稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『僕のド・るーク』

大きな音を鳴らしてやろう!ガレキの太鼓・舘そらみインタビュー

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2009年に旗揚げした劇団ガレキの太鼓の主宰、作、演出を手がける舘そらみ。
旗揚げからがむしゃらに走ってきた1年と数ヶ月。
そろそろ落ち着いて生活をしないと・・・といいつつ、今年の9月にはパレスチナに行くという!
いつも全力で突き進み、あっちこっち壁にもぶつかって、なんとか前へ進んできたのかなと感じさせる真っ直ぐな視線。言葉を選びつつ、自分の思いを口にする彼女は眩しかった!
8月の公演はこじんまりしたカフェシアターで、出演するのは女優7人。「きっとガッツリ抱え込む感じになりそうです」という。
たまには濃密な劇空間に、どっぷり身を任せてみるのもいいかもしれない。

——2009年旗揚げでこの8月で4作品目って、作品数が多いですよね?

そうなんですよ(笑)。スタートダッシュしちゃって・・・。みんな疲弊しているので、これからはちょっとペースを落として長期的にやっていけるようにしていこうと思っています。

——劇団のメンバーは何人ですか?

正式メンバーは私と宣伝美術の大木の二人だけです。あとは準劇団員みたいな感じで、手伝ってくれる人たちもメンバーみたいな感じでやっています。

——お芝居を始めたきっかけは?

小さい頃から興味はあったんですけど、やっぱりダサいものだという印象があったので、やったことなかったんですけど、大学がくだらないから辞めようと思ったときに、辞める前に1ヶ月間くらいならダサイと思っていた演劇もやってみようかなーみたいな感じで始めたら、まんまとはまりまして。辞めるつもりだった学校も辞めず、サークルに通う感じで大学も卒業しました。

——大学では役者として参加していたのですか?

始めは役者で。3年のときに急に書かなきゃいけないみたいなのが芽生えて。初めて自分で書いて演出をしました。もっと演劇は訴える力があるはずだ!みたいな。当時、自分が世界を救えると思っていたくらいエラそうな若者だったので。今から考えると恥ずかしいくらい暑苦しい、世の中を変えるぞみたいな学生運動の時代を扱った作品を作りました。お客さんを集めるために学生会館の入り口にバリケードみたいなのを作って、そこで「体制反対!」みたいなビラを配ったりして。作った瞬間に学校側の人がやって来て。「いったい何をやっているんだ。責任者を出せ」とこっぴどく怒られて撤去したくらい向こう見ずで、世界を変えるんだという勢いでやっていました。
で、終わってみても世界が変わらなかったので、当たり前なんですけど(笑)。すごい落ち込みまして。演劇も辞めて、学校を1年間休学して、一人で世界を回る旅行に出ちゃいました(笑)。


——一度、辞めた演劇を再び始めたんですね?

帰ってきて1年くらいは演劇もやらずに、悶々としてたんですけど。今度は1年間、休学して旅で見てきた生活を伝えなくてはいけない、それは演劇だみたいな思いがむくむくと。
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——劇団名の「ガレキ」と「太鼓」って、普段はあまり耳にしない単語ですよね。

選び抜いてこれっていうよりは、最初っからこれしか浮かばないっていう感じだったんですけど・・・。世の中でゴミみたい、ガレキでしかないと思われている物を使って、大きな音を鳴らしてやろうみたいな。・・・一応、そういうつもりで名前を付けました。

——タイトルの『吐くほどに眠る』というのも、聞いたことのある単語ではあるけど、意外な組み合わせですね。眠るのは好きだけど、吐くほどっていうのは・・・ちょっと怖い印象があります。

