稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

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ザ・スズナリ開場30周年記念公演『うお傳説〜立教大学助教授教え子殺人事件〜』

なんともいえない舞台。
でもそんな感想を抱いてもいいんじゃないかと思う。
好き嫌いも分かれるだろうし、そもそも理解できるかできないかも全て観た人自身に委ねられるような作品だった。

池に浮かんだ丸太のセットの上を役者が歩く。
落ちたらすぐ下は水。戻ってこられないかもしれない。
一歩一歩足もとを確かめながら丸太の上を行き来する役者の姿を見つつ、
生きていくということは、丸太からいつ足を踏み外して水の中に落ちるともわからない、
そんな不安定なものかもしれない、などと思いを巡らせた。

不倫の末、教え子を殺してしまった大学助教授。
実際にあった事件をベースに書かれた戯曲ではあるが、その舞台はどうやら精神病院であるらしい。
夫の不倫に耐えきれず、精神を病んだ妻。その妻と夫との言い合いは必見。
特に占部房子のキレた勢いから目が離せない。
エネルギーがどん!と客席に向かっても飛んでくる感じだ。
その爆発をさらりと受ける、谷川昭一朗もまた面白い。

ザ・スズナリの会場30周年記念公演。
1981年にスズナリで上演された舞台の再演である。
でも30年という年月の経過を感じさせない、今でも昔でもない独特な匂いがあったような気がする。
その匂いはきっとスズナリだからこそのものなのだろうし、これから先もずっと変わって欲しくないものだ。
演劇を見るようになり、気がつくと下北沢のザ・スズナリの名前を知るようになった。
日本の小劇場のメッカ、スズナリではじめて芝居を観たとき、やっと演劇好きの仲間に入れてもらえたような気がしたのを今も覚えている。

わかるとかわからないを超えて、ただ発せられる言葉であったり、その空間の雰囲気であったりを思う存分味わうことができれば、そこでなにか自分だけの感じ方を掴むことができるはず。
きらっと光る台詞であったり、ぐさっと突き刺さってくる役者の演技であったり、演出の妙であったり・・・その日の自分がこの作品を観て何を思うのか。
気負うことなく、劇場で体感してみて欲しい。

最後に客席に置いてある当日パンフレットが素敵だということも付け加えておく。
1981年から2011年までのザ・スズナリ上演記録が細かくびっしりと。
歴史、感じました。

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ザ・スズナリ開場30周年記念公演
『うお傳説〜立教大学助教授教え子殺人事件〜』

作◇山崎哲(新転位・21)
演出◇関美能留(三条会)
出演◇谷川昭一朗 占部房子 ノゾエ征爾 榊原毅 渡部友一郎 森下真樹 中島愛子

●11/19〜28◎ザ・スズナリ



【文/岩見那津子】

若い役者たちのエネルギー溢れる『袴垂れはどこだ』稽古場レポとインタビュー


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tpt(シアタープロジェクト・東京)がプロデュースする『袴垂れはどこだ』が、11月17日から「すみだパークスタジオ倉」で公演中である。


戦乱と圧政の苛酷な中世、「あわれなるかな草も枯れ 鳥もうたわぬ世なりけり」と嘆き歌われた時代に、いつか民衆を救にやってきてくれると信じられていた義賊が「袴垂れ」。

その伝説の人物をタイトルロールにしたこの作品は、『真田風雲録』『オッペケペ』などの傑作で知られる福田善之の戯曲で、1964年、劇団青年芸術劇場(青芸)によって初演された。
当時はまさに学生運動や安保闘争で激しく日本社会が
揺れ動いていた時代で、この戯曲はそんな状況に警鐘を打ち鳴らし、その年の岸田戯曲賞を受賞している(福田氏は受賞を辞退)。


