稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『サロメ』

来年の最終章へ向けて 『真心一座身も心も 第一章再演 流れ姉妹〜たつことかつこ〜』

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流れ姉妹〜たつことかつこ〜第一章再演。
第一章、第二章、第三章と続き、次回ファイナル公演が決まっている、
真心一座身も心もの公演。
今回の上演はファイナルに向けてのおさらいの意味も込めた第一章の再演である。
つくづく「演劇って面白いなぁ」と思わせてくれる、
本気のストーリー展開と、本気のくだらなさが散りばめられた、
とっても愛おしい作品だった。

座付演出家である河原雅彦が、
真面目さと不真面目さを絶妙なバランスで魅せ、作品全体を舵取り。
流れ、流される人生を送る姉妹の姉・たつこには千葉雅子。
たつこの他人にそう易々と心を許さない、ツンとした雰囲気が格好良い。
「暴れ牛だって、人生だって、私は乗りこなしてみせる!」
などと闘牛の背中に跨り、啖呵をきる姿に思わずしびれた。
その闘牛も、もちろん本物ではなく明らかに着ぐるみなのだけれど、
牛が着ぐるみであることも含めた荒唐無稽さが、じわじわとツボにハマってくる。

妹のかつこ役は、村岡希美。
そこはかとない色気を放つ幸薄な女性で、暗く重い過去が見え隠れする。
彼女の放浪の旅の出発点は北海道の刑務所。
一体、たつことかつこにはどんな過去が秘められているのか?

毎回、この姉妹を愛するゲストラバーと、
陵辱するゲストレイパーの出演があるのだが、
第一章のゲストラバーは松重豊。ゲストレイパーは粟根まこと。
二人とも他の芝居などではあまり見ない、新鮮なキャラクターを見せてくれていた。

客席内はまさに一座といった感じの提灯や幕で覆われ、
上演前に流れているのも、マニアックな空気漂う歌謡曲。
芝居全体も平成というより、昭和の香り。
とにかく続きが気になる人情芝居で、好評を得て、第二章、三章と続いたのも納得。
しかし、全ての章を見ていなくても人間関係など少しの予習があれば、
途中からでも楽しめてしまうエンターテイメント性も兼ね揃えていると思う。
演劇ならではの臨場感も魅力だし、くだらなさをより追求した笑いもある。

大人が真剣にくだらないことに取り組むと、
得体の知れないエネルギーが湧いてくるものだし、
そのエネルギーはなぜだか人をワクワクさせる。
第一章を見て得たこのワクワク感を胸に、
来年1月に本多劇場で行われる最終章を是が非でも見て、
たつことかつこの流れゆく先を見届けたくなった。

 

 

真心一座身も心も 第一章再演
『流れ姉妹〜たつことかつこ〜』

脚本◇千葉雅子
演出◇河原雅彦
出演◇千葉雅子、村岡希美、坂田聡、河原雅彦、粟根まこと(初代ゲストレイパー)、松重豊(初代ゲストラバー)、市川しんぺー、政岡泰志、伊達暁、信川清順、堀善雄、大石憲、丸太裕也

8/198/28TOKYO FM HALL

〈料金〉

6,500(全席指定・税込)

〈問合せ〉ゴーチ・ブラザーズ

03-3466-0944 (平日11:0019:00

【文/岩見那津子】

いぶし銀か?若さか?『モーツァルト!』製作発表

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8月18日、今回が4度目の上演となるミュージカル『モーツァルト!』の製作発表が行われた。

天才作曲家モーツァルトの生涯を描いたこの作品は、『エリザベート』と同じミヒャエル・クンツェの脚本と作詞、シルヴェスター・リーヴァイの作曲による人気ミュージカルを小池修一郎がアレンジ・演出したもの。モーツァルトの溢れる才能と、その死に至るまでのドラマが、「僕こそミュージック」をはじめとする名曲で描き出される。

この日の制作発表には、約4500人の応募の中から選ばれた300人のオーディエンスが参加。演出の小池修一郎、ヴォルフガングをダブルキャストで演じる井上芳雄、山崎育三郎、そのほか妻のコンスタンツェのSPEEDの島袋寛子、大司教の山口祐一郎、父親役の市村正親が登壇した。
初演からこの作品に出演していたり、他のミュージカルで共演経験があるメンバーが多く、笑いの絶えない和気藹々としたムードで製作発表は進んだ。

 

