稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

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芸術に憑かれた市村ゴッホ『炎の人』レビュー


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市村正親の憑依したかのような入魂の舞台『炎の人』が好評再演中である。

天才画家であり、ときに狂気の画家として知られるゴッホの「炎のような生涯」を三好十郎が描き出したこの戯曲は1951年、ちょうど60年前に書かれた。

芸術に携わる自分に重ね合わせて饒舌に語られる三好十郎の言葉は、同じく演劇という芸術に取り憑かれた俳優、市村正親の身体と声をかりて、まさしくそこにゴッホの魂と生涯として浮かび上がる。


物語の始まりはベルギーの炭鉱町。宣教師を志したヴィンセント・ヴァン・ゴッホだが、その並はずれた献身から職を失い、放浪の果てに絵画で生きることを決意する。
オランダに移り住み、酒場で知り合った身重のシィヌ(富田靖子)をモデルに絵の修業を始めるが、周囲から孤立し、シィヌにも去られてしまう。そんな彼を理解し支援し続ける弟のテオ(今井朋彦)。
やがてヴィンセントはパリに出て、若い印象派の画家たちとの交流で刺激を受ける。なかでもゴーガン
(益岡徹)の才能に強い憧れと嫉妬を抱き、自分独自の技法と世界を求めて憑かれたように絵を描き続ける。そんな日々にヴィンセントの精神と肉体はすり減っていく。

やがてパリを逃れアルルに移り、明るい陽光の中でゴーガンとの共同生活が始まる。美しい田園風景とそこで知り合った踊り子ラシェル(富田靖子・二役)の優しさに癒されるが、芸術家同士の激しさゆえにゴーガンとぶつかり合い、ついに狂気の発作が起こしてしまう。

 

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市村正親のヴィンセント・ヴァン・ゴッホは、一幕では、自分の進むべき道を求めるあまり、周囲の人々とズレていく不器用な人間の葛藤を激しさと若さを感じさせて演じ、後半のアルルの場面では、創造の苦しみに灼かれ、安らぐことのない日々に次第に狂気を帯びていく芸術家の懊悩を抱いて、舞台空間に生々しく存在する。

共演の俳優たちも、そんな市村ゴッホの熱に引きずられるように熱い芝居を見せて、とくに市村と対峙する益岡ゴーガンは、ゴッホに憧れられる大きさと激しさで立ちはだかる。ゴッホが愛した女性二役の富田靖子は、彼が妄想する女の優しさ、したたかさ、温かさなどを持つ「女の本質」ともいうべきものを感じさせる。弟のテオを演じる今井朋彦は、誠実さが心に沁みる。そのほかに大鷹明良、銀粉蝶、中嶋しゅうなど芸達者が何役も演じながら舞台を固めている。

この舞台で特筆しておきたいのが、堀尾幸男の美術と勝柴次朗の照明で、とくに二幕を飾るゴッホのアルルの風景画の美しさ、ゴッホの内面などを映し出す明かりの変化などは、この物語のテーマをより鮮明に表現して効果的だ。

最後はその耳を削ぎ落とし、それでも足りずに命まで絵画という表現に食い尽くされるゴッホだが、彼が生み出した数々の「絵」の美しさと魂の純粋さを伝えて余りある、芸術への愛に溢れた舞台となっている。


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『炎の人』

作◇三好十郎 

演出◇栗山民也
出演◇市村正親、益岡徹、富田靖子、今井朋彦、大鷹明良、中嶋しゅう、銀粉蝶 ほか

●11/4〜13◎天王洲 銀河劇場
〈料金〉S席9,000円/A席7,500円(全席指定・税込)
〈問合せ〉ホリプロチケットセンター 03-3490-4949

●11/16◎七飯町文化センターパイオニアホール(北海道)
●11/18◎たきかわ文化センター(北海道)

●11/20◎深川市文化交流ホール み・ら・い(北海道)
●11/23◎大空町教育文化会館(北海道)
●11/30〜12/1◎神奈川芸術劇場


【文/榊原和子 撮影/田中亜紀】

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西川貴教・島谷ひとみの『ロック・オブ・エイジズ』レビューとコメント

