稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

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ノスタルジックにかぶく 『電車は血で走る』

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全力でぶっ飛んだ、軽い初恋プラス成長のある夢物語。劇場いっぱいに鳴り響くロックとブラスバンド、テンション高い役者のかぶいた姿、見た目はめちゃくちゃしているのに、終わりに向けて話がまとまっていく時には、なんとも言えない懐かしさやら甘さを感じて、そのギャップにときめいた。切なくて、実はちょっと涙も出た。

面白い。鹿殺し。

初めて見る劇団と出会う際は、どんな役者さんがいて、どんな言葉で台詞が語られていくのか、雰囲気が自分の好みに合うか合わないか、探り合いのようなところがある。今日の初めましては「劇団鹿殺し」。どういう意図でこの劇団名が付けられたのかは、出会ったばかりなのでさっぱりわからないが、鹿を殺す様子が連想される物々しいとしか言いようがない劇団名である上に、作品タイトルも「電車は血で走る」と、なんだか少々グロい。暗くて、暴力的な作品なのかと予想していたら、さくっとその予想は裏切られた。

「やりたいことを、やりたいようにやりました!」というパワーが全体にみなぎっていて、みなぎりすぎて、もはや格好良い。小ホールでの公演なのに、フライングが2度もあるなんて凄い。笑える。なんとなく毛皮族を見た時の感覚と通じるものがあるような気がしたのだが、実は毛皮族も旗揚げから10周年、そして鹿殺しも同じく今年10周年を迎えるそうだ。東に毛皮族、そして西に鹿殺し。同じ時代に東西で、演劇ならではの、こんな派手なバカバカしさを炸裂させていたのかと思うと、見られなかったのが残念になってきて、もう少し前に出会いたかった、という気持ちが湧き上がってくる。

派手さを一時落ち着かせるノスタルジックな言葉にも魅力を感じた。町に駄菓子屋がたくさんありそうな、一昔前の雰囲気。武庫川や、宝塚、梅田、阪神、少しの関西弁もそうだし、土地を思わせる台詞が多々あって、それは実際には知らない風景であったりするのに、なぜだか匂いを感じてホッとする。遅ればせながら、この勢いがこれから先、どこに向っていくのか、気になる劇団が一つ増えたのは幸せだ。


劇団鹿殺し『電車は血で走る』  

作・出演◇丸尾丸一郎

演出・出演◇菜月チョビ

出演◇オレノグラフィティ 山岸門人 橘輝/河野まさと 高木樹里 谷山知宏 今奈良孝行 他

●6/18〜7/4◎東京芸術劇場 小ホール

〈料金〉¥3900

〈問合せ〉オフィス鹿 03-6803-1250 info@shika564.com


【文/岩見那津子】

揺らぐ時間に迷い込む 「安蘭けい箱舟2010(SIDE K 浦井健治出演)」


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安定とはほど遠い、不安定な世界。繊細さの中で激しく揺れる感情の鋭さ。荻田浩一の作品に触れるといつも、例えば「朝」でもなく「夜」でもない、はっきりどんな時だと言い切れない揺らぐ時間の中に迷い込んだような感覚に陥る。今回の「箱船」の第一幕もまさしくそんな時間に観客を誘うものだった。

旅行鞄を持って船に乗り込む一人の青年(浦井健治)と、その船のショーガール(安蘭けい)のひと夏の恋、幻を見たような気がする。青年を弄ぶように挑発し、惹き付ける女。純粋に女に想いを寄せる、無邪気で無垢、汚れなき青年。お互いに惹かれ合って結ばれた瞬間は絶対ではなく、その時は航海の中、流れる時間と共に儚く消え去る。

外側から二人の運命を操るように見つめ続ける男がいたことによって、結ばれる事も、別れる事も、さだめの中の出来事だったように感じられた。出会いも、そこから生まれた感情も、全てが逃れられない運命の中に、ただあっただけ。それなのに誰かを愛し、苦しみ、痛みを覚えてしまうことに虚しさや、切なさを覚える。

