稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『真夜中の弥次さん喜多さん』三重

輝く北の星を。こまつ座『十一ぴきのネコ』舞台レポート

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登場するのは十一ぴきのネコたち。
お腹を空かせて、へろへろになった彼らは鼠殺しのにゃん作老人(勝部演之)に教えてもらった北の星の下にある大きな湖にいる大きな魚を目指して、いざ進む。
原作は馬場のぼるの絵本『11ぴきのねこ』で1971年に井上ひさしが戯曲化した作品である。
11匹の野良猫たちが大きな魚を目指して進んで行くという冒険性、仲違いしながらも絆を深めていくという物語性、それこそ絵本を読む子供みたいな気持ちになって楽しめた。
登場するネコたちがそれぞれ本当に可愛い。

ただ、可愛いだけでは決して終わらないのがこの戯曲の中にいる井上ひさしだし、演出の長塚圭史である。
楽しい音楽や、韻を踏んだ楽しい台詞の中に、すっと社会を風刺する鋭く尖った刃が見える。
最後の結末はその風刺の刃が特別な切れ味を発揮し、思わず息を呑んだ。
絵本のような物語の中にあって、時折姿を見せるそんな暗さがあったからこそ、今回の長塚圭史演出が誕生したのかもしれない。
井上ひさしの戯曲、しかも音楽劇で“子どもとその付き添いのためのミュージカル”と副題がついた作品を、ゆらゆらと揺れるブラックな精神世界をここ最近表現することが多い長塚が演出するというのは意外だったのだが、結末を見て大いに納得した。

ただ甘いだけでない、ほろ苦さを感じてもらうということも含めて、副題の通り子どもに見せたいと思う音楽劇だ。
この日の客席にも何人か子どもがいたのだが、まず開演前の時間からわくわく感を演出してくれる。
徐々にネコたちが客席に現われて、「お腹が空いたにゃー」などと口にしながら、客席にいる子ども達に自分のふわふわのしっぽを触らせたり、笑顔で話しかけたりしている。
そうやって構ってくれたネコたちが、ふと気付くと舞台の上で冒険の旅に出るのだから、子どもが見てもきっと飽きがこない。もちろん大人も楽しめる。

北村有起哉の軽やかで、口も達者、頭の回転の速いにゃん太郎を中心に、ほぼ同年代の俳優たちが集まって、井上戯曲を全力疾走で演じきる、その勢いが心地良い。
にゃん作老人から受け継がれた地図のように、また次の世代へと井上作品が受け継がれていくのを感じた。

みんなで力を合わせれば、北の星の下にある湖にだって辿り着けるし、大きな魚を捕まえて食べることだってできる。
辛い現実は必ずどこかに転がっているが、あの北の星の輝きも忘れずにいたい。

 

 井上ひさし生誕77フェスティバル2012
『十一ぴきのネコ』

作◇井上ひさし
(馬場のぼる原作・こぐま社刊)
演出◇長塚圭史
音楽◇宇野誠一郎 荻野清子
出演◇北村有起哉 中村まこと 市川しんぺー 粟根まこと 蟹江一平 福田転球 大堀こういち 木村靖司 辰巳智秋 田鍋謙一郎 山内圭哉 勝部演之

●1/10〜31◎紀伊國屋サザンシアター
●2/5◎川西町フレンドリープラザ(山形)
●2/11・12◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

<料金>
一般7,800円 学生(高校生以上)5,800円 子供(小・中学生)4,800円

<HP>
こまつ座 
http://www.komatsuza.co.jp/

【文/岩見那津子】


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野田秀樹のニューヨーク公演が開幕!『THE BEE』

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野田秀樹(劇作家・演出家・俳優)が、
『THE BEE』で、36年間の演劇人生で初のワールドツアーを敢行中である。

2006年ロンドンで初演された『THE BEE』(英語版)は、野田と英国人俳優との5回におよぶワークショップを経て創られた作品で、1回目のワークショップは2003年、イラク戦争の後に行われた。