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現在もブロードウェイで大盛況公演中の、全米ロックミュージカルの金字塔、『ロック・オブ・エイジズ』が日本に上陸、東京公演は終了したが、大阪そして福岡公演へとツアー中である。


ボン・ジョヴィ、ジャーニー、REOスピードワゴンなど、80年代を代表する珠玉のナンバーで構成されたこのロックミュージカルは、2006年のロサンゼルスでの初演、2009年にはブロードウェイに進出して、トニー賞作品賞を含む5部門にノミネートされ、現在もブロードウェイで公演中。また、ロンドン、オーストラリア、韓国などで上演されて人気を集め、2012年にはトム・クルーズ主演での映画化になることも決定している。


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物語は案内人のロニー(川平慈英)に導かれ、1987年のロスアンジェルスのへとトリップする。
ロックンロールが溢れるサンセット大通りで、ロックシンガーを夢見るドリュー(西川貴教)は、田舎から出て来た女優志願のシェリー(島谷ひとみ)と出会う。
「バーボンルーム」というクラブで働きながら次第に仲良くなる2人だが、「俺たちは友だち」というドリューの言葉に傷ついたシェリーは、大物ロックバンドのステイシー(山崎裕太)と関係を持ってしまう。だが彼に愛がなかったことを知り、ママ・ジャスティス(高橋由美子)誘われるままにストリップショーで働き始める。

一方ドリューはスカウトされたもののロックではなくアイドル路線のバンドだった。夢から遠ざかっていく2人。
そして彼らが生きるサンセット大通りにも危機が迫っていた。建設会社の社長ヘルツ(鈴木綜馬)が市長(石橋祐)と組んでロックンロールを排斥しようとしていたのだ。


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キーマンのドリュー役を演じる西川貴教は、ロックシンガーを夢見てあきらめずに生き抜く若者を、ナイーブにパワフルに聴かせ、そして魅せる。
女優になりたくて田舎から上京してきたシェリーは島谷ひとみ、ドラマティックなヒロイン役を爽やかに演じている。

2人を取り巻く配役もエンターテイナーぞろいで、山崎裕太はロックバンドの大物ボーカルのステイシーをかっこよく決めれば、ストリップクラブのママ・ジャスティスを高橋由美子が貫禄を感じさせて演じ、伝説のミュージシャン・デニスでカリスマ性を感じさせるなだぎ武。
ロック排除に反対して立ち向かう市の職員ワギーナのmisonoはキュート。そしてシェリーの父親役と市長を演じる石橋祐や建設会社社長の鈴木綜馬の手堅い演技と存在感は大きく、社長の息子でフランツ役の藤田玲は優しさを見せる。
そんな舞台全体を俯瞰し、現代から1980年代のロサンゼルスへと観客を導くロニーの川平慈英が作品全体のリズムを盛り上げる。


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既存の楽曲を使ったミュージカルを「ジュークボックス・ミュージカル」と呼ぶそうだが、この作品は劇中の楽曲がすべて80年代のロック。全米を賑わしたヒットチューンばかりで構成されている。
そんな聞き慣れたロックの名曲がこれでもかという勢いで歌い継がれ、乗りのよい音の洪水の中で物語が進行していく。しかもキャストは歌唱力抜群のアーティストばかりで、何も考えずに歌の魅力に酔いしれていられるミュージカルである。
上演台本と演出はロックには造詣の深い鈴木勝秀、パンクな衣装は菊地晶子、当時のライブハウスは二村周作の美術と、優秀なスタッフたちがこの作品のロック・スピリッツを盛り上げている。


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【出演者コメント】
 

西川貴教 

素敵な楽曲ばかりなので、歌の力を感じてもらえるミュージカルになればと思います。我々が元気を与えられたらなと。お客様も手を叩いたり、楽しみながら観れるので、思いっきり楽しんで下さい!

