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文学座の俳優、浅野雅博と石橋徹郎が、2人で17役を演じるというので注目の舞台『モジョ ミキボー』が、5月4日に初日の幕を開ける。

作者はオーウェン・マカファーティで、1961年生まれの北アイルランドを代表する劇作家。昨年、新国立劇場で上演された『シュート・ザ・クロウ』によって、日本の演劇界でも知られるようになった。

作品の背景は1970年代、場所は北アイルランドのベルファースト。
過激派のテロリズムや一触即発の政治状況のなかで、映画『明日に向って撃て!』のブッチとサンダンスに憧れる2人の少年、モジョとミキボーの冒険と彼らが生きる厳しい現実が、日常的な描写の中に浮かび上がってくる。
この戯曲は『ミキボーと僕』というタイトルで映画にもなり(英国映画 監督・脚本/テリー・ローアン)、日本でもノーザン・アイルランド・フェスティバルで2008年に上映されている。

演劇としては今回が日本初演。浅野と石橋が企画制作、演出の鵜山仁の協力を得て2人の手作り公演として立ち上げた。しかも下北沢OFF・OFFシアターを約1カ月借り切ってのロングラン公演ということでも大冒険である。
その稽古場を見学、そして役者でありプロデューサーという2人にインタビュー。

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【稽古場ルポ】

「モジョ」「ミキボー」、2人が並んで自分の名前を名乗るファーストシーンから稽古は始まった。浅野雅博がモジョで石橋徹郎がミキボー、実力派俳優の2人だけに、1970年代のベルファーストの少年がすでにそこに息づいている。
まだ椅子だけしかない稽古場での立ち稽古、2人のほかには演出の鵜山仁と演出助手の斎藤栄作、少人数だけにコミュニケーションが密で、まさに共同作業で作り上げている。

この作品の登場人物は全部で17人。モジョとミキボーとそれぞれの家族、喧嘩相手の少年たち、2人の冒険場所である映画館や町で出会う人々、それら17役を、2人の役者が分け合っている。
なかでもとくに大きな役割りを果たすのがナレーター。演じる浅野雅博のセリフで場面が変わっていくだけに荷は重い。だが立ち位置を移動した瞬間に、少年モジョの顔からナレーターの顔に変わり、口調もガラリと変化させてみせるのはさすがだ。
石橋も9役を演じていて、その見せ場の1つ、ミキボーと喧嘩相手がばったり出くわす場面での役の移動ぶりなどは実に鮮やか、大きな身体の乱暴者として出現して、先ほどまで自分が演じていたミキボーを脅かしてみせる。

DSCF2747演出の鵜山は、そんな2人の動きを見ながら、BGMや頭上に響く軍用ヘリの効果音を試してみたりしている。
音楽は1970年代ポップスで、少年たちが憧れたニューシネマ『明日に向って撃て!』の主題歌「雨にぬれても」が、懐かしさと哀愁をかき立てる。

台本の言葉はかなり言い換えられていて、戯曲の言葉から芝居の言葉、つまり生きた人間の生理から発するものに変わっている。その感性こそが鵜山仁の演出家としての力で、生き生きとした少年2人のリズミカルな会話が心地よい。
そんな稽古を約1時間ほど見学したところで2人に話を聞いた。



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【浅野雅博・石橋徹郎インタビュー】

ーーこの戯曲に決めるまでのいきさつを。

浅野 最初はとくに2人と決めずに、4、5人くらいでやろうと思って本選びをしてたんです。この『モジョ ミキボー』は鵜山さんが英文のままの戯曲で持っていたものなんですが、どうも2人芝居らしいと。しかも30代後半〜40代前半の男優が演じると書いてあるから、ますます2人にぴったりだなと(笑)。

石橋 映画のDVDも観たら3人ともピンときて、直感でこれだ!と。2人芝居なんだけど2人で17役やるというのもいいなと。2人芝居で2つの声しか聞こえてこないと、客席で退屈してしまう可能性もあるけど、これはいろんな人になって出てくるので、面白がってもらえるんじゃなかと思って。やるほうはたいへんですが(笑)。

