稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

えんぶ9号ラインナップ

娘役2人が決定! 野田地図番外公演『表へ出ろいっ!』オーディション結果発表

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野田地図番外公演『表へ出ろいっ!』に出演する娘役のオーディションを行うと発表があってから約2ヶ月。出演する娘役が決定したとのことで、そのお披露目となる会見が726日に行われた。
母となる野田秀樹、父の中村勘三郎に呼ばれて登場したのは、なんと二人の女性。太田緑ロランス(おおた・みどり・ろらんす)さんと、黒木華(くろき・はる)さんだ。
オーディションには1155人の応募があったそうだが、全く違うタイプの魅力を持つ二人に甲乙付けがたく、娘役をWキャストにし上演するという結論に達したということである。

 

【野田秀樹と中村勘三郎による二人の紹介】

ーー太田緑ロランスさんについて

野田 太田緑ロランスさんは、舞台経験は意外にある方で。オーディションの時に膨大な台詞量があったんですけど、こっちが出したものに対して、非常に柔らかい反応があって。あとはご覧の通り、見た感じもおよそ我々夫婦の子供に見えないという所が(笑)、実に良い味になりまして、是非彼女をということになりました。

勘三郎 あの、今言ったようにね、全く想像できない感じがありました。突然変異というか、「私たちの娘にはあるわけない!(笑)」その面白さと、物の表現の仕方が「あ、そう言う風にやるんだ!」という感じが、とても面白かった。そこが僕はいいな、と思いました。

ーー黒木華さんについてs_RIMG1671

野田 黒木華さんは、去年の12月に僕が大阪で舞台のワークショップをやった時に、初参加をしてまして、それまでは舞台経験は全くありません。その後、今、野田地図で上演している『ザ・キャラクター』のアンサンブルオーディションに彼女は応募してきて、現在アンサンブルとして『ザ・キャラクター』に出演してます。ワークショップの時から、台詞に非常に間とか、幅があって。今20歳で、12月の時点では10代だったんですけど、「この子は、伸びしろが大きいんじゃないかな?」と思っていたら、やはりどんどん伸びていきましたね。今回のオーディションに来た1155人の中で見ていても贔屓目ではなく、レベルがちゃんとしてるなということで、彼女を選びました。

勘三郎 黒木さんは脚本の娘にピッタリなんですよね。幸せですよね、こういう違う個性の二人の娘を持てるっていうのは。実生活では野田さんは、女の子を持ってらっしゃいますけど、私は男の子二人なもんですから。こんな素敵なお嬢さんが二人できて、どういう稽古場になるかと今から楽しみにしています。

野田 Wキャストを思いついたときは、その手があったか!と思いましたけど、後で稽古時間のこと考えたら(笑)。決定したのは720日で、最近です。

勘三郎 野田秀樹が見て、私も及ばずながら見させていただいたけど、このお二人は、この芝居に出なくても、どこかで必ず出てくる人ですよ。本当に素敵な才能だと思ったんですよね。あの、頑張ってください。芝居にこういう人がいるってことを知らせたかったよね。

野田 うん。無名だから選んだということでは全くないんですが、本当に舞台から、新しい女優さんが出てくるって言うのが、今一番、日本のお芝居の元気のないところのような気がするから、そこで舞台から新しい人が出てきたっていう、メッセージを伝えたいと言う感じですね。


【娘役二人から挨拶】

太田 太田緑ロランスと申します。よろしくお願いします。今日でちょうど発表から1週間が経ちましたが、本当に楽しみで仕方がないです。台本を読んでいても、父親が勘三郎さんで、母親が野田秀樹さんなんだと思うと、すごく嬉しさがこみ上げてきたりもしますし、これをどうやったら、どういう風になるかな、こうやったらまた違うかな?と、そういうのを色々考えるのが今すごく楽しみで仕方がなくて、稽古が待ち遠しいなという心境です。s_RIMG1669

黒木 私はさっきもおっしゃってくださったように、あまり舞台の経験がないので、お父さんと、お母さんと(太田を見て)お姉ちゃん?の(笑)、姿を一生懸命見て、いっぱい色んなことを吸収して、楽しい舞台にできたら良いなと思っています。お願いします。

【質疑応答】

ーー太田さんの表現の仕方が面白いとおっしゃっていましたが、具体的にどのような表現に面白さを感じましたか?