9.11から続く「報復の連鎖」を目の当たりにした野田は、20代で読んだ筒井康隆の短編小説『毟りあい』をワークショップの題材に使うことを考え、参加した英国人俳優が、何も言わなくても、現在の社会状況について語りだすのを見て、「やはり『毟りあい』は世界に通じるテーマだ」と確信し、舞台化を決定。
ローレンス・オリヴィエ賞受賞の英国を代表する名女優キャサリン・ハンターを迎え、2006年にロンドンで初演(英語上演)して、大きな衝撃と話題を巻き起こすと同時に高く評価され、現地の新聞評で最高星5つ星を取るなど、大絶賛を受けた。

翌年の2007年には日本でも上演、英語版と新たに制作した日本語版を連続上演して、その年の読売演劇大賞など演劇賞を総なめにして、演劇史に残る傑作となった。

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左:野田秀樹、中央後:キャサリン・ハンター、
中央手前:グリン・プリチャード、右:クライブ・メンダス
 

作品の内容は、平凡なサラリーマンが妻子を人質に取られたことから復讐の鬼と化し、加害者の妻と子を監禁してしまう。その緊迫した状態の中で、被害者が加害者に転じていくプロセスや、互いに暴力を加えていくことで繰り返される「復讐の連鎖」を鋭く描き出している。英語版では、サラリーマンを英国女優のキャサリン・ハンターが演じ、監禁される妻を野田秀樹が演じたことでも、演劇界に新鮮な衝撃を与えた。

 

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グリン・プリチャード、野田秀樹、キャサリン・ハンター、クライブ・メンダス


今回のワールドツアーは1月5日が初日で、野田の「9.11から10年を経たニューヨークで、この作品を上演したい」という思いによってニューヨークからスタート。世界各国から実験的なコンテンポラリー作品を招聘する演劇フェスティバルの「Under the Radar Festival(アンダー・ザ・レイダー・フェスティバル)」のオープニング・プログラムとして、1月15日まで上演される。

その後、1月24日から2月11日まで初演を行ったロンドンのソーホー・シアターでも、日本人の作・演出としては異例の約3週間の公演を行う。また、2月17日から19日まで香港で演劇フェスティバルへの正式招待作品として上演。そのワールドツアーの掉尾を飾るのが日本での公演で、2月24日から水天宮ピットでの東京公演を予定している。


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カーテンコール


【ニューヨークでの野田秀樹】

今回のワールドツアーおよびこの『THE BEE』という作品について、野田は初日のレセプションで以下のように語った。

ーーニューヨークで公演することについて。

初演のロンドン(2006年)の稽古の時から、ニューヨークでこの作品をやりたいと話し合っていた。ニューヨークは世界を引っ張っている街だし、この『THE BEE』という作品は、いい意味でも悪い意味でもニューヨークにふさわしい作品だと思っていました。

ーーこれからの日本の演劇について。

蜷川さんは、蜷川さんのギリギリまでやっている。僕も、今の自分のやれることはぎりぎり限界までやってきた。これからの若い人は、今の自分より、もっと先にいけると思う。僕も最初は一人で海外に飛び込んで、海外の人たちと始めた。間違っていることもいっぱいあったけど、続けてみることで今の成果に繋がった。

ーー次に考えてることは?

今後は、日本でやってる規模の大きい作品を日本のカンパニーで海外に持っていきたい。

ーーキャサリン・ハンターについて。

ここまでこれたのは、単なる通訳がいれば話が通じるということではなくて、文化的な翻訳者としてキャサリン・ハンターが、一緒に作品を作ってくれるということが非常に大きかった。


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野田秀樹とMark Russell(マーク・ラッセル)アンダー・ザ・レイダー・フェスティバル芸術監督

また、この9.11とイラク戦争に触発された世界情勢の鏡のような作品を、ニューヨークで上演することについても、以下のように答えている。

「9.11から10年を経てもビンラディン殺害のニュースを見て快哉を叫ぶニューヨーカーの姿を見て、10年間何も変わっていないアメリカの姿に愕然とした。しかし、その映像を見て、苦々しく思っているアメリカ人もいるはず。ぜひこの作品をニューヨークで上演したい、いろいろな思いを抱えているニューヨーカーに観てほしい」

    

