稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

えんぶ9号ラインナップ

東山&生田、華麗な女性役などで競演『ミシマダブル』

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蜷川幸雄が三島由紀夫の代表戯曲二作を同一キャストで交互に上演する『ミシマダブル』が、2月2日に幕を開けたが、この日の昼にフォトコールと初日前会見が行われた。

男性キャストのみの公演は、蜷川幸雄演出では「彩の国シェイクスピアシリーズ」でおなじみだが、三島由紀夫作品の中でも正反対な2作を、しかも同時上演ということで、蜷川にとっても挑戦的な上演となりそうだ。

演目の2つは、三島由紀夫自身が『サド侯爵夫人』を書いたときから、「私にはこれと対をなす作品を書きたいという気持ちが芽生えた」と解説する『わが友ヒットラー』という2作品。サド侯爵の妻をはじめとする6名の女性が登場する『サド侯爵夫人』と、4人の男性が政治と思想の論理を展開する『わが友ヒットラー』は、まさに対極にあるといっていい。

主演は東山紀之と生田斗真、そして平幹二朗、木場勝己、大石継太、岡田正という少人数での上演である(大石と岡田は『サド侯爵夫人』にのみ出演)。


【それぞれのストーリー】

『サド侯爵夫人』
フランス革命前後のパリ。スキャンダルにまみれたサド侯爵をかばい続ける夫人のルネに対して、母親のモントルイユ夫人はさまざまな手を尽くして別れを迫る。だが「悪徳の怪物」に「貞淑の怪物」として身を捧げる覚悟の彼女は、サド侯爵が獄につながれてもなおその決意は揺るがない。やがてフランス革命が勃発し、混乱のさなか、老境にさしかかったルネのもとに解放されたサドが現れる。

『わが友ヒットラー』
第二次世界大戦前夜である1934年6月某日、政権を得たばかりのヒットラーが、ベルリンの首相官邸でかつての革命の同志で右派のレーム、左派のシュトラッサーとそれぞれ会談を開いていた。思い出話や理想、現状についての意見交換の裏で、すでにヒットラーは党内の支持を盤石にするために左右両端の勢力を切り捨てる決意をしていた。それを見守る武器商人クルップ。独裁と粛清の時代への幕がいよいよ開こうとしていた。

この日のフォトコールではサド侯爵夫人のルネに扮した東山紀之と、彼女の妹のアンヌに扮した生田斗真が登場、豪華なドレスに身を包んだ2人の戯れと会話の場面が演じられた。
そのあとの囲みインタビューは、演出家の蜷川幸雄とともに東山と生田が現れたが、蜷川が「2人でしゃべればいいだろ」ということで2人へのインタビューとなった。

【一問一答】                       

ーーすごいドレスですが、着た気分はいかがですか?

東山 あまりよくないです(笑)、だいぶ慣れましたが。最初は違和感とかありました。恥ずかしいですしね。でも友達の川平慈英がドレスのチラシを見て「お前となら付き合える」と言ってくれて、そのあたりから自信がつきました。

——役になるときお化粧したり衣裳を着たりするわけですが、どんな気持ちですか?

東山 いや、これから変わっていくんだなと。心理的に深まっていくんで面白いものですね。付け睫毛ぐらいから違和感ありますよ。今までしたことないから。

——鏡を見たときは?

東山 笑います(笑)。斗真を見ても笑います。

生田 僕はけっこう解放されます。気持ちいいもんだなと。

東山 新しい自分を見つけたと言ってます(笑)。

生田 初めてですから。自分ではけっこう可愛いんじゃないかなと(笑)。

——歩き方とかは気をつけてますか?

東山 稽古中から気をつけてました。スカートが長いので踏まないように引っ張りながら。

——生田さんから見て東山さんは?