勘三郎 台詞にね「チビ」というのがあるんですよ、小さい男性を愚弄するような。その愚弄の仕方が、背が大きいでしょ、もう彼女に愚弄されたらチビは生きていけない(笑)。
全部軽い感じですっすっ、と来たのでね、笑いました稽古場で。これ大変なんですよ。二人とも本当に上手いから、全く違うドラマになるような気がする。二人の力でもって、私たち夫婦も絶対変ってくるから、違う作品になるような気がするんです。大変なんですけどね、でもそれだけ期待してます二人に。

ーー娘役のお二人にお聞きします。今までご覧になったことのある野田さんの作品の印象は?またお互いの印象は?

太田 私が拝見させていただいた中で、一番印象に残っている野田さんの作品は『THE BEE』で、あれは本当に人間の見たくもない悪意のようなものが、目の前にこれでもかと突きつけられる緊張感があって、席に座っているのがしんどくなるぐらい、衝撃を受けました。『THE BEE』の両バージョン(日本・ロンドンバージョン)ともすごく好きでした。
黒木さんの印象は、2次選考の時に17人ぐらいのグループで、黒木さんと一緒だったんです。その時に、すごく透明感のある方だなと思って、実は気になっていました。Wキャストだって知らされて、その後すぐに取材があったんですけど、その会場で華さんが先にいらしてて「あ!やっぱり!」って私は思いました。

s_RIMG1668黒木 私は『贋作・罪と罰』が実際に劇場に見に行ったお芝居なので、すごく印象に残っています。太田さんは、えっと、17人の時には、自分でいっぱいいっぱいで、周りの人の事があまり見えてなかったんですけど、お会いした時に、すごい色んなお芝居をやられている方だと聞いていて、あとやっぱりスラッとしていて、あの体型のことだけでなく(笑)、雰囲気もスラッとしている素敵な方だなと思いました。

ーーこの話の中の娘はどんな娘なのか?また、二人のキャラクターが違いを演出でどう表現していきたいか。

野田 今度の芝居は、わかりやすさでいうと、自分の書いた芝居の中でこれほどわかりやすい芝居はないっていう、今まで書いたことのない芝居なんですね。自分の名前じゃなく、偽の名前使った方が良かったかな、というような芝居なんです。彼女達がやる役は、極めて気が強く書かれていると思います。その意味で、勘三郎さんと僕とも対等にやり合えないといけないんですね。僕の芝居は身体性を重視するオーディションが多いんですけど、台詞をこれだけ重視したのは初めてかもしれないです。それは長時間、丁々発止をし続けなければいけない。そういう部分があるからです。
二人は全く見た感じも違いますし、おそらく勘三郎さんが言ったみたいに、稽古場で実際立ってみると、およそ違うものができると思うんですよね。その時に、彼女達の問題より、おそらく我々がどう受けて、別の父親、別の母親になれるか。そこが大変だけど、楽しみですね。

勘三郎 大変ですよ(笑)。親父は娘とお母さんにタッグ組まれたりするんですけど、この強力タッグにこっちも立ち向かわなきゃいけないんで。また台詞が面白いんですけど、覚えにくいんですよ、日常会話で。一昨日、楽屋でちょっと声を出して読んでたんですよ。隣が中村扇雀の部屋だったんですが、そうしたら扇雀が芝居が終わってから、「勘三郎さん、だ、大丈夫ですか?」って「あんなにしつこく喧嘩なさってましたけど。」って(笑)。ずっと喧嘩してるんで、テンションの上げ方が大変ですよね。それも台本見てるからやれるんで、あれを台本なしでみんなを相手にしたら、本当に大変なことで、それも2人、いや3人を相手にしなきゃいけないから、大変ですよ。

ーー舞台から新しい人が出て来て欲しいというお話でしたが、今回オーディションをなさっての印象と、選ばれなかった人に何が足りなかったのか等ありましたら。

野田 書類で落とした人っていうのは、実際に会っていないわけで、そんなことは本当は人間ができることじゃないんですけど、でもこうして出会いを求めてますので、そうやらざるを得なかった。だから、オーディションに落ちた役者さんの中にも、かなり可能性がある人がたくさんいたとは思います。たまたま今回、この役には、この二人が素晴らしかったんですけど。でも「あ、これだけ、やる気がある役者さんたちがいるんだな。」というのは、正直ビックリしましたね。やる気があって、能力があるっていうのかな。このオーディションに受からなかった女優さんの中でも、今後何かの時に、キャスティングできたらいいなっていう、そういうズルい(笑)収穫もありました。今回選んだこの二人は、言葉に強いんですね。最近の若い人と会っていると、言葉に弱いのを感じます。言葉っていうのは、本当はどうにでも読めるのに、通り一遍にしか読めない。書かれている文字はこう読まなきゃいけないという頭で読む人が多いんですが、彼女たちはそういう所がなかったんですね。

