稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『ストリップ学園』

ホラーでエンターテイメントな市村・大竹の『スウィーニー・トッド』

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ホラーでサスペンスでグロテスクな復讐劇、ソンドハイム作詞・作曲のブロードウェイ・ミュージカル『スウィーニー・トッド』が、4年ぶりに再演された。
 

前回は2007年1月、主演は今回と同じ市村正親と大竹しのぶ。
息の合った2人の芸達者ぶりと、宮本亜門のテンポを押し出した演出が、この難しい作品を上質のエンターテイメントに仕上げたと、高い評価を受けた。

今回は田代万里生がアンソニー役で初参加。
そのほかは前回と同じ出演者で、よりいっそうパワフルにドラマティックになり、このミュージカルの奥深い面白さを伝える舞台となっている。

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物語の舞台となるのは19世紀末のロンドン。
好色なターピン判事に妻を横恋慕され、無実の罪を着せられ、流刑にされた床屋のスウィーニー・トッド。若い船乗り
アンソニーに命を救われ、15年ぶりに街に戻ると、妻はターピンのせいで自殺、娘のジョアンナもターピンに養育されていることを知る。

彼は復讐を誓い、パイ屋のラヴェット夫人の2階に店を開くと、腕のいい彼の店は大繁盛。
そんな彼の素性を疑うものが現れると、ひげをあたるふりをして喉をかき切っていく。

一方、ミートパイがロンドン一まずいことで有名なラヴェット夫人は、スウィーニーが殺した人間の肉でパイを焼くことを思いつく。人肉パイはこのうえもなく美味でパイ屋は大繁盛。

その頃、船乗りのアンソニーは偶然知りあったジョアンナと恋に落ち、二人は駆け落ちを企てるが、取り押さえられてジョアンナは精神病院に隔離されてしまい……。


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冒頭の登場人物たちによる迫力のオープニングナンバーのあと、舞台センター上段に市村正親のベンジャミン・バーカー=スウィーニーが登場。圧倒的な存在感で一気に舞台に引き込む。

その後、舞台は18世紀末のロンドンの街に転換。大竹しのぶ演じるパイ屋のラヴェット夫人がパイ屋のセットに登場。薄汚いキッチンで、「ロンドン一まずいパイ」を陽気に歌う。 

パイ屋にやってきたスウィーニーの素性を見抜いた夫人は、かつて彼が使っていたかみそりを返し、悪徳判事のターピンに奪われた妻の悲しい末路と、いまだに幽閉されている彼の娘のことを話す。
彼は怒り、悲しみ、復讐を誓う。

愛する娘を取り返すため復讐に燃える市村スウィーニー、その姿には人間味さえ浮かぶが、同時にかみそりを手にしたときの狂気に満ちたその表情は、観るものに恐怖さえ感じさせる迫力が滲み出る。

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ソニン演じる娘ジョアンナは、幽閉され悲しみに暮れながら窓の外を見る毎日。
美しいソプラノが奏でる悲しみに満ちたメロディーと、その愁いの表情には胸が締め付けられるほど。

そんなジョアンナに恋する船乗りのアンソニーは、今回初参加の田代万里生。
彼女をターピン判事から助け出すと誓う場面は、血なまぐさい復讐劇の中では、救いさえ感じさせるピュアな恋の美しさ。また、アンソニーが彼女へ情熱的に歌いかけるシーンには、青年の真っ直ぐな愛情が爽やかに描きだされる。
その一方で、スウィーニーを殺人者と知りながら愛するラヴェット夫人の、最初こそ驚きおののくものの、その肉を使えば美味しいパイが焼けると大喜びをする姿の奇妙さに、この物語ならではの摩訶不思議な魅力が浮かび上がる。
 

そのほかにも、武田真治が演じる頭の足りない青年トバイアスは、焦点の合っていない目線や子供っぽい口調などが巧みで可愛いらしさを感じさせるし、謎めいた呪いの言葉をまき散らす乞食女のキムラ緑子の存在感、ターピン判事の安崎求や小役人ピードルの斉藤暁の悪役ぶりなど、前回と同じ出演者たちがより役柄を深めて、舞台に厚みを加えている。
 

難曲で知られるソンドハイムのミュージカルだが、キャストたちの歌唱が揃ってみごとなことも、このミュージカルの楽しみの1つとなっている。


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ブロードウェイミュージカル

 『スウィーニー・トッド』

作詞・作曲◇スティーブン・ソンドハイム

脚本◇ヒュー・ホィーラー

出演◇市村正親、大竹しのぶ、キムラ緑子、ソニン、田代万里生、安崎求、斉藤暁/武田真治 他

●5/14〜6/5◎青山劇場

〈料金〉S席12600円 A席8000円 (税込)

〈問合せ〉ホリプロチケットセンター  03-3490-4949

http://hpot.jp/


【文/榊原和子 取材・撮影/冨田実布】




『飛龍伝』などつかこうへい名作上演。つか劇団解散公演


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昨年7月に亡くなった劇作家つかこうへいが、最後まで力を入れていた「北区つかこうへい劇団」の解散公演「前進か死か」が始まった。

5月から7月まで3会場で8本が上演されるが、その第1弾『寝盗られ宗介』『熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン』が、5月3日〜6日まで北斗ぴあ・ペガサスホールで熱い空気の中で上演されたばかり。