生田 可愛いです。見る機会のない先輩の姿なんで目に焼き付けておこうと(笑)。

東山 話を聞いたら斗真のお母さんは僕より1つ上なんですよ。だからああいう感じかなとか。まんざら俺も大丈夫だろうなと。

——今日の始まりで2人でじゃれ合うところがありましたが。

東山 あそこは蜷川さんにかなり怒られたところです。僕がポンポン歩くからもっと貴族的に歩けと。すーっと歩けと。難しいんですよ。

生田 僕は転げ合うところでかつらが取れないか心配なんですけど。

東山 そうだね。気をつけながらやってるね。

——かつらは重いですか?

東山 重いですよ。動きに制限が出てきますね。

——女性姿は『覇王別姫』と比べてどうですか

東山 こなれてきたかなと。だいぶ状況に慣れてきたというか。こういうチャンスをくれる蜷川さんがありがたいです。

——終わったあと、役を引きずりませんか。

東山 今回はこれともう1作品をやっているので。またそれがすごく男っぽくて、蜷川さんに「股を開いて座れ」と言われるくらい男っぽいので。両極端ですね。

——プライベートでの研究は?

東山 仕草を勉強するとかしてます。

生田 僕は、イメージを蒼井優ちゃんぽく、ちょっとつるんとした可愛さを目指してます。稽古場も優ちゃんが見にきてくれて「綺麗だ」とか言ってくれました(笑)。アドバイスというより「可愛かったよ」と言ってくれて。

——その指のマニキュアは?

東山 メイクさんに塗ってもらったんですが、ヒットラーのほうは男役なんで取ってまた塗って。

生田 たいへんです。

——セリフも多いですね。

東山 今回は、平さんと木場さんというベテランのお2人がいらっしゃるので、稽古場のときから何か困ったことがあるとすぐ聞きにいって、すごく心強いです。

——声も高く作ってますか?

東山 いや、蜷川さんは「三島さんの世界の本質みたいなのが出ればいい」と。女性の感情とかそういうものをどう出そうかなと考えてます。

——東山さん、奥様にアドバイスとかは?

東山 いやいや自分の中で。やはりお互いにプロフェッショナル同士ですから全部自分で考えてやってます。

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ミシマダブル

『サド侯爵夫人』『わが友ヒットラー』

原作◇三島由紀夫

演出◇蜷川幸雄

出演◇東山紀之 生田斗真 木場勝己 大石継太 岡田正 平幹二朗

2/2〜3/2◎Bunkamuraシアターククーン

3/8〜20◎シアターBRAVA!

〈料金〉

東京/S席¥11000 A席¥9000 コクーンシート¥6000

大阪/S席¥11000 A席¥9000

〈問合せ〉

東京/Bunkamura 03-3477-3244

大阪/キュードーインフォメーション 06-7732-8888

 

【取材・文/榊原和子】


強く可愛い元アイドルたちのミュージカル『ヒロイン』

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70年代から80年代にかけてデビュー、アイドル歌手としてテレビや映画で活躍した4人の元アイドルたち、榊原郁恵、早見優、松本伊代、石野真子が、自分たちの等身大に近い物語を演じるミュージカル『ヒロイン』が、2月3日に銀座で開幕した。

この舞台は副題に「〜女たちよ タフであれ!〜」とあるように、「アラフォー」は少し過ぎたものの、まだ「シニア」にはならない、いわゆる「大人可愛い」女性たちの生活と本音が炸裂するオリジナルミュージカル。

作品を手がけるスタッフは、脚本・作詞に高橋知伽江、演出・振付に川崎悦子、作詞・作曲・音楽監督の深沢桂子という3人で、彼女たちが組んだ「I DO BATTER PROJECT」によるオリジナルミュージカルの第一弾となる。

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物語は、「ミューズ」という元アイドル・グループのメンバーが、テレビ出演するために1日だけ再結成することになり、解散から25年ぶりに集まるところから始まる。姑の介護ですっかりオバさん化したリリー(榊原郁恵)、主婦だが仕事に前向きな元リーダー・ナナ(早見優)、離婚して一見優雅に暮らすジュン(松本伊代)、ちょっとワケあり風なピーチ(石野真子)の4人。
それぞれ人生の悩みを抱えた元アイドルたちが、楽屋の待ち時間にいつしか生活をさらけ出して語り合い、自分の生き方をもう1度見つめ直し、そして、25年前とはまた違った輝きと夢を心に抱いて、久しぶりのステージに向かっていく。タフで凛々しい女性たちの姿をふんだんに音楽を入れながら描き出している。