今回の作品は今までと大きく作風を変えようと思っていて。今までは群像劇というか、社会を切り取った感じの作品を作ってきたんですけど、今回、初めて1人の人間の内面にどっぷり入って、描いていくつもりなんです。1人の人間を深めて考えていこうと思ったら、ちょっと怖い感じになりました。ある一人の女性の子どもから30歳くらいまでの人生を辿っていく作品で、人間の記憶とかトラウマとか、そういったものを題材にする予定です。生きるって大変だよね、危なっかしいよねということをもう一度感じて、頑張って生きようよっていう。私が本当に一番弱っている時期に書きたいな、すがりたいなと思った作品なので、弱さがいっぱい入っていると思うんですけど、弱さの中にかすかな希望を見れたらなと思っています。

公演情報
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ガレキの太鼓
『吐くほどに眠る』

8/19〜26◎APOCシアター

作・演出◇舘そらみ
出演◇石井舞 上村梓 木崎友紀子(青年団) 北川裕子 菅谷和美 高橋智子(青年団) 由かほる(青年団)
<料金>前売¥2500  当日¥2800 ペア割¥2300(19、20日割引あり)
<お問い合わせ>ガレキの太鼓  080-4295-2009  info@garekinotaiko.com

http://garekinotaiko.com
【取材・文/矢崎亜希子】

娘役2人が決定! 野田地図番外公演『表へ出ろいっ!』オーディション結果発表

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野田地図番外公演『表へ出ろいっ!』に出演する娘役のオーディションを行うと発表があってから約2ヶ月。出演する娘役が決定したとのことで、そのお披露目となる会見が726日に行われた。
母となる野田秀樹、父の中村勘三郎に呼ばれて登場したのは、なんと二人の女性。太田緑ロランス(おおた・みどり・ろらんす)さんと、黒木華(くろき・はる)さんだ。
オーディションには1155人の応募があったそうだが、全く違うタイプの魅力を持つ二人に甲乙付けがたく、娘役をWキャストにし上演するという結論に達したということである。

 

【野田秀樹と中村勘三郎による二人の紹介】

ーー太田緑ロランスさんについて

野田 太田緑ロランスさんは、舞台経験は意外にある方で。オーディションの時に膨大な台詞量があったんですけど、こっちが出したものに対して、非常に柔らかい反応があって。あとはご覧の通り、見た感じもおよそ我々夫婦の子供に見えないという所が(笑)、実に良い味になりまして、是非彼女をということになりました。

勘三郎 あの、今言ったようにね、全く想像できない感じがありました。突然変異というか、「私たちの娘にはあるわけない!(笑)」その面白さと、物の表現の仕方が「あ、そう言う風にやるんだ!」という感じが、とても面白かった。そこが僕はいいな、と思いました。

ーー黒木華さんについてs_RIMG1671

野田 黒木華さんは、去年の12月に僕が大阪で舞台のワークショップをやった時に、初参加をしてまして、それまでは舞台経験は全くありません。その後、今、野田地図で上演している『ザ・キャラクター』のアンサンブルオーディションに彼女は応募してきて、現在アンサンブルとして『ザ・キャラクター』に出演してます。ワークショップの時から、台詞に非常に間とか、幅があって。今20歳で、12月の時点では10代だったんですけど、「この子は、伸びしろが大きいんじゃないかな?」と思っていたら、やはりどんどん伸びていきましたね。今回のオーディションに来た1155人の中で見ていても贔屓目ではなく、レベルがちゃんとしてるなということで、彼女を選びました。

勘三郎 黒木さんは脚本の娘にピッタリなんですよね。幸せですよね、こういう違う個性の二人の娘を持てるっていうのは。実生活では野田さんは、女の子を持ってらっしゃいますけど、私は男の子二人なもんですから。こんな素敵なお嬢さんが二人できて、どういう稽古場になるかと今から楽しみにしています。

野田 Wキャストを思いついたときは、その手があったか!と思いましたけど、後で稽古時間のこと考えたら(笑)。決定したのは720日で、最近です。

勘三郎 野田秀樹が見て、私も及ばずながら見させていただいたけど、このお二人は、この芝居に出なくても、どこかで必ず出てくる人ですよ。本当に素敵な才能だと思ったんですよね。あの、頑張ってください。芝居にこういう人がいるってことを知らせたかったよね。