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会見後のフォトセッションでは、ポーズを求められた勘三郎がまず黒木の肩に手を回し、会場が笑いに包まれた。
更に登場した4人の中で一番の長身である太田が、野田に促され、野田の肩に手をそこでまた笑いが起こった。最後は4人で手を繋ぎフォトセッションは終了。
期待に胸を膨らませ、物怖じしない堂々とした雰囲気を感じさせた太田に、透明感や初々しさの中に芯の強さがあるような、不思議な存在感の黒木。この二人が野田秀樹と中村勘三郎という両親を持ち、演劇の世界の中でこれからどう生きていくのか。
予想外のWキャストに、より期待が高まった『表に出ろいっ!』。劇場で見られる日が楽しみだ。

 

太田緑ロランス(おおた・みどり・ろらんす)
81年、北海道生まれ。フランス人を父に持つ。99年早稲田大学在学中に初舞台。以降舞台・映像ジャンルを問わず数十本の作品に出演。

黒木華(くろき・はる)
90年、大阪府生まれ。京都造形芸術大学3回生。現在 、NODAMAP『ザ・キャラクター』にてアンサンブルとして初舞台。

NODAMAP番外公演『表に出ろいっ!』
作・演出◇野田秀樹

出演◇中村勘三郎/野田秀樹/太田緑ロランス・黒木華(Wキャスト)

●9/528◎東京芸術劇場 小ホール1

〈料金〉一般7,500円/サイドシート4,000円(25歳以下2,000円 要身分証)/高校生割引1,000円(要学生証)  (全席指定税込)

〈問い合わせ〉NODAMAP 03-6802-6681

【取材・文/岩見那津子】

1年に7作という挑戦 『三谷幸喜大感謝祭』制作発表と懇談会レポ

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2011年の7月8日に50歳を迎える三谷幸喜。
その生誕50周年を、映画、TV、舞台、小説と4つのジャンルでフル稼働、自らイベント化してしまうというスペシャルな企画、『三谷幸喜大感謝祭』の制作発表と懇談会が、7月22日に東宝本社の会議室で行われた。

来年1年間に三谷が生み出す作品は、映画1本・TVドラマ1本・舞台4本、小説1本の計7本で、そのどれもが新作であり書き下ろし。しかも舞台・TVドラマ・映画に関しては演出も自分で手がけるという。とくに演劇関係では、『コンフィダント・絆』『恐れを知らぬ川上音二郎一座』『グッドナイトスリイプスタイト』『TALK LIKE SINGING』『なにわバタフライ』とつねに話題作を生み出してきた三谷が、一気に4本の新作を送り出すということで、大きな期待が寄せられている。

そんな制作発表の会見で、まず三谷は、会見に集まった多数の記者たちに向かって、「本当はこじんまりとテーブルを囲むみたいなイメージだったんです(笑)。本来、僕は自己顕示欲が強い方ではないし、お誕生会も好きではないし、自分のために人が集まってくれると申し訳なくなるほうで。ではなぜこれをやるのかと言われそうですが」と笑わせる。

そして今回、大イベントになったことについては「僕の作品を生み出すモチベーションは“感謝”です。これまで自分がここにくるまでに影響を受けてきた映画や舞台、テレビなど、色々なジャンルに対する恩返しや、仕事で一緒になった出演者の方々やスタッフなど作品を作り上げてきた人々に対する感謝が僕に次もやろうと思わせるんです。そういう仕事の中で、またやりましょうよとか言われると、ついやりましょうと言ってしまうクセがあって(笑)、そういうのが積み重なって、来年すごい数の作品を作ることになってしまいました、というと後悔してるみたいですが、決して後悔してるわけではなく。ちょうど僕も50歳になるところだし、1年で総まとめをということで、皆さんへの“大感謝祭”という形にしようと。これは今まで僕の作品を観てくださった皆さんや、これからの作品を観てくださる皆さんへ、そして僕も一生懸命頑張っていい作品を作りますので、それに対して皆さんに感謝してもらうという気持ちもありますし(笑)、色々な感謝の気持ちを『大感謝祭』という意味に込めました」

また今回のタイトルロゴは和田誠が「50」をデザインしていることも紹介された。

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【三谷幸喜自身によるラインナップ解説】

1、舞台『ろくでなし啄木』

(1月〜2月/藤原竜也、中村勘太郎、吹石一恵)

極貧の中で夭逝した薄幸の歌人、石川啄木をめぐる謎とサスペンスの物語。27歳で夭逝した天才歌人。そのイメージを裏切るようなルーズで嘘つき、女好きなその実体とは? 

