅を広げる作業だと思ってます。ゴールドはスタートからこの間の公演まで沢山メディアにも取り上げてもらえたし、一種の社会現象として支持されるまでになった。

今度のネクストも同じで、他の集団とは違う演劇上の価値を持ち、ユニークな主張を持ち、日本の文化の大事な財産になっているということで、初めて公共のものとして認められていく。ここにしかあり得ない劇団だということで初めて認められる。そういう存在になっていけばいいなと思ってます。

今回取り上げる作品は福田善之さんの仕事で、若い頃に出会って、日本で初めてブレヒト作品のようだという感覚を覚えた。我々は歴史の連続性を学んでもいいんじゃないか。ゴールドのためには若い作家が書く。ネクストのためには高齢の劇作家が作品を提供する。その交差で日本の演劇の欠けているところが埋められるのではないか。

福田さんもよく知ってると思うけど、むかし新演劇研究所というところがあって、下村正夫さんがやってらしたんですが、そこのプロではない役者がやった『どん底』とか素晴らしかった。のちに有名になる杉浦直樹とか内田良平とか、若くて無名で才能のある俳優がそこにはいた。そういう劇団になればいいと思ってる」

DSCF0097続いて作家の福田善之から挨拶がある。

「この作品は何回か桐朋大学でやってるんです。蜷川さんは実はそこの学長です。一度33期生が東京芸術劇場で公演するはずなのにいろいろあって校内でやったんですが、そのときに蜷川さんが学生たちにきめ細かに稽古してるのを見て感心しましたので、今回も文句なしにお受けしました。その33期生が今回のメンバーにもいるし、他にも教え子がたくさんいます。よろしくお願いいたします」

今回の音楽を担当する朝比奈尚行が作曲した「下克上のブルース」に合わせて44名が入場する。続いてゴールドシアターがゲストで登場して代表からエールが送られる。ネクストの44名とゴールドの42名とともに並んだ蜷川幸雄と福田善之へ、記者からの質疑応答が行われた。

vol.2に続く)

さいたまネクスト・シアター 開館15周年記念公演

『真田風雲禄

●10/15〜11/1◎彩の国さいたま芸術劇場インサイドシアター(大ホール内)

作◇福田善之

音楽◇朝比奈尚行

演出◇蜷川幸雄

出演◇さいたまネクスト・シアター 横田栄司 原康義 山本道子 妹尾正文 沢竜二

<料金>¥3800

<お問合せ>彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(10時〜19時)

                http://www.saf.or.jp

                                             【取材・文/榊原和子】

この公演のチケットを「えんぶ特選チケット」として、会員の方を対象に割引価格で販売しています。

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『中国の不思議な役人』稽古場ルポ&白井晃インタビュー vol.2

 by二石友希【白井晃インタビュー】

○禁断の領域、寺山修司

ーーまず寺山修司さんの世界を演出することになって、今感じていることを。

僕にとって、寺山修司さんの世界は禁断の領域だったんです。実は学生の頃に『観客席』(1978年)という芝居に出ていて、それは寺山さんに近かった先輩の岸田理生さんが持ってきてくれた話だったんですが。その前から「書を捨てよ、町へ出よう」とか「家出のすすめ」とか「田園に死す」など、寺山さんの世界は本で読んだり映画もたくさん見ていて、怖さもあったけど、憧憬の世界でもあったんです。でもその『観客席』の現場では、丸坊主の俳優だらけで(笑)、さすがに憧れはあっても簡単に入れない世界だなと実感しました。
ただ、虚構と現実の逆転とか、見る側と見られる側の逆転とか、そういう演劇的面白さを教えてくれたのは寺山さんだし、同じ時代の唐十郎さんの芝居もそうですが、どこまでがフィクションかわからない怖さと面白さがあったことは確かで、大きな影響を受けました。でもその面白さをそのあとに続く僕たちは継承しきれなかったし、彼らほど演劇で社会に斬り込むことはできなかった。だから、いつか改めて寺山さんのしたことを検証してみたいというのは、ずっと僕の中にあったんです。
それからこの作品は、寺山さんが初めてパルコ劇場、当時の西武劇場という商業演劇と提携した作品で、出演者もスタッフも当時の一流のアーティストと組んでやったものです。ある意味ではファッション的な公演でもあったと思うけど、でも寺山さんらしい毒というか虚構を社会に突きつけるものがあったはずで、我々も、今だからこそ、そのフィクションを必要としているのではないかと思うんです。