野田 うん。無名だから選んだということでは全くないんですが、本当に舞台から、新しい女優さんが出てくるって言うのが、今一番、日本のお芝居の元気のないところのような気がするから、そこで舞台から新しい人が出てきたっていう、メッセージを伝えたいと言う感じですね。


【娘役二人から挨拶】

太田 太田緑ロランスと申します。よろしくお願いします。今日でちょうど発表から1週間が経ちましたが、本当に楽しみで仕方がないです。台本を読んでいても、父親が勘三郎さんで、母親が野田秀樹さんなんだと思うと、すごく嬉しさがこみ上げてきたりもしますし、これをどうやったら、どういう風になるかな、こうやったらまた違うかな?と、そういうのを色々考えるのが今すごく楽しみで仕方がなくて、稽古が待ち遠しいなという心境です。s_RIMG1669

黒木 私はさっきもおっしゃってくださったように、あまり舞台の経験がないので、お父さんと、お母さんと(太田を見て)お姉ちゃん?の(笑)、姿を一生懸命見て、いっぱい色んなことを吸収して、楽しい舞台にできたら良いなと思っています。お願いします。

【質疑応答】

ーー太田さんの表現の仕方が面白いとおっしゃっていましたが、具体的にどのような表現に面白さを感じましたか?

勘三郎 台詞にね「チビ」というのがあるんですよ、小さい男性を愚弄するような。その愚弄の仕方が、背が大きいでしょ、もう彼女に愚弄されたらチビは生きていけない(笑)。
全部軽い感じですっすっ、と来たのでね、笑いました稽古場で。これ大変なんですよ。二人とも本当に上手いから、全く違うドラマになるような気がする。二人の力でもって、私たち夫婦も絶対変ってくるから、違う作品になるような気がするんです。大変なんですけどね、でもそれだけ期待してます二人に。

ーー娘役のお二人にお聞きします。今までご覧になったことのある野田さんの作品の印象は?またお互いの印象は?

太田 私が拝見させていただいた中で、一番印象に残っている野田さんの作品は『THE BEE』で、あれは本当に人間の見たくもない悪意のようなものが、目の前にこれでもかと突きつけられる緊張感があって、席に座っているのがしんどくなるぐらい、衝撃を受けました。『THE BEE』の両バージョン(日本・ロンドンバージョン)ともすごく好きでした。
黒木さんの印象は、2次選考の時に17人ぐらいのグループで、黒木さんと一緒だったんです。その時に、すごく透明感のある方だなと思って、実は気になっていました。Wキャストだって知らされて、その後すぐに取材があったんですけど、その会場で華さんが先にいらしてて「あ!やっぱり!」って私は思いました。

s_RIMG1668黒木 私は『贋作・罪と罰』が実際に劇場に見に行ったお芝居なので、すごく印象に残っています。太田さんは、えっと、17人の時には、自分でいっぱいいっぱいで、周りの人の事があまり見えてなかったんですけど、お会いした時に、すごい色んなお芝居をやられている方だと聞いていて、あとやっぱりスラッとしていて、あの体型のことだけでなく(笑)、雰囲気もスラッとしている素敵な方だなと思いました。

ーーこの話の中の娘はどんな娘なのか?また、二人のキャラクターが違いを演出でどう表現していきたいか。

野田 今度の芝居は、わかりやすさでいうと、自分の書いた芝居の中でこれほどわかりやすい芝居はないっていう、今まで書いたことのない芝居なんですね。自分の名前じゃなく、偽の名前使った方が良かったかな、というような芝居なんです。彼女達がやる役は、極めて気が強く書かれていると思います。その意味で、勘三郎さんと僕とも対等にやり合えないといけないんですね。僕の芝居は身体性を重視するオーディションが多いんですけど、台詞をこれだけ重視したのは初めてかもしれないです。それは長時間、丁々発止をし続けなければいけない。そういう部分があるからです。
二人は全く見た感じも違いますし、おそらく勘三郎さんが言ったみたいに、稽古場で実際立ってみると、およそ違うものができると思うんですよね。その時に、彼女達の問題より、おそらく我々がどう受けて、別の父親、別の母親になれるか。そこが大変だけど、楽しみですね。

