稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

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蜷川幸雄、7度目のハムレットに挑む!『2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」』

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蜷川幸雄が率いる若手演劇集団「さいたまネクスト・シアター」、1年ぶりの最新作は蜷川幸雄のが何度も挑戦しているシイクスピアの『ハムレット』。
これまで平幹二朗(1978年)、渡辺謙(1988年)、真田広之(1995
年)、市村正親(2001年)、藤原竜也(2003年)、マイケル・マロニー(2004年)という数多くの俳優 たちが演じて来たハムレットを、2012年を生きる無名の若者が演じる。

時代とともに変容を遂げるのが蜷川ハムレットの面白さで、今回は物語の中で登場する父親を失った3人の若者(ハムレット、レアティーズ、フーティンブラス)に着目し、語るべきテーマを失った現代にふさわしい作品を生み出していく。 

さいたまネクスト・シアターとは?
2009年に蜷川がオーディションで選んだ若き無名俳優たちによって結成された「さいたまネクスト・シアター」は、第1回公演の『真田風雲禄』でそのエネルギーを爆発させ、第2回公演『美しきものの伝説』で、結成2年目にして第18回読売演劇大賞優秀作品賞、蜷川幸雄が同最優秀演出家賞を受賞するなど、高い評価を得てきた。

だが「集団は3年で腐る。だから新しい血を入れていく」という蜷川の厳しい方針で、2011年3月に追加メンバーのオーディションを実施する。応募者総数517名から蜷川が選抜したのは、現代を象徴するような一見無表情で自己主張が判りにくい12名。蜷川は現代の若者を嘆いたり拒絶したりするのではなく、彼らのスタイルの違い、欲望のあり方の違いを取り込むことで、時代を象徴する作品を作りたいと考えているのだ。2012年の若者、「さいたまネクスト・シアター」の29名と対峙する蜷川がどんな作品を生み出すのか、興味は尽きない。 

  

第1回公演【真田風雲録】_(C)宮川舞子_0224第2回公演【美しきものの伝説】_(C)宮川舞子_1334
  第1回公演『真田風雲禄』       第2回公演『美しきものの伝説』   
 舞台撮影/宮川舞子


こまどり姉妹が特別出演

またこの公演のもう1つの話題は、伝説の演歌の女王「こまどり姉妹」の特別出演。
13歳で北海道から上京し、浅草で流しの歌手として活動を始めたこまどり姉妹は、60年代の高度経済成長期に、日本を代表する演歌歌手の座に就いた。

蜷川が「上演中に突然、三味線を持ったこまどり姉妹が歌いながら来る。この時ぼくらの舞台は拮抗できるのか?」と、1973年上演の『泣かないのか?泣かないのか?一九七三年のために?』で演出ノートに書いたように、蜷川にとって「こまどり姉妹」は自分の仕事を照らすもう1つの目。「こまどり姉妹に代表される生活者のまなざしに自分の作品が耐えられるのか?」と常に考えて来た彼にとって、その最もラディカルな手法が舞台上にこまどり姉妹を出演させることである。
「2012年の蒼白の少年少女たちが演じる ハムレット」と「こまどり姉妹」は拮抗しうるのか? 
蜷川の40年越しの想いが結実したャスティングがついに実現する。 


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関連企画で稽古場見学会

彩の国さいたま芸術劇場では、この公演の稽古場に埼玉県内在住・在学の中学生・高校生限定 で稽古場見学会を開催する。

●日 時 

2月5日(日)午後1時から約1時間)

※稽古場見学会終了後、蜷川幸雄・出演者との質疑応答を予定  

●会 場 

彩の国さいたま芸術劇場 大稽古場 

●定 員 

30名(参加費無料)

