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【宮城野の心を伝えたい】

プリマ・バレリーナとして世界的に活躍してきた草刈民代が、今年の4月、そのバレエ人生に幕を下ろして女優に転身。初舞台となる『宮城野』が9月17日、開幕した。

この『宮城野』は、劇作家矢代静一の傑作戯曲で、1966年に初演、その後、何度も上演されている人気戯曲の1つ。幻の天才絵師「東洲斎写楽」の弟子である矢太郎と、彼を愛する女郎の宮城野の虚々実々のやりとりで見せる舞台だ。

今回は鈴木勝秀の演出で、2人芝居に絞り込み、遊女の宮城野と絵師矢太郎の言葉に隠されたひだの中から、男女の間の本音とウソ、裏切りと誠実が浮かび上がる。

 

16日、公開稽古の前に、草刈民代と安田顕が、この舞台にかける思いを語った。

草刈「音楽と装置と衣裳、全てが美しい舞台になっていると思います。私の演じる宮城野は貧しく生まれ、つらい境遇を生きてきたんですが、どこかで美しくありたいと思っている。そこを大事にしたいしお客様に伝えたい。安田さんは、NACSの舞台を観に行って、とても繊細な感じのする役者さんだと思いましたし、演技のキャリアも豊富で、リハーサルをしていてさすがだなと感じました。私は女優としての初舞台ですが、この素敵な作品に出会えたことは幸せです」

安田「矢代静一さんの名作を鈴木勝秀さんが素晴らしい空間に仕上げてくれました。その中で僕らはまた新しい『宮城野』を見せられればいいなと思っています。矢太郎はダメな男ですが、わかる部分もあります(笑)。草刈さんは、バレエ界でスターだったかたですから、言葉が有るなしではなく、伝わるものは持っているすごいかたです。その草刈さんに一途に惚れていただくのですから、惚れがいのある男になりたいと思います(笑)」

 

宮城

【傑作戯曲を新しいイメージに構築】

舞台上は江戸・麻布の遊郭の一部屋。

さむざむとした座敷で、女郎の宮城野が馴染み客の矢太郎と向き合っている。矢太郎を愛する宮城野は、彼がいつもと違っているのに気づいている。実は矢太郎は、ここに来る前に師匠の東洲斎写楽を殺してきたのだ。

2人が交わす何気ないやりとりから次第に見えてくるのは、それぞれが背負ってきた人生と、お互いへの思い、そのズレ。師匠殺しの本当の動機を知ったときの宮城野の絶望、そしてある決心をするのだが、それは愛なのかそれとも復讐なのか。淡々とした会話劇のなかからあぶり出される男女の本音が、切なく悲しい。

 

初舞台の草刈民代は、遊女衣裳の着こなしはさすがで、安女郎役とはいえ気品のある風情が、宮城野の心根を感じさせて美しい。今回は膨大なセリフへのチャレンジだが、その長ゼリフのなかに揺れ動く宮城野の気持ちをしっかり乗せて届けてくる。

安田顕は、所属する「TEAM NACS」だけでなく、外部の舞台やテレビでも活躍する二枚目俳優だけに、宮城野に惚れられるいい男ぶりがよく似合う。同時に、師匠殺しを犯した荒んだ心や、追いつめられたものの弱さ、卑小さなどを表現してみせる。

音楽と美術は、いつもながら演出の鈴木勝秀の世界観を表現してスタイリッシュ。遊女の座敷の空間には、2人の絆を象徴するかのように赤い糸を張りめぐらせてある。その舞台横の暗がりでは、作曲も手がけた横川理彦のバイオリンが、ときには2人の心の悲鳴のように鳴り響く。

江戸物ではあるけれど、そこで繰り広げられているのは、いつの世も変わらない男女の愛の物語で、最後に行き着いた宮城野の選択と、そこに秘められた想いの複雑さに、作家の深い洞察が感じられる作品だ。

この作品は草月ホールで23日まで 、その後大阪、名古屋、札幌の各地で公演。10月10日には再び東京に戻ってくる。

 

 

 

『宮城野』

作◇矢代静一

演出◇鈴木勝秀

出演◇草刈民代 安田顕

●9/17〜23

<会場>草月ホール  

<料金>S席¥7600 A席¥6500

問い合わせ/0570- 00- 3337 (サンライズプロモーション東京)

●9/26〜27

<会場>シアターBRAVA!

問い合わせ/06-7732- 8888(キョードーチケットセンター) 

●9/29〜30

<会場>名鉄ホール

問い合わせ/052-957-3333(中京テレビ事業) 

●10/5〜7

<会場>札幌共済ホール  

問い合わせ/011-219- 0939(オフィスキュー)

●10/10〜11

<会場>東京グローブ座

<料金>S席¥7500、A席¥6500

問い合わせ/0570- 00- 3337 (サンライズプロモーション東京)

http://e-miyagino.com

 

【取材・文/榊原和子】