稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

カムカムミニキーナ『>(ダイナリィ)』

『海をゆく者』稽古場ルポ

UMIMONO_senzai_B_trim

11月16日に開幕するパルコ・プロデュース公演『海をゆく者』は、アイルランドの気鋭の劇作家コナー・マクファーソンが、2006年に自ら演出してロンドンのナショナルシアターでデビューを飾り、「ローレンス・オリヴィエ賞」のBEST PLAYほか3部門でノミネートされたという話題作の、日本初演である。

今回の日本版は、栗山民也が演出し、出演は小日向文世、吉田鋼太郎、浅野和之、大谷亮介、平田満という男優ばかり5人で、シビアな展開のなかにもユーモアがにじむ、いかにもアイルランドの人間ドラマらしい戯曲世界に挑んでいる。
その熱の入った稽古の一部を見学することができた。

 

まずストーリーを説明しておこう。
ダブリン北部のバルドイルにある一軒家で兄弟2人が暮らしている、最近失明した兄・リチャードと、その世話をするために家に戻ってきた弟のシャーキー。彼らには古くからの飲み友だちのアイヴァンがいるが、彼も強度の近視で眼鏡がないとほとんど見えない状態だ。

3人はクリスマスを祝って今夜もポーカーをする予定だが、リチャードがシャーキーとは訳ありのニッキーを誘ってしまい、さらにニッキーがパブで知り合ったロックハートという見知らぬ男をゲストに連れて来たことから、シャーキーは不機嫌になる。それでもイブを楽しく過ごそうと、飲みながらゲームを始める男たち。
夜も更けた頃、いきなりロックハートが賭けのレートをつり上げる。常識を越えたレートにいぶかしみながらもゲームを続ける男たち。だがロックハートにはさらに隠された目的があった。

 

稽古場にはほとんど舞台と同じサイズで、リアルなセットが組まれている。ダブリンの北部の海添いの町にある一軒のリビング。酒瓶や皿、カップが置かれたままのテーブルや、いろいろなものが散らかった床のようすは、男だけの生活を映し出すようで侘しく寒々しい。外には強い風の音、そして海鳥の声も聞こえる。

部屋の床にボロ布のように転がって寝ているのは、兄のリチャード・吉田鋼太郎だ。やがて弟のシャーキー・平田満が、下手にある階段から降りてくる。階段の途中にあるキリスト画の下の飾り電球を、軽く手で叩く。すると電気が点くが、またすぐ消える。

部屋を片付けるシャーキーと目覚めたリチャードの会話が始まる。といってもリチャードは目が見えないことに苛立っているのか、終始怒鳴っている。同時にどこか弟に甘えるような憎めないワガママぶりは、吉田の持ち味でもあり笑いを誘う。

そこに、昨夜から泊まっていたらしい友人のアイヴァン・浅野和之が階段から降りてきて会話に加わる。彼も強度の近視で、眼鏡をなくしたせいで動くのさえ不自由そうだ。この3人のやりとりはちょっと荒っぽいが、お互いにどこか愛情を持っている空気が伝わってくる。

そんな3人のもとに訪れるのが、友人のニッキー・大谷亮介と正体不明の男ロックハート・小日向文世。この5人で始めるポーカーによる賭けが、後半からの大きな見せ場となってくる。

 

今回は早い段階から立ち稽古、そして通しを行っていたという。それはポーカーのカードさばきが重要なためで、確かにカードをしながら会話をスムースに運ぶためには、少しでもカードになじんでおいたほうがいいにちがいない。

見せ場はポーカーゲームのほかにも、盛りだくさんで、小日向扮するロックハートが正体を現す後半の長ゼリフや、平田とのスリリングな勝負のやりとり、そして吉田や浅野という伏線が生きてくるクライマックスというように、物語の構成は巧みに仕組まれている。とくにポーカーに賭けられたものの重さと、その勝敗の行方のドラスティックな展開に、観客はこの戯曲の持つ面白さを実感することになるだろう。

また、クリスマス・イブからクリスマス当日の朝という特別なシチュエーションが、いかにもふさわしい物語だということも、観客は舞台を観終わったあとに、きっと気づくにちがいない。

