稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『レビュー夏のおどり』

ワールドプレミアとなる作品を。『キミドリ』奥秀太郎インタビュー


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小劇場系の作品から大劇場のミュージカル作品、NODAMAPや大人計画、そして宝塚歌劇団まで、近年さまざまなジャンルの舞台で「映像・奥秀太郎」の文字を目にする。今や演劇の世界には欠かせない、舞台映像の第一人者である奥秀太郎。彼が映像のみならず脚本・演出をつとめる作品『キミドリ』が、82728日の2日間、Bunkamuraシアターコクーンにて上演される。
飛行機墜落事故の跡地に作られた美しい公園を舞台に繰り広げられる群像劇。センス溢れる、格好良くて綺麗で、ちょっと毒を感じる映像と、繊細さと攻撃力の両方を兼ねそなえたような言葉。この二つが舞台上で重なり合った時、一体どんな世界が広がるのだろうか。

まさに稽古、真っ最中の奥秀太郎に話を聞いた。

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ーーこの『キミドリ』という作品どんな話なのでしょうか

まずサナエっていう女性がいて、彼女のことを小学校の時からずっと好きで追いかけている男の子たちが登場します。まあストーカーみたいなことなんですけど、でも、サナエは別に彼氏ができて、結婚する。それが米軍の男なんです。
サナエを追いかけている男の子の一人にユウキって子がいるんですが、彼はそのサナエの旦那に死んで欲しいと思っていてでも、思いの因果というか、米軍機の墜落事故が起きたときに逆にサナエが全身ヤケドを負ってしまうんですね。
事故が一つのきっかけで旦那の方はサナエから離れて行き、そんなユウキがべったりサナエの看病をしているという。

ーー何か元になった題材があるのですか?

実際に起きた米軍機の墜落事故を扱った「パパママバイバイ」って早乙女勝元さんの絵本が、小学校の図書館にあったんですよ。本当にトラウマになるような衝撃的な絵本で、しかもある時、全部図書館から撤廃されて。その絵本のイメージがまずあって、それはいつかやりたいと思ってました。
でも、絵本の方は米軍批判みたいな話になりがちだったんですけど、それとは違って、今一番曖昧になりつつあること、こっぱずかしい話ですけど「好きになる」みたいなことが作品のテーマになってます。本当の愛の物語じゃないですけど、食い下がる愛の物語。なぜだか舞台だとラブストーリーになってしまう傾向があるんですよ(笑)。

ーー『キミドリ』っていうタイトルがそこにどう絡んでくるのかが気になります。キミドリって、TVとかでもCGを合成する時に使われる色ですよね?s_RIMG1968

そうそう、まさにこの間の『ザ・キャラクター』(NODAMAP2010年)の秋葉原のシーンでも使ったりしてるんですが、でも今回はあくまでも色のイメージというか、とにかくみんなで嘘を付いて人の人生を合成しようっていう。サナエのことを追っている男たちは、サナエをビデオで撮ってデータを残そうとしているし、墜落現場が緑の公園になっていたりだとか、住宅地になっていたりとか、色々なことがあった場所を覆ってしまう全身ヤケドの皮膚移植のイメージとかとも、上手く折り重なっていけばいいなと思ってます。

ーー奥さんは演劇の世界ではまず映像!というイメージがあったんですけど、前回の『赤い靴』を見た時もそうでしたが、映像だけでなく言葉もすごく印象に残ります。

正直言葉は苦手だし、映像屋があんまり余計なこと喋らない方がいいとか思ってるんですよ。でも仲間内で飲んでたりする中で「何か作品をやったほうがいい」という話になって、せっかくだからとやってみたら、書くことも含め楽しくなってきちゃったっていう。まあ僕がやるからには、言葉だけで説明するんじゃなくて、映像が言葉の助けになってくれたらいいなあと思ってやってます。

ーー一緒に作品を作ってきた経験がある役者さんたちが、また集結している感じですね。

そうですね。加えて、今回『黒猫』に引き続き藤谷さん(藤谷文s_RIMG1970子)やノゾエ君(ノゾエ征爾)が入ってくれたことも大きいです。あと音楽の桑原まこさんも、彼女はエレクトーンなんですけど、そのコンサートのお仕事で一緒になった繋がりで今回お願いしていますし、色々な縁があって、なおかつ、今回の題材も気兼ねせずじゃないですけど、理解してもらえそうな人に集まってもらった感じですね。

ーーシアターコクーンというまた新たな空間でどんな作品が生まれるのか、楽しみです。

チラシに僕らの勝手にですけど「ワールドプレミア」って書いてるんですよ。こうやって自分達で集まって、わーっと作品を作れる時期って限られてるかもしれない。今回僕自身、今まで見たことのないものを作っているので、それを日本初演ということにして、世界に向けてというか、ここからまた長く繋がっていく演目になったらいいなと思ってます。

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奥秀太郎(おくしゅうたろう)1975年生まれ、東京都出身。