勘三郎 大変ですよ(笑)。親父は娘とお母さんにタッグ組まれたりするんですけど、この強力タッグにこっちも立ち向かわなきゃいけないんで。また台詞が面白いんですけど、覚えにくいんですよ、日常会話で。一昨日、楽屋でちょっと声を出して読んでたんですよ。隣が中村扇雀の部屋だったんですが、そうしたら扇雀が芝居が終わってから、「勘三郎さん、だ、大丈夫ですか?」って「あんなにしつこく喧嘩なさってましたけど。」って(笑)。ずっと喧嘩してるんで、テンションの上げ方が大変ですよね。それも台本見てるからやれるんで、あれを台本なしでみんなを相手にしたら、本当に大変なことで、それも2人、いや3人を相手にしなきゃいけないから、大変ですよ。

ーー舞台から新しい人が出て来て欲しいというお話でしたが、今回オーディションをなさっての印象と、選ばれなかった人に何が足りなかったのか等ありましたら。

野田 書類で落とした人っていうのは、実際に会っていないわけで、そんなことは本当は人間ができることじゃないんですけど、でもこうして出会いを求めてますので、そうやらざるを得なかった。だから、オーディションに落ちた役者さんの中にも、かなり可能性がある人がたくさんいたとは思います。たまたま今回、この役には、この二人が素晴らしかったんですけど。でも「あ、これだけ、やる気がある役者さんたちがいるんだな。」というのは、正直ビックリしましたね。やる気があって、能力があるっていうのかな。このオーディションに受からなかった女優さんの中でも、今後何かの時に、キャスティングできたらいいなっていう、そういうズルい(笑)収穫もありました。今回選んだこの二人は、言葉に強いんですね。最近の若い人と会っていると、言葉に弱いのを感じます。言葉っていうのは、本当はどうにでも読めるのに、通り一遍にしか読めない。書かれている文字はこう読まなきゃいけないという頭で読む人が多いんですが、彼女たちはそういう所がなかったんですね。

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会見後のフォトセッションでは、ポーズを求められた勘三郎がまず黒木の肩に手を回し、会場が笑いに包まれた。
更に登場した4人の中で一番の長身である太田が、野田に促され、野田の肩に手をそこでまた笑いが起こった。最後は4人で手を繋ぎフォトセッションは終了。
期待に胸を膨らませ、物怖じしない堂々とした雰囲気を感じさせた太田に、透明感や初々しさの中に芯の強さがあるような、不思議な存在感の黒木。この二人が野田秀樹と中村勘三郎という両親を持ち、演劇の世界の中でこれからどう生きていくのか。
予想外のWキャストに、より期待が高まった『表に出ろいっ!』。劇場で見られる日が楽しみだ。

 

太田緑ロランス(おおた・みどり・ろらんす)
81年、北海道生まれ。フランス人を父に持つ。99年早稲田大学在学中に初舞台。以降舞台・映像ジャンルを問わず数十本の作品に出演。

黒木華(くろき・はる)
90年、大阪府生まれ。京都造形芸術大学3回生。現在 、NODAMAP『ザ・キャラクター』にてアンサンブルとして初舞台。

NODAMAP番外公演『表に出ろいっ!』
作・演出◇野田秀樹

出演◇中村勘三郎/野田秀樹/太田緑ロランス・黒木華(Wキャスト)

