稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『ハンサム落語第十幕』

伊東四朗インタビュー

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伊東四朗×角野卓造×佐藤B作 西荻の会『ロング・ロスト・フレンド』をWOWOWで放送!

  

伊東四朗、角野卓造、佐藤B作、松金よね子、あめくみちこら、西荻窪に集う役者の新ユニット「西荻の会」による舞台、『西荻の会 ロング・ロスト・フレンド』(2011年2〜3月上演/本多劇場)を、WOWOWは6月17日(金) 午後11:40より放送する。 


ストーリーは、極道の親分・松山(伊東四朗)が経営する郊外の老人ホームに、警察OBの佐々木(角野卓造)がやってくる。
彼の願いは、かつての仇敵・黒崎(佐藤B作)の入居だった。
そこに、松山の妻(松金よね子)や職員の藍子(あめくみちこ)も絡んで、ホーム内は大混乱になる。

この前代未聞の介護コメディーを作・演出したのは、スピード感あふれるストーリーテリングで注目を集めるG2。 

「このメンバーでやるのは最初で最後かもしれない」と言う伊東四朗に、今回の経緯から役柄、また喜劇へのこだわりなど、余すことなく語ってもらった。 

 

 【伊東四朗インタビュー】
 

ーーまずは西荻の会についてお伺いします。西荻窪界隈で、皆様がお酒を飲み語らう会ということですか? 
 

はい、不定期の飲み会です。気分が高まると卓さん(角野卓造さん) から電話が入るのですよ。芝居をやろうって話は1回も出たことがなかったんですが、各マネージャー達がしょっちゅう飲んでいる割には芝居をやろうって話をした事が無いのが不満らしくて、自分たちで計画したんです。 

 

ーー親しい飲み仲間たちでもお芝居をするとなると、また全然違うものですか? 
 

個々では一緒にやっている人達ですから、全員集まったっていうのが初めてなだけです。芝居をすることに関して違和感は無いんだけど、何で飲み仲間で芝居やっているのかな?っていう違和感がありましたね。 

 

ーー今回は、極道の親分という役柄を演じられています。長尺の台詞が印象的でしたが、たいへんでしたか? 
 

最近の中では、一番台詞が多かったですね。苦労したというか、“俺、こんなに覚えられるかな?”っていう危機感を感じました。休みも全然なくて出ずっぱりでしたし、これが伊東四朗一座の舞台だったらどんどんカットしてますよ(笑)。石倉三郎さんが観に来てくれたんですけど、「よくあんなに台詞覚えたな」ってメールくれたくらい。 

 

ーー職員役のあめくみちこさんと恋に落ちるという展開もあり、伊東さんが恋愛模様とは珍しいですよね。 
 

そうですね、芝居でやったことはないですね。色模様というか片思いなんだけどさ。 

 

ーーちなみに、あめくさんは共演する佐藤B作さんの奥様ですけど、やりづらくはなかったですか? 
 

全然ないですよ! そんなこと言ってたら役者は出来ないですよ…。

 

ーー脚本・演出を手がけたG2さんとは初めてでしたが、いかがでしたか? 
 

私含め、メンバー全員初めてでした。一番珍しかったのが、脚本がやたら早く出来たって事ですかね。ここ最近は三谷(幸喜)さんの芝居をやっていましたので、初日大丈夫?っていう芝居が結構多かったから珍しいですよ。今回は早く出来すぎちゃって力が抜けましたね。何ヶ月も前に出来てたんじゃないのかな?G2さん気合が入っているな、という感じでした。 

内容で言うと、今まで1 回もやってきていないような形態のお芝居でしたね。私が今までやってきたのは全部喜劇なんです。ですから喜劇というジャンルから離れた芝居は初めてですね。 

 

ーー笑いの多い芝居でしたが、今回の脚本は伊東さんの考える喜劇とは異なるということでしょうか? 
 

お客さんに見せながら、段々分かってもらうという方法をG2さんが選択したので、その辺が喜劇とは違うのかなと思いました。本当に喜劇としてやるなら、私はもっと先に振っておいてもいいかなと思うんです。分かりやすくしちゃうということですけど、お客さんが見る前からある程度分かっていると、もっとうけると思っていました。もちろんG2さん本人も分かっていて演出したことだと思いますよ。 

 

ーー伊東さんにとっての喜劇の形態とは、具体的にどのような形なんでしょう? 
 