02年、初監督作『壊音 KAI-ON』がソウル映画祭 で「special mention」を受賞。以降、『日雇い刑事』『日本の裸族』『赤線』などコンスタントに作品を発表。06年には『カインの末裔』が第57回ベルリン国際映画祭をはじめ、各国の映画祭から正式招待を受けた。08年、オール女性キャストによる異色作『ドモ又の死』を公開。最新作は『USB(渡辺一志、桃井かおり、峯田和伸出演)。待機中の作品に蜷川幸雄・野田秀樹・小牧正英といった希代の演出家達を追ったドキュメンタリー『天勝地』がある。「撮影・編集・上映、全ての工程において革新的である映画」をモットーに映像表現の可能性を追求し続けている。舞台は、東宝ミュージカル、NODAMAP、宝塚歌劇団、大人計画などに映像プランナーとして参加。主な参加作品に、東宝ミュージカル『エリザベート』『モーツァルト!』、NODAMAP『2001人芝居』『THE BEE』、宝塚歌劇団『NEVER SAY GOODBYE』など。『TAP MAN×PIANO MAN×MOVIE MAN』『BOYS ELECTONE CONSPIRACY』『稲本響 武田双雲LIVE』『吉田兄弟LIVE 憂春』など映像を駆使した演出も精力的に手がけ話題を呼んでいる。08年、演出作品『黒猫』で読売演劇大賞優秀スタッフ賞受賞。

 

 

『キミドリ』

脚本・演出・映像奥秀太郎

出演藤谷文子、倉持哲郎、ノゾエ征爾、岸建太朗、鈴木雄大ほか

●8/2728Bunkamuraシアターコクーン

271900

2814001800

<料金>

S席 ¥5,900A席 ¥4,500/コクーンシート ¥3,400

<問い合わせ>

オフステージ 0357909719

 

【取材・文/岩見那津子】 

日中の豪華アーティスト共演! 『木蘭 ムーラン』製作発表

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ディズニーアニメでも有名になった中国に古来から伝わる物語『木蘭 ムーラン』が、日中の豪華なアーティストの繰り広げる壮大なファンタジー歌劇となって立ち上がる。

9月に東京で10月には上海で上演予定で、「上海万博/上海国際芸術祭記念 日中友好舞踊歌劇」と銘打たれたこの作品で共演するアーティストは、元宝塚歌劇団の真琴つばさと、中国のトップダンサー黄豆豆(ファンドゥドゥ)。音楽監督は日本の伝統文化界の第一人者である東儀秀樹、演出振付にはダンス界の重鎮の上田遥が手がける。

さらにこの作品の見どころは真琴が男役の賀廷玉(がていぎょく)を、黄が黄豆豆が女役の木蘭(ムーラン)を演じるという、性別逆転、凛々しい真琴と麗しい黄という組み合わせが大きな話題を呼んでいる。

その『木蘭 ムーラン』の製作発表会見が、8月23日に都内のホテルで行われ、真琴つばさ、黄豆豆、東儀秀樹の3人が登場。以下のように挨拶した。

s_RIMG1971黄豆豆「今回は日本の方々と一緒に公演できることになりまして、大変嬉しく思っております。中国の伝統ある劇を日本の方と一緒に上演できることは、日中友好の点においても非常に有意義なことと思っております。
今まで女性役を演じた経験はありませんが、ムーランは女性でありながらも将軍にまで登りつめた、ある意味男性よりも男性らしい人です。なので、外見は非常に綺麗で美しいけれど、内面は鉄のように強い人物を演じたいと思っています。
真琴さんは、11年前、上海の国際芸術祭で拝見した時、一番素晴らしいと思った女優さんです。また面白いのが、そのときまだ僕は妻とは知り合っていなかったのですが、お互いに真琴さんのお芝居を見ていたことがわかりまして(笑)。それを知った時にすごくご縁を感じました。素晴らしい劇になると思います。ありがとうございました。

真琴つばさ「将軍の賀廷玉(をさせていただきます真琴つばさでs_RIMG2009す。私は11年前、宝塚時代に中国公演があり、上海大劇院という舞台に立ちました。その時に黄豆豆と会っております。一緒に撮った記念写真もあって、このお仕事をいただいた時に私も強い大きな縁を感じました。
この作品の見所は、やはり男性である黄豆豆が女性であるムーランという女性を演じるところ、そして私が女性でありながら賀廷玉という男性を演じるところにあると思っています。性別だけでなく国を超えて演じ合うところが面白いんじゃないかなと。
登場する時に流れた音楽が「悲しみを乗り越えて」という東儀さんの書き下ろしの曲なんですが、これがまた素晴らしいんでありまして、私も歌わせていただきますけれども、男性の声でもない、女性でもない、不思議な魅力を出せたらいいなと思います」

s_RIMG1993東儀秀樹「この仕事の音楽監督と聞かされた時に、“まさに僕がやるべきことだなぁ。ピッタリな仕事がきたもんだな”と思いました。僕がやってる雅楽というのは、1400年前に中国大陸から海を越えてやってきて、そして日本の中で、また日本らしく育ったものなんですね。なので、いつも僕の中には中国大陸や、その先祖達に対する敬意がありました。
あと僕は雅楽でデビューする前から、映画音楽だとかミュージカル音楽が大好きで、そういう曲をたくさん作って遊んでた時期があるんですね。
雅楽師としての中国への思いと、自分が大好きなこと、そういうものの集大成を発表するチャンスをもらえたような気がしています。もしかしたら雅楽よりも得意かもしれない(笑)。なので今、すごくワクワクしています」