●9/528◎東京芸術劇場 小ホール1

〈料金〉一般7,500円/サイドシート4,000円(25歳以下2,000円 要身分証)/高校生割引1,000円(要学生証)  (全席指定税込)

〈問い合わせ〉NODAMAP 03-6802-6681

【取材・文/岩見那津子】

1年に7作という挑戦 『三谷幸喜大感謝祭』制作発表と懇談会レポ

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2011年の7月8日に50歳を迎える三谷幸喜。
その生誕50周年を、映画、TV、舞台、小説と4つのジャンルでフル稼働、自らイベント化してしまうというスペシャルな企画、『三谷幸喜大感謝祭』の制作発表と懇談会が、7月22日に東宝本社の会議室で行われた。

来年1年間に三谷が生み出す作品は、映画1本・TVドラマ1本・舞台4本、小説1本の計7本で、そのどれもが新作であり書き下ろし。しかも舞台・TVドラマ・映画に関しては演出も自分で手がけるという。とくに演劇関係では、『コンフィダント・絆』『恐れを知らぬ川上音二郎一座』『グッドナイトスリイプスタイト』『TALK LIKE SINGING』『なにわバタフライ』とつねに話題作を生み出してきた三谷が、一気に4本の新作を送り出すということで、大きな期待が寄せられている。

そんな制作発表の会見で、まず三谷は、会見に集まった多数の記者たちに向かって、「本当はこじんまりとテーブルを囲むみたいなイメージだったんです(笑)。本来、僕は自己顕示欲が強い方ではないし、お誕生会も好きではないし、自分のために人が集まってくれると申し訳なくなるほうで。ではなぜこれをやるのかと言われそうですが」と笑わせる。

そして今回、大イベントになったことについては「僕の作品を生み出すモチベーションは“感謝”です。これまで自分がここにくるまでに影響を受けてきた映画や舞台、テレビなど、色々なジャンルに対する恩返しや、仕事で一緒になった出演者の方々やスタッフなど作品を作り上げてきた人々に対する感謝が僕に次もやろうと思わせるんです。そういう仕事の中で、またやりましょうよとか言われると、ついやりましょうと言ってしまうクセがあって(笑)、そういうのが積み重なって、来年すごい数の作品を作ることになってしまいました、というと後悔してるみたいですが、決して後悔してるわけではなく。ちょうど僕も50歳になるところだし、1年で総まとめをということで、皆さんへの“大感謝祭”という形にしようと。これは今まで僕の作品を観てくださった皆さんや、これからの作品を観てくださる皆さんへ、そして僕も一生懸命頑張っていい作品を作りますので、それに対して皆さんに感謝してもらうという気持ちもありますし(笑)、色々な感謝の気持ちを『大感謝祭』という意味に込めました」

また今回のタイトルロゴは和田誠が「50」をデザインしていることも紹介された。

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【三谷幸喜自身によるラインナップ解説】

1、舞台『ろくでなし啄木』

(1月〜2月/藤原竜也、中村勘太郎、吹石一恵)

極貧の中で夭逝した薄幸の歌人、石川啄木をめぐる謎とサスペンスの物語。27歳で夭逝した天才歌人。そのイメージを裏切るようなルーズで嘘つき、女好きなその実体とは? 

三谷「話の発端はテレビの『新選組』で竜也くんが「一緒に舞台やりたいですね」と打ち上げで言ってくれたことで、勘太郎くんも吹石さんも出ていたんです。そのときも恋の駆け引きをしたこの3人でどろどろの三角関係をやってみようと。笑いの要素は少しはあると思いますが、来年1年はコメディの1つ先に行ったものをやろうと思っているので、エロチックサスペンスみたいな、書いたことないんですが(笑)、そういうのにしたいです」

2、 舞台『国民の映画』

(3月〜4月/小日向文世、段田安則、白井晃、石田ゆり子、風間杜夫 他)