私はせっかちだから、早くお客さんに喜劇だということを分からせたいんです。謎の部分はなるべく無くしていきたい方なんです。今回はやっている間、“お客さんは分かってくれているのかな? 迷ってないかな? このままで大丈夫かな? ” 等々、ちょっと焦っている部分はありましたね。とはいえ普通の芝居というのは、やっているうちに段々お客さんに分からせるというものですからね。 お客さんが最初から分かっていて優位にいるほうが良いというのは、あくまでも私の喜劇論です。 

 

ーーそんな思い入れのある作品を、とうとうWOWOWで放送します。見所をお願いします!
 

今までやったことのない役ということですかね。大概やったことのない役をやるんですけど、中でも極道の親分はやったことがないですから。放送に関しては、芝居は本当にカットして欲しくないという想いがあるんです。他のテレビ局だと、どうしてもカットせざるを得ないですよね。上手くカットしてくれればいいんですけど、本意でない部分も結構あったりするので…。そうなるとほとんどそのまま放送するWOWOWが、一番ありがたいんです。別に持ち上げる訳ではないですけど、そもそも芝居というのは、期間が決まっているし、お客さんの来る人数が決まっています。その点、放送は多くの方に見てもらえるからすごく嬉しいです。 

 

ーー最後に、西荻の会は第2弾もありますか? 
 

また個々のメンバーとやることはあっても、今のところ予定はないです。1回こっきりかもしれないので、今回のオンエアは貴重です! 

 

「伊東四朗×角野卓造×佐藤B作 西荻の会 ロング・ロスト・フレンド」

6月17日(金) 午後11:40にWOWOWで放送。 


【資料提供/WOWOW】

 

田口トモロヲ インタビュー

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鈴木勝秀と田口トモロヲ、このどこかマニアックな匂いを持つ2人のアーティストが、実に10数年ぶりにコラボレートする。
作家、演出家の鈴木勝秀ことスズカツが、早稲田演劇研究会の時代から描いてきたスタティックで美意識の強い舞台、スズカツワールド。
ここ数年は小人数の男優たちばかりで、『LYNX〜リンクス』などに代表される独自の濃密な劇空間を生み出してきた。
そのシリーズの最新作ともいうべき舞台が今回の『
クラウド』。
ネットのシステムと人間を絡めた現代そのもののような作品になりそうだが、その物語の中心となるオガワを演じる田口トモロヲに、稽古場の様子やスズカツワールドについて語ってもらった。
 

 


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【ネット用語が飛び交う稽古場】
 

ーー『クラウド』の背景となっているのは郊外の荒れ果てた団地で、そこで事件のようなものが起きるということですが、田口さんが演じるオガワはどんなイメージなのでしょう?
 

オガワは多分演出家のスズカツが、自分自身とSF作家のフィリップ・K・ディックを投影しているもので、これまで不定期なシリーズとして上演してきたなかで、30代、40代のオガワを作ってきた。今回は50代のオガワはどうなったかという話を書こうということになって、この前の作品でオガワは自殺したらしいんですが、もし自殺しないで50代になっていたらどうなっていたんだろうか?という発想で書かれているそうです。
 

ーーそこに他の出演者4人がそれぞれのキャラクターで絡んでくるようですが、そこでどんな物語が描かれそうですか?
 

オガワという人間は最先端のところで生きている。と同時に非常に孤立して孤独な人間でもあるんです。その彼にさまざまな人間が関わってくることによって生まれる、いわゆるコミュニケーション、あるいはディスコミュニケーションの物語です。スズカツは常にそのテーマを表現しているんだと思いますが、バーチャルでコミュニケーションをしていることが、実際にコミュニケーションしていることになるのだろうか、そんなことを描きたいんだと思います。
 

ーー『クラウド』というタイトルもクラウドコンピューティングから取ったということで、インターネットについての用語などが劇中で頻繁に出てきますが、田口さんはネットについては?
 

僕はほとんどやってなくて、どちらかというとアナログな人間なんです。それなのに役はわりとそういうのが多くて(笑)、今回もスズカツの中で「オガワの50代」というイメージで、僕が頭の中に浮かんだらしいんですが。けっこう専門用語が多いので、なんとかそれを把握して肉体化できるようにという最中です。
 

ーーライフログとかコアなネット用語も使われているとか?
 