●対 象 

埼玉県内在住・在学の中学生・高校生 

●申し込み方法 

ハガキに以下の事項を記入の上、締切日までに応募。 

※応募者多数の場合は抽選。この場合、当選通知の発送をもって抽選結果の発表に代えます。 

 【記入事項】 

1、郵便番号・住所 2、氏名(フリガナ)  3、年齢  4、学校名・学年  5、電話番号 

6、希望人数(ハガキ1枚につき2名まで)、2名で応募の場合は2名の2〜4も記入。 

【応募締切】 

2012年1月27日(必着)

 【応募先】 

〒338-8506 さいたま市中央区上峰3-15-1 

彩の国さいたま芸術劇場 「ハムレット」稽古場見学会係 

●問い合わせ 

彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(休館日を除く10:00~19:00)

公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団Webサイト 
http://www.saf.or.jp/info_archive/info_1112_01.html


さいたまネクスト・シアター第3回公演 

『2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」』 

作◇W.シイクスピア 

演出◇蜷川幸雄 

翻訳◇河合祥一郎

出演◇さいたまネクスト・シアター 

浅場万矢、浦野真介、大橋一輝、川口覚、熊澤さえか、小久保寿人、佐々木美奈、周本えりか、 

鈴木彰紀、朕紗友、手打隆盛、土井睦月子、隼太、深谷美歩、堀源起、松田慎也、茂手木桜子、 

露敏、内田健司、内田真莉奈、岡部恭子、長内映里香、河内耕史、白川美波、高橋クレア、 

高山皓伍、平山遼、何嘉晃、吉武遥、中西晶 

こまどり姉妹(特別出演) 

●2/20〜3/1◎彩の国さいたま芸術劇場 インサイド・シアター(大ホール内)

〈料金〉4000円(全席自由) 

〈問合せ〉彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(休館日を除く10:00~19:00)

http://www.saf.or.jp/arthall/event/event_detail/2012/p0220.html




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輝く北の星を。こまつ座『十一ぴきのネコ』舞台レポート

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登場するのは十一ぴきのネコたち。
お腹を空かせて、へろへろになった彼らは鼠殺しのにゃん作老人(勝部演之)に教えてもらった北の星の下にある大きな湖にいる大きな魚を目指して、いざ進む。
原作は馬場のぼるの絵本『11ぴきのねこ』で1971年に井上ひさしが戯曲化した作品である。
11匹の野良猫たちが大きな魚を目指して進んで行くという冒険性、仲違いしながらも絆を深めていくという物語性、それこそ絵本を読む子供みたいな気持ちになって楽しめた。
登場するネコたちがそれぞれ本当に可愛い。

ただ、可愛いだけでは決して終わらないのがこの戯曲の中にいる井上ひさしだし、演出の長塚圭史である。
楽しい音楽や、韻を踏んだ楽しい台詞の中に、すっと社会を風刺する鋭く尖った刃が見える。
最後の結末はその風刺の刃が特別な切れ味を発揮し、思わず息を呑んだ。
絵本のような物語の中にあって、時折姿を見せるそんな暗さがあったからこそ、今回の長塚圭史演出が誕生したのかもしれない。
井上ひさしの戯曲、しかも音楽劇で“子どもとその付き添いのためのミュージカル”と副題がついた作品を、ゆらゆらと揺れるブラックな精神世界をここ最近表現することが多い長塚が演出するというのは意外だったのだが、結末を見て大いに納得した。

ただ甘いだけでない、ほろ苦さを感じてもらうということも含めて、副題の通り子どもに見せたいと思う音楽劇だ。
この日の客席にも何人か子どもがいたのだが、まず開演前の時間からわくわく感を演出してくれる。
徐々にネコたちが客席に現われて、「お腹が空いたにゃー」などと口にしながら、客席にいる子ども達に自分のふわふわのしっぽを触らせたり、笑顔で話しかけたりしている。
そうやって構ってくれたネコたちが、ふと気付くと舞台の上で冒険の旅に出るのだから、子どもが見てもきっと飽きがこない。もちろん大人も楽しめる。

