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『蜘蛛女のキス』の公開稽古&囲みインタビュー

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1月16日に大阪梅田芸術劇場で初日を迎える『蜘蛛女のキス』の公開稽古が、東京都内で12月29日に行われた。
ラテン・アメリカを代表する作家、マヌエル・プイグの小説が原作となるこの作品は、プイグ自身が戯曲化し、まず映画で大ヒット。その後、ブロードウェイでミュージカル化して、トニー賞を受賞するなど、高い評価を受けたもの。脚本はテレンス・マクナリー。作詞、作曲は『シカゴ』や『キャバレー』で有名なジョン・カンダー&フレッド・エッブが手掛けている。

今回は、2007年秋に荻田浩一演出により上演した舞台の再演。石井一孝のモリーナ、浦井健治のヴァレンティンはそのままに、新たに蜘蛛女役に圧倒的な歌声を誇る金志賢(キム・ジーヒョン)を迎え、シルク・ドゥ・ソレイユに日本人初のダンサーとして参加した辻本知彦、そして今井朋彦、田村雄一など新しい顔ぶれも加わっての上演となる。

_MG_1634物語の背景になるのは刑務所。ゲイのモリーナと同房になった政治犯のヴァレンティン。反発しあっていた二人が、刑務所内にいるという極限状態の中、徐々に心を通わせていく様子が描かれる。暗く、重い題材の作品ではあるが、その中で人間とその愛の本質があぶり出され、観ているものの心まで突き刺さってくる作品である。

この日、稽古が公開されたのはオープニングから第五場までの約45分。石井一孝扮するモリーナの牢に浦井健治のヴァレンティンが入ってくる、物語の序章となる部分である。
今回は再演となるだけに、石井はゲイのモリーナになりきっていて、仕草や台詞の一つ一つが女らしく、自然で可愛い。浦井のヴァレンティンはモリーナとは対照的に男らしさを表に出す役。政治犯として牢に入れられた者の荒々しさや、拷問され傷ついた身体だけではない、心の痛みまでも全身で鋭く表現する。
蜘蛛女、そしてオーロラの金志賢は、ときにはダンサー達と妖しく絡みながら、確かな存在感弟、その素晴らしい歌声とともに、モリーナとヴァレンティンのイリュージョンの中に登場する。
刑務所長である今井朋彦は理知的かつ嫌らしく、モリーナやヴァレンティンを苦しめ、そんな苦しみの中、救いのように浮かび上がるのが、モリーナの母である初風諄や、ヴァレンティンの恋人・マルタの朝澄けいである。_MG_1578
モリーナ、ヴァレンティン、モリーナの母、マルタ、4人の歌声と思いが交差する重唱は、一幕の見せ場の一つだ。辻本を始めとするアンサブルダンサーたちの、物語を彩る迫力も見逃せない。

 

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【囲みインタビュー】

公開稽古終了後に石井一孝、浦井健治、金志賢、そして演出の荻田浩一を囲んで取材が行われた。
ーー公開稽古終えての感想は?

石井 体温が上がってますよね。(笑)
浦井 ちょっと放心状態。
石井 マラソンしてるようなシーンの連続で、いっぱいいっぱいですね。
浦井 ますます、モリーナ役の石井さんと密にコミュニケーションをとっていきたいとやりながらも思いましたし、ちょっとだけ手ごたえも感じました。
石井 俺はね、健治の、類まれなる才能を感じながら日々過ごしてる。金さんはどうですか?
金 久しぶりに本当に緊張しました。昨日いただいた振りとかステージングとかがあったので、「次なんだろう、次なんだろう?」って感じで、ちょっと申し訳けなかった感じです(笑)。_MG_1491

ーーみなさんそれぞれ役のキャラクターが立っていますが、役作りは大変ですか?