それとクラウドがキーワードだと思います。僕も初めて聞く言葉が多いんです。でもスズカツ、粟根(まこと)さん、伊藤ヨタロウさん、みなさんそっちに強い人たちなんで、僕が聞いててもわからないような用語が稽古場に飛び交ってます(笑)。でもこれを上演するまでには、なんとかデジタルな人物になってないといけないので、本番にはちゃんとネットマニアになっていたいなと思っているんですが(笑)。


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【硬質だけど柔軟な演出】
 

ーー演出家鈴木勝秀との芝居はかなり久しぶりですね?
 

1994年に『SWEET HOME』というのに出て、そのあとに97年に『ウエアハウス』というZAZOUS THEATER時代の作品に出て、それ以来です。
 

ーーまた出会うことになったスズカツワールドについてはいかがですか?
 

以前もフィリップ・K・ディックの世界がモチーフになっていたんですが、その頃はディックの世界は未来だった。今では現になってることに驚かされるし、時代がディックに追いついたというかスズカツに追いついたというか。
 

ーー確かに以前はSF的だったスズカツワールドが今はリアルな演劇という気がします。スズカツさんとは実生活では?
 

いや、しばらく会ってなくて、3年前に宮本亜門さんの『三文オペラ』に出ていたときに、挨拶にきてくれたんですが、すっかり髪の毛がなくなってるから誰だかわからなくて(笑)。「誰?」って言ったら「スズカツ、スズカツ」って(笑)。風貌からしてすっかり重鎮になってました(笑)。
 

ーーすごく幅広いジャンルの演出で活躍されてますよね。
 

過去にミュージカルに誘われたんですが、残念ながらスケジュールが合わなくて、そういう大きい作品まで演出しているんだなと。でも僕が一緒にやっていた小劇場系のたちが、今の演劇界ではメインになってるわけですから。
 

ーーケラリーノ・サンドロヴィッチさんや松尾スズキさんの作品にも、よく出演されてましたからね。10数年ぶりのスズカツ演出は変化していますか?
 

昔の演出がどうだったか比較出来るほど記憶ははっきりしてないんですが、この作品について言えば、ちょっと抽象的ですが「柔軟だけど硬質」っていうのかな。自分の世界観がはっきりしていて、ビジョンが明確で確信的に演出するけど、実際に立ってみてそこにズレがあったら柔軟に直していく。そういう感じです。
 

ーー現場でフレキシブルに演出されるということですね?
 

頭の中で自分が描いたイメージと、それが実際に肉体化されたときに生じるズレを、たくさん経験してきたんでしょうね。そのへんの調整の仕方はさすがだなと思います。


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【人間がSFを身体に入れてしまった】
 

ーースズカツさんはすごく美意識の強い舞台を作ると思うのですが、絵も描かれる田口さんから見ていかがですか?
 

現代美術の1つの形態のような作品だと思うんです。インスタレーションというか以前ならパフォーマンスと呼ばれていたような。そして、昔ならそういう演出をしたときに、これはどういう意味があるの?と聞かなければわからなかったようなものが、今は感覚的にわかっやってるし、観客も意味を見出している。いわばSF演劇が成熟したような世界になったと思います。やってても昔なら意味がわからなかったり質問していたようなことが、疑問もなく動くことができるし面白い、そういう時代になった。人間がSFを身体の中に入れている、人間って進化してるんだなと思います。それがいいことか悪いことかはわからないけど。
 

ーー音楽的な面でも独自のテイストがあるのがスズカツワールドですが、ミュージシャンでもある田口さんにとっていかがですか?
 

スズカツの音楽性というか、彼のチョイスするものを稽古場で聞いたりすると、それだけで身体が導かれるような気がしてくるんです。それによくノイズを入れたりするんですけど、ノイズが入ることでイメージが自由に触発される部分はあります。だから作品における彼の音楽性というか、音への感覚というのはすごく大きいなと思います。
 

ーー田口さんは映像の仕事を多くされていて舞台は3年ぶりですが、舞台に出ることについては?
 

確かにいっときは映画が好きで映画に集中してる時期もあったんですが、舞台はライブですから好きですし、稽古でいろいろな実験を積み重ねられるのがいいと思ってます。
 

ーー今回は男ばかり5人の稽古場ですね。
 

ヨタロウさん以外は皆さん初めてで、でも男5人だからきがねなくエロ話ができそうです(笑)。男子校の文化祭みたいなワクワク感がある。これからディープな関係になるのが楽しみです。
 

ーー最後に、10数年ぶりのスズカツワールドで、田口トモロヲにどんな変化が生まれそうですか?
 