第2弾は6月1日から紀伊國屋サザンシアターで上演。つか氏の代表作ともいうべき飛龍伝シリーズ3本「ALL THAT 飛龍伝」が上演される。

その3本は『初級革命講座 飛龍伝80』『飛龍伝90』『飛龍伝2000』。
『初級革命講座 飛龍伝80』には、北区つか劇団1期生でドラマ『SP』などに出演している神尾佑が主演。
また2期生で何本か劇団公演の主役をつとめた吉田智則、何度かヒロインを演じたことがある渋谷亜希が出演する。


第3弾としては、6月22日から、滝野川会館で『売春捜査官』『ロマンス』『蒲田行進曲』を上演。
名作『蒲田行進曲』は、つかの代表作のほぼすべてに出演し、演出助手の経験を持つ武田義晴が初の「銀ちゃん」役に挑む。
ヤスに抜擢された第15期生の相良長仁、小夏に第10期の木下智恵というキャスティング。他の2作のメインには那須野恵、とめ貴志らがつとめる。
 

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この公演に先だって、4月25日に解散公演の会見が行われた。
会見場所は劇団の活動拠点だった北区の田端文士村記念会館。さまざまな思い出がある場所に、30人近い劇団員とOB、OGが一同に会した。
そして神尾佑を先頭に、それぞれがこの公演にかける思いと、解散への気持ちをぶつける。
 

神尾「つかさんの作品は12年ぶりです。僕の原点であるつか劇団で、精いっぱいやりたい。解散は、“故郷”を失うことに等しい。劇団を飛び出して初めて分かったのは、それまではつかさんに依存していたということ。演劇の一時代を築いたつかさんも、1人で時代を切り開いた。僕らはそこまでいかないにしても、自分で自分の道を切り開いていかないといけない。劇団のみんなもがんばってほしい」

吉田「解散は私にとって『学びや』を失うということ。非常に寂しく残念です。芝居の“し”の字も知らなかった私に、芝居の楽しさを教えてくれたつかさんと、劇団の本拠地、北区の方々に心からお礼を申し上げたいです」
 
この日、解散する劇団員の有志で新しく演劇集団を発足させることも発表。

新団体として「★☆北区AKT SATGE」を旗揚げする予定。これまでと同じく北区が本拠地で、つか作品だけでなく、オリジナル作品も上演する。

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北区つかこうへい劇団 解散公演「前進か死か」


第二弾「ALL THAT 飛龍伝」

作◇つかこうへい

演出◇北区つかこうへい劇団

出演◇【初級革命講座 飛龍伝80'】神尾 佑、吉田智則、渋谷亜希

【飛龍伝90'】高野 愛、小川智之、北田理道、渡辺 昇 他

【飛龍伝2000】船越ミユキ、逸見輝羊、川畑博稔、時津真人 他

●6/1〜12◎紀伊國屋サザンシアター

〈料金〉3500円


第三弾「売春捜査官」「ロマンス」「蒲田行進曲」

作◇つかこうへい

演出◇北区つかこうへい劇団

出演◇【売春捜査官】那須野恵、とめ貴志、松本有樹純、蟹田光国

【ロマンス】杉山圭一、伊澤 玲、南野真一郎、久保田 創、高畠麻奈 他

【蒲田行進曲】武田義晴、相良長仁、木下智恵、岩崎雄一、吉田 学 他

●6/22〜7/3◎滝野川会館大ホール

〈料金〉2000円


〈問合せ〉北区つかこうへい劇団 03-5924-1127


【取材・文/榊原和子】 



 

稲垣吾郎の、情に篤い『ぼっちゃま』

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稲垣吾郎×鈴木聡で送る舞台『ぼっちゃま』が開幕した。

両氏が顔を合わせる作品は『謎の下宿人〜サンセット・アパート』(03年)、『魔法の万年筆』(07年)に次いで、早くも三作目となる。


時は、昭和25年。終戦後の東京郊外、とある旧家が舞台となる。

稲垣が演じるのは、主の井上幸一郎=“ぼっちゃま”。

父親の遺した骨董品を売って、酒に女性にと自由気ままに暮らしている。

そんな彼を唯一理解し、支えるのが“ばあや”の千代(白石加代子)。

二人を中心に、姉弟たちとその連れ合い、恋人、出入りの骨董屋や八百屋、ご近所さんも登場して、物語が展開される。 

ぼっちゃまの強烈ともいえる美意識や思想により、翻弄される彼ら。それぞれの事情を抱えつつも、騒ぎに巻き込まれていく。 

独自の愛と美学を貫く、“ぼっちゃま”が繰り広げる、粋でオシャレで滑稽で哀しい、人生そのものなドラマとして描かれている。


演出に河原雅彦を迎え、さらに強力コラボとなった今作。

稲垣が頼りなげながら、情に厚い主人公を好演している。

笑えて、温かい気持ちになれる作品だ。 



パルコ・プロデュース

『ぼっちゃま』


作◇鈴木聡

演出◇河原雅彦

音楽監督&ピアノ◇佐山雅弘

出演◇稲垣吾郎 白石加代子/高田聖子 中村倫也 大和田美帆 谷川清美 福本伸一 小林健一/柳家喬太郎/梶原善


●5/7〜6/5◎パルコ劇場 

〈料金〉 9,000円(全席指定・税込)

〈問い合わせ〉パルコ劇場 03-3477-5858 


●6/9〜6/13◎シアター・ドラマシティ

〈問い合わせ〉キョードーインフォメーション 06-7732-8888


【文/桜井麻子】



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