その作品が、千葉哲也の演出で群衆劇的な要素も加えた舞台となって甦った。

出演者は総勢39名。山本亨、鈴木ゆき、真那胡敬二というメインキャストたちに、オーディション・ワークショップから選ばれた34名が加わって、戯曲には出て来ても、これまでは舞台上に登場しなかった役どころも全部登場することで、よりリアリティと迫力を増して、民衆の視点から社会を描いたこの作品のエネルギーをダイレクトに伝えてくる舞台となっている。


公演の初日前に稽古場を見る機会を得たので、その様子をレポートするとともに、メインキャストをつとめる山本亨と、演出を手がける千葉哲也に話を聞いた。


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【稽古ルポ】
 

上演する劇場「倉」が同じ敷地内にある「すみだパークスタジオ」、その一角にある広い稽古場に30人以上の出演者が集まっている。ほとんどが若い俳優たちだけに自然とあちこちから笑いがあがって、明るく賑やかな雰囲気だ
 

ちょうどその日の稽古は幕間狂言の場面で、真那古敬二を中心に村人たちがそれぞれの夢を語り合い笑い、歌い踊っている。初演時(1964年)の演出家だった観世栄夫が、それまでは持ち込むのを避けていた「能」の様式を意識して取り入れたという場面だけに、どこか戯画化された軽さとのどかな笑いを感じさせる。
やがてその笑いの中で、1人の村の若者が暴れ出す。優しげな青年なのだが眠りの淵から醒めないままに、意識下に押し込めてあった恨みつらみを一気に噴出させるのだ。
その様子は衝撃的で、この作品の底辺に流れる人間の心の闇が伝わってくる。
 

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演出席で俳優たちを眺める千葉哲也は、穏やかな笑顔ながらも細かくチェックしていて、気になる点は立ってそばに行き、自分でやってみせる。
その動きや表現は俳優としてのキャリアを感じさせて
適確なだけに、おそらく俳優たちにも伝わりやすいのだろう、指導された俳優はすぐに芝居を変化させる。
この日も暴れ出す若者役の岡山天音はまだ17歳という若さだけに、千葉の指示と説明をすぐに吸収して演技が変わっていくのを目の当たりに見せてくれた。

群衆たちのフォーメーションを振付け家と考えながら動かし、また、若い俳優たちのパワーと真那古敬二などベテランの巧みな演技を組み合わせながら、短い幕間狂言の場面の中にも、めりはりとテーマをくっきりと描き出していく。
そんな演出の片鱗にこの作品のエネルギーがうかがえて、仕上がりが楽しみな稽古場となっていた。


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【千葉哲也インタビュー】
 

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最近は俳優としてだけでなく演出家としても活躍中の千葉哲也。tpt
では06年の『スラブ・ボーイズ』を皮切りに4作品を手がけていて、読売演劇大賞優秀演出家賞などを受賞している。約2年ぶりとなったtptでの演出とこの作品について話してもらった。


ーー出演者の人数がすごいのですが、千葉さんの発想だとか?

オーディションで選んだ若い俳優たちが34人ほど出ています。戯曲にはおじいと少女と男と村人7人だけが固定で、実際は登場してこない人物がたくさんいるんですが、その人たちを登場させたいという意図があったんです。基本的には黒子ということで出てもらって、たとえば今の夢の場面では美女になったり、他のシーンでは風景にもなるし、雪も降らしたりとかいろいろ活躍してもらってます。
 

ーーこの作品はタイトルがちょっと抽象的ですが、内容はとても伝わりやすいですね。

そう思います。僕は青年座の養成所時代に同じ福田善之さんの『真田風雲禄』をやっているのですが、今回のこの話もすごくわかりやすいし、素晴らしい作品だなと思います。60年安保が引っかかっていると思うんですが、それを知らなくても人間の中に巣食っている「善と悪が共存できるか」とか「理想だけでは前に進んでいけないけれど、それでも前に進まなくてはいけない我々」とか、そういうところには共感を抱けると思います。そして「前に進んでいくということはどういうことなんだろう」と考えさせられる。そういう意味では今のこの状況とか現実の中で、なんとか生きていかなくてはならないという今の僕らのこのエネルギーをそのまま表現するしかないと思っています。
 

ーー作者の福田さんにも会われたそうですね?

