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『テニスの王子様』の4代目手塚国光役などで、舞台でも人気上昇中の俳優、渡辺大輔。彼が今回挑む舞台は、ミュージカル・カンパニー「三ツ星キッチン」が上演する『リストランテ』。とあるイタリアンレストランのなかで演じられる人間模様を、感動的なストーリーとオリジナルな歌、そしてかっこいいダンサーたちの踊りで描き出す。そのミュージカルでちょっと屈折した従業員ツヨシを演じる渡辺大輔にインタビュー。

 

【スポーツ万能青年】

ーー渡辺さんはスポーツ万能という評判ですが、まず最初は何を?

最初は剣道です。従兄弟がやってたので自然に僕も。同じ頃に水泳もやってて、だんだん勉強も忙しくなってきたときに、剣道よりは水泳でいこうかなと。なんか役に立ちそうな気がしたんです。実際に何回か人命救助して役に立ったんですけど。

ーーすごいですね。海とか川でですか?

そうですね、そばに川があってそこで溺れてかけてる子どもとか何回か。流れが早いし急に深くなるから危ないんですよ。「ちゃんと見てないとダメじゃないですか」と助けたあとで、本気で親を叱ったりしてました(笑)。

ーー恐くなかったですか?

けっこう泳ぎは自信がありましたから。競泳でオリンピックをめざしてたんです。同じ年代には北島康介くんもいて、たぶん全国大会とかでは一緒になっていたんじゃないかと。彼は平泳ぎでしたが、僕はクロールと背泳、それに個人メドレーだったから種目が違ってたし。それに僕は17歳くらいからサッカーやるようになったので、彼とは接点がないんです。

ーーそのスポーツ青年がどんなきっかけで芸能界に?

大学進学では親の希望を聞いて、建築デザインのほうに進んだんですが、そろそろ就職を決めなくてはいけないというときに、ふと高校時代の自分を思い出したんです。水泳とかサッカーに夢中になってたとき感じたあのドキドキするような緊張感とか。このまま就職すればそれなりに安定した暮らしができるだろうけど、でも、どうなるかわからないけど何かやってみたいと。夢かもしれないけど俳優という仕事にも一度くらいはチャレンジしてみようと。そうと決めたら、まず事務所を探さなきゃと思って(笑)。親にもなんとか許しをもらって、バイトをしながらお金を貯めつつ(笑)、事務所を探したんです。そしたら思いがけなく早く事務所が決まって、それが今の事務所なんですが。

ーーすぐ事務所が決まるのもすごいですけど、お金を貯めつつというのがすごいですね。

僕はすごく慎重なところがあるんです。書類を送ったら次の日に面接にきなさいと連絡があって、そこで合格したんですが、こんなにトントン拍子にいくはずないと(笑)、裏があるかもしれないからすぐに契約するのはやめようと(笑)。もちろんそのあとで、やっぱり縁があるんだろうなと思って契約することにしたんですが(笑)。

ーー本当に慎重派ですね。

あとで後悔するのはイヤだから。テレビの「ウルトラマンメビウス」に出演できるようになったときも、最初は疑ってました。一度、戦隊ものの主役オーディションがあって、そこで最後まで残ったんですが、結局落ちたんです。そのあと海外に行く仕事があったので出かけていたら、事務所からの留守電が沢山入ってて、何かと思ったら円谷一夫さんが僕を覚えててくれて「ウルトラマンメビウス」のイカルガ・ジョージ役に選んでくれたと。ウルトラマンは小さい頃からのヒーローだったからすごく嬉しかったんですけど、あまりに嬉しすぎて、こんなはずはないと(笑)。なんか自分の人生には慎重になっちゃうんですよ。人を助けるために川に飛び込むときなんか、なにも考えないんですけどね(笑)。

ーーそういうところいいですね(笑)。テレビ出演が本当だとわかったときは嬉しかったでしょうね。

まず親に電話して、ウルトラマンに受かったよと。変身はできないけど、と(笑)。親も喜びつつ半信半疑みたいでした(笑)。

ーーいよいよ演技の世界に飛び込んで、でもほとんど初めてですよね。

まるでやったことないから、とにかく周りのかたに聞きまくりました。失うものはないしプラスしかないので。でもその現場で自分の映像を見ても、「これテレビに流せませんよね」みたいな(笑)。それでも、とにかくそういう自分を直視できないならこの仕事をやらないほうがいいと思って、周りの人に演技を見てもらったり、教わりながらの毎日でした。DSCF0572

 

【舞台袖で震える】

ーー舞台にも1年くらい経ってから、ミュージカルの『テニスの王子様』でデビュー、これがまさに初舞台だったそうですが、緊張しましたか?

