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【泥の中で大迫力の戦い】

無名の若手俳優44人で結成した劇団「さいたまネクスト・シアター」による『真田風雲録』が、15日に初日を開けた。芸術監督である蜷川幸雄の演出で、劇作家福田善之が、安保闘争の時代1962年に書き下ろした青春群像劇。戦国の武将である真田幸村と、それを取り巻く真田十勇士が、繰り広げる鮮烈な戦いと彼らを取り巻く世の中の状況を描いている。

初日前日にフォトコールが行われたその舞台は、今回の公演用に大ホール上に作られた「インサイドシアター」。
三方の客席に囲まれた舞台には1.7トンの泥が運び込まれ、水を含んでいるその様子はまるで泥の田んぼのよう。飛ぶ泥の防御にと客席にはビニールシートも用意されている。
その大量の泥に足を取られながらも、関ヶ原の戦いとその後の混乱の模様を、ひたむきに身体ごと演じる若き役者たち。勢いある彼らの動きは泥の重みをはね返して走り回る。
そんなプリミティブな光景を見て満足な笑顔を浮かべ、気持ちよさげに泥田に踏み込んで立つ蜷川幸雄に、記者からの質問がぶつけられた。

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【蜷川幸雄コメント】

「ネクストのみんなの顔つきが、かなりたくましくなった。少年達が荒々しくなりました。泥の舞台というのは昔、帝劇でやったことがあります。この作品は泥の中で上演されるのはたぶん初めてじゃないかな。僕なんか泥んこの中で育った世代だから平気だけど、彼らは慣れてない。でもあえて彼らの身体に負荷をかけるためにこれを考えた。くるぶしまで埋まるし、すべる。でもこの『真田風雲禄』の時代は、開発途上国以下の汚さのなかで人間は生きて暮らしていた。その実感を感じてもらいたい。

DSCF044644名のなかで脱落者はいません。最後まで観てもらうと分かるけど、全員がこの芝居の中でいろいろな共同作業をしなくてはいけない。場面転換があったり、相当な労働も含めてみんなでやらなくてはならない。泥の中でスタッフもキャストものたうっている、その姿を観てください。演劇は人間同士が関わりながらものを作っていく作業。そのための道具なんだよ泥は。

今回は手間も3倍かかってる。役者たちも泥だらけの身体を洗って下着も替えているし、衣装やカツラの洗濯、劇場と階段、ロビーなどの掃除、たいへんです。ここを歩いただけで泥が付いてくるから、スタッフも足を洗って履物を替えて、すごく手間ひまとお金のかかることをやってます。そんななかで彼らは初々しく一生懸命で、今、その能力のぎりぎりまでいってると思う。たくましくなった顔を見てやってください」

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【埼玉県民栄誉章を受賞 蜷川幸雄コメント】

彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督である蜷川幸雄氏に、このたび埼玉県から「埼玉県民栄誉章」が贈られることになった。

この章は1984年に制定され、世界的、全国的に広く文化に貢献し、社会の向上に役だった個人、団体に与えられるもの。蜷川氏の受賞理由は、さいたま芸術劇場での「シェイクスピア・シリーズ」や、4年前に芸術監督に就任してからの「さいたまゴールド・シアター」や「さいたまネクスト・シアター」といった創造的な芸術活動が評価され、日本のみならず世界的に大きな功績を残したことによるもの。この受賞について蜷川幸雄はこの日のインタビューで、以下のように語った。

「本当にありがたく感謝しています。僕はキューポラのある町川口で生まれて40年間暮らしました。少しでも故郷に恩返しできたらと思っていますので嬉しいです。がんばらないといけないと思っています。この彩の国さいたま芸術劇場は公共の劇場ですから、埼玉県の皆様のおかげで作品ができている。これからも喜んでいただけるような作品作りに挑戦し、彩の国の劇場は面白いよと言ってもらえるように、そして県民のかたたちが誇れるような劇場にしていきたいと思っています。ゴールド、ネクスト、ファミリー劇場、シェイクスピア・シリーズで、たくさんの人たちの欲望を組織し、刺激する劇場になればいいと思っています」

なお、この「埼玉県民栄誉章」の贈呈式は、18日の『真田風雲禄』公演の終了後、たくさんの観客に見守られながら舞台上で行われた。
 

さいたまネクスト・シアター 開館15周年記念公演

DSCF0453『真田風雲禄

●10/15〜11/1◎彩の国さいたま芸術劇場インサイドシアター(大ホール内)



作◇福田善之

音楽◇朝比奈尚行

演出◇蜷川幸雄

出演◇さいたまネクスト・シアター 横田栄司 原康義 山本道子 妹尾正文 沢竜二

<料金>¥3800

<お問合せ>彩の国さいたま芸術劇場 0570-064-939(10時〜19時)

                http://www.saf.or.jp

                                             【取材・文/榊原和子】

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