4

2007年に、東京二期会オペラ『ダフネ』で大成功を収めた「二期会&大島早紀子」のコラボレーションが再び実現、7月15日から東京文化会館大ホールで幕を開ける。

コンテンポラリーダンスのカンパニー「H・アール・カオス」は、カンパニーの主宰で演出・振付家である大島早紀子の美意識の高い創造性と、白河直子を中心としたダンサーたちの傑出した身体表現で世界的に活躍し、また、これまでに数々のアーティストと幅広くコラボレートしてきた。

その1つとして、3年前に東京二期会オペラとリヒャルト・シュトラウスの『ダフネ』を発表、白河直子を中心としたダンサーたちの美しく生命力に溢れた表現と、オペラの歌い手たちの豊かな声が織りなす世界は、クラシックとダンスの融合する新しい表現世界を見せてくれた。
その成功を受けて、今回は、フランスを代表する作曲家ベリオーズが、文豪ゲーテの代表作「ファウスト」に基づいて作曲した最高傑作『ファウストの劫罰』を、再び東京二期会とコラボレートすることになった。

『ファウストの劫罰』は、「4部からなる劇的物語」で、悪魔メフィストフェレスとの契約によって青年に戻ったファウスト博士と、美しきマルグリートとの出会いと別れ、そして壮絶な結末が描かれている。この作品はコンサート形式で演奏されることは多いが、オペラとして上演される機会は少ないないものだけに、今回の東京二期会の公演はその意義は大きい。それに加えて才能あふれる大島早紀子の演出、指揮はフランス・オペラの巨匠ミシェル・プラッソンということでも大きな話題を呼んでいる。
そんな大作に取り組んでいる大島早紀子に、今回の『ファウストの劫罰』への取り組みについて話を聞いた。
 
2

5

【大島早紀子インタビュー】
 
ーー前回の東京二期会とのコラボレーション、『ダフネ』で感じたオペラとダンスに通じるものはどんなことでしょう?
大島 オペラもダンスも、音楽を耳だけでなく全身で共振して表現することであり、また、空間のエネルギーや空気そのものをその場で感じながら表現していく。そういう点では深く共通するものだと感じました。
またオペラでは物語のクライマックスの瞬間、声の享楽に歌手が身をゆだねます。そこには意味からの飛翔がありますが、ダンスでもダンサーが身体を超えた瞬間に、観客は大きな陶酔を感じます。そういった表現に到達した世界が前回の『ダフネ』にはあったし、そこに共通性を感じることができたと思います。
 
ーー『ファウストの劫罰』の世界をどのようにとらえていますか?
大島 一見、幻想性に富んでいますが、時代を超えて現代にも通じる普遍的なテーマを持っていると思います。
ファウストは悪魔であるメフィストフェレスによって、マルグリートとの夢をみることになりますが、これは現代のメディアでくりかえし刷り込まれる“理想の女性像”という幻想に置き換えることができます。またメフィストフェレスがもたらす“神から与えられた肉体の有限性からの解放”という幻想は、現代の人々の中にとっても無縁ではないと思っています。
 
ーーそんな現代と通底する物語を、どんな形で表現していこうと?
大島 ベルリオーズの音楽の持つドラマ性を、歌手とダンサーの共同作業で、1つの壮大で衝撃的な夢として、観客の皆さんに体験していただきたいし、ファウストの愛や喜び、苦悩や絶望をともに感じられる時間にできればと思っています。
この作品には一回聞いたら忘れられない素晴らしい曲がたくさんありますし、エンディングの天上の音楽は、まさにこの世のものとは思えない美しさです。ゲーテの時空をベルリオーズが永遠化した『ファウストの劫罰』は、人類の至宝であり、人間の偉大な夢です。その夢を芸術的な恍惚感と陶酔感で満たす世界を創り出していきたいと思っています。
 
1

3
(写真はすべて2007年東京二期会『ダフネ』より)


東京二期会/東京フィル 
ベルリオーズ・プロジェクト2010 
『ファウストの劫罰』

原作◇ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ「ファウスト」
台本◇エクトール・ベルリオーズ、アルミール・ガンドニエール、ジェラール・ドゥ・ネルヴァル/字幕付原語(フランス語)上演
作曲◇エクトール・ベルリオーズ
指揮◇ミシェル・プラッソン
演出・振付◇大島早紀子
キャスト◇福井敬、樋口達哉、林美智子、林正子、小森輝彦、泉良平、佐藤泰弘、北川辰彦
メインダンサー◇白河直子
ダンサー◇木戸紫乃、斉木香里、泉水利枝、池成愛、野村真弓
合唱◇二期会合唱団
児童合唱◇NHK東京児童合唱団
管弦楽◇東京フィルハーモニー交響楽団
 
●7/15〜18◎東京文化会館 大ホール(JR上野駅公園口前)
〈料金〉S席¥18000、A席¥14000、B席¥10000、C席¥7000、D席¥5000、学生席¥2000(全席指定/税込)
 
〈問合せ〉二期会チケットセンター 03-3796-1831(平日10:00〜18:00/土曜10:00〜15:00/日・祝休業)

 
【取材・文/榊原和子 撮影/鍔山英次】