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2011年の7月8日に50歳を迎える三谷幸喜。
その生誕50周年を、映画、TV、舞台、小説と4つのジャンルでフル稼働、自らイベント化してしまうというスペシャルな企画、『三谷幸喜大感謝祭』の制作発表と懇談会が、7月22日に東宝本社の会議室で行われた。

来年1年間に三谷が生み出す作品は、映画1本・TVドラマ1本・舞台4本、小説1本の計7本で、そのどれもが新作であり書き下ろし。しかも舞台・TVドラマ・映画に関しては演出も自分で手がけるという。とくに演劇関係では、『コンフィダント・絆』『恐れを知らぬ川上音二郎一座』『グッドナイトスリイプスタイト』『TALK LIKE SINGING』『なにわバタフライ』とつねに話題作を生み出してきた三谷が、一気に4本の新作を送り出すということで、大きな期待が寄せられている。

そんな制作発表の会見で、まず三谷は、会見に集まった多数の記者たちに向かって、「本当はこじんまりとテーブルを囲むみたいなイメージだったんです(笑)。本来、僕は自己顕示欲が強い方ではないし、お誕生会も好きではないし、自分のために人が集まってくれると申し訳なくなるほうで。ではなぜこれをやるのかと言われそうですが」と笑わせる。

そして今回、大イベントになったことについては「僕の作品を生み出すモチベーションは“感謝”です。これまで自分がここにくるまでに影響を受けてきた映画や舞台、テレビなど、色々なジャンルに対する恩返しや、仕事で一緒になった出演者の方々やスタッフなど作品を作り上げてきた人々に対する感謝が僕に次もやろうと思わせるんです。そういう仕事の中で、またやりましょうよとか言われると、ついやりましょうと言ってしまうクセがあって(笑)、そういうのが積み重なって、来年すごい数の作品を作ることになってしまいました、というと後悔してるみたいですが、決して後悔してるわけではなく。ちょうど僕も50歳になるところだし、1年で総まとめをということで、皆さんへの“大感謝祭”という形にしようと。これは今まで僕の作品を観てくださった皆さんや、これからの作品を観てくださる皆さんへ、そして僕も一生懸命頑張っていい作品を作りますので、それに対して皆さんに感謝してもらうという気持ちもありますし(笑)、色々な感謝の気持ちを『大感謝祭』という意味に込めました」

また今回のタイトルロゴは和田誠が「50」をデザインしていることも紹介された。

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【三谷幸喜自身によるラインナップ解説】

1、舞台『ろくでなし啄木』

(1月〜2月/藤原竜也、中村勘太郎、吹石一恵)

極貧の中で夭逝した薄幸の歌人、石川啄木をめぐる謎とサスペンスの物語。27歳で夭逝した天才歌人。そのイメージを裏切るようなルーズで嘘つき、女好きなその実体とは? 

三谷「話の発端はテレビの『新選組』で竜也くんが「一緒に舞台やりたいですね」と打ち上げで言ってくれたことで、勘太郎くんも吹石さんも出ていたんです。そのときも恋の駆け引きをしたこの3人でどろどろの三角関係をやってみようと。笑いの要素は少しはあると思いますが、来年1年はコメディの1つ先に行ったものをやろうと思っているので、エロチックサスペンスみたいな、書いたことないんですが(笑)、そういうのにしたいです」

2、 舞台『国民の映画』

(3月〜4月/小日向文世、段田安則、白井晃、石田ゆり子、風間杜夫 他)

ヒトラー内閣がプロパガンダのためにつくった宣伝省の初代大臣パウル・ヨゼフ・ゲッベルス。最高の国策映画のために集められた人々が考えたことは? ナチス政権に立ち向かった、ドイツ映画人たちの物語。 

三谷「僕が自分から発信した作品で、前々からやりたかった現場の話なんですが、映画を企画するプロデューサーの話です。たまたま『映画大臣』という本に出会いまして、これはゲッベルスの話で、これならいけると思いました。いわば映画会社の社長であり、彼に取り入るさまざまなプロデューサーたちという姿を重ねられるなと。もちろんゲッベルスはユダヤ人迫害にも手を染めた人ですが、一番好きな映画は『風と共に去りぬ』だったりするわけです。そういう映画マニアがホロコーストを作り出していたことを考えたら怖いですね。ゲッペルスが小日向さんで、親衛隊長ヒムラーを段田さん、空軍元帥のゲーリングを白井さん、ゲッペルス夫人に石田さん。それから風間さんは初めてですが、僕が昔から憧れの俳優さんです」

3、舞台『ベッジ・パードン bedge pardon』

(6月〜7月/野村萬斎、深津絵里、大泉洋、浦井健治、浅野和之)

日本を代表する文豪夏目漱石が、英国ロンドンに旅立ったのは明治33年。カルチャーショックで過酷な日々を送る彼が唯一心通わせることができた女性は女中のベッジ・パードンだった。 

三谷「萬斎さんの背広姿を見たとき感じた現代人ぽくない不思議さをどうすれば出せるかなと。それをロンドンで引きこもってた漱石に重ねてみようと。そこの女中さんにつけたあだ名がベッジ・パードンで、彼女も訛がひどくてあまり人と話したがらない人なんです。2人が心を通わせる話です。そして外国人とのギャップを感じさせるために背の高い浅野さん、浦井さん、大泉さんにイギリス人になってもらいます(笑)」

4、TVドラマ『ウォーキング・トーキング』

(8月収録 wowow開局20周年ドラマ/出演者未定)