石井 2年前の初演の時に荻田先生に色々教わっていたので、今回は思ったよりすんなり入れたんです、健治もだよね?
浦井 はい。
石井 初演の時は、ああでもないこうでもないって考えて、なかなか入れなかったところが、僕なんかありましたから。スタートラインが、初演で悩んでたところは今、吹っ切れてる。この差がね、高いところからスタートできてるんですよ。
荻田 初演の時、石井さんは毛布を畳むのに3週間かかりました。(笑)
石井 毛布とか畳んだことがなかったんですよ。もう今はね、すぐ畳みたくなっちゃう。(笑)この人がガサツなものでね。(浦井を見る)
浦井 僕自身は、カズさん(石井)の顔を見るだけで、二幕は泣けてきてしまって。感情は初演の頃のまま残っていますが、今感じる感情、感覚っていうのは、また自分の中でも変わってきているので、そこをちゃんと荻田先生としっかり話し合って、ダメだしをいただきながらトライしていきたいと思ってます。
金 本当に『蜘蛛女のキス』の世界にいるだけでその色を感じられるので、素直にその色を、身体に感じで出したいなと思っております。
石井 キムさんの歌声だったり存在が、芝居にものすごく関連してるよね。その世界に僕らは誘われてる感じがする。新しい、類まれなる才能。
浦井 2回目(笑)。

ーー今回の再演にあたっての演出はいかかですが?

荻田 主演の2人に関しては、初演で素晴らしい土壌をつくっていただいたので、方向を変更するのではなく、初演で培ったものを、いかにより大きく育てていくかだと思います。金さんには、その世界観の中に入っていただきながら、彼女ならではの居かたを追求してもらいたい。金さんが持ってらっしゃる厳かな雰囲気、すごく凛とした感じが、よく出ればいいなと思ってます。今日ご覧いただいた一幕の前半は、物語が動き出すところで、これからそれぞれキャラクターが複雑に絡み合ってくる。その中で金さんというのは、あらゆるところで存在しながら、最後に一本の糸に束ねる役目になっていく強さを持っていると思います。

_MG_1388ーー見どころをそれぞれお願いします。

浦井 モリーナとヴァレンティンは価値観の違う人間なんだけれども、最終的に心を寄り添わせようとしていく。人間愛の物語だとも思うので、そういう繊細なところまで荻田先生と一緒に作っていきたいです。
金 今回、出演されるダンサーのみなさんが歌う時に隣で踊ったり、色々表現しているんですが、彼らが踊ることによって、もっと歌の世界、場面の世界が広がるような感じだと説明を受けて、それを自分の歌にも生かしたいと思うし、見ていただきたいとも思います。
石井 僕はやっぱりいかに毛布を畳めるかが一番重要なポイントだと思ってます(笑)。それはだいぶクリアしつつあるんで、っていうのは冗談として(笑)。ヴァレンティンとモリーナの心の葛藤を見てもらいたい。ヴァレンティンという新しい囚人が入ってきて、二人房になる。彼の秘密の情報を手に入れれば、明日にでも出所させてやるという密約のもと、モリーナは彼に近づいていく。それなのに次第に惹かれていって、彼を売るべきか守るべきか揺れる乙女心というか、人間模様というか、そこをやっぱり見て欲しい。
荻田 暗い不況の世の中にありまして、非常に重たく、暗い作品ではあります。ただ真夏の熱い時にジンギスカンを食べるような(笑)、色々辛い世の中だからこそ、このミュージカルの中の愛を感じていただきたい。あと愛と同時に人間の尊厳について描かれているミュージカルだと僕はすごく思ってるんです。極限の状況に置かれた人間同士が、いかにお互いを認め合えるのか、それをじっくりとご覧頂いて、この作品が本当に問うてるものを感じていただきたいと思います。_MG_1433

ーー金さんが今回入られたことによって得られた刺激はありますか?

石井 言葉で言えないけどすごくあるよね。やっぱり人を震えさせるような声なんですよね。いわゆる歌手とか、俳優とかそういう感じじゃなくて、魂から発せられるような、ゴスペルやられてるからというのもあるし、すごく神がかった声だと僕はすごく思ってます。声に導かれて、芝居のとき足が一歩踏み出たり、って言うのは目に見えないところであるよね。
浦井 (うなずく)。
金 逆に私の方がプレッシャーなんですよ(笑)。お二人は前回やってらっしゃるなかで、私は初めてなので、みなさんの足を引っ張らないようにするために、本当に必死にやってます。みなさんがとても熱いので、私もその熱さに包まれ、助けていただいてます。
石井 (浦井に)俺たち助けてる?
金 もちろんですよ! 
石井 助けられてるのかと思った!(笑)
浦井 本当に強力なパワーの持ち主が現われてちょっとタジタジしながら(笑)、でもキムさんの歌声に包まれて、カンパニーの一人一人が、個々に刺激し合ってるイメージがありますね。昨日もみんなで焼肉パーティーしたんですけど、すごく仲の良いカンパニーになってきてるんで、そこから哀しい、切ない、痛々しい物語の中に、人間の温かさみたいなものも、ちょっと見えるかなと。
石井 いいこと言うようになったねぇ!(笑)。
浦井 ホントですか!
石井 嬉しい。兄として。恋人になれなかった恋人として(笑)。