わかりづらいと言えばそれまでだが、いくらでも解釈を広げられる言葉の魅力や、妖しく、美しく、曖昧な世界観に堕ちていく心地良さが荻田の作品にはある。一度迷うと、もっともっと迷い込みたいと思ってしまう中毒性。安蘭が持つ強い存在感や美しさ、その裏で時折、顔を出す哀しみ。永遠に少年で居続けるような純粋さと、だからこその残酷さを秘めている浦井。相反するものを抱える二人が、荻田の世界と共鳴し合い、作品に更なる光と闇を与えていた。

…というように、芝居仕立ての一幕に酔ったあとの二幕は歌がメインとなるショー。安蘭の芸能生活20周年を祝う意味も込められている。格好良いのにキュートな姿、痛快なトークまで、様々な安蘭けいを堪能する。自分自身の弱さも、悔しさも、悲しみも全てを受け止めた上で、そこから立ち上がり、歩み続ける前向きな力強さを安蘭の歌声から感じる時がある。その痛みを知っているからこその強さが安蘭の魅力であり、彼女の生き様そのものなのかもしれないと、最後「I’m Here」を歌い上げる姿を見て思った。

 

コンサート

『安蘭けい 箱舟 2010

構成・演出◇荻田浩一

音楽◇宮川彬良

出演◇安蘭けい、武田真治【SIDE S】、浦井健治【SIDE K】、西田健二

●62日〜15日◎天王州銀河劇場

●617日〜19日◎兵庫県立芸術文化センター

【文/岩見那津子】

絶望からの覚悟 コクーン歌舞伎『佐倉義民傳』

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こんな人は実際にいるのだろうか?いや、いない?
とにかく身を粉にして世のため、人のために手の限り、思いの限りを尽くす、中村勘三郎演じる下総佐倉の領主、木内宗吾の自分ではない誰かを思うが故に生まれるエネルギーの大きさに胸が熱くなった。

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年が初演の作品であるけれど、コクーン歌舞伎が持つ現代性も相まって、宗吾の真っ直ぐな行動力に夢のような理想を見て、更にその行く手に立ちはばかる壁に、まざまざと「今」を感じた。上に立つ者とその下にいる者の関係性。下から思いをぶつけても上手く響かず、のらりくらりとかわされる。

宗吾は実際には存在し得ない理想の領主なのかもしれない。民衆のことを一番に考え、自分だけが豊かになろうとは決して思わない。相手を想い、できるかぎりの優しさをささげ、命を何よりも大切にする。誠実で、暖かい人だ。しかし、そんな宗吾が民衆の生活を改善させようと、どんなに大きな声で叫んでも、その叫びはいつの間にか、かき消されてしまう。

こんなに立派な人が、こんなに切実に叫んでも、全く届かない。世の中は全く変わらない。それどころか宗吾は辛すぎる結末に向う一方で、その痛いドラマを見つめながら、ただただ「救いはあるのだろうか。」という思いだけが浮かび上がってきた。

今まで見た何作かのコクーン歌舞伎は、いずれもお祭的で派手に見せる部分が多々あったように思う。今回は、派手さを抑えて、ぐっと深く人間ドラマに迫った。木内宗吾という人が一体どんな人であるか、どんな家族に囲まれて、どんな生活をし、どんな思いを抱えているか。静かでなんてことのない、やり取りや表情の中で、確実にそれぞれが役として息づいているのを感じたし、その分だけ、感情移入して物語を体感することができた。

だからこそ、より辛かった、結末の救いのなさが怖かった。木内宗吾という人が命果てた世の中は、確実に今と繋がっている。ラップに乗って訴えかけてくる、熱い、熱い、切実な、胸を突き刺すメッセージ。こんなにも直接的に「このままでいいのか!?」というメッセージが発されることにもまた、ある種、救いのなさを感じたのと同時に、それでも生きていく以上、立ち向かう他に道はないという覚悟もこの作品から受け取った。


『佐倉義民傳』

演出・美術◇串田和美

出演◇中村勘三郎 中村橋之助 中村七之助 笹野高史 片岡亀蔵 坂東彌十郎 中村扇雀 他

●6/3〜27◎Bunkkamuraシアターコクーン

<料金>1階平場席¥13500 1階椅子席¥13500 2等席¥9000 3等席¥5000 立見A席¥3500 立見B席¥2500(全席指定/税込)

<チケットに関するお問い合わせ>チケットホン松竹 0570-00-489 Bunkkamuraチケットセンター 03-3744-9999

【文/岩見那津子】

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