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廃墟、ボロボロに壊れたアーケードの屋根、地中に住む白くて太くてなんかニョロっとした謎の生物、そのニョロっとした生物と仲が良い老人を含むその廃墟にすむ人々、遠くの町から人々を救うためにやってきたという来訪者たち寂れた街で誰かと誰かが出会って、会話を始め、それも全く噛み合わなかったりしながらだけれど、でもそこから物語が生まれていく。

オープニングがポップで、ちょっと不気味だけど、最高に可愛くて、そこで心をガシッと掴まれた。あれはもう本当に格好良い。ケラさん演出の作品はここ最近毎回、スクリーンに映像を流したり、そのまま舞台に映像を投影したり「こんなことが可能なんだ!」と驚かせてくれる演出があるのだけれど、今回ももれなく素敵。

客席の上に壊れたアーケードの屋根を作ったことも憎らしかった。空間の広がりが増す。かつてそこに一本大きな道が通っていて、その両脇に家やお店があったのだろうという失われてしまった賑やかな風景が、客席上に屋根があることで想像しやすくなった。劇場に入った瞬間から、これから上演される作品の匂いがする憎い舞台美術だった。

なぜこんなにも街が寂れてしまったのか、その原因は明かされない。困っている人を助けたいと街を訪れた来訪者の中には、惨めな生活をしている人を実感することで、自分の方が幸せだと信じ込みたい人もいる。端から見たらとても利己的。だけど、それが表に現れるか、そうでないかの違いだけで、自分より不幸な人を見て安心する心は少なからず誰もが持っているはずだ。日常から離れ、言動が誇張された登場人物たちを見て、自分自身の心を改めて発見する。少しげんなりする、けど、認めざるを得ない事実をちょっと作品の中に漂わせて、気付かせて、観ている人のお腹の中にストンと落とし込んでくるような感覚。笑いもたくさん散りばめられているし、先が見えない絶望もあるけれど、人と人とが繋がっている暖かさもある。ふわふわっとした作品のテイストは見る人毎に与える印象を変えると思う。

廃れた街で底抜けに明るくあっけらかんと生きて、ことある毎に爆笑している双子の姉妹。特に姉。街の暗さを感じさせない脳天気さは、救いなのか、頭のネジが少々緩んでしまっているのか。実りそうで、なかなか実らない、傍らをすり抜けていく恋。またそれとは別の若さの特権的キス。生きる意味を感じない世界から生まれてきた狂気。お見合い話。街では様々なことが起きるのだけれど、そのエピソードの一つ一つが最後に綺麗にまとまって観客を納得させるようなものではない。

わかりやすい所だと、白くて太くてなんかニョロっとした生物がなんだったのかは最後まで謎のまま。今もすごく気になったままだ。

上演時間も短くはないし、謎が謎のまま物語も終わりを迎えるけれど、人と人との間の距離感、関係を読み取ったりして考えを巡らせたり、単純に大笑いしたり、興味をそそられ続ける時間が続いた。飽きない3時間。最後には、ぽっかりとした暖かい気持ちと、希望のない真っ暗闇の両方を観た気がして、なんとも言えない余韻が残った。

 

NLON10035th SESSION

2番目、或いは3番目』

作・演出◇ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演◇犬山イヌコ みのすけ 三宅弘城 峯村リエ 大倉孝二 松永玲子 村岡希美 藤田秀世 長田奈麻 喜安浩平 白石 遥 伊与顕二 斉木茉奈/ 小出恵介 谷村美月 緒川たまき  マギー  

●6/217/19◎下北沢 本多劇場
●7/22◎中京大学文化市民会館 プルニエホール
●7/2425◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
●7/28◎アステールプラザ 大ホール
●7/318/1◎北九州芸術劇場 中劇場
●8/48/5◎りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
●8/7◎いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場

<料金>

東京・大阪公演/6,800円(全席指定・税込)
名古屋公演/7,300円(全席指定・税込)
広島公演/7,000円(全席指定・税込)
北九州公演/前売5,500円 当日6,000円(全席指定・税込)
新潟公演/6,300円(全席指定・税込)
いわき公演/1階席5,500 2階席4,500円 バルコニー席・車イス席4,000円 学生1,500円(全席指定・税込) 

<問い合わせ>
東京公演:キューブ 03-5485-8886(平日1218時)
名古屋公演:東海テレビ放送事業部 052-954-1161
大阪公演:梅田芸術劇場 06-6377-3888
広島公演:TSS事業部 082-253-1010
北九州公演:北九州芸術劇場 093-562-2655
新潟公演:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521
いわき公演:アリオスチケットセンター 0246-22-5800

 

【文/岩見那津子】