5人のベテラン男優たちは、そんなちょっとヘビーだが奥の深い台本を、演出家とともに膨らませリアルなものにしていく真っ最中である。
 

ちなみにこの作品のタイトルは、こんな古い詩から取られていることも最後に書き添えたい。


彼は知らない

陸の上で安楽に暮らしているから、私が

凍るあの海で、どう冬を過ごしたかを、

惨めに、不安に、ひたすら流浪の道を歩み、

親しい友も無く、ツララに囲まれ、

雹が槍となって吹きすさぶ中で…
 

ーー詠み人知らず

 『海をゆく者」755年頃

原文アングロサクソン語 リチャード・ヘイマー訳

 

 

『海をゆく者』

●2009/11/16〜12/8◎東京 パルコ劇場

●2009/12/11〜13◎大阪 サンケイホールブリーゼ

●2009/12/18〜19◎新潟 りゅーとぴあ・劇場

●2009/12/22〜23◎愛知 名鉄ホール

作◇コナー・マクファーソン

訳◇小田島恒志

演出◇栗山民也

出演◇小日向文世 吉田鋼太郎 浅野和之 大谷亮介 平田満

<料金>¥7500 

<お問合せ>東京/パルコ劇場 03-3477-5858

      大阪/キョードーチケットセンター 06-7732-8888

              新潟/りゅーとぴあチケット専用ダイヤル  025-224-5521

      愛知/メ〜テレ・イベント事業本部  052-331-9966

                     http://www.parco-play.com/

                         【取材・文/榊原和子】

 

この公演のチケットを「えんぶ特選チケット」として、会員の方を対象に割引価格で販売しています。

http://www.enbu.co.jp/kick/shop/index.html

 

 

 

 

 

『ANJIN-イングリッシュサムライ』公演成功祈願参拝(11月6日)

DSCF0645






ホリプロ50周年記念企画として12月10日に初日を迎える『ANJIN-イングリッシュサムライ』の公演成功を祈る祈願参拝が、主演の市村正親と藤原竜也によって行われた。

詣でた場所は、市村が演じることになる徳川家康を祀ってある芝東照宮。港区にある芝公園の一画にある由緒ある神社である。小春日和で天気も良好、清々しい空気のなかで参拝し、社殿で祈祷をあげてもらった市村と藤原が、公演の抱負を語った。

DSCF0634市村「とても厳かな気持ちです。とくにこの神社は僕が演じる家康公にちなんだ場所ということで、心の中でよろしくと申し上げました。祈祷をしてもらってる間、雅楽の笛がピューと鳴り続けていて、ミュージカル俳優の性癖でそれが気になってました(笑)」

藤原「僕もとても厳かで清々しい気持ちになりました」

 

DSCF0636この物語は、鎖国になる直前の17世紀初頭、ヨーロッパからの宣教師や商人が渡来して、コスモポリタンな活気にあふれていた頃の日本が背景になっている。イギリス人で初めて日本を訪れ、関ヶ原の戦いを勝利に導いて、徳川家康の軍の影の立役者となったウィリアム・アダムス、日本名を三浦按針と名乗ったその男と家康の、友情と葛藤を描いた野心的な新作である。


演出にはロイヤル・シェイクスピア・シアターのグレゴリー・ドーランを迎え、按針役には英国の名優オーウェン・ティールが出演するという日英共同プロジェクトで、藤原竜也は通訳の青年ドミニコという役で、8割もある英語のセリフのために、今年6月から2か月ほどイギリスに語学留学してきたという。

藤原「楽しかったです。真面目に語学の勉強と観劇、あとはパブでお酒を飲むというだけの日々でした(笑)」

市村「もう少し若かったら、そちらの役をやりたかったな。英語を喋れるようになるチャンスで、国際的に活躍する俳優になれてたかもしれない(笑)」

記者から英語でアピールをと注文されて困った藤原が「TOKUGAWA IEYASUくらいしか言えない」と笑わせれば、そばで市村が「舞台ではたくさん喋ってるから観に来てください」と絶妙のフォロー。