三谷「話の発端はテレビの『新選組』で竜也くんが「一緒に舞台やりたいですね」と打ち上げで言ってくれたことで、勘太郎くんも吹石さんも出ていたんです。そのときも恋の駆け引きをしたこの3人でどろどろの三角関係をやってみようと。笑いの要素は少しはあると思いますが、来年1年はコメディの1つ先に行ったものをやろうと思っているので、エロチックサスペンスみたいな、書いたことないんですが(笑)、そういうのにしたいです」

2、 舞台『国民の映画』

(3月〜4月/小日向文世、段田安則、白井晃、石田ゆり子、風間杜夫 他)

ヒトラー内閣がプロパガンダのためにつくった宣伝省の初代大臣パウル・ヨゼフ・ゲッベルス。最高の国策映画のために集められた人々が考えたことは? ナチス政権に立ち向かった、ドイツ映画人たちの物語。 

三谷「僕が自分から発信した作品で、前々からやりたかった現場の話なんですが、映画を企画するプロデューサーの話です。たまたま『映画大臣』という本に出会いまして、これはゲッベルスの話で、これならいけると思いました。いわば映画会社の社長であり、彼に取り入るさまざまなプロデューサーたちという姿を重ねられるなと。もちろんゲッベルスはユダヤ人迫害にも手を染めた人ですが、一番好きな映画は『風と共に去りぬ』だったりするわけです。そういう映画マニアがホロコーストを作り出していたことを考えたら怖いですね。ゲッペルスが小日向さんで、親衛隊長ヒムラーを段田さん、空軍元帥のゲーリングを白井さん、ゲッペルス夫人に石田さん。それから風間さんは初めてですが、僕が昔から憧れの俳優さんです」

3、舞台『ベッジ・パードン bedge pardon』

(6月〜7月/野村萬斎、深津絵里、大泉洋、浦井健治、浅野和之)

日本を代表する文豪夏目漱石が、英国ロンドンに旅立ったのは明治33年。カルチャーショックで過酷な日々を送る彼が唯一心通わせることができた女性は女中のベッジ・パードンだった。 

三谷「萬斎さんの背広姿を見たとき感じた現代人ぽくない不思議さをどうすれば出せるかなと。それをロンドンで引きこもってた漱石に重ねてみようと。そこの女中さんにつけたあだ名がベッジ・パードンで、彼女も訛がひどくてあまり人と話したがらない人なんです。2人が心を通わせる話です。そして外国人とのギャップを感じさせるために背の高い浅野さん、浦井さん、大泉さんにイギリス人になってもらいます(笑)」

4、TVドラマ『ウォーキング・トーキング』

(8月収録 wowow開局20周年ドラマ/出演者未定)

山道で迷ったある夫婦の会話を通し、笑いとほんのちょっとの涙の中に、夫婦とは何かを問う。限定された空間、限られた登場人物、テレビドラマの限界に挑む画期的なシチュエーション・コメディ。 三谷「僕の基本は舞台だと思ってるんですが、いちばん子供のころから影響を受けているのはテレビで、そのテレビがまだまだ枠にとらわれていると思うので、演劇と映像のドッキングという、いい形の集合体ができないかと思ってまして。やってみようと思うのが1シーン1カットの長回しのドラマなんです。それをあえて屋外で撮るというので、90分のドラマです。稽古でしっかりやっておくことで本番1回で撮るという実験的な作品です」

5、書き下ろし小説『KIYOSU』

(幻灯舎/秋頃に発売)

20年ぶり、満を持しての新作小説は、なんと書き下ろしの歴史モノ!織田信長の後継者を決める「清州会議」の全貌。三谷版「七人の怒れる侍たち」。 

三谷「僕は日本の歴史が大好きで、この清州会議というのは、日本の歴史上で、初めて会議の場で歴史が変わった瞬間なんです。織田信長の次男と三男のいずれに跡を継がせるか、この会議で決まるわけです。いわばディスカッションドラマで、いつかこれが映画になるといいと思ってます」

6、映画『ステキな金縛り』

(秋・全国リロードショー/深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、浅野忠信・中井貴一)

人生のどん詰まりに立たされたダメダメ弁護士と、421年前に無念の死を迎えた落ち武者幽霊の奇妙な友情。二人の前に立ちはだかるのは、一切の超異常現象を信じようとしない堅物検事。かくして全世界の注目の中、幽霊裁判は幕を開けた。三谷幸喜が満を持して描く、ファンタジー・法廷サスペンス・コメディー!

