稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

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自分の内側への旅。『ハーパー・リーガン』

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ハーパーという中年にさしかかった1人の女性の、これは内面の旅を描いた物語である。

主人公のハーパーは旅に出る。家庭も仕事も放り出して。
父親が死にかけているというやむにやまれぬ思いがあるとしても、それは彼女にとって、いつかはしなければならない旅だった。
物語は、死を前にした父親に会いに行きたいと考えたハーパーの、それから2日間の出来事を、行く先々で出会った相手との対話形式で展開していく。


ハーパーの出奔のいわばきっかけになる休暇を与えようとしない支配的な上司、受験期でナーバスになって母親と対立する娘、幼児ポルノを撮っていたという疑いで仕事に恵まれず屈託のある夫。
そんな息詰まるような日常の中で、ふと口をきいた1人の少年とのやりとりや、頭を直撃しそうになったビルの瓦礫が、ハーパーの心を突き動かし、一気に父親のもとへの駆り立てる。だがハーパーが着いたときには父親は亡くなっていた。深い喪失感、そこから本当の意味でのハーパーの心の旅が始まる。

父親の病院を出てから、ふらっと立ち寄った朝のパブで、彼女は酔っぱらったジャーナリスの男から革ジャンを手に入れることになる。それまで地味で目立たない身なりだった主婦のハーパーが、身に添わない革ジャンをまとったときから意識的な変化が始まる。
出会い系サイトで知り合った中年男とホテルに行き、美しい少年に彼のあとをつけていたと告白する。一見、性的には抑圧的にも見えたハーパーが、次第に周囲にとってもセクシャルな存在になっていくのが興味深い。 

小林聡美のハーパーと母親役の木野花以外の出演者は、それぞれ2つの役をかけもちしていて、たとえば夫役の山崎一は出会い系サイトでハーパーとホテルに行く中年男も演じていたり、娘のサラ役の美波は病院で父親を看取ってくれた看護師にも扮している。その役割り分担が、演じる2つの役の本質を照射し合って、そこからまた見えてくるものがあって面白い。

結果的には、ハーパーは自分の家庭に戻っていき、娘や夫との関係を新たに始める。もう以前のような良い妻であり母ではないハーパー。だからこそ築ける新しい関係があることを示唆して物語は終わる。

人間同士を結びつけているさまざまな関係性と、それゆえの孤独や揺れを提示するサイモン・スティーブンスの翻訳劇を、長塚圭史が演出。構成も美術も、演じ方も、シンプルにそぎ落とされた空間だからこそ、会話と感情がくっきりと浮かび上がり、観る側にも深く問いかけてくる作品だ。

 

 

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『ハーパー・リーガン』

作◇サイモン・スティ−ブンス

演出◇長塚圭史

出演◇小林聡美、山崎一、美波、大河内浩、福田転球、間宮祥太郎、木野花

●9/4~26◎パルコ劇場  

●9/29◎水戸芸術館ACM劇場  

●10/2〜3◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

〈料金〉

東京/7500円

水戸/S席6500円 A席6000円 B席4500円

大阪/S席7500円 A席5500円

〈問合せ〉

東京/パルコ劇場 03-3477-5858 http://www.parco-play.com/web/stage/information/harpar/

水戸/水戸芸術館 029-227-8123

大阪/キョードーインフォメーション 06-7732-8888

 

【文/榊原和子】

早乙女太一の剣が舞う公開殺陣稽古。『薄桜鬼 新選組炎舞録』

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テレビアニメとして今年4月に放送され話題となったゲーム『薄桜鬼』が、若手女形役者として人気の高い早乙女太一主演で舞台化されることになった。
『薄桜鬼』は、
08年に発売され女性ユーザーからの支持が高い恋愛アドベンチャーゲーム。新選組の土方歳三と、父親を捜す蘭方医の娘、雪村千鶴の出会いをきっかけに、新選組の男たちの夢と生き方を描いていく。

主演の早乙女太一は、大衆演劇の劇団朱雀の二代目座長として、その美しい女形ぶりや見事な立ち回りなどが魅力の役者だが、昨年は劇団☆新感線に客演して好評を博すなど、そのフィールドを広げている。また他の出演者としては、映像や映画でも活躍している黒川智花や木村了、そしてロックバンドORANGE RANGEのボーカルRYOなどが共演する。

今回の舞台は10月1日から17日まで天王洲の銀河劇場で上演されるが、公演に先だって、9月7日、都内の稽古場で殺陣稽古の様子が、取材陣に公開された。

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【囲み会見の挨拶】

早乙女太一「僕は土方歳三をやります。稽古の最初の1週間くらい出られなかったんですが、稽古場がすごく和気藹々としてて熱気があって楽しくやらせていただいてます。メンバーが若い人ばかりですから、すごく刺激を受けてます。新しい時代劇という感じの芝居だと思いますので、1回1回大事にやっていきたいです」

黒川智花「私は雪村千鶴という女の子です。周りが男のかたばかりで最初は緊張したのですが今はもう慣れました。あと目の前で着替えされるのにびっくりしました、できればそれはやめてほしいなと(笑)。殺陣は、間違えたら刺すと先生に言われてますのでがんばります」

木村了「早乙女くんたち新選組の前にたちふさがる風間千景です。楽しいですし、みんな仲いいです。太一くんとの殺陣が多いのですが、その楽しさが見てるかたに伝わればいいなと思ってます」

川岡大次郎「僕は山南敬助という新選組の副長です。のちに物語のキーになる役でも登場します。太一くんと了くんは息が合ってるみたいで殺陣も楽しそうにやってますね。僕もここまで殺陣が満載なのはめったにないと思いますので、太一くんに負けないようにがんばります」