ーー他の役にどんどん変身していくのがすごいですね。

石橋 1つの役でもたいへんなのに、人格を変えるのがこんなにたいへんだとは思いませんでした。でもそこがこの芝居の醍醐味なんでしょうけど。

浅野 観てる人もそこが面白いと思ってくれるんじゃないでしょうか。僕はナレーターが一番プレッシャーですね。次のシーンがナレーターによって始まるわけですから。なんと35個所、ナレーターのセリフはあるので、「1日に1個所は、絶対とばすと思う」と言ってるんです(笑)。

ーー背景ですが、1970年代当時の北アイルランドの状況があるわけですね。

浅野 橋を隔ててプロテスタントとカトリックに分かれてて、僕のモジョは丘から転がっていってミキボーに会うんです。

石橋 そういうことは全て大人がやってることというか、2人は家庭環境の違いで引き裂かれる。橋が象徴的な存在というか。橋なんか壊しちゃえばいいのにっていうセリフもあるんですが。

浅野 僕はその橋を渡って会いに行く。でもいろいろなことがあって、また最後に橋を渡るんですが、その気持ちがとても複雑ですね。

ーー悲劇的な物語ですか?

石橋 じゃないと思います。

浅野 悲劇的なことも起きるけどね。悲劇ではないです。

石橋 北アイルランドということで、そういうイメージはあるんですが、やっぱり暗い気持ちでお客様を帰したくはない。そこで子供が主役ということは大きいと思ってるんです。子供たち自身は、どれだけ屈託ないかというのを見せたい。DSCF2764

浅野 「ベトベトになってる飴を紙ごと食べるのが好き」とか(笑)、子供ならではの面白い会話がえんえんと続くんです。

石橋 そういう話を兵隊さんを見ながらしてたりするんだよね。

浅野 そうそう。

石橋 それをオジさん2人でやれと書いてあるところが素敵なんです。

浅野 鵜山さんが改めて「この本はけっこう深いよ」と言ってたんですが、他愛のない会話なのに裏に深いものが見えてくるんです。

ーー出てくる大人たちも、モジョとミキボーの目から見た大人たちという構造になってる気がします。

浅野 そうですね。僕はミキボーのお母さんもやるんですが、モジョから見たミキボーのお母さんなんですよね。そこに何役もやる意味があると思ってます。

石橋 その何役を、せいぜいエプロンつけたり帽子をかぶるくらいの変化で見せるので難しいんですが。観ているお客さんの想像力をかき立てたいですね。

浅野 まさに演劇でしかできない、演劇ならではの作品だと思います。

ーー期間もロングランですごいですね。

石橋 実はそれがやりたくて。

浅野 NYのオフオフみたいに、評判の芝居がその小屋に行ったらやってるというのがやりたかったんです。

石橋 とりあえず1カ月やってたらこちらも変わるし、来てくれるお客さんも入れ替わる。最後にはお客さんが増え過ぎて観られなかったというのが理想です(笑)。

浅野 口コミで観たい人が増えるという形になってほしい。

石橋 35年後までロングランが続いてるって夢を、鵜山さんが見たそうですから(笑)。

浅野 夢じゃないと思う。いろんな役者さんで出来る戯曲だから。

石橋 それも僕ら2人にかかってます(笑)。

 

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『モジョ ミキボー』

作◇オーウェン・マカファーティ

翻訳◇平川大作

演出◇鵜山仁

出演◇浅野雅博 石橋徹郎

●5月4日〜5月30日 下北沢OFF・OFFシアター

5月4日(火・祝)〜 7日(金) 2,000円(全席自由・前売当日共)

5月8日(土)〜30日(日) 3,500円(全席指定・前売当日共)

コマンドエヌ 03-5338-6215

http://ameblo.jp/mojo-mickybo/


【取材・文/榊原和子】