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【初日開幕】

ニューヨーク時間、1月5日20時45分に、『THE BEE』のニューヨーク公演が開幕した。

ジャパンソサエティ内オーディトリアムの270席の客席は満員御礼、後半になるにつれ、観客はどんどん作品に引き込まれ、静かに固唾を飲んで観ている。

カーテンコールでは、温かい拍手に包まれ、終演後は興奮冷めやらぬ様子で、テレビカメラなどのインタビューに答える観客の姿があった。
 

【終演直後の野田秀樹のコメント】 

前日のドレスリハーサルが、思っていたような出来にはならなかったので、突然、自信を無くしてしまったんだよね。時々あるんだよね。そういうこと。それで、昨日の夜は眠れませんでした。

今日の初日の芝居は、非常に良い出来だったので、今までやってきたことが間違いなかったと確信できました。

あとは、ニューヨークのお客さんが今日の観客たちの評判を聞き、この作品を観にきてどんな反応をしてくれるのかが楽しみですね。
 

【観客のコメント】(若い女性のニューヨーカーが直接野田に話してくれたコメント)

この作品は、今のニューヨークには、必要な作品。最近のニューヨークでは、テクニカルなものによる作品が多いので、『THE BEE』のような、役者の身体や、シンプルなセットでみせる 演劇的な芝居は、絶対に多くの人が観るべきだと思う。


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English Version 東京公演(英語上演・日本語字幕付き)

『THE BEE』

作・演出・出演◇野田秀樹

出演◇キャサリン・ハンター、グリン・プリチャード、マルチェロ・マーニ

●2/24〜3/11◎東京 水天宮ピット 大スタジオ

〈料金〉5000円 25歳以下2000円(枚数限定)

〈問合せ〉東京芸術劇場 03-5391-3010

http://www.geigeki.jp/


【文/榊原和子 資料提供/東京芸術劇場 Photo/Michel Delsol】

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早乙女太一が華麗に舞い、自分の影と切り結ぶ『龍と牡丹 2012』

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1月初旬に公演された早乙女太一の新春特別公演『龍と牡丹 2012』は、昨年20歳を迎えて一段と実力と華やかさを増した太一を堪能させてくれる舞台だった。

百年に一人の天才女形として劇団朱雀を牽引し、外部舞台でも活躍、昨年は劇団☆新感線の『髑髏城の七人』で、無界屋蘭兵衛として観客を魅了した太一。彼が劇団メンバーとともに繰り広げる華やかな舞踊ショーがこの舞台で、昨年の『龍と牡丹』をニューバージョンに作り変え、第一部『彩春賦』、第二部『龍』というプログラムになっている。


第一部『彩春賦(さいしゅんふ)』は、「女性が持つ美しさ」という太一の女形を追求するにふさわしいテーマ。「月白」「朱」「鴇色」「紫紺」「緋色」「黒紅」という各章に分けられ、清純から凄艶までさまざまな女性の内面を太一が舞いで描き出す。
オープニングは月を背景に、「月白」という言葉通り白羽をつけた少女(鈴花あゆみ)と女性たちの群舞から始まり、白地に金銀の模様入りの衣裳をまとった太一がホリゾントから優雅に登場して舞う。

続いての激しい洋舞シーン「朱」は、早乙女友貴の長刀による剣舞。5人のダンサーとともにアクションも入れてのパワフルな場面。そこに白い打ち掛けを羽織った太一が登場、舞台上に鋭く刺さった太刀と戯れるように妖艶に舞い踊る「鴇色」の場面。
 
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次は、鈴花奈々の踊りから始まる「紫紺」で、孔雀のセットの中で踊る黒羽の踊り子たちの中に、緋色の太一が現れ、やがて魔性化して仮面姿に。友貴、そして黒羽の女とや男のダンスのが繰り広げられる中に、凄みをまとった太一が登場して、場面は「緋色」へ。背景に炎が立つ。浮かび上がる蜘蛛の巣の中を背に、懐剣を手に荒々しく踊る姿で、周りのものたちは滅びていく。

 