この豪華な舞台の東京公演は、東京芸術劇場中ホールで9月4日、5日と短期間なのでお見逃しなく。

 

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上海万博/上海国際芸術祭記念 日中友好舞踊歌劇

『木蘭 ムーラン』

演出・振付◇上田遥

振付◇黄豆豆

音楽監督・作曲◇東儀秀樹

出演◇黄豆豆、真琴つばさ、張海慶、新上裕也、寺島ひろみ、上島雪夫、孟建華、大貫勇輔、古賀豊、TAKA、原田みのる、鈴木陽平、長澤風海ほか

●9/4、5◎東京芸術劇場中ホール

●10/9、10◎上海大劇院

〈料金〉

東京公演

前売:S席 ¥10,000、A席 ¥8,500

当日:S席 ¥10,500、A席 ¥9,000

〈問合せ〉

アンクリエイティブ 03-5456-0548(平日11:00〜18:00)

 

【取材・文/岩見那津子】


来年の最終章へ向けて 『真心一座身も心も 第一章再演 流れ姉妹〜たつことかつこ〜』

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流れ姉妹〜たつことかつこ〜第一章再演。
第一章、第二章、第三章と続き、次回ファイナル公演が決まっている、
真心一座身も心もの公演。
今回の上演はファイナルに向けてのおさらいの意味も込めた第一章の再演である。
つくづく「演劇って面白いなぁ」と思わせてくれる、
本気のストーリー展開と、本気のくだらなさが散りばめられた、
とっても愛おしい作品だった。

座付演出家である河原雅彦が、
真面目さと不真面目さを絶妙なバランスで魅せ、作品全体を舵取り。
流れ、流される人生を送る姉妹の姉・たつこには千葉雅子。
たつこの他人にそう易々と心を許さない、ツンとした雰囲気が格好良い。
「暴れ牛だって、人生だって、私は乗りこなしてみせる!」
などと闘牛の背中に跨り、啖呵をきる姿に思わずしびれた。
その闘牛も、もちろん本物ではなく明らかに着ぐるみなのだけれど、
牛が着ぐるみであることも含めた荒唐無稽さが、じわじわとツボにハマってくる。

妹のかつこ役は、村岡希美。
そこはかとない色気を放つ幸薄な女性で、暗く重い過去が見え隠れする。
彼女の放浪の旅の出発点は北海道の刑務所。
一体、たつことかつこにはどんな過去が秘められているのか?

毎回、この姉妹を愛するゲストラバーと、
陵辱するゲストレイパーの出演があるのだが、
第一章のゲストラバーは松重豊。ゲストレイパーは粟根まこと。
二人とも他の芝居などではあまり見ない、新鮮なキャラクターを見せてくれていた。

客席内はまさに一座といった感じの提灯や幕で覆われ、
上演前に流れているのも、マニアックな空気漂う歌謡曲。
芝居全体も平成というより、昭和の香り。
とにかく続きが気になる人情芝居で、好評を得て、第二章、三章と続いたのも納得。
しかし、全ての章を見ていなくても人間関係など少しの予習があれば、
途中からでも楽しめてしまうエンターテイメント性も兼ね揃えていると思う。
演劇ならではの臨場感も魅力だし、くだらなさをより追求した笑いもある。

大人が真剣にくだらないことに取り組むと、
得体の知れないエネルギーが湧いてくるものだし、
そのエネルギーはなぜだか人をワクワクさせる。
第一章を見て得たこのワクワク感を胸に、
来年1月に本多劇場で行われる最終章を是が非でも見て、
たつことかつこの流れゆく先を見届けたくなった。

 

 

真心一座身も心も 第一章再演
『流れ姉妹〜たつことかつこ〜』

脚本◇千葉雅子
演出◇河原雅彦
出演◇千葉雅子、村岡希美、坂田聡、河原雅彦、粟根まこと(初代ゲストレイパー)、松重豊(初代ゲストラバー)、市川しんぺー、政岡泰志、伊達暁、信川清順、堀善雄、大石憲、丸太裕也

8/198/28TOKYO FM HALL

〈料金〉

6,500(全席指定・税込)

〈問合せ〉ゴーチ・ブラザーズ

03-3466-0944 (平日11:0019:00

【文/岩見那津子】
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