ヒトラー内閣がプロパガンダのためにつくった宣伝省の初代大臣パウル・ヨゼフ・ゲッベルス。最高の国策映画のために集められた人々が考えたことは? ナチス政権に立ち向かった、ドイツ映画人たちの物語。 

三谷「僕が自分から発信した作品で、前々からやりたかった現場の話なんですが、映画を企画するプロデューサーの話です。たまたま『映画大臣』という本に出会いまして、これはゲッベルスの話で、これならいけると思いました。いわば映画会社の社長であり、彼に取り入るさまざまなプロデューサーたちという姿を重ねられるなと。もちろんゲッベルスはユダヤ人迫害にも手を染めた人ですが、一番好きな映画は『風と共に去りぬ』だったりするわけです。そういう映画マニアがホロコーストを作り出していたことを考えたら怖いですね。ゲッペルスが小日向さんで、親衛隊長ヒムラーを段田さん、空軍元帥のゲーリングを白井さん、ゲッペルス夫人に石田さん。それから風間さんは初めてですが、僕が昔から憧れの俳優さんです」

3、舞台『ベッジ・パードン bedge pardon』

(6月〜7月/野村萬斎、深津絵里、大泉洋、浦井健治、浅野和之)

日本を代表する文豪夏目漱石が、英国ロンドンに旅立ったのは明治33年。カルチャーショックで過酷な日々を送る彼が唯一心通わせることができた女性は女中のベッジ・パードンだった。 

三谷「萬斎さんの背広姿を見たとき感じた現代人ぽくない不思議さをどうすれば出せるかなと。それをロンドンで引きこもってた漱石に重ねてみようと。そこの女中さんにつけたあだ名がベッジ・パードンで、彼女も訛がひどくてあまり人と話したがらない人なんです。2人が心を通わせる話です。そして外国人とのギャップを感じさせるために背の高い浅野さん、浦井さん、大泉さんにイギリス人になってもらいます(笑)」

4、TVドラマ『ウォーキング・トーキング』

(8月収録 wowow開局20周年ドラマ/出演者未定)

山道で迷ったある夫婦の会話を通し、笑いとほんのちょっとの涙の中に、夫婦とは何かを問う。限定された空間、限られた登場人物、テレビドラマの限界に挑む画期的なシチュエーション・コメディ。 三谷「僕の基本は舞台だと思ってるんですが、いちばん子供のころから影響を受けているのはテレビで、そのテレビがまだまだ枠にとらわれていると思うので、演劇と映像のドッキングという、いい形の集合体ができないかと思ってまして。やってみようと思うのが1シーン1カットの長回しのドラマなんです。それをあえて屋外で撮るというので、90分のドラマです。稽古でしっかりやっておくことで本番1回で撮るという実験的な作品です」

5、書き下ろし小説『KIYOSU』

(幻灯舎/秋頃に発売)

20年ぶり、満を持しての新作小説は、なんと書き下ろしの歴史モノ!織田信長の後継者を決める「清州会議」の全貌。三谷版「七人の怒れる侍たち」。 

三谷「僕は日本の歴史が大好きで、この清州会議というのは、日本の歴史上で、初めて会議の場で歴史が変わった瞬間なんです。織田信長の次男と三男のいずれに跡を継がせるか、この会議で決まるわけです。いわばディスカッションドラマで、いつかこれが映画になるといいと思ってます」

6、映画『ステキな金縛り』

(秋・全国リロードショー/深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、浅野忠信・中井貴一)

人生のどん詰まりに立たされたダメダメ弁護士と、421年前に無念の死を迎えた落ち武者幽霊の奇妙な友情。二人の前に立ちはだかるのは、一切の超異常現象を信じようとしない堅物検事。かくして全世界の注目の中、幽霊裁判は幕を開けた。三谷幸喜が満を持して描く、ファンタジー・法廷サスペンス・コメディー!