山道で迷ったある夫婦の会話を通し、笑いとほんのちょっとの涙の中に、夫婦とは何かを問う。限定された空間、限られた登場人物、テレビドラマの限界に挑む画期的なシチュエーション・コメディ。 三谷「僕の基本は舞台だと思ってるんですが、いちばん子供のころから影響を受けているのはテレビで、そのテレビがまだまだ枠にとらわれていると思うので、演劇と映像のドッキングという、いい形の集合体ができないかと思ってまして。やってみようと思うのが1シーン1カットの長回しのドラマなんです。それをあえて屋外で撮るというので、90分のドラマです。稽古でしっかりやっておくことで本番1回で撮るという実験的な作品です」

5、書き下ろし小説『KIYOSU』

(幻灯舎/秋頃に発売)

20年ぶり、満を持しての新作小説は、なんと書き下ろしの歴史モノ!織田信長の後継者を決める「清州会議」の全貌。三谷版「七人の怒れる侍たち」。 

三谷「僕は日本の歴史が大好きで、この清州会議というのは、日本の歴史上で、初めて会議の場で歴史が変わった瞬間なんです。織田信長の次男と三男のいずれに跡を継がせるか、この会議で決まるわけです。いわばディスカッションドラマで、いつかこれが映画になるといいと思ってます」

6、映画『ステキな金縛り』

(秋・全国リロードショー/深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、浅野忠信・中井貴一)

人生のどん詰まりに立たされたダメダメ弁護士と、421年前に無念の死を迎えた落ち武者幽霊の奇妙な友情。二人の前に立ちはだかるのは、一切の超異常現象を信じようとしない堅物検事。かくして全世界の注目の中、幽霊裁判は幕を開けた。三谷幸喜が満を持して描く、ファンタジー・法廷サスペンス・コメディー!

三谷「僕が作りたかった映画が理想的な形でできたと思う。深津さんがすごくいい。演技力は素晴らしいです。もう撮り終わってます」

7、舞台『90ミニッツ』

(12月〜2012年1月/西村雅彦、近藤芳正)

『笑の大学』から15年。西村雅彦と近藤芳正のために新たに書き下ろす二人芝居は、現代を舞台にある「選択」を迫られた二人の男の戦慄の物語。一切の笑いを封印した究極の90分間。

三谷「トップスの閉館のときに15年ぶりにサンシャインボーイズの舞台をやって、二人がもう一度『笑の大学』やりたいと言ってきて。面倒くさいなと思ってたのに、つい懐かしさもあって心開いてしまいました(笑)。でも同じ作品をやるのはしゃくだから、それを超えるモノを3人で作ろうと。あれは30代でしたから50歳の僕らの作品をやろうと。今回はコメディではなく、90分を手に汗握るような、息もできないくらいの緊迫状態が続くような、濃密なものを作りたいですね」

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【懇談会】

三谷「今回のい7本で、映像はコメディですが舞台は笑いがメインではありません。でも、それはぼくがコメディから次のステップに進化したというわけではなく、このあとまたコメディに戻っていくと思うんですが、笑い以上に人間ドラマのような作品を作ってみたくなったんです」

ーー全部自分で演出するわけは?

三谷「自分が書いたものは自分が演出したほうが確実に伝わるし、これだけたくさん書くと遅れるわけにはいかないのと、自分が演出しないと細かく書かなくてはならないことが多くなるので、自分で演出したほうが書くうえでも簡単なんです」

ーー命を縮めるのではないかという感じですが、健康管理は?

三谷「(笑)人間ドックに入ったら20代の心臓だと言われました。コメディはエネルギーもいるんですが、もう50歳だと思うとあと10年くらいしかコメディを書けないかもしれないと思うとすごく焦りますね。でも野田秀樹さんなんか僕よりさらに5歳も上だからすごく焦ってると思います(笑)」

ーー全部当て書きですか?

三谷「劇団をやったたことでそういう習性になってると思います。新しい俳優さんとは、けっこうテレビでは一緒にやってて。段田さんも初めてですが、イメージでヒムラーの二面性が出せる人だな、観たいなと思いました」

ーー笑いではなく人間ドラマということですが、なぜ?

三谷「ずっとコメディをやってきて、ライブというかダイレクトに伝わるし、面白いという感情はすごくストレートですが、その他の感情も書いてきたくなったというか。でも舞台を観たお客さんが"共感する"という根本の部分は変わらないと思ってます」

ーー50歳という節目の年を迎えた気持ちは。

三谷「これで何か変わるとは思ってないし、新しい出発点にはなると思ってますが、本質的なことはあまり変わってなくて、振り返ってなんて自分は同じことばかりやってるんだろうという思いと、ここまでブレずにやってきたことへの自負もあります。きっと70歳になっても同じことを考えるし、やってると思ってます。今回ももっとイベント的にパーティをやるというのもあるけど、僕としてはこれが精一杯の自己顕示がこのラインナップということでしょうね」

ーーブレずにやってこられた秘訣は。

三谷「自分を知ってるということでしょうか。できることを知ってるし、歌舞伎でもそうですが、色々なことをしてますけど自分のできることしかやってきてないんです。それは自分のできることをわかってるからだと思ってます」

 

【スケジュールの出ている舞台】

●『ろくでなし啄木』

1/7〜23日◎東京芸術劇場中ホール

2/17〜26日◎天王洲 銀河劇場

1/27〜2/13◎イオン化粧品シアターBRAVA!

●『国民の映画』

3/7〜4/3◎パルコ劇場

4/6〜17◎森ノ宮ピロティホール

4/20〜5/1◎神奈川芸術劇場

●『ベッジ・パードン bedge pardon』

6/6〜7/31◎世田谷パブリックシアター 

 

【取材・文/榊原和子】