RYO「僕は新選組と戦う天霧です。初舞台なので、最初は何もしゃべれないなくらい緊張してたんですが、本当にみんなが気軽に声をかけてきたくれたりするので、今はもうすっかり仲良く楽しくやれてます」

すでに食事会もしたというメンバーたち。太一が「コーラの一気飲み」を7杯もやってくれたと、和やかなムードがいっぱいだ。会見のあと公開殺陣稽古が始まった。


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●まず稽古場では「1場」の殺陣。

森の中を、新選組の土方歳三(早乙女)、沖田総司(窪田正孝)、藤堂(武田航平)、斎藤(中村倫也)、原田(橋本淳)、近藤勇(坂本爽)、永倉新八(中村誠治郎)、山南敬助(川岡大次郎)などが歩いていると、突然不逞の浪士に襲われ乱戦になる。そこに千鶴の父、雪村綱道(木下ほうか)が現れるという設定。

殺陣師の諸鍛冶裕太による立ち回りの段取りを聞いて、それぞれ、その通りに動いていく。稽古場全面を使っての斬り合いは迫力満点。不逞の浪士たちは斬られたはずなのに、次々に起きあがり襲ってくる。そこに現れた土方役の早乙女太一は、鮮やかな剣さばきで、浪士たちを切り捨てていくというシーンだ。

短いリハーサル時間なのに、段取りは完璧。それだけでなく土方の殺気さえ漂わせるところは、さすが早乙女太一ならではである。

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次は「6場」の稽古。

土方と千鶴が剣の稽古をしていると、2人の前に鬼の風間千景(木村了)天霧九寿(RYO)不知火匡(伊崎右典)が現れて斬りかかってくる。そこへ沖田、藤堂、斎藤、原田、永倉が現れて応戦する場面。

千鶴の夢のシーンから始まり、土方との会話が交わされる。そして千鶴と剣の手合わせをする土方。黒川相手の立ち回りとはいっても、動きの鋭さや形の決め具合が揺るぎない。

他の役者たちに殺陣がつけられているときは、他の役者たちの動きを位置を変えて見たり、黙々と自分の動きを繰り返したりと、太一の研究心は相変わらずだ。その磨きに磨き抜かれた立ち回りの魅力を見せてくれる公演本番が楽しみである。

 

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『薄桜鬼 新選組炎舞録』

演出◇キムラトシヒロ

脚本◇毛利亘宏

出演◇早乙女太一、黒川智花、木村了、RYO、川岡大次郎、窪田正孝、武田航平、中村倫也 他

10/117◎天王洲銀河劇場

〈料金〉S席8500円 A席5500

〈問い合わせ〉オデッセー 03-5444-6966

 

【取材・文/榊原和子】

サンタを信じる強さ。『ビリーバー』

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寓話ではあるが、誰もが見る夢と現実が映し出されている。『ビリーバー』の設定は、まず、21世紀アメリカの悲劇「911」がその下敷きにあるのだ。

物語は、小惑星がこの地球に近づきつつあり、まもなく激突する可能性が高いという世界的危機が迫るなか、ある観測所で天文学者ハワード・ボナーと息子のスティーブンが、迫ってくる隕石を見つけようと巨大な天体望遠鏡をのぞいているところから始まる。

こともあろうにハワードは、「八頭のトナカイと赤い服を着た男」を、その望遠鏡の中に見てしまうのだ。その瞬間からサンタを信じることになった父と、その出来事に対して夢物語ということでしか理解を示さない9歳の息子スティーブンの間にズレが生まれはじめる。どうしても息子にサンタクロースがいると信じさせたいハワードの行動と熱意は、やがて妻にも周囲の人々にも奇異に映りはじめる。

普通にありふれた夫婦関係であり親子関係であった家族が、サンタという非現実的な出来事をきっかけに、それぞれの関係性を見直す状況へと追い込まれていき、また社会的にも波紋を広げていく。そんなハードな展開をどこかファンタジーの優しさと笑いを交えながら見せていくのは、いい意味で湿り気の少ない鈴木勝秀の演出と、出演者たちの生き生きしたやりとりの魅力によるところが大きい。

勝村政信が演じるどこまでも真剣で誠意あふれるハワードの行動力、言葉の説得力。9歳のスティーブンに扮する風間俊介が見せる多面的に揺れる少年の心。理解できないと批判しながらも夫を愛している妻の草刈民代の包容力。そしてサンタをはじめ祖父から警官、医者、店員などさまざまな役柄を演じる川平慈英の変幻自在な楽しさ。たった4人きりの出演者たちだが、彼らがシンプルで抽象的なセットを一瞬にして観測所、家庭、学校や街中に変えて見せ、物語は日常をベースに宇宙まで果てしなく広がっていく。

小惑星の激突という終末を目の前にした時間だからこそ、真剣にハワードが息子に伝えようとした「サンタクロースという夢」。それはついには父子をはるか北極まで駆り立てていき、そこでしか出会えない確かな「夢」を見せてくれる。そのシーンに込められたさりげないユーモアとファンタジックな美しさ。それこそが、あの「9・11」の終末感の中から立ち上がるために、人々がよりどころとした「夢」の1つだったにちがいない。

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『ビリーバー』

作◇リー・カルチャイム

演出◇鈴木勝秀

出演◇勝村政信、風間俊介、草刈民代、川平慈英

9/312◎東京 世田谷パブリックシアター

9/1718◎大阪 梅田芸術劇場

9/19◎福岡市民会館

9/21◎仙台電力ホール

〈問い合わせ〉

東京・世田谷パブリックシアター 03-5432-1515

大阪・梅田芸術劇場06-6377-3888

福岡・ピクニック 092-715-0374

仙台・仙台放送 022-268-2174


【文/榊原和子】

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