三谷「僕が作りたかった映画が理想的な形でできたと思う。深津さんがすごくいい。演技力は素晴らしいです。もう撮り終わってます」

7、舞台『90ミニッツ』

(12月〜2012年1月/西村雅彦、近藤芳正)

『笑の大学』から15年。西村雅彦と近藤芳正のために新たに書き下ろす二人芝居は、現代を舞台にある「選択」を迫られた二人の男の戦慄の物語。一切の笑いを封印した究極の90分間。

三谷「トップスの閉館のときに15年ぶりにサンシャインボーイズの舞台をやって、二人がもう一度『笑の大学』やりたいと言ってきて。面倒くさいなと思ってたのに、つい懐かしさもあって心開いてしまいました(笑)。でも同じ作品をやるのはしゃくだから、それを超えるモノを3人で作ろうと。あれは30代でしたから50歳の僕らの作品をやろうと。今回はコメディではなく、90分を手に汗握るような、息もできないくらいの緊迫状態が続くような、濃密なものを作りたいですね」

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【懇談会】

三谷「今回のい7本で、映像はコメディですが舞台は笑いがメインではありません。でも、それはぼくがコメディから次のステップに進化したというわけではなく、このあとまたコメディに戻っていくと思うんですが、笑い以上に人間ドラマのような作品を作ってみたくなったんです」

ーー全部自分で演出するわけは?

三谷「自分が書いたものは自分が演出したほうが確実に伝わるし、これだけたくさん書くと遅れるわけにはいかないのと、自分が演出しないと細かく書かなくてはならないことが多くなるので、自分で演出したほうが書くうえでも簡単なんです」

ーー命を縮めるのではないかという感じですが、健康管理は?

三谷「(笑)人間ドックに入ったら20代の心臓だと言われました。コメディはエネルギーもいるんですが、もう50歳だと思うとあと10年くらいしかコメディを書けないかもしれないと思うとすごく焦りますね。でも野田秀樹さんなんか僕よりさらに5歳も上だからすごく焦ってると思います(笑)」

ーー全部当て書きですか?

三谷「劇団をやったたことでそういう習性になってると思います。新しい俳優さんとは、けっこうテレビでは一緒にやってて。段田さんも初めてですが、イメージでヒムラーの二面性が出せる人だな、観たいなと思いました」

ーー笑いではなく人間ドラマということですが、なぜ?

三谷「ずっとコメディをやってきて、ライブというかダイレクトに伝わるし、面白いという感情はすごくストレートですが、その他の感情も書いてきたくなったというか。でも舞台を観たお客さんが"共感する"という根本の部分は変わらないと思ってます」

ーー50歳という節目の年を迎えた気持ちは。

三谷「これで何か変わるとは思ってないし、新しい出発点にはなると思ってますが、本質的なことはあまり変わってなくて、振り返ってなんて自分は同じことばかりやってるんだろうという思いと、ここまでブレずにやってきたことへの自負もあります。きっと70歳になっても同じことを考えるし、やってると思ってます。今回ももっとイベント的にパーティをやるというのもあるけど、僕としてはこれが精一杯の自己顕示がこのラインナップということでしょうね」

ーーブレずにやってこられた秘訣は。

三谷「自分を知ってるということでしょうか。できることを知ってるし、歌舞伎でもそうですが、色々なことをしてますけど自分のできることしかやってきてないんです。それは自分のできることをわかってるからだと思ってます」

 

【スケジュールの出ている舞台】

●『ろくでなし啄木』

1/7〜23日◎東京芸術劇場中ホール

2/17〜26日◎天王洲 銀河劇場

1/27〜2/13◎イオン化粧品シアターBRAVA!

●『国民の映画』

3/7〜4/3◎パルコ劇場

4/6〜17◎森ノ宮ピロティホール

4/20〜5/1◎神奈川芸術劇場

●『ベッジ・パードン bedge pardon』

6/6〜7/31◎世田谷パブリックシアター 

 

【取材・文/榊原和子】


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