ーー石井さんはすごく女らしいですね。_MG_1473

石井 リンゴの皮むきが僕を育ててるんではないでしょうか。
金 私は石井さんが、元々こういうキャラクターなのかと、勘違いしてたくらい(笑)
石井 (笑)ちょっと女もどきかと思った?
金 本当に男らしい石井さんってあんまり見てない気がします(笑)。でも役に全てを集中してらっしゃるので。

ーーお客様に向けて最後に。

石井 僕達3人、性別はさまざま、人間であるような人間でないような、いろんな人がいますし混沌としたキャストですけど、みなさんに愛と勇気と生きるってことは素晴らしいんだなっていうことを、伝えていけたらと思っております。とても仲良くやっております。楽しみに観にきてください。
金 カンパニーの一人一人がとっても自分の役に集中しています。たぶんみなさん期待していらっしゃっても、失望しないと思いますので、是非いらしてください。
浦井 キャストスタッフ全員で一致団結して、お正月もなく頑張っていきたいと思います。是非劇場に足をお運びください。


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『蜘蛛女のキス

●2010/1/16〜18◎梅田芸術劇場 メインホール

●2010/1/24〜2/7◎東京芸術劇場 中ホール
原作◇マヌエル・プイグ

脚本◇テレンス・マクナリー

作詞・作曲◇ジョン・カンダー&フレッド・エッブ

演出・訳詞・上演台本◇荻田浩一

出演◇石井一孝 金志賢 浦井健治 初風諄 今井朋彦 朝澄けい 他

<料金>梅田芸術劇場/S席¥12000  S席¥8000 B席¥4000

           東京芸術劇場/S席¥11000  A席¥8500 Z席¥3000

<お問合せ>梅田芸術劇場/06-6377-3800

                 http://www.umegei.com/

  
 【取材/榊原和子 文/岩見那津子 撮影/岩村美佳】

はえぎわ主宰・ノゾエ征爾 インタビュー

はえぎわチラシ
年の瀬迫る2009年12月29日。
演出家・俳優として活躍中の劇団はえぎわのノゾエ征爾さんに、1月30日から始まる次回公演『春々 harubaru』のお話をお伺いしました。

ーータイトルの意味を教えて下さい。
いきなり若干ネタばれになっちゃうんですが(笑)、年を重ねたという意味です。延々と春をたくさん、いくつ越しただろうねみたいな。
ーー年々みたいな?
そうです。気持ち的な意味合いなんですが。
ーーどんなお話になりますか?
「家族というものがブレてるから変な世の中になってるんだ。家族から建て直していかないとダメなんだ」と訴える男の話です。そうして男は、ある家族に入り込んで、教育やら演出やら、気がついたら何十年もずっとそこにいるみたいな。
ーーちょっと不思議な話ですね。どのくらいできましたか?
大枠と最後はできているのですが。やっぱり、家族の具体的なシーンという所で、止まってしまいました。試しに当初あった思惑とは違う攻め方をしてみたのですが、それが納得いかなくて。最初にやろうと思っていたことに、もう一度戻ってみようと、はい、書き直してます。
ーーそこは作っていて一番、大変? それともおもしろいところ?
作業自体は楽しいんですが、ただ、うまくいけばおもしろくなると思うし、ちょっとヘマをすると駄作・・・! ということになりかねない。
ーーノゾエさんのお芝居はそういう危険性をはらみつつ、挑戦する作り方のような気がしますが。それはご自身の性格ですか?
性格だと思います。無難に収まりたくないというのはあります。
ーー普段、お芝居を観るときもそういうふうに考えるんですか?
かもしれないです。無難に収まってると物足りなさを感じる時はあります。
ーー今回の作品は、どんなところを見て欲しいですか?
人を観せたいです。演じている役者、役者というか、人。役柄ではあるんですけど、・・・人から生まれるエネルギーというか、台本に人がはまっているのではなくて、人が生きている舞台という・・・すごく感覚的なものなんですが。
ーーノゾエさんは観客に対して、どういう意識を持っていますか?
楽しんでもらいたいってのは大前提として・・・刺激は与えたいですかね。驚きとか。
ーー今回は、ご自分もたくさん出演されるんですよね?
今回、初めて主演をしてみようと考えていて。内緒なんですが(笑)。
ーーこの前、ノゾエさんが出演されたTHE SHAMPOO HATの赤堀(雅秋)さんも演出と主演でかっこよかったですよね。
はい。まさしく赤堀さんを観て感化されました。赤堀さん、かっこよかったです。一番大変な演出という立場にいながら、さらにその作品の芯となる人物を演じるという。間近で見ていると、そこから確実に何か肌で感じるものがあって。自分でもそれをやってみて何が生まれるのかなというのを体験してみようかと。真似とかではなくて、いいものはいいものとして、受け継いでいくのも大切だなという気持ちも含めて。
ーーそれは、とってもいいですね。きっといい結果が出ると思います。