ーーそんなふうに寺山世界をよく知っている白井さんが、では今回、どう演出するかですが。

どんなに憧憬があったとしても、僕は寺山修司の方法を真似ることはできないんです。真似ちゃいけないですしね。あの世界観を作っていたJA・シーザーさんの音楽や特殊な肉体たちを模倣するわけにはいかない。なぜならば、それは僕の肉体にない感覚ですから。むしろ我々がそのあと30年間演劇をやってきて、今、あの作品にもう一度立ち向かおうとしたときに、どう冒険できるか、どんな世界が作れるのか、そこに現在の演劇人が背負ってるものが出てしまうと思うし、それでいいと思ってるんです。もしかしたら昔の寺山演劇を知ってる人には失望されるかもしれないけど。
寺山さんは当時「我々のやってることはサーカスであり見世物小屋だ」と言って、サーカス芸とか手品とか見世物を舞台上で見せてくれたけど、それは今回は全部排して、30年以上の年月を経たこの同じ劇場で、僕らはどういう見世物を観せられるのだろうと。それはあのときに寺山さんがやろうとしたことの意味を純粋に問い直すことだと思っているんです。その結果として出てくるのは、演劇は肉体と文学と美術と音楽と、そういう全ての総合芸術なのだということを改めて思い出すことだし、同時に演劇という枠を取り払うことで、それはかつて僕がいちばんやりたかったことだった。そこへもう一度戻る感覚があって、今とても楽しいんです。
たとえばト書きを読んでても、意味がわからないというようなト書きが書いてあると、そこをどう肉体とか動きで見せてやろうか、それを考えるのがすごく楽しい。寺山さんの言葉の断片は1つ1つが強いから、それはそれで解決しなくていいし、意味はわからないままでいい。もちろん物語の結論は自分なりに明確に作ってありますが、観客がどういう意味にとってもいいように作りたい。

○人形のコレクションではなく

ーー寺山さんの世界は、出てくる人間がいわば人形化していたのが印象的ですが。

当時、寺山さんの舞台に僕が感じていたのは、あんな濃密な世界なのに汗を全然感じなかったことで、ところが唐さんは汗とつばが飛び散る世界で(笑)。でも僕は寺山さんのほうが体質的に好きだったんです。それから寺山さんは出演者を人形だと思っていたから、残酷なことも平気でできていた。入ったばかりの女の子でも必要ならすぐ「脱いで」と言うし、新高恵子さんは足が綺麗だからそこを見せるのが当然だという感じで。伊丹十三さんにもお面をかぶらせたままでしたからね。自分が観たい人だから山口小夜子さんに出てもらう。いわばコレクションだし、まさにチャイナドールの世界ですよね。

ーーでも白井さんはそこに血を通わせたいわけですね。

僕は、人間も観せたいし物語も観せたいと思ってます。麦がなぜこのドラマの中に入っていったのか、麦にとって花姚とは何なのか、役人はどういう存在なのか、最後に役人が崩壊して復活するのはどういう意味なのか。
僕の構図では、少女は人形だったのが麦に見られたことによって人間になって、この世界を一緒に歩いていくんですが、その途中で役人という巨大なカラクリ人形みたいな存在に出会う。役人は少女に恋をするんですが、恋をしたことで彼は人間になってしまって崩壊する。少女は役人の愛をもらって女になり現実を生きはじめる。そして麦はその現実の前にはじき飛ばされる、という考えかたなんです。

ーーそれを演じるキャストは、新人も含めて楽しみな顔ぶれが揃いましたね。

花姚の夏未エレナくんとか麦の田島優成くんは、新人そのものですから、どんどん鍛えないといけない段階です。ただ、演劇というのは劇場空間の中に実際に入ったときに、出ている役者も変わるので、とくに今回は寺山世界ですから、そのマジックに期待しています。
役人の平幹二朗さんは、そのままで役人のイメージを出せるかたで、伊丹十三さんは本当にカラクリ人形のように、ずーっと動いていたそうですが(笑)、平さんには普通にやってもらおうと思ってます。秋山菜津子さんは新高恵子さんのやった女将校で、押さえるところを押さえてくれる人で安心してます。岩松了さんは、ご自分が演出する稽古場ではすごく怖いそうですが、とても素直な役者さんです(笑)。

ーーそういう方たちの存在で、大人とか世界そのものの怖さがうまく出てきそうですね。現代も子どもに優しくない社会で、そういうリアリティもあるし、寺山さんはいろいろな点で時代を先取りしていたんだなと思います。

これを発表した当時は、ちょうど日中国交が成立したばかりの時期で、文化大革命のあとの顔の見えない中国に怖さを感じていた時代でしたが、寺山さんは役人というものに「4000年の滅びない中国を表したいわけではない」と。また、男性というもののダイナミズムの象徴でもない。役人の権力を持ちながらプライベートとの間で揺れ動くそのさまを出したいと、言っているんですね。僕が描きたいのはまさにそこだし、そこから現代の我々に通じる世界が見えてくると思っています。

 

『中国の不思議な役人』

●2009/9/1210/4◎パルコ劇場

作◇寺山修司

演出◇白井晃

出演◇平幹二朗 秋山菜津子 岩松了 夏未エレナ 田島優成

<料金>¥8400  学生券(当日指定席引き換え)¥4500

<お問合せ>パルコ劇場 03-3477-5858
http://www.parco-play.com/

【取材・文/榊原和子】

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