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これぞ「美」の極みというべき存在として、日本の芸術の世界に君臨し続ける坂東玉三郎、その話題作が『牡丹亭』が、東京で上演される。
5年前から玉三郎は中国・蘇州に渡り、600年以上の歴史を持つ中国の伝統芸能「昆劇」を演じることに研鑽を積んできた。そしてその第一回目の成果として『牡丹亭』公演を、2008年に京都・南座と北京で披露している。
その後、『牡丹亭』は蘇州での公演を経て、今年の6月10日〜14日に行われた上海万博での正式招待公演として大成功を飾り、いよいよ今年の10月には、東京での初上演を果たすことになった。

『牡丹亭』の東京・赤坂ACTシアターでの公演期間は10月6日〜28日。全55幕、全てを上演するとなると10日もの時間を要するのだが、今回は特にストーリー性の高い6場面(「遊園」「驚夢」「写真」「離魂」「幽媾」「回生」)を抜粋して上演する。
物語は南安太守の令嬢である杜麗娘(トレイジョウ/玉三郎)が、春の花園のうたたねの夢で柳夢梅(リュウムバイ/兪玖林)と出会い、恋心をつのらせていく。そしてついには命を落とすが、柳夢梅により魂が甦り、幾多の曲折を経て結ばれるというもの。
玉三郎が、京劇界の伝説的名優・梅蘭芳(メイランファン)に憧れ、ルーツを調べ、そして辿り着いたという名作と、中国のメディアを賑わした坂東玉三郎演じる杜麗娘が東京で観られる機会とあって、期待が高まる。

その制作発表記者会見が6月29日に行われ、玉三郎のほか蘇州昆劇院院長の祭少華、蘇州昆劇院の俳優、兪玖林らが挨拶した。

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【坂東玉三郎挨拶】

2008年の京都南座公演の時も記者会見をさせていただきましたが、今日こうして東京公演の記者会見ができますことを、本当に嬉しく思っております。
梅蘭芳先生に憧れ、先生のルーツを調べているうちに昆劇に辿り着きました。『牡丹亭』に辿り着くまでにも色々と物語がありましたが、蘇州昆劇院が気楽に門を開いてくださって、私を受け入れてくださったことは、日本の俳優としても幸せだったと思います。
近年では(昆劇では)20回以上、毎日公演すると言うことはなかなか少ないようで、俳優としては大変でございましょうが、私は歌舞伎で慣れておりますので(笑)。
とにかく力一杯、私の新しい芝居の方法と申しましょうか、そういうものをみなさんに見ていただいて、新しい楽しみというものを味わっていただくように、最大の努力をしたいと思っております。

 

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【質疑応答】

ーー初めて牡丹亭を中国で上演されたときの心境と、今回東京でやるにあたっての心境をお聞かせください。

玉三郎 一番初めの心境と申しますと、こんなことできるかしらという心境でございました。3分の曲を覚えるのに1ヶ月かかるほど、大変難しくて。3年かかって勉強して、あぁ良く覚えられたなという今の心境です。
でも、この間、上海万博の芸術祭でもやらせていただき、10月までにもまた稽古を重ねて、東京での公演中もきっとそうなると思うのですが、不思議なことに、回数を経るごとに言葉が心情と一つになり、歌が滑らかになっていくのがわかるんですね。
歌を覚えてそれで終わるのではなく、歌い込んで、味が出てくる中に昆曲の魂というものがあるんです。
ですから今回の東京公演も私の到達地点ではなく、通過地点になるんですけれども…そういう意味では芸術家はいつも通過地点なんですけれども、より自分の気持ちに沿った演技ができてくるのではないかというのが希望です。

ーー具体的に梅蘭芳さんのどのような点に憧れていたのかお聞かせください。

梅蘭芳先生は、自分の劇団であるとか、音楽家、衣装、そういう全ての物を自分であつらえられるような、女形の舞台芸術家として大きな存在を示しておられて、そういったスケールの大きさに父は大変憧れていました。
ですから、「梅蘭芳のような素晴らしい女形というのもよく勉強しなさい」と言われて実は育っておりまして、それと中国の文化や芸術に大変憧れていた私の気持ちとがぴったり合ったんだと思いますね。

ーー歌舞伎と昆劇の相違点など、演じるにあたって何か感じることがありましたらお願いします。

『牡丹亭』というのは理屈や筋立てからいくと、いささか飛躍しているところがあるのですが、そこは歌舞伎の古典で勉強した、心情の飛躍、状況の飛躍…各幕飛躍しながらも一つの役柄を見せていくというやり方に私は慣れていたと、今日思う次第です。
他にも、例えば日本の牡丹燈籠は中国から取り入れた作品ですし、あるいは鷺娘で雪の中命果てていくとか、そういう僕の中にあった経験を心情的に使えたということが、杜麗娘を演じるにあたっても役立ちました。

 

相手役の兪玖林(ユーチュウリン)も「日本の国宝級の芸術家である玉三郎先生から、何回かの公演を通じて伝統芸能の中での表現とか技術など、多くのことを学びました。また、玉三郎先生の学ぶ姿勢を見て、私もこれからは積極的な姿勢で学んでいきたいと思いました。女形の男性と共演するのは初めてで心配はありましたが、稽古が始まったらそんなことは吹き飛びました。玉三郎先生は女性より女性らしく、細やかな仕草とか動作をされる。舞台では男性であることを忘れました。また玉三郎先生の杜麗娘には、中国の昔の令嬢、裕福な家庭で育った伝統的な女性がよく表現されています」と絶賛した。

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坂東玉三郎特別公演

『牡丹亭』

出演◇坂東玉三郎 蘇州昆劇院

●10/6〜28◎赤坂ACTシアター

〈料金〉S席12500円 A席9500円

〈問合せ〉チケットホン松竹 0570-000-489

【取材・文/岩見那津子】