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はえぎわ『春々 harubaru 〜ハスムカイのシャレ〜』
1/30〜2/3◎ザ・スズナリ
作・演出◇ノゾエ征爾
出演◇町田水城 鈴真紀史 ノゾエ征爾 滝寛式 竹口龍茶 川上友里 他
<料金>指定席 前売¥3500 / 当日¥3800
自由席 前売¥3300 / 当日¥3600
前売・当日共高校生以下¥2000 他
<お問合せ>はえぎわ  090-1815-8974

はえぎわ公式サイト
http://haegiwa.net/

【インタビュー/坂口真人 文/矢崎亜希子】

『赤い靴』稽古場ルポ&奥秀太郎インタビュー

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映画監督として活躍し、また演劇の世界では引く手あまたな映像プランナーとして活躍する奥秀太郎が、脚本、演出、映像を手掛ける舞台『赤い靴』が2010年1月9日、10日に、東京芸術劇場で上演される。

彼にとっては、07年の『黒猫』に続く2本目の演劇作品で、映像作家ならではの視点を生かした独自のビジュアルを駆使し、幻想的かつ立体的な演劇空間作りに意欲的に取り組んでいる。

今回のモチーフになっているのは、実話に基づくとされる野口雨情作詞の童謡『赤い靴』と、アンデルセン童話の『赤い靴』。この二つの『赤い靴』が奥の解釈のもとで、ミックスされるという。
その稽古場を見学、奥秀太郎にインタビュー。DSCF1325

 

【稽古場ルポ】

稽古場にあったのは、大きな鏡と積み重ねられたダンボール、病院にあるようなカーテンの衝立て。それらを使って、本番の舞台での装置の出し入れを、何度もシミュレーションしている。

俳優たちが装置を持って、出たり引っ込めたりする動きが、そのまま舞台でのそれぞれの動きとして見えてしまうので、演出の奥秀太郎は、時間と台本とをすり合せながら、合理的できれいな流れになるまで丁寧に何度も繰り返す。その動きに直接絡むことの少ない映美くららは、自分のセリフや動線を稽古場の隅でじっと確認している。

奥は、演出の途中で何度もキャストやスタッフを呼び集める。言葉で自分の中にあるイメージを伝え、みんながそのイメージを汲み取り、また意見を出し合いながら、一つのシーンの転換を決めていくのだ。DSCF1328

年代が近いチームのせいか、演出家とキャストやスタッフとの間に上下関係のようなものがほとんどないし、奥が別のスタッフと話している間は、自然に役者同士が集まって段取りなどを自主的に確認している。

やっと段取りが決まって、1つのシーンが始まった。映美くららが扮するキミの幻想なのだろうか、牧師館の育ての親たちがキミに話しかけてくる。映美のセリフ回しは明晰で力があって、粗い稽古の段階なのに聞くものの心にすっと入ってくる。子供に戻ったような表情のキミが、大きな鏡に自分を映している様子はなんだか胸に迫ってくる。

こんなふうに作られていく場面が、実際の舞台ではどんなふうに立ち上がってくるのか、奥脚本の言葉と、音楽と、役者の演技の相乗効果に期待が高まる。
幻想的で毒のある、映像作家奥秀太郎ならではの魅力がつまった舞台になりそうだ。

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【奥秀太郎インタビュー】

ーー野口雨情の童謡『赤い靴』とアンデルセン童話の『赤い靴』からインスパイアされたそうですが、前からあたためていた素材なんですか?

