稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

ミュージカル『GRIEF7』

田中健インタビュー

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最近は映像だけでなく、さまざまな舞台でその充実ぶりを見せてくれている田中健。

4月にも早乙女太一の明治座公演で、大きな存在感と懐の深い演技で、
物語の最後をみごとに引き締めてみせた。
 

そして、この6月4日からはまた新たな舞台に挑戦している。

5年ぶり二度目になる新派への客演で、
有吉佐和子の名作戯曲『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の米国人イルウス役である。
 

横浜の遊郭を舞台に繰り広げられるこの物語は、
現代社会にも通じるような情報の一人歩きとその果ての騒動を描いているが、

その騒ぎのいわば火付け役とでもいう要の役どころが、田中健演じるイルウス。 
任の重い役だが、水谷八重子をはじめとする芸達者なメンバーたちとともに稽古する毎日は、

まるで劇団員のように居心地がいいという。
 

そんな田中健に、この名作舞台のこと、新派出演の楽しさ、

そして今では演奏家としてもすっかり有名になったケーナのことなどを話してもらった。



【日本人の中の外国人という面白さ】
 

ーーこの作品に取り組まれて、まず、ご自分のイルウス役についてどんなふうに演じようと?
 

いわゆる翻訳劇ではない中での外人役は初めてで、日本語の喋れない外国人の役ですから、劇中では英語を喋らなくてはならない。そこがまず難しいですね。しかも明治の頃の英語ですからブロークンではないし、ちゃんと文法通りに言わなくてはいけない。今、自分なりに勉強しながら、一生懸命うまく喋りたいなと思っています。
 

ーーイルウスという人は、周囲の日本人たちにある圧迫感を感じさせる存在なのでしょうか?
 

僕も最初はそう思っていたんですが、演出家に、上から目線みたいなものを感じさせたほうがいいんですか?と聞いたら、特にそうしなくていいと。優しさとか普通の人間的な部分もあっていいらしいんです。
 

ーー日本人の田中さんが外国人の違和感を出すというのが、やはり見せ場でもあり演技のしどころですね?
 

そこが確かに面白い部分だし、自分でもやればやるほど楽しいというか、他の人たちが話してることが聞こえないわけですからね。普通なら相手のセリフを聞いて反応していくところを、こちらの気持ちだけでどんどん攻めていけるわけですから(笑)。
 

ーーいろいろ演技の工夫も見せていただけそうですね。
 

人の話を聞いてないときに何を考えているか、それをどう見せるかですね。イルウスなりの感情もあるわけで、言葉が通じないことで怒りもあるだろうし悲しみもあるかもしれない。そこを想像しながら見せていくというのが楽しいですね。


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【新派の楽しさと素晴らしさ】
 

ーー新派は二度目で、前回は5年前に『明日の幸福』という作品に出演されましたね。
 

いわゆる家族劇だったんですが、すごくよくできた作品でした。高価な壷をめぐってちょっとした嘘がどんどん膨らんでいくという話で。新派のお芝居って不思議なんですが、笑わせようとしないんですがすごく笑いがくる。とくに『明日の幸福』は、台本に書かれているそのままを普通にきちんと言っていれば、どっかんどっかん笑いがくるんです。そこが新派のすごさというか。我々が生きてる普通の毎日の可笑しさを、ちゃんと見せてくれるんです。
 

ーーデリケートに丁寧に日常を演じる技術を皆さんが持っている?
 

そうそう。綺麗な言葉遣いだけどリアルなんですよ。だから脚本家さんたちもすごいんだと思います。日本のよき文化が芝居の中に残ってるし、日本人らしい情とか絆とかが根底に流れている。
 

ーー今回は有吉佐和子さんの原作ですから、また言葉なども違った面白さがあるのでしょうね。
 

水谷八重子さんが制作発表で言ってらしたんですが、想像する部分がたくさんあって、花魁の事件のことを喋っていくなど、すごくパワーがいるしパワーで演じたいと。杉村春子先生が演じられたことでも有名な役だし、最初に取り組むときはどうしようかと思われたそうです。でも、杉村先生より若い自分は、とにかくテンションあげて、一生懸命に一生懸命にやろうと思ったそうです。とにかく体力がいるし、一生懸命言わないと伝わらない、そういう言葉なんです。だから、僕の役もテンションを落とすわけにはいかない。しっかりやりたいなと思います。
 

ーー作品のメッセージも深いですね。日本人論みたいな一面もあって。
 

水谷さんのお園ありきの芝居です。死んだ亀遊という花魁の思いを全部背負って語る。そこに言いたいことは全部入っている気がします。
 

ーー新派のお稽古場はいかがですか?
 

