稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

えんぶ9号ラインナップ

圧巻のアクションとフラメンコ『ゾロ ザ・ミュージカル』

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人気グループ「V6」の坂本昌行が主演する『ゾロ ザ・ミュージカル』が、1月13日に日生劇場で開幕した。
ロンドンで08年7月からロングラン中のヒットミュージカルで、09年度のローレンス・オリヴィエ賞やベスト・ニュー・ミュージカル賞などをはじめ多数の演劇賞に輝いている。
今回が日本初演になるが、オリジナル版の英国の演出家であるクリストファー・レンショウが、オーディションで坂本昌行の演技や歌唱、身体能力にほれ込み「ゾロ」の役に指名したという。坂本にとっては、ジャニーズ入団以来というオーディションを受けて獲得した役であるだけに、スポーツジムでの身体作りに励み、筋肉を強化してアクションと剣戟満載のこの舞台に挑んでいる。

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物語は19世紀初頭のカリフォルニア、父親に反抗して故郷を飛び出し、ジプシーの仲間として自由な暮らしを送っていたディエゴのもとに、幼なじみのルイサがやってきて、総督だった父ドン・アレハンドロの死の知らせを告げる。しかもそののちに総督となり村の人々に圧政を強いているのが、かつて兄弟同様に育ったラモンと知ってディエゴは故郷へと向う。そして黒マスクと黒マントの正義の味方「ゾロ」に変身し、民衆を助けるための闘いを始める。

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誰にでもわかりやすい勧善懲悪のストーリーを、フランスの人気グループ「ジプシー・キングス」の名曲に乗せて賑やかに情熱的に演じるミュージカルだが、ディエゴに対するラモンの複雑な愛憎や、ジプシーや民衆の苦しみ、またガルシア軍曹など心弱い人間への目配りなど、観客にとって胸に刺さる部分がたくみに描き込まれている。

そしてこのミュージカルの一番の見どころは、なんといっても激しいアクションで、フェンシングによる闘いや命綱なしでのフライングが、屋台崩しなどの迫力のなかでダイナミックに繰り広げられる。また、ダンサーたちが客席から登場したり、坂本ゾロの神出鬼没な登場で観客も巻き込んで、日生劇場の空間いっぱいに『ゾロ』の世界が広がる。そのスリリングな舞台をさらに盛り上げるのが、フラメンコダンスと音楽で、今回は本場から5人のフラメンコダンサーとギタリスト1人が参加している。
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デェエゴ=ゾロの坂本昌行は歌声も力強く、しなやかな身体を駆使して踊り闘い、まさに縦横無尽の大活躍ぶり。また、総督をあざむく場面のダメっぷりでは笑いをさらう。ルイサ役の大塚ちひろは真っ直ぐで可憐な娘を生き生きと演じていて歌声も伸びやか。ジプシー女のイネスで圧倒的なパワーを見せているのは島田歌穂(池田有希子とW)、ディエゴを愛し自由に生きる女性の凄みがあり、またガルシアとの関係では純な一面も見せる。悪辣な支配者ラモン総督を演じるのは石井一孝、愛への飢餓感を抱えた男の屈折した愛憎を全身で表現し、歌声にもその暗い情念が込められる。権力の手下となって民衆を圧迫する単純なガルシア軍曹は芋洗坂係長(我善導とW)で、笑いとペーソスを感じさせ、後半は美味しい役どころ。老ジプシーとドン・アレハンドロの二役を演じる上條恒彦は、深みのある声と存在で出て来るだけで場面を引き締める。
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またこの舞台を一段と活気のあるものにして楽しませてくれるのは、振付家のラファエル・アマルゴに見出されて今回も参加している本場スペインのフラメンコダンサーたち。日本側のダンサーたちを率いて叩きつけるように踊るサパティアードの迫力は、それだけで物語世界へと引き込む力を持っていて、哀切で気迫に満ちたギターの音色とともに、全編を通してこの作品に豊かな陰影と土の匂いとでもいうようなリアリティを与えている。
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ロンドン発で、パリ、モスクワ、日本、そしてついにニューヨーク開幕も決まったというこの『ゾロ ザ・ミュージカル』。痛快アクション劇でありながら人間同士の愛憎がきめ細かく描かれ、手に汗握る面白さとともに愛や哀しみが心に伝わる上質なミュージカルである。