三谷「僕が作りたかった映画が理想的な形でできたと思う。深津さんがすごくいい。演技力は素晴らしいです。もう撮り終わってます」

7、舞台『90ミニッツ』

(12月〜2012年1月/西村雅彦、近藤芳正)

『笑の大学』から15年。西村雅彦と近藤芳正のために新たに書き下ろす二人芝居は、現代を舞台にある「選択」を迫られた二人の男の戦慄の物語。一切の笑いを封印した究極の90分間。

三谷「トップスの閉館のときに15年ぶりにサンシャインボーイズの舞台をやって、二人がもう一度『笑の大学』やりたいと言ってきて。面倒くさいなと思ってたのに、つい懐かしさもあって心開いてしまいました(笑)。でも同じ作品をやるのはしゃくだから、それを超えるモノを3人で作ろうと。あれは30代でしたから50歳の僕らの作品をやろうと。今回はコメディではなく、90分を手に汗握るような、息もできないくらいの緊迫状態が続くような、濃密なものを作りたいですね」

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【懇談会】

三谷「今回のい7本で、映像はコメディですが舞台は笑いがメインではありません。でも、それはぼくがコメディから次のステップに進化したというわけではなく、このあとまたコメディに戻っていくと思うんですが、笑い以上に人間ドラマのような作品を作ってみたくなったんです」

ーー全部自分で演出するわけは?

三谷「自分が書いたものは自分が演出したほうが確実に伝わるし、これだけたくさん書くと遅れるわけにはいかないのと、自分が演出しないと細かく書かなくてはならないことが多くなるので、自分で演出したほうが書くうえでも簡単なんです」

ーー命を縮めるのではないかという感じですが、健康管理は?

三谷「(笑)人間ドックに入ったら20代の心臓だと言われました。コメディはエネルギーもいるんですが、もう50歳だと思うとあと10年くらいしかコメディを書けないかもしれないと思うとすごく焦りますね。でも野田秀樹さんなんか僕よりさらに5歳も上だからすごく焦ってると思います(笑)」

ーー全部当て書きですか?

三谷「劇団をやったたことでそういう習性になってると思います。新しい俳優さんとは、けっこうテレビでは一緒にやってて。段田さんも初めてですが、イメージでヒムラーの二面性が出せる人だな、観たいなと思いました」

ーー笑いではなく人間ドラマということですが、なぜ?

三谷「ずっとコメディをやってきて、ライブというかダイレクトに伝わるし、面白いという感情はすごくストレートですが、その他の感情も書いてきたくなったというか。でも舞台を観たお客さんが"共感する"という根本の部分は変わらないと思ってます」

ーー50歳という節目の年を迎えた気持ちは。

三谷「これで何か変わるとは思ってないし、新しい出発点にはなると思ってますが、本質的なことはあまり変わってなくて、振り返ってなんて自分は同じことばかりやってるんだろうという思いと、ここまでブレずにやってきたことへの自負もあります。きっと70歳になっても同じことを考えるし、やってると思ってます。今回ももっとイベント的にパーティをやるというのもあるけど、僕としてはこれが精一杯の自己顕示がこのラインナップということでしょうね」

ーーブレずにやってこられた秘訣は。

三谷「自分を知ってるということでしょうか。できることを知ってるし、歌舞伎でもそうですが、色々なことをしてますけど自分のできることしかやってきてないんです。それは自分のできることをわかってるからだと思ってます」

 

【スケジュールの出ている舞台】

●『ろくでなし啄木』

1/7〜23日◎東京芸術劇場中ホール

2/17〜26日◎天王洲 銀河劇場

1/27〜2/13◎イオン化粧品シアターBRAVA!