 

なだぎ武 

皆さん、ボクが誰か分かります? それだけが心配です(笑)。ミュージシャンの中に芸人が混ざるので、目立つために派手な衣装です! このミュージカルは本当に舞台と客席が一体になって楽しめるので、僕たちと一緒に楽しんで欲しいですね。西川くんと島谷さんのキスシーンなんかもありますので、楽しみにしていて下さい(笑)。

 

島谷ひとみ 

もう本当に、始まったらあっという間のミュージカルです。私も毎回新鮮な気持ちで挑めるので、この気持ちをキープして良いライブに出来たらと思います。ロックを感じて、楽しんでもらいたいです。

 

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ロックミュージカル

『ロック・オブ・エイジズ』

作◇クリス・ディアリエンゾ

演出・上演台本◇鈴木勝秀 

音楽監督◇前嶋康明

出演◇西川貴教 島谷ひとみ/山崎裕太 高橋由美子 misono 藤田玲 石橋祐 明星真由美 /なだぎ武 鈴木綜馬・川平慈英

●10/28〜11/6◎東京国際フォーラム・ホールC

●11/11〜13◎ 森ノ宮ピロティホール

●11/19◎アルモニーサンク北九州ソレイユホール

http://www.rockofages.jp


【取材・撮影/冨田実布 文/榊原和子 


 

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漱石の現実と創作を描く傑作『アイ・ラブ・坊ちゃん2011』レビュー


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音楽座ミュージカル、『アイ・ラブ・坊ちゃん2011』は、日本人なら誰もが名を知る作家の夏目漱石が『坊ちゃん』を創作する姿を描いた物語で、1992年の初演時に「日本のオリジナル・ミュージカルの記念碑的傑作」と高く評価され、以来音楽座の代表作の1つとして何度も上演されてきたレパートリーである。


舞台は夏目漱石宅。『坊ちゃん』を書き始める漱石(広田勇二)の家には妻・鏡子(宮崎祥子)と子どもたち、女中、猫が暮す。その家には、本を届ける高浜虚子(五十嵐進)と、ボールを探す野球少年(大須賀勇登)、鏡子の姪・雪江(大川麻里江)がそれぞれにやってくる。

そして、家の奥からは創作する漱石の頭の中に住む人物たちが飛び出してくる。坊ちゃん(安中淳也)と清(秋本みな子)はじめ,『坊ちゃん』の登場人物たち。ドン・キホーテとサンチョ・パンサ、葬列の人々、ドレスの貴婦人。そして死んでしまった兄嫁や親友。

正岡子規(佐藤伸行)は、山嵐であり、サンチョ・パンサである。雪江はマドンナである。雪江を誘惑する音楽教師は赤シャツ(新木啓介)ではないか。現実の人物と、物語の人物がリンクして、話はどんどん面白くなっていく。


全編を通して、明快な楽曲を力のあるキャストが歌い、そのパワーが伝わってくる。『坊ちゃん』の登場人物のキャラクターは原作からして面白いが、それが立体感を持って現れ生きてくる。その世界と悩み多き現実の漱石と二本立ての物語を見るようだから、二倍魅力がある。


漱石役の広田勇二はその風貌が漱石そっくりに見えることで先ず驚く。繊細な神経の持ち主であることをよく表しながら、共感を呼ぶ魅力を持つ。宮崎祥子はサバサバした気性の鏡子と漱石のやりとりのおかしさを活かす。安中淳也は坊ちゃんをイキイキと演じ、『坊ちゃん』の世界を作っていた。佐藤伸行は豪傑な男らしさを出しながら、山嵐と子規を演じ分けた。ほかに赤シャツ役の新木啓介、野だいこ役の治田敦が目を引いた。二役を演じる役者もいて、その変貌ぶりも見所だ。

漱石が『坊ちゃん』の原稿用紙を丸めると登場人物たちが捻られた様子を示し、開くと元に戻るという演出は印象的。高田一郎の美術は墨絵の背景と屋根を持ち、色彩のある人々との対比が鮮やかだ。


音楽座ミュージカル

『アイ・ラブ・坊ちゃん2011』

脚本◇横山由和 

脚本・演出◇ワームホールプロジェクト

出演◇宮崎祥子 高野菜々 秋本みな子 井田安寿 広田勇二 安中淳也 新木啓介 佐藤伸行 ほか

●10/29〜11/6◎青山劇場

●11/12〜11/13◎イオン化粧品 シアターBRAVA! 

〈料金〉S席7.770円/A席5.670円【Rs' triangle料金】S席7,350円/A席5,250円/シニア席5,500円/スチューデント席3,500円

〈問合せ〉劇団 0120-503-404 

http://www.ongakuza-musical.com

【文/佐藤栄子



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