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『ゾロ ザ・ミュージカル』

音楽◇ジプシー・キングス

脚本・歌詞・原案◇ヘレン・エドマンドソン

追加曲◇ジョン・キャメロン

振付◇ラファエル・アマルゴ

演出◇クリストファー・レンショウ

翻訳◇酒井洋子・松田直行

出演◇坂本昌行、大塚ちひろ、石井一孝、島田歌穂・池田有希子(Wキャスト)、芋洗坂係長・我善導(Wキャスト)、上條恒彦 他

●1/12〜2/28◎日生劇場

〈料金〉S席12500円 A席6000円

〈問合せ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777

 

【取材・文/榊原和子】

結成5周年!柿喰う客『愉快犯』

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結成5周年を迎えた劇団、柿喰う客が新年の初めに上演する『愉快犯』は、斜に構えながらも「愛してくれ!!」とありったけの勢いで訴えかけてくるような生身の人間臭さのある、過剰なまでに“演劇”を感じさせてくれる芝居だった。小さく、ただ上手く収まったりしていない。うるさくて、派手で、大声を発しながら動いて、動いて、とにかく舞台の上で暴れまくる。

幸運に恵まれ続け、繁栄してきた琴吹家。ただこの一族は、幸運に恵まれて生きてきただけに、不幸にめっぽう弱い。些細な不幸に見舞われるただけで、それは琴吹家の一族にとっては命の危機。センター試験のプレッシャーに襲われただけで命を落としかねない。そんな一族の血を継ぐ父親と息子、琴吹家に嫁にきた妻と、その姑、そして家に訪れた女性警察官の間で物語は動いていく。

台詞や動きの異物感。ダンスまではいかなくとも、デフォルメされた一つ一つの動作にはじめは違和感を感じたものの、慣れればそれが面白くなってくる。極めて個性的。「今このタイミングでその台詞?!」とツッコミを入れたくなるような台詞や、その台詞を発するタイミングにも魅力があり、いつの間にか引き込まれて笑っていた。

玉置玲央が父親の琴吹慶二郎役。とにかく動いて、騒いで、物語を牽引するエネルギーに満ちていた。その妻・千幸役の七味まゆ味は、もうそこにいるだけで、怖くて、面白い。愛する人がいるからこそ狂気に走ってしまう、そんな人の一面を垣間見せる。この夫婦の息子である亀太郎を演じた村上誠基は完全にキャラクターが立ち上がっていて、笑わせられずにすべるところまで味方に付けて、作品の欠かせないスパイスに。深谷由梨香は二役で姑・琴吹フクと死んでしまった慶二郎と千幸の娘・鶴子を演じる。甲高い声が気になる時もあったが、目が離せず憎めない存在。警察官・和澤井沙凪役はコロ。およそ警察のイメージからはかけ離れた服装と髪型が格好良い。時おり訪れるシリアスな場面もきっちり締める。

誰も見たことのないもの。
誰もやったことのないもの。

そんな舞台を作ってやろうという意志がビシビシと伝わってきて、ぐっと胸が熱くなった。しかし楽しみながら観客を裏切っていくような、そんな掴み所のなさも同時に感じた。愉快な確信犯だ。

 

柿喰う客 2011年新春公演
『愉快犯』 

作・演出◇中屋敷法仁
出演◇七味まゆ味 コロ 玉置玲央 深谷由梨香 村上誠基

【東京公演】1/71/16◎東京芸術劇場 小ホール2
【大阪公演】
1/211/25◎芸術創造館

<料金>
一般:2,800円(1/811まで)/3,300円(1/1325まで)
学生:
2,000円(受付にて要証明)
高校生以下:
1,000円(受付にて要証明)

<問い合わせ>
柿喰う客
TEL
 080-6801-7389(劇団)
E-Mail info@kaki-kuu-kyaku.com
WEB
 http://kaki-kuu-kyaku.com/



【文/岩見那津子】 

おにぎり旗揚げ公演とはいかに!? おにぎり・池谷のぶえインタビュー

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村木仁、市川しんぺー、紅一点の池谷のぶえ。
キャリアを積んだ3人の俳優が結成したユニットおにぎり。
座・高円寺1で、作=青木豪、演出=いのうえひでのりのもと、どんな作品が生まれるのか興味津々!
稽古が始まって1週間の池谷のぶえに聞いてみた!


