津田真澄・椿真由美
マキノノゾミの書き下ろし新作を宮田慶子が演出する青年座公演『横濱短篇ホテル』は、７つの短篇が繋がって１本の作品世界が立ち上がるという斬新なもの。
その作品で主人公となる２人の女性、奥山ハルコと柳井フミヨに扮する椿真由美と津田真澄にインタビュー。Vol.１での役柄の話から、Vol.２は作家や演出家、そして女優同士の関係に話は広がっていく。
男前な女をマキノノゾミが描き、男前な宮田慶子が演出する
──津田さんは青年座でのマキノ作品は、3本全部出ていらっしゃるんですね？
津田 そうです。椿さんも2本出ています。
──マキノ作品の魅力はどこにあると思いますか？
津田 マキノさんは、笑わせるところと泣かすところが絶対にきちんと入っているんです。なにしろ「燃える、泣ける、決まる」というのが、以前主宰してらしたM.O.P.のキャッチフレーズですから（笑）。セリフもすごく切れがいいし、出てくる女性はみんな男前なんです。
椿 作品の印象で言うなら温かいんです。それはマキノさんがモノを見るときの視線がそうだからで、それがお客様に受けるところだと思います。それに悪い人が出てこない。
津田 みんな良い人だよね。
椿 悪くなるのもちゃんと理由があるし、人間関係の絡み方が温かくて情がある。だからどんなお客様に観せてもハズレがないし、老いも若きも感動してくれる作品になっている。
──それを宮田慶子さんが、また、すごくうまく演出されますね。
津田 宮田さんも男前なんです。男前な女を描くマキノ作品を男前な宮田慶子が演出する。そこがいいんでしょうね。宮田さんは男子はかっこよく見せたいし、女子は女らしく見せたい。そういう演出家なんです。それに、マキノさんも宮田さんもカラッとしているところが共通点で、だから相性もいいんだと思います。
椿 最初が『MOTHER』（94年）ですから、もう20年近くの付き合いで、気が合っているのだと思います。
──宮田さんの演出で、同性ならではという部分はありますか？
椿 私は色気がなくて、さばさばしているんですが、でも生物的には女なので（笑）、本来あるはずだろう女性性、女っぽさを出せとすごく要求されます。「それじゃ椿のまんまだから」とよく言われます（笑）。今回も女優役なので、「ザ・女優をやってね」と（笑）。コスプレするみたいな感じで面白いんですが、そういうふうに宮田さんが女の居ずまいを教えてくれるので、今回もちゃんと「ザ・女優」になりたいと思います（笑）。
──現実に女優さんが周りにたくさんいるのですから、「ザ・女優」というイメージもいろいろ膨らむでしょうね。
椿 私たちも観察されているのかなと（笑）。
津田 女優に限らず、宮田さんはすごく人間観察していると思う。
５時間を過ぎるといきなり変身！
──青年座では先輩後輩のお二人ですが、お互いをどういうふうに見ていますか？
椿 津田さんは私が入って間もない頃から『MOTHER』で主役の与謝野晶子を演じていらした方で、本当に上手いし、ずっと背中を追いかけている感じです。こういう人が劇団にいる、だから自分もここにいる意味がある、という気持ちで信頼している先輩です。でも、そういう一面もありつつ飲み友達で（笑）。しょっちゅう一緒に付き合っていただいて、私が「わーっ」となっても「はいはい」と受け止めていただいてます（笑）。
津田 ２人で酔っぱらうとピンクレディを歌ってます（笑）。椿さんは入ったときからいい役をやっていたんですが、いつも眉間にぎゅーっとシワを寄せて、考え込んでいて（笑）。それで心配になって「こういうふうにしたらいいよ」と言っても、シワを寄せたまま「はい」って（笑）。飲みに行っても５時間くらいはその調子なんですよ。それで６時間目くらいから「わーっ」と弾ける（笑）。
椿 エンジンがかかるのが遅いんです、なにごとも（笑）。
津田 でも、この人のぎゅっとエンジンかかったときのすごさは信用しているので。
──お２人とも強そうですね。なんでも飲めそうですし。
椿 いえ、だいぶ弱くなりました。
津田 最近はワインが好きですね。２人とも。
椿 それで芝居の話をえんえんとするんです。悩んでるときなんかアドバイスをしてくれたり。
津田 それを5時間、そこは敬語で喋っているんですけど、５時間過ぎると「だからさー」っていきなり（笑）。でも、すごく可愛いんです。
──今回は、そういうお２人ならではの息の合った舞台になりそうですね。
津田 椿さんとはもちろん、全員が息を合わせて、１話ごとのバトンをしっかり渡していきたいと思います。それをマキノさんが最初に言われたので。
椿 オムニバスだけど１つの大きな作品を観たなと、そういう気持ちで劇場をあとにしていただけるよう、みんなでがんばります。
つだますみ○1963年生まれ、山口県出身。青年座研究所（10期）卒業後、1986年青年座入団。マキノノゾミ作品は『MOTHER』（94年）『フユヒコ』（08年）『赤シャツ』（12年）と全作に出演。最近の出演作品は『薮原検校』（こまつ座）『赤シャツ』『水の音』（文化庁・日本劇団協議会）。
つばきまゆみ○1968年生まれ、神奈川県出身。青年座研究所（16期）卒業後、1992年青年座入団。マキノノゾミ作品は『MOTHER』（97年）『フユヒコ』（08年）に出演。最近の出演作品は『雷鳴』『ウェルズロード12番地』（文化庁）『愛して紅』（劇団勇壮淑女）。
青年座第207回公演
『横濱短篇ホテル』
「ヤクザに追われて」
「人間観察」
「脅迫」
「初恋の人」
「離婚記念日」
「プロポーズ」
「ネックレス」
作◇マキノゾミ
演出◇宮田慶子
出演◇加門良、横堀悦夫、大家仁志、小豆畑雅一、田島俊弥、桜木信介、逢笠恵祐、須田祐介
津田真澄、椿真由美、加茂美穂子、小暮智美、香椎凜、田上唯
●4/19〜28◎紀伊國屋ホール
〈料金〉5,500円 学生3500円（青年座のみ扱い）
〈問合わせ〉0120-291-481 青年座チケット専用（平日11時〜18時）
【取材・文／榊原和子 撮影／冨田実布】
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