自分の中に勝手に、将来作りたい題材や、10年計画、20年計画があって、そのうちの1つが『赤い靴』で、童謡にまつわる実話の面白さなども聞いて、いつか絶対にやりたいと思っていた題材なんです。

ーー「痴漢」という存在が出てきて、かなり重要なようですが、主人公のキミとの関係は?DSCF1367

キミは外国人の母と日本人の父を持っているんですが、9歳の時に2人は離婚して、母親に育てられるんです。だけど2年後に母親が病死して、その後、彼女は六本木の鳥居坂教会の一室で生活を送るようになる。そしてある年齢になったぐらいから、ネットで知り合った男性がその部屋に訪れるようになって。泥棒だの詐欺師だの痴漢だのというのは、そのネット上のコードネームなんです。よくミュージカルとかで、娼婦とか泥棒とか、キーワードがいろいろ出てくるじゃないですか。そのキーワード的な意味と、今一番情けないものを主役にしてみたかったので、「痴漢」かなと思って。

ーー映美くららさんをキャスティングしたキッカケは?

僕は宝塚歌劇の映像もよく作っていて、映美さんが出ていた月組の『薔薇の封印』を作ったのが、彼女を知った最初のきっかけです。その後、退団されたので、こちらから何回か出演のお願いというラブコールを(笑)、ずっと送っていました。
たぶん僕の世界は、今まで映美さんがやられてきた内容と全く違うものだと思うんです。でも、彼女もそういう違うもの、新しいものをやりたいと思ってくれて、僕にとっても映美さんにとっても挑戦の良い一歩にしたいですね。僕の台本はややこしくて、毒々しいものなんですが、そこをわかっていただいて、彼女なりにやっていただけたら、すごくオシャレなものになるんじゃないかなと思ってます。

ーー奥作品は、映像も舞台も洗練されているので、暗いものや怖いものを扱っても、最終的には美しいものとして立ち上がってくるのが魅力ですね。

今回も、まさにそういう世界になりそうです。音楽で入ってる藤井洋は天才だと思うし。『黒猫』もそうですけど、起きているのは三面記事的な題材ですが、彼の音楽や僕の映像で、そこをドラマッチックなものにできればいいなと思ってます。

DSCF1372ーー『黒猫』では奥演出の中に「自分が演劇をやるなら、こういうふうに映像を使いたいんだ」というものが見えた気がしましたが?

いろいろな演出家のかたたちの作品で仕事をしていて、そこでは映像を作るというチームの1員でもあるので、あまり偉そうな発言に聞こえたら困るんですけど、僕のどこかに演劇シーンを牽引したいという思いもあります。まず自分達のカンパニーを少しずつ成長させたいですね。なので、今年の夏も冬も、できればこういう公演をやりたいなと思ってるところです。

ーー奥さんは映像だけでもすごい世界を作れるのに、いろいろな面で手がかかる演劇をよくやるなと。

いや演劇は楽しいですよ。まぁ、本当にいろんな所で喧嘩もするし、叫んだり喚いたりしてますけど(笑)。
なぜ演劇をやるんでしょうねー? すごく好きだとしか言いようがなくて…やめられないですよね(笑)。だから、みんなやめないんだろうし、一生やってると思う。

ーー自分が見たいものがあって、それは自分が作るしかないっていう気持ちなんでしょうか?

それはありますね。今回も、前の『黒猫』もそうなんですが、映画と演劇、その2つのどちらの感覚もあるものを作りたいという思いがすごくあります。単館系映画ってのがすごく好きなんですよね。だから舞台でもそういう雰囲気のモノを作っていきたい。
今回、時間がないっていうのもありますけど、すごくキャストが集中してくれて、でも、みんな楽しんでくれているのが心強いです。映美さん以外は、あまり演劇業界では知られていない、でも実力のあるキャストたちです。大きなカンパニーとか作品で結果を出した人や有名な人の集合じゃなくて、自分達でのし上がる、というか自分達で作って上がっていく。そういう第一歩をみんなとやりたかった。今、みんなで何かやろうという気持ちで集まれているので、その力をすごく力強く感じています。

 

 

『赤い靴』

●1/9〜10◎東京芸術劇場 小ホール

脚本・演出◇奥秀太郎

出演◇映美くらら、岸健太朗、鈴木雄大、中本昂祐、リン・ホフディ  他

<料金>東京芸術劇場/¥4500

<お問合せ>オフステージ/03-5790-9719 offstage.ticket@gmail.com                   

  赤い靴 www.okushutaro.com

 

【取材/榊原和子 文/岩見那津子】


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