【出演者挨拶】

井上芳雄

本当に、4回もやらせていただけることになるとは、初演の時は全く思いませんでした。もう、ただただ必死で、自分には重荷と言うか大きすぎる役なんじゃないかとずっと思って、やらせてもらっていて。でも僕も今31になりまして、モーツァルトが死んだ年って、32?……35、35でした。5です(笑)。今、年が近いって話をしようと思ったんですけど(笑)、あんまり近くなかったです。でも確実に近付いてはいます(笑)。今回は、育三郎君っていう新しいヴォルフガングを迎えまして、絶対色んな刺激を受けて今までと違うものになると思いますので、とにかく今の自分ができることを体当たりでしたいと思います。よろしくお願いします。
 

山崎育三郎

僕は、今から約8年前の2002年、高校生の時に今ここにいらっしゃるみなさんをステージ上で見て、「うわ、なんて素敵な作品なんだ」「なんて素晴らしい音楽なんだ」「僕もいつかこの作品に参加したい。モーツァルトやりたいんだ」と思いました。作品を見た後に楽譜とCDを買って毎日モーツァルトの楽曲を聞いて、いつかやりたいという思いで今日までやってきました。そして2010年、8年経って今ここにいられるということが、本当に信じられなくて、今はプレッシャーで押し潰されそうな思いでいるんですが、今の自分の全ての気持ちと、今の自分の出来る全てをこの役に賭けていきたいと思いますので、みなさん是非よろしくお願いします。


島袋寛子

またもう一度この作品に、こんな素晴らしい作品に参加出来るといs_RIMG1933うことで、本当にありがたく思っています。とても嬉しいです。ベストを尽くせるように頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

 

山口祐一郎

今、山崎育三郎さんの話を聞いて、なんか父兄参観日かな?と(笑)。字面も見ていると似ているし、他人事じゃないな、と(笑)。みなさんこの素晴らしい作品に今、参加できて、自分が出来ることを精一杯頑張りますってお話だったんですけど、こんなエネルギーに溢れてる人たちがそうなるんだから、僕はエネルギーが溢れるほどはないけれど(笑)、頑張らなきゃって、本当に今お話を聞きながら横で密かに思っておりました。素敵な舞台になればいいなと今から思っています。よろしくお願いします。


市村正親

8年前にモーツァルトのオファーが来たときには「あぁ、俺もいよいよモーツァルトをやれるんだなぁ…」と。

山口 (先輩のかわりに)どうもすみません!!(笑)

客席 (笑)

市村 いいですか?いいですか?(笑)はい、いよいよ僕もモーツァルトをやれる番が来たんだなぁと思ったら、モーツァルトの父親ということで、まぁ、がっくりしたんですが、この役をやったおかげで、その後に『屋根の上のヴァイオリン弾き』とか、次の仕事に色んな父親の役に繋がっていった非常に思い出深い作品であります。後輩の山口君もいることだし、あの、お互いにお茶を楽屋で飲めれば良いかなと思っております(笑)。余談ですが、そうこうするうちに私も、実際の父親になりまして、我が家にも神童がおります。(客席:笑)今回アマデで是非、出演をと思いました。台詞もないんでね。ですがうちのアマデは曲がかかると踊り始めちゃうんで(笑)。この間の『ラカージュ・オ・フォール』で僕は育三郎君のまま母でしたが、今度は本当の父親ということでどういう風な息子との関係が作れるのか、今から稽古が非常に楽しみです。芳雄とはついこの間も『キャンディード』で一緒だったし、彼が31になったと聞いて、もう本当にショックと、喜びと(笑)、色んなことを思っております。また小池先生とは再演とはいっても、きっと新しいものになると思いますので、一生懸命頑張りますのでどうぞ、ご期待していてください。ありがとうございました。

 

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【質疑応答】

ーー小池先生から、今回ヴォルフガングを演じる井上さんと山崎さん二人の魅力と期待するところをお聞かせください。

小池 井上君は自分でもさかんに年齢をアピールしていましたが、去年の『組曲虐殺』、井上ひさし先生の最後の作品の主演を立派に務めたりと俳優としてのキャリアをすごく重ねてると思います。映画の主演もしていますし、たぶん今までもやりたくてもできなかった表現とか、役作りをどんどん見せてくると思うので、その点にすごく期待しています。山崎君は、仕事も初めてですし、あんまり話したこともないので、どんな人なのかなぁと、実は今日観察しつつ、見てるんですけれども…井上君もそうですけど、彼も良いお坊ちゃんみたいな感じの人なのですが、それぞれ人間としては一皮めくると何かあるでしょう。山崎君も『レ・ミゼラブル』とか、たくさんの仕事のキャリアを既に持ってるので彼が今まで培ってきたものの上に、そしてそれだけ憧れてくれていたならば、モーツァルトの彼なりの解釈や、思いがあって、ぶつかってくるでしょうから、そこで私の仕事としては、彼の内側にあるものを出すというか、ちょっと仮面を剥がせればと思っております。

ーー今の小池さんの言葉を受けてお二人はいかがですか?