市村「稽古していてすごく面白い作品です。外国の俳優さん2人も日本語に取り組んでがんばってますので」

藤原「僕の役以外はほとんど実在した人たちです。その人間ドラマが見どころなので、ぜひ劇場に来てください」と、力強くアピールしていた。

DSCF0657

ホリプロ50周年記念 企画日英合作舞台

『ANJIN-イングリッシュサムライ』

●2009/12/10〜2010/1/18◎天王洲 銀河劇場

●2010/1/22〜31◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
脚本◇マルク・ポウルトン

脚本共同執筆◇河合祥一郎

演出◇グレゴリー・ドーラン

出演◇市村正親 オーウェン・ティール 藤原竜也 他

 

<料金>

銀河劇場 S席¥10500 A席¥8400 (全席指定/税込)     

<チケットに関するお問い合わせ>

東京公演/ホリプロチケットセンター03-3490-4949 

                http://hpot.jp

大阪公演/梅田芸術劇場 06-6377-3800

 

                 【取材・文/榊原和子】

『雨の日の森の中』舞台稽古囲み(11月4日)

DSCF0613

NEWSのメンバーとして活躍中の増田貴久が、本格的なストレートプレイ、初座長、そして初コメディとさまざまに挑戦する作品、『雨の日の森の中』が、11月4日、初日を迎えた。
午後に行われた通し稽古のあと、座長・増田貴久を中心に、ヒロイン役で初舞台の谷村美月、ラーメンズや俳優として人気の片桐仁、演技力では定評のある佐藤仁美が、作者で演出家の西田征史とともに会見に出席した。(残念ながら増田貴久さんの写真は掲載できません)

DSCF0619

臆病な青年役の増田は「僕もビビリの気持ちはよく分かるので、役に入り込んでます」と共感。テレビのリポーターに「テゴシさん」と呼ばれ、ユニット「テゴマス」のパートナー手越祐也に間違われて苦笑い。「最近いちばんビビったことですか? いまテゴシって言われてビビりました」と逆襲した。

初座長としての気遣いについて「差し入れをできるだけいっぱいしようと思います」と話すと、そばから片桐が「すでに甘い物や水分をたくさん入れてもらってます」と報告、和気あいあいのカンパニーだ。

 

ストーリーは、ドライブに出かけたノボル(増田)と早峰(谷村)が、ガス欠で雨宿り。あまりにもノボルのビビリぶりに呆れた早峰は、脅かすつもりで「殺人ペンション」の話をする。やがて2人がたどり着いた古びたペンションは、売れないデュオの後藤夫婦が経営していた。そこで起きる勘違いや、思い込みによる恐怖がしだいにエスカレート。さらに宿泊客や電気屋が起こす騒ぎのなかに巻き込まれていくノボルと早峰は、ペンションからの脱出を試みるが…。

かなりスリリングでホラー感覚もあるのに、1分ごとに笑いが起きる抱腹絶倒のコメディになっているのは、お笑いから脚本家に華麗な転身をした西田征史の巧みな構成と、テンポのいい演出の成果だろう。同時に出演者全員の、間がよくてみごとなチームワークと、抜群のコメディセンスも大きな力になっている。

後藤夫婦を演じる片桐と佐藤、宿泊客で幼なじみの2人連れの菅原永二と玉置孝匡、電気屋の息子とその婚約者である中谷竜と初音映莉子、いずれも個性的で実力のある役者ばかりで、主役の2人を振り回して、シュールで突き抜けた笑いを生み出している。
2階建てのセットも効果的に使われていて、フットワークも軽いドタバタの果てに、本当の愛に気づいていく主役の増田と谷村の若さが清々しい。

 
 

 

『雨の日の森の中』

●11/4〜11/23◎東京グローブ座

●11/26〜30◎シアター・ドラマシティ

脚本・演出◇西田征史

出演◇増田貴久 谷村美月 佐藤仁美 片桐仁 菅原永二 玉置孝匡 中谷竜 初音映莉子

<料金>東京グローブ座/S席¥8500 A席¥7500 A席¥5500

           シアター・ドラマシティ/S席¥8500

<お問合せ>東京公演/東京グローブ座03-3366-4020

    大阪公演/キョードーチケットセンター 06-7732-8888                      

                  http://kyodo-osaka.co.jp

              

                     【取材・文/榊原和子】

 

 

記事検索
演劇キックラインナップ

演劇キック

観劇予報

宝塚ジャーナル

演劇人の活力源

日刊えんぶ

えんぶ情報館

えんぶショップ

えんぶミロクル

えんぶfacebook

広告について