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そして、大詰めの「黒紅」へ。彼岸花の咲き乱れる中で全員が踊り、背景が白く輝く孔雀に変わると同時に花魁の太一が登場する。鮮やかな色彩と重みのある打ち掛けを羽織り、帯の上に金糸が大きく流れている豪華な装いだ。段上で裾を流して立つ姿はまさに孔雀のように美しい。その姿でしだいに激しい舞いへ。大きな花魁鬘や豪奢な着物をものともせず、しなやかに艶やかに舞い狂う花魁の太一で第一部の幕が閉じる。
 

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第二部の『龍』は、今回の銀河劇場だけで公演する音と踊りで魅せるショー。
太鼓奏者の茂戸藤浩司、尺八奏者き乃はち、津軽三味線の木乃下真市、タップダンサーのサーロという4人の「匠」と太一がそれぞれコラボするシーンで組み立てられている。

オープニングは舞台上に太鼓のセットが2組、茂戸藤浩司と太一がバチさばきもリズミカルに、力強く太鼓を響かせる。そこに5人の太鼓奏者が現れ、ダイナミックな太鼓の競演となる。

続く場面は早乙女友貴とダンサーたちのパンクなダンス。熱く盛り上がった場のあとは、一転して静かな情景に。紗幕前に正座している白い着物と袴姿の太一。扇の技で魅せる「田原坂」の素踊りのあと、待望の「影絵」との闘いが始まる。

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2011年の新春公演と名古屋公演で好評を博した映像との共演は、太一自身「極めたい」と断言するだけあって、さらにバージョンアップ。3DCGの技術を駆使、自分自身の映像を相手に切り結ぶ驚異の殺陣が見せ場だ。今回はCGの絵もバリエーションが広がり、波や花、巨大な鳥や獣など次々に変化する。そして最後は、「影絵の太一」が「生身の太一」に襲いかかってくるという1人2役で見せる殺陣。太一同士の闘いはまさに迫力いっぱいの見どころだ。

 

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次のシーンはき乃はちの尺八で、友貴が六尺棒で踊ってみせるという軽やかで楽しいダンスシーン。

そのあとはいよいよタップダンサーのサーロと太一のタップ対決になる。
2人の軽やかで鋭い足さばきの競い合いが心地よい。かなり高度な変拍子のタップもこなし、全身を使って音を響かせる太一。その2人に津軽三味線の木乃下が鋭いバチさばきで絡んでくる。「じょんがら」のサビをサーロと太一のタップ音、茂戸藤の太鼓でハモるというセッションで盛り上がる。さらに尺ハのき乃はちも加わって、まさに音とリズムで高揚するライブとなった。

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フィナーレは、全員が登場。赤と青を基調にした衣裳でロックなダンスで総踊り、賑やかに幕を降ろした。


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20歳となって、より優れたエンターティナーとして存在感を増し、技術に磨きをかけている早乙女太一。そのとどまることのない可能性を、また見せてくれた新春公演だった。


早乙女太一と劇団朱雀は、今回のショーの『彩春賦』と、新作芝居『伴天連鬼十郎ー愛寄る三つの魂ー』という組み合わせで1月20日から全国で公演する。『伴天連鬼十郎』は天草の乱で故郷を追われた三兄妹の物語で、太一は強盗団の首領、伴天連鬼十郎という悪役に挑む。新しいこのキャラクターでどんな太一を見せてくれるか期待したい。

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2012年新春特別公演

『早乙女太一 龍と牡丹2012』

第一部『彩春賦』

第二部『龍』

●1/6〜11◎天王洲 銀河劇場


新春ビッグ・ステージ2012 早乙女太一新春特別公演

芝居『伴天連鬼十郎ー愛寄る三つの魂ー』

舞踊劇『彩春賦』

●1/20〜27◎兵庫、大阪、兵庫

〈問合せ〉公演事務局 06-6966-8000

●4/6〜4/7◎香川、高知

〈問合せ〉グッドラックプロモーション 0120-30-8181

●4/13〜4/25◎神奈川、茨城、山形、宮城

〈問合せ〉(株)うぼん 03-5459-7461(平日 12時〜18時)

●5/31〜6/14◎群馬、千葉、静岡、埼玉

〈問合せ〉(株)うぼん 03-5459-7461(平日 12時〜18時)

公式HP http://www.saotometaichi.com/events/


【文/榊原和子 撮影/冨田実布】

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