みなさんがお上手ですからね。すぐできちゃう。すごいなと見てます(笑)。
 

ーー客演されるときなど人見知りされるほうですか?
 

いや、わりとすぐに入っていけるほうだし、とくに新派は二度目なので馴染んでます(笑)。水谷さんがいい具合に面倒みたり、放っておいてくださったり、居心地いいんですよ(笑)。でも最初に出たのがこの作品でなくてよかった。やっぱり緊張したと思いますから。最初が『明日の幸福』で、2カ月くらい旅公演もあって仲良くさせていただいたのは大きかったですね。
 

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【毎日続く舞台ならではの緊張感】
 

ーーちょっと話はそれますが、4月には早乙女太一公演『新説・天一坊騒動』で、将軍吉宗役を演じられて、最後のシーンで懐の深い演技を見せていただきました。
 

吉宗はなかなか難しい役で、本当にぼけているのか周りをだます演技なのか、ちょっと見てる人たちにはわかりにくいところもあったと思います。
 

ーーそれを力ワザでねじ伏せて、いい役にしてしまったのがすごいなと。
 

最初に出てしばらく出番がないんですが、ずっと名前がみんなの口から出ている。そして最後にあの見せ場があって。太一くんが本気であそこまでやってくれるから、こちらも本気でしっかり幕を締めないとと思いました。
 

ーー田中さんはすごく舞台へも意欲的ですね。
 

僕は本当は舞台は苦手なほうなんですよ。お客さんの前で演じる緊張感とか苦手だし、出て行く前のテンションの掴み方などが難しくて、毎日それを朝から考えてるんです。他の人の芝居を観察しながら、よしあれに乗っかっていこうとか。でも同じことは二度とできないから、毎回モチベーションの上げ方を考えていく。それがちゃんとしてないとお客さんに芝居が伝わらないですからね。そしてそれが長く続くから舞台ってつらいんです(笑)。
 

ーー今回の公演も悩まれそうですか?
 

それは間違いないです(笑)。でも毎日やることで発見したりわかることもあって、初日と楽が違う芝居になっていく。そしてなおかつ軸がぶれてないと「ああ、やってよかったな」と思います。やっぱり本番でしかわからないことがあるし、稽古は稽古なんです。舞台で成長することがたくさんあるから、しんどくてもまた舞台に出ちゃうんです(笑)。
 

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【ケーナのおかげで腹式呼吸】
 

ーー今はプロといっていいケーナの話もうかがいたいのですが、吹いている瞬間というのは芝居とは違う緊張もあるのでしょうか?
 

いちばん恐いのは「今日、音が出るかな?」ということなんです。音さえ出ればなにも問題ないんですが、緊張すると唇が固くなる。そうすると音が出ないし、呼吸も乱れてくる。
 

ーー身体は楽器とよく言いますが、まさに繋がっているんですね。
 

リラックスできないとダメですね。息が続かないしブレスが多くなる。そうならないためにはやはり練習しかないんですが。でも「ここまでやったから」と思って本番に挑んでも、練習していたときほどうまくいかなかったりしますね。
 

ーー俳優の仕事と同時に演奏家ということで、しんどいことは?
 

いや逆に癒されるんです、音は。練習だけでも癒されますから。セリフを覚えるのは苦しいだけで(笑)。音符はわりと簡単に覚えられるし、だいたいあまり難しい曲は吹きませんから(笑)。
 

ーーケーナと出合ってよかったことは?
 

めちゃくちゃあります。楽器が笛なので腹式呼吸の役に立つ。声がすごく出るようになったんです。だから大きな声が無理せずに出せるようになって、舞台出演も増えました(笑)。
 

ーー健康にもよさそうですね。
 

深呼吸しますから腹筋も鍛えることになる。皆さんにすすめたいですよ(笑)。
 

ーーその鍛えた声で、『ふるあめりかに袖はぬらさじ』のイルウスをパワフルに演じられるのを楽しみにしています。
 

本当に面白い作品で、それを水谷八重子さんはじめ新派のかたがたの実力で素晴らしい舞台にしていますので、ぜひ観にいらしてください。

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六月新派公演

『ふるあめりかに袖はぬらさじ』

作◇有吉佐和子
演出◇成瀬芳一

出演◇水谷八重子、田中健、丹羽貞仁、瀬戸摩純、英太郎、前田吟 他

●6/4〜25◎三越劇場

〈料金〉8,000円(全席指定・税込)