北村有起哉の軽やかで、口も達者、頭の回転の速いにゃん太郎を中心に、ほぼ同年代の俳優たちが集まって、井上戯曲を全力疾走で演じきる、その勢いが心地良い。
にゃん作老人から受け継がれた地図のように、また次の世代へと井上作品が受け継がれていくのを感じた。

みんなで力を合わせれば、北の星の下にある湖にだって辿り着けるし、大きな魚を捕まえて食べることだってできる。
辛い現実は必ずどこかに転がっているが、あの北の星の輝きも忘れずにいたい。

 

 井上ひさし生誕77フェスティバル2012
『十一ぴきのネコ』

作◇井上ひさし
(馬場のぼる原作・こぐま社刊)
演出◇長塚圭史
音楽◇宇野誠一郎 荻野清子
出演◇北村有起哉 中村まこと 市川しんぺー 粟根まこと 蟹江一平 福田転球 大堀こういち 木村靖司 辰巳智秋 田鍋謙一郎 山内圭哉 勝部演之

●1/10〜31◎紀伊國屋サザンシアター
●2/5◎川西町フレンドリープラザ(山形)
●2/11・12◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

<料金>
一般7,800円 学生(高校生以上)5,800円 子供(小・中学生)4,800円

<HP>
こまつ座 
http://www.komatsuza.co.jp/

【文/岩見那津子】


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野田秀樹のニューヨーク公演が開幕!『THE BEE』

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野田秀樹(劇作家・演出家・俳優)が、
『THE BEE』で、36年間の演劇人生で初のワールドツアーを敢行中である。

2006年ロンドンで初演された『THE BEE』(英語版)は、野田と英国人俳優との5回におよぶワークショップを経て創られた作品で、1回目のワークショップは2003年、イラク戦争の後に行われた。

9.11から続く「報復の連鎖」を目の当たりにした野田は、20代で読んだ筒井康隆の短編小説『毟りあい』をワークショップの題材に使うことを考え、参加した英国人俳優が、何も言わなくても、現在の社会状況について語りだすのを見て、「やはり『毟りあい』は世界に通じるテーマだ」と確信し、舞台化を決定。
ローレンス・オリヴィエ賞受賞の英国を代表する名女優キャサリン・ハンターを迎え、2006年にロンドンで初演(英語上演)して、大きな衝撃と話題を巻き起こすと同時に高く評価され、現地の新聞評で最高星5つ星を取るなど、大絶賛を受けた。

翌年の2007年には日本でも上演、英語版と新たに制作した日本語版を連続上演して、その年の読売演劇大賞など演劇賞を総なめにして、演劇史に残る傑作となった。

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左:野田秀樹、中央後:キャサリン・ハンター、
中央手前:グリン・プリチャード、右:クライブ・メンダス
 

作品の内容は、平凡なサラリーマンが妻子を人質に取られたことから復讐の鬼と化し、加害者の妻と子を監禁してしまう。その緊迫した状態の中で、被害者が加害者に転じていくプロセスや、互いに暴力を加えていくことで繰り返される「復讐の連鎖」を鋭く描き出している。英語版では、サラリーマンを英国女優のキャサリン・ハンターが演じ、監禁される妻を野田秀樹が演じたことでも、演劇界に新鮮な衝撃を与えた。

 

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グリン・プリチャード、野田秀樹、キャサリン・ハンター、クライブ・メンダス


今回のワールドツアーは1月5日が初日で、野田の「9.11から10年を経たニューヨークで、この作品を上演したい」という思いによってニューヨークからスタート。世界各国から実験的なコンテンポラリー作品を招聘する演劇フェスティバルの「Under the Radar Festival(アンダー・ザ・レイダー・フェスティバル)」のオープニング・プログラムとして、1月15日まで上演される。

その後、1月24日から2月11日まで初演を行ったロンドンのソーホー・シアターでも、日本人の作・演出としては異例の約3週間の公演を行う。また、2月17日から19日まで香港で演劇フェスティバルへの正式招待作品として上演。そのワールドツアーの掉尾を飾るのが日本での公演で、2月24日から水天宮ピットでの東京公演を予定している。


