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【大作がいよいよ開幕】

壮大なスケールでイギリスの歴史と人間たちのドラマが浮かび上がる。シェイクスピアの初期の傑作『ヘンリー六世』が、いよいよ10月27日に新国立劇場で初日を迎えた。上演時間9時間という大作で、全三部を一挙に観られる今回の公演は、演劇ファンにはまさに注目の舞台である。

物語は、15世紀のイングランド王室と「百年戦争」、「薔薇戦争」を背景に、権力闘争や周囲の人々の思惑に翻弄された国王、ヘンリー六世の生涯を描いたもの。彼の国イギリスとその占領国フランスを舞台に、歴史上で名高いたくさんの人々の生涯とその戦いが、リアルに描き出されている。
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全三部のうち第一部の通し稽古とフォトコールが行われた24日、メインキャストが記者団の囲みインタビューに応じた。
出席者は主役のヘンリー六世に挑む浦井健治、ヘンリーの妻であるマーガレットの中嶋朋子、ヘンリーに敵対するヨーク公の渡辺徹、フランスの救世主と言われた少女ジャンヌ・ダルクのソニン、そして悪名高いリチャード三世に扮する岡本健一で、それぞれが役の扮装で現れた。(岡本健一さんの写真は残念ながら掲載できません)

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【キャストの挨拶】

浦井「ヘンリー六世は、とても平和主義者で優しい心の持ち主なんですが、大きな歴史の転換期に、周囲にいる臣下たちに利用されたり、また、さまざまな闘いが周りでは続いているんですけど、そんな嵐の吹き荒れる中で、ぽっかりと、台風の目の中の青空を見上げるような人物であって、そういう形で作品の中で求心力になっていると思います。9時間の長さということは、最初はプレッシャーで気になっていたんですが、いざやってみるとみんなで集中してるからかもしれないんですが、あ、終わっちゃった!みたいな。けっこう自分の中ではあっという間に感じています。それにカンパニーがスタッフさんも含めて団結していて、みんな笑顔が多いんです。そういうなかで、ますますこの作品を大事にしていこうという気持ちを強く感じています」

中嶋 「二幕でヘンリー六世と結婚する王妃のマーガレットです。信仰心というかちょっと何かに憑かれている人で、残酷なところもあって。そんな残酷な王妃なんてできないよ、みたいな思いもあったんですけど(笑)、でも壮大な歴史の流れの中で、おかしな方向へ行く面も含めて成長していこうかなと。残酷な面も含めて楽しんでいきたいと思います。14歳からですからハードルが高いんですが(笑)、女性が変化をしていく時期が盛り込まれていて、でも母になる時期まであって、そのへんが難しいなと思っています。もうなかなか14歳はないと思うので(笑)、楽しんでやらせていただきます」

渡辺「ヨーク公です。王権をめぐってヘンリーたちと対立する側で、最初は単純に勧善懲悪でいう悪の部分かと思っていたら、いよいよ初日近くなって来たら、そうではなくて、愛とかもっともっと深いものかなと思いながら、まだまだ発見もありつつやってます。
_MG_6340ヨーク公は、なぜかポーク公と呼ばれてます(笑)。一応2キロくらい痩せました。衣装が重いし甲冑とか小道具も重いですしね。みんなで食事に行く暇もないくらい大変な舞台で、この間、初めて9時間、稽古場で通したんですけど、終わったらどこからともなく拍手が湧いたくらいすごい作品です。僕も役者ですけど改めて役者はすごいなと。最初台本みたときには、こんなにセリフを覚えられるかなと不安でいっぱいだったけど、もうここまで来てるから。我々だけでなく出演者みんながたくさん喋ってて、それをみんなが頭に入れて、そのうえで表現に繋げていくって、それはお互いに拍手したくなりますよ。すごい一体感が稽古場に芽生えてましたから、本当に素晴らしい作品に出会えたと思います」

 

ソニン「乙女ジャンヌを演じさせていただきますソニンです。ジャンヌ・ダルクは、イギリスに占領されているフランスを救えと神から啓示を受けて、フランス皇太子の前に現れて、フランスを救う戦いに先頭切って行く女戦士です。このシェイクスピアの書いた『ヘンリー六世』の中では、みなさんがイメージを描いているジャンヌ・ダルクとはまた違った、不思議な描かれ方をしていて、しかも神の啓示を受けたという素晴らしい力があるのに、どんどん最初と最後ではジャンヌが変化していきます。
_MG_6288自分でも演じていて感じるのは、イギリスの側からみた歴史で、シェイクスピアの手の中に落ちていくような、網で捕らえられているシーンがあるんですが、そんな感覚ですし、洗濯機の中でごわごわ回されているような、自分でもはまっていってるような感覚でジャンヌを演じています。髪を60センチ切りました。約6年間伸ばし続けて、切らないできたんですが。最初はジャンヌのイメージを裏切って、長いままでいようかなと思いましたが、やはり物語の中で男の格好というのが必要で、髪を切るという禁じられていたことを、あえて乗り越えていったジャンヌというのを経験するために、自分で断髪しました。さくっと自分で切った時は涙が出てきましたね。長いのを捨てられなくて真空パックで冷蔵庫に入れてます(笑)。そのうち地毛でウイッグでも作れるかな。でも自分のなかでその行為によって、役作りが1つ前に進んだ気がします」

岡本「第一部では役名がないんですが、看守とか従者とかその他大勢でも出てます。二部の後半と三部で、ヨーク公の息子のリチャード、後のリチャード三世になる前を演じています。たぶん放送禁止になるくらいの役ですので、ぜひ劇場まできて観ていただきたいですね。残酷というか悲しいところも多いのですが、いろいろな内面の葛藤を持ちつつお父さんのために戦い、そのあと復讐がはじまる、その憤りとか憎悪とかを演じたいと思います」

 

最後に再び浦井健治から挨拶がある。

_MG_6292「新国立劇場公演『ヘンリー六世』、関わっている皆さんの力で、本当に素晴らしい舞台になっています。お客様にも9時間、参加していただくことで、1つの作品が仕上がると思っていますので、ぜひ劇場に足をお運びください。お待ちしています」

新国立劇場2009/2010シーズン『ヘンリー六世』

●10/2711/23@◎新国立劇場 中劇場PLAYHOUSE

原作◇W・シェイクスピア

翻訳◇小田島雄志

演出◇鵜山仁

出演◇浦井健治、中嶋朋子、渡辺徹、村井国夫、ソニン、木場勝己、岡本健一 他

<料金>三部作通し券/S席¥19500  

           1公演券/S席¥7350  A席¥5250 B席¥3150  Z席¥1500

<お問合せ>新国立劇場ボックスオフィス/03-5352-9999

                http://ent-nntt.pia.jp/   (web)

      http://pia.jp/nntt/   (携帯)

 

                                              【文/榊原和子 取材・撮影/岩村美佳】