福田さんはチャーミングな紳士で、「この本のどこが面白いの?」と言われました(笑)。でもすごく面白い本だと思います。「袴垂れ」というのは、観た方のそれぞれの中にあるものだと思うし、どこにいるかわからない「袴垂れ」は、理想であり夢であり、それを見つけるには自分から足で歩き始めないと見つからない。そういう意味では今の僕らにふさわしい戯曲です。
 

ーー千葉さんはtptで演出家として良い仕事をされていて演劇賞も受けられましたね。

ここでは若い人と一緒にやれることで、実験的な作品や新しい作品に取り組みやすいのが有り難いですね。演劇現場が少ない中で、無名の若い俳優たちがオーディションを受けにきて、受かれば舞台に出られて、山本さんや真那古さんのようなキャリアのある俳優さんと一緒の舞台に立てていろいろなことを教われる。そういうチャンスがあるのがとてもいいなと。僕自身も教えられることも多いです。そういう創造現場の活気とエネルギーが伝わるのが、テレビや映画とは違う生の演劇ならではのよさですし、そういう創造の場にぜひお客さんも立ち合っていただきたいですね。



【山本亨インタビュー】
 

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いつかやってきて自分たちを救ってくれる「袴垂れ」を心待ちにして旅をする村人たち。その前に1人の男が現れる。人も殺すし村人にも手加減せずに勝手気ままに振る舞う
男は、「わしが本物の袴垂れじゃ」と名乗る。本物かどうか分からない、この「男」を演じるのが、ベテラン俳優でtptへの出演も数多い山本亨である。

 

ーー役名は「男」ということですが、本物の「袴垂れ」なのでしょうか?

彼が皆の憧れる「袴垂れ」なのかどうかということは物語が進むにつれて解き明かされていく、と同時に、村人たちが探し求める「袴垂れ」とはどういうものなのかということもわかってくるんですが、それ以上はお客さんの想像にまかせる話だと思っています。
 

ーー福田善之作品への出演はこれが初めてだそうですね

そうです。『真田風雲禄』をはじめ、素晴らしい作品を沢山書いていらっしゃる作家だという知識はあったんですが、台本を読んだときに言葉が綺麗だなと、詩人みたいだなと思いました。

ーーテーマについてはどんなふうに感じていますか?
この作品の民衆が自分たちの力で切り開いていこうとすることと、今、みんなで芝居を作り上げていく過程に
ちょうどリンクするし、震災後の状況にもリンクすると思います。たぶん福田先生の作品を知らないような若い方も多いと思いますが、そういう人たちにぜひ観てほしいし、こんなすごい作品があるんだということをわかってほしいです。
 

ーー千葉さんの演出も初めてだとか?

共演はしているんですが、演出を受けるのは初めてなんです。ご自分も俳優さんなので俳優の気持ちがよくわかっていただけることと、自身の経験の中から考えてくれて言ってくれるのでわかりやすいですね。それにしっかり人を見てくれるので安心感がある。若い人の才能もきちんと引き出せる演出家だと思います。
 

ーーtptには数多く出ていらっしゃいますが、ここでの作品作りについてはいかがですか? 

実は今回5年ぶりなんです。いろいろな作品に出させてもらったし、いい経験をさせてもらったので、今回、久しぶりに参加できて嬉しいです。
 

ーー中心の役で30人以上の若い人たちを引っ張る立場ですね

いや、引っ張るというより自分のことで一生懸命で(笑)。でも、みんなワークショップで集まってオーディションで受かった人たちですから、やる気がすごい。経験の有る無しとか上手い下手ではなく、この作品は群像劇ですから、彼らのあのエネルギーがそのまま伝わるといいなと思ってます。僕も負けないように自分の役を一生懸命やるしかないです。