そんな中年になった元アイドルたちの話を、本物の元アイドルが演じるということで、可笑しさも悲しさも、切実にリアリティをもって迫ってくる。同時に、1時代を賑わし今もなお現役の4人だからこそ出せるキラキラ感と迫力ある歌声は、この作品の大きな見どころであり、聴きどころとなっている。4人にはそれぞれ今の心情をソロでを歌う場面もあり、思いの込められた熱唱は聞く側の胸を熱くさせるものがある。

また、現場で4人を担当するADの鈴木(ヨウスケ・クロフォード)が、今どきの青年らしくチャラい感じでウロウロするのも、世代の差を感じさせて良いアクセントになっている。

「I DO BATTER PROJECT」という女性スタッフたちが4人の元アイドルへの愛とリスペクトを込めて作ったこの作品。鋭くも優しい目線が舞台全体に生かされていて、25年を生きてきた元アイドルたちの生活の重みを感じさせながらも、夢見ることを忘れない可愛らしさも伝えてくる。そして見終わったあとに「自分よタフであれ!」と勇気が湧いてくるような、元気と温かさをもらえる作品である。

この作品は、東京公演のあと、3月1日まで福岡、広島、金沢、大阪で公演される。

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I DO BATTER PROJECT

ミュージカル『ヒロイン』〜女たちよ タフであれ!〜

脚本・作詞◇高橋知伽江

振付・演出◇川崎悦子

作詞・作曲・音楽監督◇深沢桂子 

出演◇榊原郁恵、早見優、松本伊代、石野真子、ヨウスケ・クロフォード 


●2/3〜10◎東京・銀座博品館劇場

●2/13◎福岡・キャナルシティ劇場

●2/15◎広島・アステールプラザ大ホール

●2/19〜20◎金沢・北國新聞赤羽ホール

●3/1◎大阪・森ノ宮ピロティホール


〈問合せ〉

東京/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337

福岡/ピクニック 092-715-0374

広島/TSS事業部 082-253-10100

金沢/北國新聞チケットセンター 076−260−8000

大阪/キョードーインフォメーション 06-7732-8888(10:00〜19:00)

 

【文/榊原和子】

暗闇の中で燃える情念。三島文学『金閣寺』初日レポ&インタビュー

 

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実在の事件をもとに、三島由起夫が彼の美学で綴った小説『金閣寺』。美しく鋭い言葉で「美」への憧憬と人間の暗い情念などを描き出し、日本の文学史上で金字塔となっているこの作品は、すでに何度も映画化や舞台化がされている。
今回は神奈川芸術劇場のこけら落として上演され、宮本亜門が演出、森田剛が吃音というハンディキャップを抱えて育った青年に扮し、「金閣」という「美の象徴」への愛憎や彼をとりまく社会、そして人間関係を描き出している。
その公開舞台稽古が初日前日の1月28日に行なわれた。 

宮本亜門が「五感で感じる舞台にしたい」と言っていたように、三島文学の言葉を「耳」で「目」で、そしてイメージ世界で体感できる演出になっているのが、今回のまず大きな特徴である。
その世界の中で、登場人物たちは生々しい感情と欲望の世界をリアルに、また象徴的に生きている。

主演の森田剛は、寺山戯曲『血は立ったまま眠っている』で見せた演技力をさらに深めて、吃音のため自分自身をうまく表現できず疎外感に悩まされている主人公、溝口の孤独と、「金閣」への執着を切なく浮かび上がらせ、やがて「金閣」を炎上させようとする暗い情念の中へ、ある種の狂気へと、自然な演技で踏み込んでいく。

また友人役は、高岡蒼甫が足の不自由さを逆手にとって女たちを惹き付けていく柏木を、大東俊介は溝口の修業仲間で優しさの裏に俗物的な一面を持つ鶴川を、それぞれのキャラクターを生かした役作りでリアルに描き出している。