――おにぎりの3人は、どのようにして集まったのですか。

2009年の夏頃に「(市川)しんぺーさんと3人でちょっとこじんまりしたことをやりたいんだけど
」という村木さんからの電話が始まりでした。実はお互いよく知らなくて、一緒に演技をしたことがないんですよ。ただ舞台は観ていて、「同じような体型だな」というシンパシーは感じていたかもしれませんね(笑)。村木さんは別に体型で 選んだわけではないとはおっしゃっていましたが(微笑)。
 
――今回の作品は出演者は3人、脚本が青木豪さん、演出がいのうえひでのりさんと豪華なラインナップですね。

村木さんたっての希望で、脚本は青木さんに書いていただくことができました。そして当初「こじんまりと…」と言っていたのに、演出家はなんと、いのうえさんに(微笑)。
いのうえさんはここ数年ずっと大きい劇場で演出をしていたので、またとないチャンスだというようなことをチラシ文でも言ってくださって快く引き受けていただきました。

 
――いのうえさんの演出は、いかがですか。

一挙手一投足まで細かく、丁寧につけてくださっています。村木さん曰く「最近の新感線より具体的」みたいです。最初は覚えるのが精一杯で、気持ちがどう伴っていくのかなと思っていましたが、何度も繰り返し演じていると動作がすごく自然な流れでできるので、俳優の生理にあわせ て作ってくださっているのだなぁと実感しています。私にとって、いのうえさんの演出を受けるのは初めての経験なので、新鮮で楽しいです。
 
――どのような作品になりそうですか?

今回の公演は「演劇フェスティバル」に参加しているので、SFというテーマが決まっているんですよ。脚本をお願いした青木さんは、いつもの作風とは違う“SF”を書いてくださいまして。すごい男っぽい台本で、おもしろいんです。
 
――SFというと映画『スター・ウォーズ』とか、舞台だとなかなか想像がつきにくいのですが
。演じていて、SFを作っている実感などはありますか?

初めはあまりなかったのですが、シーンが進むにつれて、じわじわと感じてきています。といっても台詞は普通の日常会話で、際立って不思議なことが起こるというわけではないんですけど。じんわりと異空間になっていくような、どこの時代のどこの国かも分からないまま、最後に向かっていくところがSFっぽい雰囲気のような気がします。
 
――いつの間にか違う空間や時間にスライドする
なんだか夢みたいでおもしろそうですね。

“ほわん”と違うところに行くみたいな感覚が、ちょっとおもしろいですね。観ているお客様も始めは普通のお芝居を観に来たつもりだったのに、「SFだったな」と感じる、おもしろい時間の流れだと思います。
 
――最後に一言、公演のPRをお願いします。

青木豪さんのSF作品、いのうえひでのりさんの小さな劇場での演出、体型の似た3人の初めてのお手合わせ。初物のお好きな方は、ぜひ劇場に足をお運びください。

【公演情報
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おにぎり
『斷食』
1/26〜30◎座・高円寺1

作◇青木豪
演出◇いのうえひでのり
出演◇村木仁 池谷のぶえ 市川しんぺー
<料金>前売・当日とも 正面席/4000 サイドシート(舞台脇)/3000
※サイドシートは、http://blog.livedoor.jp/onigiri2011 からのみのお取り扱いになります。
<お問い合わせ>おにぎり   080-4005-0293  onigiri2011@yahoo.co.jp

http://blog.livedoor.jp/onigiri2011

【取材・文/矢崎亜希子】
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