僕の前にもたくさんの素晴らしいかたたちが演じてきた大きな役で、そのプレッシャーもあって、震えが止まらないという初めての経験をしました。スポーツならスタートの瞬間にそういう感覚はあったし、人に見られることは慣れていたんですが、やっぱりお客さんが恐かったというか、役者として人に見られるのはまた別物で、その恐さが一気に襲ってきたんです。舞台袖でワナワナしてて、自分であちこち押さえたり体とか顔とか叩いて「大丈夫だ、大丈夫だ」と言い聞かせてるのに止まらなくて。でもこれを克服できないなら、お前はここまで何をしてきたんだと。1年間「ウルトラマンメビウス」をやってきたし、先輩たちを見て学んできたんだからと。でも、あることに気がついたら、ふっと気持ちが楽になったんです。舞台は1人ではないんだ、周りに皆がいる、支え合う仲間がいてくれる、そうと考えたらなんか楽になりました。

最初の出は、一言セリフを言って歌うだけだったので、なるべく遠くを見てお客さんを見ないようにして(笑)。そしたらいい感じで歌えたんです。初日を終えたらもう、あとはほぼ大丈夫でした(笑)。それからは毎日全力でやろうと。舞台って全力でやってないとお客さんにわかってしまうから。一瞬の気のゆるみでも分かる人には分かるんです。

ーーアスリートのライブ感と共通するものがあるんでしょうね。

それはありますね。初めての舞台でそういう厳しさをすごく感じたし、身に沁みました。

ーーそのあと何作品か舞台に出てますが、だいぶ慣れましたか?

今でも始まる前は、まだ克服しなくてはいけない不安とかプレッシャーはあるんですが、でもやってる最中とか終わったあとは「ああ、舞台っていいな」っていつも思うんです。拍手ってなんていいんだろうとか、自分では意識してないのに自然に目頭が熱くなる感じとか、そういう感動は絶対に舞台ならではだと思いますから。その場の生の反響が病みつきになってくるというか、それが舞台の醍醐味だろうし、生き甲斐なんだろうなと思えるんです。

 

【感情移入できる役柄】

ーー『リストランテ』は、そういう意味でも近い舞台ですね。

『テニスの王子様』のあと、マンガに近いものとか、ファンタジー系の舞台をやってきたので、現実味のある芝居はわりと久しぶりだし、あまりやってなかったので嬉しいですね。これはすごくリアルな物語だと思います。自分に近い世界だから、感情移入もこれまで以上にしやすいかなと。僕のツヨシはある意味ではなかなか難しい役かもしれません。東山義久さん演じるシェフを尊敬していたんですが、彼はもうこの世にいなくて、それ以来みんなに心を閉ざしているんです。でも同時に店の状態に対して責任も感じていて。そういうすべてを抱え込んじゃうみたいな部分は、僕にもあるのですごくわかるなと思います。それにツヨシは、本当はみんながもっとよくなるようにしたいという思いもあるのに、周りが見えなくて、ちょっと不快感を抱かせる発言をしたり(笑)、なんかプライドとかが邪魔して素直になれないやつなんです。そういうとこもなんとなく共感を持ってやれそうです。

ーー観てるかたには身近な話ですね。

それだけにちゃんと演じないといけないなと。この素晴らしい作品を自分のせいで台無しにしちゃったら申し訳けないので。しっかり自分の役を演じることだし、いかに自分を消してツヨシになりきるかですね。

ーー舞台は稽古期間が長いのですが、それはどうですか?

稽古は好きですし苦にならないんです。いろいろなことを試せるのがいいですね。映像の場合、リハーサルで納得できないまま本番になってることがたまにありますから。

ーー真面目だし地道だし、いざとなるとチャレンジャーで、役者さんとしても楽しみですね。

なんか言うことが真面目というか、善い人ぶってると思われるのはすごくイヤでもあるんですけど、でも親にそう育てられてきた自分がいるから。箸の持ち方とか字を綺麗にとか、いろいろ教え込まれてきたし、親からもらったこの体とか子ども時代からの記憶とかがあって、今の自分がいるわけですから。後悔しないためにも一歩一歩、自分を大事にしながら俳優という仕事をやっていきたいと思っています。DSCF0582

 

三ツ星キッチン『リストランテ』

●12/9〜13◎シアターサンモール

作◇上條恒、伊藤俊彦、北川竜二

演出◇上條恒、伊藤俊彦

音楽◇KAZZ

出演◇駒田一、東山義久、渡辺大輔、佐藤美貴、高田安男 ほか

<料金>前売¥5000  当日¥5500

<お問合せ>ジェイ・クリップ 03-3352-1616(平日10時〜19時)

 http://www.j-clip.co.jp/