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カーテンコール


【ニューヨークでの野田秀樹】

今回のワールドツアーおよびこの『THE BEE』という作品について、野田は初日のレセプションで以下のように語った。

ーーニューヨークで公演することについて。

初演のロンドン(2006年)の稽古の時から、ニューヨークでこの作品をやりたいと話し合っていた。ニューヨークは世界を引っ張っている街だし、この『THE BEE』という作品は、いい意味でも悪い意味でもニューヨークにふさわしい作品だと思っていました。

ーーこれからの日本の演劇について。

蜷川さんは、蜷川さんのギリギリまでやっている。僕も、今の自分のやれることはぎりぎり限界までやってきた。これからの若い人は、今の自分より、もっと先にいけると思う。僕も最初は一人で海外に飛び込んで、海外の人たちと始めた。間違っていることもいっぱいあったけど、続けてみることで今の成果に繋がった。

ーー次に考えてることは?

今後は、日本でやってる規模の大きい作品を日本のカンパニーで海外に持っていきたい。

ーーキャサリン・ハンターについて。

ここまでこれたのは、単なる通訳がいれば話が通じるということではなくて、文化的な翻訳者としてキャサリン・ハンターが、一緒に作品を作ってくれるということが非常に大きかった。


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野田秀樹とMark Russell(マーク・ラッセル)アンダー・ザ・レイダー・フェスティバル芸術監督

また、この9.11とイラク戦争に触発された世界情勢の鏡のような作品を、ニューヨークで上演することについても、以下のように答えている。

「9.11から10年を経てもビンラディン殺害のニュースを見て快哉を叫ぶニューヨーカーの姿を見て、10年間何も変わっていないアメリカの姿に愕然とした。しかし、その映像を見て、苦々しく思っているアメリカ人もいるはず。ぜひこの作品をニューヨークで上演したい、いろいろな思いを抱えているニューヨーカーに観てほしい」

    

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【初日開幕】

ニューヨーク時間、1月5日20時45分に、『THE BEE』のニューヨーク公演が開幕した。

ジャパンソサエティ内オーディトリアムの270席の客席は満員御礼、後半になるにつれ、観客はどんどん作品に引き込まれ、静かに固唾を飲んで観ている。

カーテンコールでは、温かい拍手に包まれ、終演後は興奮冷めやらぬ様子で、テレビカメラなどのインタビューに答える観客の姿があった。
 

【終演直後の野田秀樹のコメント】 

前日のドレスリハーサルが、思っていたような出来にはならなかったので、突然、自信を無くしてしまったんだよね。時々あるんだよね。そういうこと。それで、昨日の夜は眠れませんでした。

今日の初日の芝居は、非常に良い出来だったので、今までやってきたことが間違いなかったと確信できました。

あとは、ニューヨークのお客さんが今日の観客たちの評判を聞き、この作品を観にきてどんな反応をしてくれるのかが楽しみですね。
 

【観客のコメント】(若い女性のニューヨーカーが直接野田に話してくれたコメント)

この作品は、今のニューヨークには、必要な作品。最近のニューヨークでは、テクニカルなものによる作品が多いので、『THE BEE』のような、役者の身体や、シンプルなセットでみせる 演劇的な芝居は、絶対に多くの人が観るべきだと思う。


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English Version 東京公演(英語上演・日本語字幕付き)

『THE BEE』

作・演出・出演◇野田秀樹

出演◇キャサリン・ハンター、グリン・プリチャード、マルチェロ・マーニ

●2/24〜3/11◎東京 水天宮ピット 大スタジオ

〈料金〉5000円 25歳以下2000円(枚数限定)

〈問合せ〉東京芸術劇場 03-5391-3010

http://www.geigeki.jp/


【文/榊原和子 資料提供/東京芸術劇場 Photo/Michel Delsol】

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