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『サイド・ショウ』が4月7日にいよいよ開幕する。

この作品は、1930年代のアメリカで、ヴォードヴィルの世界で人気者として名を残した結合双生児、ヒルトン姉妹の数奇な生涯を描いた傑作ミュージカルである。

『ドリームガールズ』や『タップ・ダンス・キッド』などで有名な作曲家ヘンリー・クリーガーの珠玉のナンバーで綴られていて、97年に第52回トニー賞のミュージカル作品賞をはじめ4部門にノミネートされている。
その作品で、妹のヴァイオレットに恋するミュージシャンのバディ・フォスター役に扮する伊礼彼方。08年『エリザベート』のルドルフでデビュー、以来、ミュージカルの若手人気スターとして活躍する彼に、この作品と近況をインタビューした。

 

【歌は動きながら覚える】

ーー『サイド・ショウ』でのバディ役はどんな感じですか?

一言でいうと、陽気なアメリカ人という感じです(笑)。ストレートに「結婚しよう」みたいな歌もあって、登場人物の中では一番明るく陽気な人物かも。でも姉妹がくっついているという現実からは逃れられないので、色々な葛藤もあるし、そこがどう結びついていくかというところなんですが。

ーー曲もたくさん歌ってるそうですね。

セリフが音楽で流れるので、とにかくすごくたくさん歌います。曲の入りで一緒に歌って、そのままそこにいて歌っていなくても、ラストでまた一緒に歌う、みたいなこともあるし、ソロ以外にも20数曲たずさわってます。普通は自分の曲を覚えればとりあえず一安心ですけど、これは全体を覚えないとどうにもならないので、そこがたいへんです。毎日稽古を通したいくらいです(笑)。

ーーいつも曲はどんなふうに覚えるんですか?

セリフと一緒で、相手の部分を覚えながらですね。あとこの作品は全部セリフが歌なので、なぜこういう音階になっているのか、そういうことを考えながらとか。僕は座っては覚えられないんです。歩きながらとかジムで自転車こぎながらとか、動きながらのほうが感情がわいてくるんです。だから覚えるという結果は同じでも、動いてたほうが速く覚えられるんです。今、稽古場まで一駅分約20分ぐらい歩いてるんですが、その時間が覚えるのにちょうどいいんです。そういうプロセスが僕には大事で、稽古場はすでにシュミレートしてきたものを実際にやる作業だし、それをチェックしてもらう場という感じです。

 

【刺激的で危うさのある存在】

ーーこの作品の前に出演した『GARANTIDOー生きた証ー』は、ミュージカルだけど、シリアスなお芝居でしたね。

すごく面白かったです。毎回作品に育てられていると思うんですが『GARANTIDO』もそういう作品でした。1つ1つの作品ごとに自分が変化しているといちばん感じるのは、いろんなものを素直に受け入れたり認めることができるようになってきてること。自分が間違ってるなと思ったら、すぐ直せるようになりました(笑)。

ーーすごく前向きで柔軟になってるんですね。

この作品もベテランの方々ばかりですから、僕が混じることのプレッシャーはあるんですが、でもバディという役を伊礼彼方にやらせようということは、今の僕の何かを活かせばいいのかなと。毎日迷ったりする、完璧ではないところが役に活きればいいかなと。バディはそういうところが、僕と重なる。だから今の自分のいっぱいいっぱいなところとか、そんなに頑張らなくていいのに、みたいなところが、バディの痛々しさとかそういうのに結びつけばいいなと思います。

ーー伊礼さんのその若さとか危うさが、いい意味で現場の刺激になるんでしょうね。

いつも「何をしでかすんだろう」と思われていたいですね。どんな現場でも、「なるほどそう行くのか」みたいな意外性とか(笑)。どこか緊張感を感じさせる、危うさも含めて常に刺激的な存在でいたいですね。

 

【バディはぎくしゃく?】

ーー歌唱力もアップしてますね。

いや、まだまだです。日々修行中ですが、やっぱり常に思うのは歌はうまさじゃないんだなと思ってて、聞いてくれる人の心にちゃんと届く、心に響く歌を歌いたいと思っています。でもそれを表現するためにも技術は必要なんで、そこはしっかり頑張ります。『GARANTIDO』のときにも再確認したんですが、誰もうまく歌おうなんて思ってない。言葉を伝えよう、心を伝えようとしてて、それがお客様にも伝わるんです。今回のデイジー役の樹里咲穂さんは『GARANTIDO』でもご一緒だったんですが、本当にそういう面でも技術はもちろん、表現力とかすごい方で、上手く聞かせようとする前に、心に湧き出たモノを素直に表現する…というか、僕が言うのもおこがましいのですが、そういう所がとても素敵でたくさん学ばせて頂いてます。今回もご一緒できるので嬉しいです。ちなみに次回もまたご一緒なんで勉強させてもらいます(笑)。

ーー恋人役の貴城けいさんとは、たしか初共演ですね?

何度か舞台は拝見してますが、まだちゃんと稽古してないせいか、僕が勝手にぎくしゃくしてます(笑)。樹里さんと話してる姿はとても可愛らしいし気さくそうな方なんですが、なぜかまだ僕が緊張してて(笑)、でもバディは実際うぶなのでこれはこれでいいかなと(笑)。貴城けいさんも経験豊富な魅力的な方ですから、一緒に演じ、歌うのが楽しみです。

ーークリーガーさんの音楽はすごく素敵みたいですね。

1曲目を聞いたとたん「このミュージカルやりたい!!」とすぐ言ってたぐらいですから(笑)。こんな職業なんですが僕はすごく一般的な耳で、普通の人の感覚で音楽を聞いちゃうほうなんですが、そういう感覚でいうと、このミュージカルは本当に惹かれるものばかりです。大きいナンバーの間の芝居をつなぐ曲は、ちょっと一般的ではない感性のものもあったり、かもしれないけど、だからこそ大ナンバーが映えるような構成になっている。そういう部分をメリハリつけて聞いていただくために、実際今は稽古場で演出家と相談しながらセリフ調にしたりしてます。

ーーこの作品でまたミュージカルの俳優としての実力をアップさせられそうですね。

させたいですね。芝居の筋はちゃんと通さないといけないけど、同じ人物でも歌い方で感情もどんどん変わってくるので楽しみです。心を叫ぶみたいなシャウトっぽいのもありますし、歌を通じて改めて芝居の奥深さも感じてて、いろいろなことにチャレンジできる素敵な作品に出させて頂いていると思います。

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『サイド・ショウ』

脚本・作詞◇ビル・ラッセル

作曲◇ヘンリー・クリーガー

演出◇板垣恭一

出演◇貴城けい 樹里咲穂 下村尊則 大澄賢也 伊礼彼方 岡幸二郎 他

●4/7〜4/18◎東京芸術劇場 中ホール

〈料金〉

【平日】S席?10,000、A席?8,000

【土日】S席?11,500、A席?9,500(全席指定・税込)

〈問合せ〉オフィス・ミヤモト 03-3312-3526(平日11時〜18時)

【取材・文/榊原和子】