09「サイドショウ」


実は誰にでも当てはまる物語。

結合双生児のデイジー(樹里咲穂)とヴァイオレット(貴城けい)。
舞台では、二人がテリー(下村尊則)とバディ(伊礼彼方)に、
才能を見出だされスターとして駆け登る様子や、二人の恋が描かれる。
しかし、その裏にあるものはとても重い。

デイジーがテリーに、ヴァイオレットがバディに想いを寄せた時、
結合双生児であるという壁が立ちはだかるのだが、
更にそこに、ヴァイオレットに惹かれるジェイク(岡幸二郎)の存在があることで、
この作品は広く深い視野を得た。

デイジーとヴァイオレットは美しい容姿を持っていながらも、
「結合双生児」ということで見世物扱いされ、世の中から差別される。
それでも、ありのままの自分を愛して欲しいと願い続ける。
ある時、ヴァイオレットは、
同じように見世物扱いされていた仲間のジェイクに想いを告げられる。
その時、彼女はどうジェイクに言葉を返したのか。
差別される苦しみを誰よりも知っているはずなのに、
自分達も誰かを差別することから逃れられない。

一番感情移入して見てしまう主役の二人が、被害者でもあり、加害者でもある。
それが見えた瞬間に、
誰にでも生じる気持ちの矛盾を突きつけられたような気がした。

デイジーとヴァイオレットを演じたのは、宝塚出身の樹里咲穂と貴城けい。
常に腰がくっついている状態での芝居。
衣装が繋がっている訳でもなく、自力でくっついているというのだから驚きだ。
姿形は本当にそっくりなのだが、
名声を夢見るデイジーと平凡な暮らしを望むヴァイオレット。
二人の違いは確実にそれぞれの演技から伝わってきたし、
二人のキャラクターにも合っていた。
歌に、演技に、息の合ったこの二人なくして、
『サイド・ショウ』の日本初演はありえなかっただろう。
一幕のラストで歌われる「Who Will Love Me as I Am?」は、
楽曲の良さに加え、デイジーとヴァイオレット、二人の祈り、願い、叫びが、
樹里と貴城の歌声を通して伝わってきて心揺さぶられた。

デイジーを愛するテリー役の下村は、大人の落ち着いた愛や苦悩をみせ、
対するバディ役の伊礼は若さゆえの勢いや、純粋さを感じさせた。
ジェイクを演じた岡も「Devil You Know」などで確かな存在感を発揮。
見世物小屋のボスを演じた大澄賢也の姑息ないやらしさも印象深い。

それぞれが演技に、歌に100%の力を持ってして挑んでいるのがわかるだけに、
そこから、もう一歩進んだ何かが見たかったようにも思う。
楽曲の素晴らしさと、役者の熱演は強く実感できたけれど、そこで止まってしまい、
物語のどこを一番に伝えたいのかが曖昧だったのではないだろうか。
見せたいものは、デイジーとヴァイオレット、二人の生き様なのか、
差別を含んだ広い問題なのか、愛なのか、その全てだったのか。
とにかくもう一つインパクトが欲しい。

それはそれとして、
ただもう、全て音楽と共に綴られる台詞、
聞いていてワクワクするような豊富なナンバー、
14着の華やかな衣装、
それだけでも見ごたえ、聞きごたえは抜群。
これぞミュージカル!を実感させてくれる作品だった。



『サイド・ショウ』
脚本・作詞◇ビル・ラッセル
作曲◇ヘンリー・クリーガー
演出◇板垣恭一
出演◇貴城けい 樹里咲穂 下村尊則 大澄賢也 伊礼彼方 岡幸二郎 他
4/7〜4/18◎東京芸術劇場 中ホール
〈料金〉
【平日】S席¥10,000、A席¥8,000
【土日】S席¥11,500、A席¥9,500(全席指定・税込)
〈問合せ〉オフィス・ミヤモト 03-3312-3526(平日11時〜18時)
【文/岩見那津子】