nankyoku

原作通り南極でのおもしろい料理の話を期待すると
ちょっと違う。
大人の静かなホームドラマだった。

私が一番気に入ったのは、生瀬勝久が演じる雪氷学者の誕生日のシーン。
同僚たちとわいわい料金の高い国際電話をかけ、
愛娘に『ハッピーバースデー』を歌ってもらう。
「奥さんに代わってもらえよ」という同僚たちの前で
「お母さんはしゃべりたくないって」と娘に言われ、
電話を切られてしまう。

食堂に戻り、若い連中が無邪気にその出来事をはやしたてる中、
参加せず静観していた堺雅人にぽつぽつと話しかける生瀬。
「君のところはどうだった?
うちは(南極への単身赴任を)反対してね。
これ以上、子供のことを放っておくなら、
私にも考えがありますってね」
「たまたま私の研究したい題材が
極地にしかないというだけのことなのに…」
堺は特に慰めるわけでもなく、黙って聞いている。
自分の状況を静かに振り返っていた。
彼は赴任したくなかったのに、妻と娘は大歓迎。
なんだか、ちょっと邪魔者扱い?

この2人のシーンがすごくよかった。
ちょっとした秘密を吐露できる関係。
アドバイスをしたり、慰めなくてもいい関係。
言いたい人が言いたいことを言って、
聞いている相手は自分のことは言わないでいい関係。
大人には平穏に見えてそれぞれ
人に言えない事情があるという事実。

そんな出来事を胸にとどめながら見ていくと
ラストの帰国シーンで思わずジーンとしてしまった。

夏休み、親子で鑑賞するのによい作品です。


8月8日(土)テアトル新宿にて先行ロードショー
8月22日(土)全国ロードショー
監督・脚本◇沖田修一
原作◇西村淳『面白南極料理人』(新潮文庫/春風社刊)
出演◇堺雅人 生瀬勝久 きたろう 高良健吾 西田尚美 豊原功補
古舘寛治 黒田大輔 小浜正寛 宇梶剛士 嶋田久作 他
<配給>東京テアトル
 http://nankyoku-ryori.com/

【文/矢崎亜希子】