井上 常にありがたいことに、何年後ぐらいにもう一回モーツァルトがあるってことがわかってる状況でこの8年間生きてきたので、何をしていても「来年モーツァルトがある」と、思いながら一つ一つの経験を重ねていて。それは仕事上でも、私生活でも、そうだと思うので、一緒に歩んでいるって感じがあって、そういう経験をさせてもらえるのは嬉しいです。今は、自分のもしかしたら持ってるけど出したことのないものが、出るかもしれないのでそれを自分も楽しみにしてます。

山崎 (小池を見ながら)まずは僕自身のことを知っていただきたいなと思いますので、一度お食事でも(笑)、よろしくお願いします。稽古初日までにいかにモーツァルトのことを自分自身ができるところまで、理解して、自分なりのヴォルフガング像というのを作っていきたいと思っています。それを思いっきり小池先生にぶつけていきたいと思います。

s_RIMG1963ーー出演者のみなさんに。より深めていきたいと思っていること、大切にしたいことはなんでしょうか。

井上 この作品はもちろんモーツァルトという人の生涯を描いたものではあるんですけど、同時に、「自分の運命から逃れられるのか」というテーマがあって、それをやっぱり毎回考えます。ヴォルフガングとアマデっていう作品の特徴が、どういうことなのかが、わかったような、わからないような部分が合って。そこに正解はないのかもしれないですけど、自分がそれに対してどう思ってるかをハッキリ探して行きたいと思うし、それによって他の役の方とか、周りにいる人との関係も変わってくるんじゃないかと思っています。

山崎 今ちょうど楽譜をいただいて譜読みをしている段階なんですが本当に複雑な音が多くて。でも一つ一つにすごく意味があって作られている音なので、それをまずは理解して、この大ナンバーを歌いこなすことが今とても大事だと思っています。あと井上さんと同じことになってしまいますが、アマデという存在との関係性をどう理解するかというところも深めていけたらいいなと思います。

島袋 前回初めてやらせていただいた時に、キャストの先輩方に、「できるのであればもう一度ミュージカルをやってみて欲しい」という言葉をいただいて、もう一度やりたいとずっと思っていました。同じ作品を二度やったことはないので、初めての時のように未知な気持ちでいます。前回は本当に右も左もわからなくて、すごく緊張したまま最後までいったので、今回はもう少し落ち着いて、コンスタンツェという役を深めて、追求していけたらいいなと思ってます。

山口 今もまたみなさんの話を聞いていて、すごいなぁと思って(客席:笑)。そういう方たちと、同じ空間に出れるんだなと思うと、ドキドキしますね。また、色んなことを発見できたり、その時間をみなさんと生きて行けるっていう、そういうチャンスがあるっていうのがとっても今楽しみにです。

市村 高橋由美子ちゃんのナンネールが映像で流れた時に思ったんですが、この『モーツァルト!』という作品の中で家族に会える感じがしてます。自分自身が父親になった以上、育ちゃんと芳雄との間にどういう親子の感情が生まれるのか、今までやってきたレオポルトとはまたきっと違う旅ができるんじゃないかなって思ってます。

ーーヴォルフガングは井上さんと山崎さんのダブルキャストとなりますが、「自分の公演を見てくださった方にはこんな楽しみがある!こんなことをお見せで来ます!」というアピール合戦をお願いします(笑)。最後に島袋さんに、どちらの旦那さんの方が魅力的かをお聞きしたいです。

井上 すごい質問をありがとうございます(笑)。自分のアピールですよね、あの、言い出したら止まらなくなると思うんですけど(笑)、いや、そんなことはないですけど…でも、ハッキリしてるのは年が違うと言うことなので、いぶし銀の魅力をお見せできればなと。あと脚の長さは僕の方がちょっと長いんじゃないかと、育三郎君のマネージャーさんが言ってくださったので、そこを見ていただければ(笑)。

山崎 僕は、若さでフレッシュなヴォルフガングで行きたいと思うんですが(笑)。僕は元々みなさんと同じように客席で見ていた側から舞台に立つというこの緊張感と、夢が叶う瞬間っていうのを是非みなさんにみていただきたいな、と思います。今回の役に、命懸けでチャレンジしたいと思いますので…そのくらいです、売りは。頑張ります!!

