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名作映画『ローマの休日』が舞台化される。ストレート・プレイとしては日本で初上演、しかも出演者は3名だけというから、新しい試みの舞台である。

この舞台で新聞記者のジョーに扮するのは吉田栄作。オードリー・ヘップバーンが演じたアン王女には朝海ひかる、ジョーの友人でカメラマンのアーヴィングには小倉久寛、という3人が繰り広げる有名映画の世界。

演出のマキノノゾミが原作者からインスパイアされ、この舞台でしか観られない幻のオリジナルという視点を加えてあるという。その新しい『ローマの休日』の稽古場で、舞台俳優としての吉田栄作に語ってもらった。

 

【映画より深い部分も】

ーーこれは3人の芝居だそうですが、まずその話を聞いていかがでした?

実際どうしたら現実的になるんだろうと疑問でしたし、皆さんが不可能だろうと思っても当たり前だと思いました。でも出来上がった脚本を見てみたら、ちゃんと成立するんだと、それはいい意味で驚きでした。

ーーいわゆるローマ観光のシーンとか出て来るわけですか?

映像で見せる部分もありますが、たとえば観光名所の「真実の口」など、有名なシーンも舞台上に出て来ますから、皆さんが見たいと思っている場面はいろいろ出てくると思いますよ。

ーー名作映画でイメージが出来上がっているということは、どう受け止めましたか?

僕もあの映画のファンの1人ですから、オードリー・ヘップバーンとグレゴリー・ペック以外はやってはいけないと思ってましたし、それがファンの気持ちだと思います。でも話を聞いてやらせていただこうと思ったのは、映画よりも深いところが描かれているんです。
映画ではなぜ新聞記者のジョー・ブラッドレーがローマにいるのかは説明されてないんですが、舞台ではそれを説明する場面があるんです。当時のアメリカという国の中で起きていた社会背景に“赤狩り“というのがあって、この「ローマの休日」の原作者のダルトン・トランボは、実際に“赤狩り“にあってハリウッドを追放されているんです。
そんな時代のことを、今回、演出のマキノノゾミさんと脚本を共同執筆された鈴木哲也さんが投影しています。そこがあるのでカメラマンのアーヴィングとの友情もさらに深くなってますし、ある意味ではそこは映画より勝ってるところだと思います。

ーージョーはローマに逃れてきたわけですか?

逃れて来たのか追われて来たのか。どちらにしろそういう自分の国に対しての憂いみたいなものがベースにあるんです。そして第二次世界大戦で大きな犠牲を払って勝ち取った自由と民主主義を、今度はソ連との冷戦下でまた失おうとしている。アメリカは何をやってるんだろうという愛国心があるからこその葛藤があるんです。
そういうブレやすい政治への怒りみたいなものを抱きながらローマにいる、というのがだんだん見えて来るので、そこが面白いと思います。皆さんの知ってるあの映画を、自分たちによってより深めることができるのが楽しみです。

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【ロックな役】

ーーここ数年、とても面白い舞台に出ていらっしゃいますが、最初の舞台が永井愛さんの『やわらかい服を着て』(06年)でしたね。

僕はそれまで舞台に立ちたいと思わなかったし、立てるとも思わなかった。それが永井愛さんのおかげで、舞台の面白さに気づかされたんです。
まず出ると決めた時点で、永井さんが、いろいろ話し合ったうえで書きたいと言ってくれて、内容についてもお互いの話の中で出来上がった部分がだいぶありました。それに第三場の途中で歌う場面があったんですが、それは僕の中から出てきた歌だったんです。僕の役が歌が好きということもあって、なんとなく戦争中のイラクの子供たちに向けて歌う歌があればいいなとギターを爪弾いてたら、わーっと降ってきたみたいにスルッとできて、気づいたら泣きながら歌ってる自分がいたんです。
そういう経験もあったりして、僕にとって舞台で表現するということでは、テレビとか映画とは違う楽しさが感じられたんです。

ーー次が白井晃さん演出の『三文オペラ』(07年)でしたね。

あれは特殊な作品でしたが、面白かったですね。それまで白井さんとは面識がなかったんですが、世田谷パブリックシアターのそばのイタメシ屋に軟禁されて、出てほしいと詰め寄られて(笑)。60年前の作品ですからそのままやっても面白くないとか、今の時代の池袋とか渋谷とか、そういう設定でも十分通じるからそういうことをやりたいとか、そういう話をした覚えがあります。

ーー取り組みが難しそうな作品でしたが、いかがでしたか?