〈問合せ〉チケットホン松竹0570-000-489

http://www.shochiku.co.jp/shinpa/pfmc/1106/




【取材・文/榊原和子 撮影/冨田実布】

私の観劇計画6月その7 植本潤(花組芝居)×坂口真人(演劇ぶっく編集長)

壱組印『さすらいアジア 〜人類の創世〜』

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作・演出・出演◇大谷亮介
演出・出演◇松村武
出演◇土居裕子 重定礼子 草野とおる 大塚健司

6/22〜29◎座・スズナリ


植本 『さすらいアジア 〜人類の創世〜』。これ、壱組印ですね。
坂口 座組がちょっとおもしろそうだなとまず思ったんです。
植本 珍しいのは土居裕子さんが入ってるところですかね。作が大谷亮介さんなんだけど、演出に大谷亮介さんと松村武くんが入ってて共同演出なのかな?役者としても両方出るんですが。
坂口 松村さんが出ると舞台の雰囲気が明るくなっていいですよね。
植本 そこに東京壱組から大谷亮介さんのことを一番よくわかっているだろうという草野とおるさんが入っております。重定礼子ちゃんは南河内万歳一座の女優さんですね。大塚健司さんって青年団?違うかな、ごめんなさい。壱組印、いつもよりちゃんとしたチラシのような気がする。
坂口 『〜人類の創世〜』と書いてあるじゃないですか?
植本 書いてあるよ。「ダーウィンの進化論に真っ向勝負を挑む衝撃の問題作!!」
坂口 神の話かな?
植本 知らない。「果たして神は、この世に人類を創り出すことが出来たのか?」…全然わかんないなあ。チラシの表は石像みたいな猿なんだけど、裏が全員柿をもってるんだよ?なんでだろう。
坂口 ダーウィンでしょ。ヨーロッパの人だよね。神って本当?という時期に出てきた人で、進化論を発表した人じゃないですか。そこらへんの話かなと思うと、『さすらいアジア』というタイトルで。そのちぐはぐさがいいですね。柿とゴリラの絵があるから、いろんなことで気になる。
植本 何をするのか観てみないとわからないところはあります。
坂口 そしてその座組だとちょっとおもしろいかなとも思うし。いろんな“おもしろ断片”が積み重なってくる。
植本 6/22(水)〜29(水)下北沢ザ・スズナリでの上演です。ベンチ・自由席が3900円、椅子の指定席が4200円。壱組印の『さすらいアジア』でした。

私の観劇計画6月その6 植本潤(花組芝居)×坂口真人(演劇ぶっく編集長)

トム・プロジェクト『子供騙し』

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作・演出◇水谷龍二
出演◇高橋長英 篠井英介 冨樫真

6/21〜26◎紀伊國屋ホール


坂口 じゃあ、後もちょっとお客さんの少なそうなものを並べてみようよ。
植本 うん。いやいや、うんって言っちゃった(笑)。編集長、毒がたまってるんでしょうか。…これは再演ですね。トム・プロジェクトさんのプロデュースで『子供騙し』。
坂口 じゃあ言い方を変えましょう。小さめの劇場で丁寧につくってる作品、って言ったらどうお?
植本 どうお?って(笑)。これは再演なんですけど、初演のときは緒形拳さんがなさっていたものですね。そのポジションに今度は高橋長英さんがお入りになって、前回から引き続き、うちの先輩の篠井英介さんと、冨樫真ちゃんが出てます。
坂口 床屋さんの話ですよね。先月も床屋の話をした気がするね。
植本 『スウィーニー・トッド』?
坂口 そうそう。床屋はエキセントリックか否かという話をしたでしょ。これも床屋の話で楽しいと思うな。
植本 床屋の話好きなの?
坂口 でもさ、床屋さんの話はたいがい映画でも観に行くとおもしろいよね。
植本 『髪結いの亭主』みたいな?
坂口 ひさうちみちおさんの漫画でも『理髪店主の悲しみ』という床屋さんの話があって、田口トモロヲ主演で映画にもなりましたね。
植本 昔、『剃刀』という芝居を観たことがあるな。それもおもしろかった。
坂口 まず外さないですよ。床屋は大丈夫。
植本 パーマ屋さんの話も楽しいよ。映画でみんな同じ髪型にするパーマ屋さんの話。もたいまさこさんが出てたやつ。6/21(火)〜26(日)新宿・紀伊國屋ホールでの上演です。前売が5000円、当日が5500円、トム・プロジェクトプロデュース『子供騙し』。作・演出は水谷龍二さんです。
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