ーー島袋さん、いぶし銀で脚の長い夫か、若さ溢れるフレッシュな夫かどちらが魅力的ですか?(笑)

島袋 とっても難しいですね(笑)。まだ稽古も始まってなくって、これからだと思うんで、これから、はい、ゆっくり考えたいと思います(笑)。

質疑応答の終了後に、井上と山崎の二人で「僕こそミュージック」、山崎と島袋で「愛していればわかり合える」の2曲が披露された。それぞれの抜群の歌唱力に触れることができ、作品への期待が高まったところで製作発表は終了。いぶし銀のモーツァルト、フレッシュなモーツァルト、二人のモーツァルトがどのように自身の運命を駆け抜けて行くのか、劇場で是非確かめたくなった。

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ミュージカル

『モーツァルト!』

脚本・作詞◇ミヒャエル・クンツェ

作曲◇シルヴェスター・リーヴァイ

訳詞・演出◇小池修一郎

出演◇井上芳雄、山崎育三郎、島袋寛子、山口祐一郎、市村正親、香寿たつき、涼風真世、高橋由美子他

11/6〜12/24◎帝国劇場

〈問合せ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777

 

【取材・文/岩見那津子】


夢と不安を抱きながら『宝塚BOYS』

 

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煌びやかな宝塚の世界に憧れ、
宝塚大劇場の舞台に立つという夢を追いかけた宝塚男子部のお話。
結末はとても切ないのだけれど、
この切なさは誰もがきっと、また別の形で体験するだろう切なさで、
終盤、客席から聞こえてくる啜り泣きの声は、
この作品が見ている人たちの心を確かに動かしているという証だったと思う。

走り続けていて、そのままなんの苦労もなく、
ゴールに辿り着くなんてことはないに等しい。
それはどこを目指すにも同じことで、途中で転んだり、立ち止まったり、
後戻りしたりしながら、それでも夢に向おうとする熱い思いがあるから前に進む。
しかし、それと同時に行く先に光が見えてこないという大きな不安も襲ってくる。

BOYSたちが宝塚大劇場を目指す姿に、
自分自身を重ねることができるところに、この作品の魅力がある。
舞台が戦後の日本というのも大きく関係しているのかもしれないが、
過ぎてしまった過去を愛おしむような懐かしさが漂うのだ。
劇中で歌われる「モン・パリ」や「すみれの花咲く頃」がまたその懐かしさと共に心に染みる。

2007年の初演から今回が再々演となる『宝塚BOYS』。
キャストも一新され、また違った新鮮さを見せてくれた。
とにかく青春!というか熱い群像劇ではあるので、
BOYSたちはやかましいほどに、一喜一憂し、場面に勢いを与えているのだが、
その勢いをひと時静めて、メリハリを作ってくれるのが寮のおばちゃん役の初風諄と、
宝塚男子部の担当で、彼らの面倒を見ることになる池田を演じる山路和弘。
彼らの過去、ひっそりと抱えている思いも途中で明かされるのだが、
やはりそこも涙なしでは見られない。
とにかく色々と、切なさで胸の詰まることが多い作品である。

最後に華やかなレビューシーンがあるのがこの作品のミソなのだが、
踊りや歌の上手い下手を超えて、何よりBOYSたちの表情が輝いているのが良い。
舞台の為に捧げてきた情熱や、舞台に立てた喜びが溢れるばかりに伝わってきて、
「報われなかったとしても、夢を見続けたことは絶対に無意味にはならない」」
と、彼らの姿を見て強く信じることができた。


『宝塚BOYS』

原案◇辻則彦
脚本◇中島淳彦
演出◇鈴木裕美
出演◇浦井健治 杉浦太陽 黄川田将也 東山義久 藤岡正明 瀧川英次 石井一彰/初風諄 山路和弘
●8/6〜9/1◎シアタークリエ

[問い合わせ]東宝テレザーブ 03-3201-7777

【文/岩見那津子】
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