今回の『ローマの休日』もそうですが、僕は自分に都合のいい解釈から入るんです。たとえばアルセーヌ・ルパンではなく孫のルパン三世をやると思えば、すごくラクになるじゃないですか(笑)。古典とか時代劇をやるのではなく、現在の物語をやるという気持ち、それでいいんじゃないかと。『三文オペラ』の主役のメッキー・メッサーなんかも結局伝えたいことはシンプルだったり、民主主義に対する反発で、それは今の我々が政治に対して疑問を投げかけるというのと同じだし。そういう解釈でやってました。

ーー次の『オットーと呼ばれる日本人』(08年)も問題意識の高い内容でしたね。

これもやりがいのある作品でした。主人公はあの戦争が悪いと分かっててそれを命がけで回避しようとしたわけですから。なんていうのかな、本当の意味のロックを感じますよね。そういう意味ではその前の2本の役もそれぞれロックですね。それは今回の『ローマの休日』でも、増えた部分にもちゃんとロックがあるので、僕もやりがいがあるなと思ってます。

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【芝居筋が鍛えられる】

ーー舞台という表現について感じることは?

ある意味ではやっかいな表現だなと思うんです。一番前のお客さんと一番後ろのお客さんがいる空間で、そこで自分が話してることを同じように伝えなきゃならないこと自体に矛盾がある。だから最初は関わりたくないと(笑)。そもそも自分が志したのは映像でしたし、たぶん一生関わらないだろうなと思ってたんですが、永井愛さんとの出会いをきっかけにいい作品に巡り会えて、いい演出家に巡り会えた。
僕はいつも思うんですが、“芝居筋”という筋肉があるならばそれを確実に鍛えてくれる場所だなと思います。それで1作1作ちゃんとやって映像に帰ったときにーーあえて帰るといいますがーーそれが生かされるのを感じることができる。たとえばバッターで言えば、前は打てなかった球が打てるようになってる。そういうのを実感するんです。それは同時に自分の未熟さを実感することでもあるわけですから、まだしばらくは舞台にお世話になったほうがいいかなと思ってます。

ーー芝居筋というのを具体的にいうなら?

反復運動をすることで身につくもの、先程言ったような矛盾をなんとかしようとするために必要なもの、いろいろな方向から役にアプローチできる表現力とか、そういう全部ですね。

ーー舞台は長丁場ですが、それだけに、より試行錯誤も可能ですね。

僕はバスケットボールを小さい頃からやっていたんですが、なんか演劇の現場って似てるなと思うんですよ。合宿所があって選手が集まって、コーチがぎゃーぎゃー言って指導して(笑)、試行錯誤があって、フォーメーションがあって、1人できないヤツがいたら出来るまでみんなでやって。でも試合が始まったら選手にまかせるしかない。

ーーこの『ローマの休日』は、その選手が3人ですね。

新たな競技です(笑)。

ーー共演の朝海ひかるさんはどんな印象ですか?

まだ語れるほど稽古をしてないんですが、昨日、ダンスできない僕に付き合ってくれて、有り難いなと。

ーー小倉久寛さんとは飲み友達だとか?

出会いは10年ぐらい前の大河ドラマだったんですが、飲み会みたいなので仲良くなって、そこからずっと飲み友だちみたいにさせていただいてます。そのときは芝居ではちゃんと絡むことがなかったから、今回初めて正面から芝居をやれるのが嬉しいですね。もちろんSETの舞台は何度も観に行ってますから、彼の役者としての凄さもわかってるのですが。

ーー3人きりなので、お互いが頼りだし、逆に言えば責任も重いですね。

それもやりがいですからね。これから3人で、稽古と本番をチームワークよくやって行きたいと思ってますので、楽しみにしていてください。

 

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『ローマの休日』

演出◇マキノノゾミ

脚本◇鈴木哲也 マキノノゾミ

出演◇吉田栄作、朝海ひかる、小倉久寛

4/27〜5/9◎天王洲 銀河劇場

5/12〜16◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 

〈料金〉¥9000 (全席指定、税込)

〈問合せ〉

東京/03-5769-0011  銀河劇場チケットセンター(平日10時〜18時)http://gingeki.jp(pc&携帯)

大阪/06-6377-3888  梅田芸術劇場  http://umegei.com

 

【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】