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tpt

『袴垂れはどこだ』

作◇福田善之

演出◇千葉哲也

美術◇朝倉摂

出演◇山本亨、鈴木ゆき、真那胡敬二/岡山天音、上田和弘、山田宏平、江前陽平、熊本昭博 他

11/17〜30◎すみだパークスタジオ倉

〈料金〉4000円(全席指定・税込)

〈問合せ〉tpt シアタープロジェクト東京 03-3635-6355

http://www.tpt.co.jp (PC)

http://www.tpt.co.jp/m(携帯)


【取材・文/榊原和子】



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斬新な脚色の劇団NLT『検察官』


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原田大二郎(客演)、弓澤公望



劇団NLTがゴーゴリの『検察官』を届けてくれる。『検察官』は発表された時に印刷所の職人たちが読むのに夢中になったという逸話を持つ作品だ。それを、モスクワ芸術座付属スタジオ教授であるロシア人演出家ブーリバが斬新に脚色しての上演。


ある都市の市長(原田大二郎)は友人の手紙により、ペテルブルクから極秘に検察官が来ると知る。脛に傷を持つ市長ほか、それを知らされた歴々は慌てる。一方、賭けに負けて宿代を払えないまま町に逗留しているフレスタコフ(弓澤公望)という男がいる。下男オーシップ(高越昭紀)を一人連れたまま身動きでぬくせに実家の金を目当てに尊大でダメお坊ちゃまぶりを呈している。

しかし、どうしたことか市長がフレスタコフの元にやってきて宿屋の払いを受け持ばかりか、自分の家に滞在するよう勧めてくる。地主たちの情報により彼が検察官であると決め付けてやってきたのだった。たいへんな歓迎を受けて最初は戸惑うフレスタコフであったが、調子づいて名士たちに借金を申し込んだり、賄賂を請求したり、市長の妻(眞継玉青)や一人娘マリヤ(飯田千尋)に手を出したりと好き放題となっていく。懐柔しようというのは役人ばかりではない。街の人々も彼の口ぞえをもらおうと貢物を持ってくる。散々もらったフレスタコフとオーシップは、伯父に挨拶に行くといって市長宅を去っていくのだった。


この作品の観るべき点のひとつは、私欲にかられる人々の検察官に対する態度である。市長、慈善病院長(川端槇二)、好色な判事(加納健次)、気弱ですぐに倒れてしまう教育長(海宝弘之)、無神経な郵便局長(川島拓)といった役人たち。彼らがフレスタコフの部屋に尋ねて個人的に話す場面が、それぞれの個性が出て楽しい。また、茫洋としたドイツ人医師(平松慎吾)、訴訟する下士官の妻(木村有里)といったベテラン俳優陣の充実が、この物語をいっそう面白くしている。結局、誰もが振り回され馬鹿にされ失った。そして、最後の市長の長セリフは緊張感と哀切があった。


衣裳は帝政ロシア時代をリアルに再現しているわけではないが、ほかの役者がそれなりに拵えているなか、市長夫人がショートカットで奥方役を演じるのは違和感がある。

全編に表れる羽毛は、ロシアのことわざ「鼻面が羽毛に覆われている豚」を使った揶揄だそうだ。ことわざの意味「鳥小屋に入り込んで善からぬことをしている豚」が分からなくても、ところどころに出てくる羽が変であることは我々日本人にもわかる。なんだ、この羽は!


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左より 海宝弘之、原田大二郎(客演)、川島拓、川端槇二、加納健次、弓澤公望 
左より 霜山多加志、海宝弘之、加納健次、飯田千尋、原田大二郎(客演)、眞継玉青、川島拓、川端槇二、佐藤まり


劇団NLT

『検察官』

脚本◇ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリ

演出◇セミョン・アレクサンドロヴィチ・ブーリバ

出演◇原田大二郎(客演)、川端槇二、平松慎吾 他

●11/17 〜 23◎博品館劇場

〈料金〉一般/5300円 学割/3000円

http://www.nlt.co.jp/
 

【文/佐藤栄子 撮影/江川誠志

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