IT革命ですかね(笑)。この作品をきっかけに、遅まきながら俺にもようやくITがやってきた!やあやあやあ!という(笑)。

 


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青山円形劇場プロデュース

クラウド

構成・演出◇鈴木勝秀

出演◇田口トモロヲ、鈴木浩介、粟根まこと、山岸門人、伊藤ヨタロウ

●6/23〜7/3◎青山円形劇場

〈料金〉4800円(全席指定/税込)

〈問合せ〉03-3797-5678 こどもの城劇場事業本部 


【取材・文/榊原和子 撮影/冨田実布】


凄絶さとともにやるせない悲しみが漂うコクーン歌舞伎『盟三五大切』

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6月6日から幕を開けた今年のコクーン歌舞伎は『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』という演目で、鶴屋南北ならではの、「忠臣蔵」の裏話を広げて人間を描き出すとでもいうべき作品である。
 

凄惨な殺しの場面が出てくることや、男女の愛憎や欲望が色濃く描かれていることで有名な作品だが、
今回の串田和美演出には、最後に1つ巧みな仕掛けがあって、この外伝を通して「忠臣蔵」を
俯瞰して眺める冷静なまなざしが付け加えられている。
そしてそれがなんとも切なく美しく、やるせなさを醸し出して、胸に迫る舞台となっている。


この『盟三五大切』はコクーン歌舞伎では1998年の第3回公演でも上演され、今回は13年ぶり。

物語は、元は塩冶家家臣で浪人に身をやつしているが、盗まれた百両を調達して討ち入りに参加したい薩摩源五兵衛に中村橋之助。
彼が思いを寄せる芸者小万に尾上菊之助。そして小万の夫で、自分を勘当した父の主筋のために百両を騙りとる三五郎には勘太郎が扮して、大金をめぐるそれぞれの思惑のスレ違いと、そこから起きる悲劇を描き出す。

貫禄と重み、そして何よりも凄みと狂気のある源五兵衛の橋之助。
今回がコクーン歌舞伎初登場で、仇っぽさと可愛げのある美しい小万の菊之助。
小気味よい悪党ぶりと実直な顔の両面を切れ味よく演じ分ける勘太郎。
そんな腕のいい役者たちが、歌舞伎ならではの所作のよさに加えて現代的なテイストを感じさせ、
演出家の串田和美が手がけたアーティステックな美術や、三味線や長唄に混じったチェロの響きが、
「新しい歌舞伎」の世界を生み出して、コクーン歌舞伎ならではの新鮮さを感じさせてくれる。
 

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もちろん歌舞伎ならではの定番の面白さも満載されていて、
小万と三五郎が忍び会う場面の舟や、二人に騙されたと知った源五兵衛が夜中に関わりのあったものを斬り殺して歩く「五人切の場」の回り舞台など、いかにも歌舞伎らしい見せ場で目が離せない。


串田和美がこの舞台の新演出について公式サイト(歌舞伎美人)でこんなふうに語っている。
「(今回の演出は)川面の揺らぎのような、まどろみの中で見た夢。源五兵衛にとって(この物語の世界が)夢か現実か、自分がどこにいるのかわからないようなイメージ」
まさにその言葉通り非現実と現実のあわいで見る夢のような、だからこそ浮き世を生きる人間のはかなさをどこか映し出していて、
残酷であるがゆえに、儚い命の「大切」を、ひとしお感じさせる『盟三五大切』となっている。
 

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(写真は一幕のみ)


 

渋谷・コクーン 歌舞伎第十二弾

『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』

●6/6〜27◎シアターコクーン

演出・美術◇串田和美

出演◇中村橋之助 尾上菊之助 中村勘太郎 坂東新悟 中村国生 笹野高史 片岡亀蔵 坂東彌十郎

             

〈料金〉1等平場席13,500円 1等椅子席13,500円 2等席9,000円 3等席5,000円 立見A(当日券のみ)3,500円 立見B(当日券のみ)2,500円 (税込)

〈問合せ〉03-3477-9999 Bunkamuraチケットセンター

【文/榊原和子 撮影/冨田実布】 

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