●『国民の映画』

3/7〜4/3◎パルコ劇場

4/6〜17◎森ノ宮ピロティホール

4/20〜5/1◎神奈川芸術劇場

●『ベッジ・パードン bedge pardon』

6/6〜7/31◎世田谷パブリックシアター 

 

【取材・文/榊原和子】


なんとも言えない余韻 NYLON100℃『2番目、或いは3番目』

 

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廃墟、ボロボロに壊れたアーケードの屋根、地中に住む白くて太くてなんかニョロっとした謎の生物、そのニョロっとした生物と仲が良い老人を含むその廃墟にすむ人々、遠くの町から人々を救うためにやってきたという来訪者たち寂れた街で誰かと誰かが出会って、会話を始め、それも全く噛み合わなかったりしながらだけれど、でもそこから物語が生まれていく。

オープニングがポップで、ちょっと不気味だけど、最高に可愛くて、そこで心をガシッと掴まれた。あれはもう本当に格好良い。ケラさん演出の作品はここ最近毎回、スクリーンに映像を流したり、そのまま舞台に映像を投影したり「こんなことが可能なんだ!」と驚かせてくれる演出があるのだけれど、今回ももれなく素敵。

客席の上に壊れたアーケードの屋根を作ったことも憎らしかった。空間の広がりが増す。かつてそこに一本大きな道が通っていて、その両脇に家やお店があったのだろうという失われてしまった賑やかな風景が、客席上に屋根があることで想像しやすくなった。劇場に入った瞬間から、これから上演される作品の匂いがする憎い舞台美術だった。

なぜこんなにも街が寂れてしまったのか、その原因は明かされない。困っている人を助けたいと街を訪れた来訪者の中には、惨めな生活をしている人を実感することで、自分の方が幸せだと信じ込みたい人もいる。端から見たらとても利己的。だけど、それが表に現れるか、そうでないかの違いだけで、自分より不幸な人を見て安心する心は少なからず誰もが持っているはずだ。日常から離れ、言動が誇張された登場人物たちを見て、自分自身の心を改めて発見する。少しげんなりする、けど、認めざるを得ない事実をちょっと作品の中に漂わせて、気付かせて、観ている人のお腹の中にストンと落とし込んでくるような感覚。笑いもたくさん散りばめられているし、先が見えない絶望もあるけれど、人と人とが繋がっている暖かさもある。ふわふわっとした作品のテイストは見る人毎に与える印象を変えると思う。

廃れた街で底抜けに明るくあっけらかんと生きて、ことある毎に爆笑している双子の姉妹。特に姉。街の暗さを感じさせない脳天気さは、救いなのか、頭のネジが少々緩んでしまっているのか。実りそうで、なかなか実らない、傍らをすり抜けていく恋。またそれとは別の若さの特権的キス。生きる意味を感じない世界から生まれてきた狂気。お見合い話。街では様々なことが起きるのだけれど、そのエピソードの一つ一つが最後に綺麗にまとまって観客を納得させるようなものではない。

わかりやすい所だと、白くて太くてなんかニョロっとした生物がなんだったのかは最後まで謎のまま。今もすごく気になったままだ。

上演時間も短くはないし、謎が謎のまま物語も終わりを迎えるけれど、人と人との間の距離感、関係を読み取ったりして考えを巡らせたり、単純に大笑いしたり、興味をそそられ続ける時間が続いた。飽きない3時間。最後には、ぽっかりとした暖かい気持ちと、希望のない真っ暗闇の両方を観た気がして、なんとも言えない余韻が残った。

 

NLON10035th SESSION

2番目、或いは3番目』

作・演出◇ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演◇犬山イヌコ みのすけ 三宅弘城 峯村リエ 大倉孝二 松永玲子 村岡希美 藤田秀世 長田奈麻 喜安浩平 白石 遥 伊与顕二 斉木茉奈/ 小出恵介 谷村美月 緒川たまき  マギー  

●6/217/19◎下北沢 本多劇場
●7/22◎中京大学文化市民会館 プルニエホール
●7/2425◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
●7/28◎アステールプラザ 大ホール
●7/318/1◎北九州芸術劇場 中劇場
●8/48/5◎りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
●8/7◎いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場

<料金>

東京・大阪公演/6,800円(全席指定・税込)
名古屋公演/7,300円(全席指定・税込)
広島公演/7,000円(全席指定・税込)
北九州公演/前売5,500円 当日6,000円(全席指定・税込)
新潟公演/6,300円(全席指定・税込)
いわき公演/1階席5,500 2階席4,500円 バルコニー席・車イス席4,000円 学生1,500円(全席指定・税込) 

<問い合わせ>
東京公演:キューブ 03-5485-8886(平日1218時)
名古屋公演:東海テレビ放送事業部 052-954-1161
大阪公演:梅田芸術劇場 06-6377-3888
広島公演:TSS事業部 082-253-1010
北九州公演:北九州芸術劇場 093-562-2655
新潟公演:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521
いわき公演:アリオスチケットセンター 0246-22-5800

 

【文/岩見那津子】 
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