その3人が交互に語る小説の文章が、物語世界を理解するファクターとしては有効だ。

その他に、寺の住職の瑳川哲朗をはじめとする名優たちが脇を支え、中越典子などの女優たちが溝口の夢であり夢をこわす存在となって登場する。
そして「金閣」の美の象徴である「鳳凰」を山川冬樹が、大駱駝艦のダンサーとともに演じているのも印象的である。

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この『金閣寺』の初日前日に公開舞台稽古があり、神奈川芸術劇場ホールのロビーで、演出家の宮本亜門と、出演者の森田剛、高岡蒼甫、大東俊介が取材インタビューに応じた。

【インタビュー】

森田 丸刈りは5年ぶりです。劇場に入ったのは3日前で、やはり開放された感じがします。役作りは亜門さんがみんなで作ろうと言ってくれたので、そういう感じで楽しくやれました。

宮本 話が暗いからねー、今、通し稽古を観ていただいて「どうなの?」って皆さんに聞いたら「面白い!」と言ってくれたのでほっとしてます。役の内面をこの3人が繊細に表現するのがたいへんだと思いますよ。三島は美しいきらびやかな文章なんだけど、それをライブで見せるのが難しいんです。

高岡 自分の役だけやっていればいいわけではなくナレーターもあるのでたいへんです。溝口(森田)の気持ちも気にしながら演じてます。

大東 僕は二幕はほとんどナレーターなんですが、実際にやってみたらマイクがつるつる滑るので怖かった。舞台稽古したことでこれから役に立ちます。

宮本 三人三様でそれぞれ真剣で、でも3人以外にも、たとえば山川冬樹さんは役者としてもすごいと聞いていた通りで面白いし。みんなやることが山のようにある舞台ですけど、稽古場からやってて僕も楽しかったんです。

高岡 稽古は面白くて最高でした。

森田 今回、僕は本当は体が硬いんですが、柔軟とかむちゃくちゃ鍛えられました。柔らかくなってる(笑)。

高岡 稽古も本番も溝口とのやりとりが最高に楽しいです。中のエネルギーを感じるので。

大東 森田さんと高岡さんとはよく話をしたし、2人とも人としてすごく好きなので。

宮本 なんか中華街に3人で食事に行って、すごく盛り上がったらしくて、帰ってきたときは人格が変わってたよね。ハイタッチとかしてた(笑)。

森田 美味しいお店だと聞いて行ったのに頼んだものに手をつけずに話に夢中になってました(笑)。

宮本 いいことだね。

森田 この劇場に来て、すべてのスイッチが入りましたから、ますます入り込んでやれると思います。緊張と解放と両方を感じながら公演していきたいと思ってます。

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神奈川芸術劇場オープニングラインナップ

『金閣寺』ーThe Tenple of the Golden Pavilionー

原作◇三島由紀夫

脚本◇セルジュ・ラモット

出演◇森田剛 高岡蒼甫 大東俊介 中越典子、高橋長英、岡本麗、花王おさむ、山川冬樹/瑳川哲朗 ほか

1/29〜2/14◎神奈川芸術劇場 ホール

2/19〜20◎まつもと市民芸術会館主ホール

2/25〜27◎キャナルシティ

3/5〜6◎愛知県芸術劇場大ホール

3/10〜13◎梅田芸術劇場メインホール

〈料金〉

神奈川/S席¥8500 A席¥6500 B席¥4500

まつもと/S席¥8500 A席¥7000

福岡/S席¥9500 A席¥7500

愛知/S席¥9500 A席¥7500  B席¥5500

大阪/S席¥9500 A席¥7500  B席¥5500

〈問合せ〉

神奈川/チケットかながわ 045-662-8866 http://www.kaat.jp/

まつもと/まつもと市民芸術館 0263-33-3800

福岡/ピクニック 092-715-0374

愛知/メ〜テレイベント事業部 052-331-9966

大阪/キュードーインフォメーション 06-7732-8888

 

 

【取材・文/榊原和子】
 
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