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野田地図番外公演『表へ出ろいっ!』に出演する娘役のオーディションを行うと発表があってから約2ヶ月。出演する娘役が決定したとのことで、そのお披露目となる会見が726日に行われた。
母となる野田秀樹、父の中村勘三郎に呼ばれて登場したのは、なんと二人の女性。太田緑ロランス(おおた・みどり・ろらんす)さんと、黒木華(くろき・はる)さんだ。
オーディションには1155人の応募があったそうだが、全く違うタイプの魅力を持つ二人に甲乙付けがたく、娘役をWキャストにし上演するという結論に達したということである。

 

【野田秀樹と中村勘三郎による二人の紹介】

ーー太田緑ロランスさんについて

野田 太田緑ロランスさんは、舞台経験は意外にある方で。オーディションの時に膨大な台詞量があったんですけど、こっちが出したものに対して、非常に柔らかい反応があって。あとはご覧の通り、見た感じもおよそ我々夫婦の子供に見えないという所が(笑)、実に良い味になりまして、是非彼女をということになりました。

勘三郎 あの、今言ったようにね、全く想像できない感じがありました。突然変異というか、「私たちの娘にはあるわけない!(笑)」その面白さと、物の表現の仕方が「あ、そう言う風にやるんだ!」という感じが、とても面白かった。そこが僕はいいな、と思いました。

ーー黒木華さんについてs_RIMG1671

野田 黒木華さんは、去年の12月に僕が大阪で舞台のワークショップをやった時に、初参加をしてまして、それまでは舞台経験は全くありません。その後、今、野田地図で上演している『ザ・キャラクター』のアンサンブルオーディションに彼女は応募してきて、現在アンサンブルとして『ザ・キャラクター』に出演してます。ワークショップの時から、台詞に非常に間とか、幅があって。今20歳で、12月の時点では10代だったんですけど、「この子は、伸びしろが大きいんじゃないかな?」と思っていたら、やはりどんどん伸びていきましたね。今回のオーディションに来た1155人の中で見ていても贔屓目ではなく、レベルがちゃんとしてるなということで、彼女を選びました。

勘三郎 黒木さんは脚本の娘にピッタリなんですよね。幸せですよね、こういう違う個性の二人の娘を持てるっていうのは。実生活では野田さんは、女の子を持ってらっしゃいますけど、私は男の子二人なもんですから。こんな素敵なお嬢さんが二人できて、どういう稽古場になるかと今から楽しみにしています。

野田 Wキャストを思いついたときは、その手があったか!と思いましたけど、後で稽古時間のこと考えたら(笑)。決定したのは720日で、最近です。

勘三郎 野田秀樹が見て、私も及ばずながら見させていただいたけど、このお二人は、この芝居に出なくても、どこかで必ず出てくる人ですよ。本当に素敵な才能だと思ったんですよね。あの、頑張ってください。芝居にこういう人がいるってことを知らせたかったよね。

野田 うん。無名だから選んだということでは全くないんですが、本当に舞台から、新しい女優さんが出てくるって言うのが、今一番、日本のお芝居の元気のないところのような気がするから、そこで舞台から新しい人が出てきたっていう、メッセージを伝えたいと言う感じですね。


【娘役二人から挨拶】

太田 太田緑ロランスと申します。よろしくお願いします。今日でちょうど発表から1週間が経ちましたが、本当に楽しみで仕方がないです。台本を読んでいても、父親が勘三郎さんで、母親が野田秀樹さんなんだと思うと、すごく嬉しさがこみ上げてきたりもしますし、これをどうやったら、どういう風になるかな、こうやったらまた違うかな?と、そういうのを色々考えるのが今すごく楽しみで仕方がなくて、稽古が待ち遠しいなという心境です。s_RIMG1669

黒木 私はさっきもおっしゃってくださったように、あまり舞台の経験がないので、お父さんと、お母さんと(太田を見て)お姉ちゃん?の(笑)、姿を一生懸命見て、いっぱい色んなことを吸収して、楽しい舞台にできたら良いなと思っています。お願いします。

【質疑応答】

ーー太田さんの表現の仕方が面白いとおっしゃっていましたが、具体的にどのような表現に面白さを感じましたか?

勘三郎 台詞にね「チビ」というのがあるんですよ、小さい男性を愚弄するような。その愚弄の仕方が、背が大きいでしょ、もう彼女に愚弄されたらチビは生きていけない(笑)。
全部軽い感じですっすっ、と来たのでね、笑いました稽古場で。これ大変なんですよ。二人とも本当に上手いから、全く違うドラマになるような気がする。二人の力でもって、私たち夫婦も絶対変ってくるから、違う作品になるような気がするんです。大変なんですけどね、でもそれだけ期待してます二人に。

ーー娘役のお二人にお聞きします。今までご覧になったことのある野田さんの作品の印象は?またお互いの印象は?

太田 私が拝見させていただいた中で、一番印象に残っている野田さんの作品は『THE BEE』で、あれは本当に人間の見たくもない悪意のようなものが、目の前にこれでもかと突きつけられる緊張感があって、席に座っているのがしんどくなるぐらい、衝撃を受けました。『THE BEE』の両バージョン(日本・ロンドンバージョン)ともすごく好きでした。
黒木さんの印象は、2次選考の時に17人ぐらいのグループで、黒木さんと一緒だったんです。その時に、すごく透明感のある方だなと思って、実は気になっていました。Wキャストだって知らされて、その後すぐに取材があったんですけど、その会場で華さんが先にいらしてて「あ!やっぱり!」って私は思いました。

s_RIMG1668黒木 私は『贋作・罪と罰』が実際に劇場に見に行ったお芝居なので、すごく印象に残っています。太田さんは、えっと、17人の時には、自分でいっぱいいっぱいで、周りの人の事があまり見えてなかったんですけど、お会いした時に、すごい色んなお芝居をやられている方だと聞いていて、あとやっぱりスラッとしていて、あの体型のことだけでなく(笑)、雰囲気もスラッとしている素敵な方だなと思いました。

ーーこの話の中の娘はどんな娘なのか?また、二人のキャラクターが違いを演出でどう表現していきたいか。

野田 今度の芝居は、わかりやすさでいうと、自分の書いた芝居の中でこれほどわかりやすい芝居はないっていう、今まで書いたことのない芝居なんですね。自分の名前じゃなく、偽の名前使った方が良かったかな、というような芝居なんです。彼女達がやる役は、極めて気が強く書かれていると思います。その意味で、勘三郎さんと僕とも対等にやり合えないといけないんですね。僕の芝居は身体性を重視するオーディションが多いんですけど、台詞をこれだけ重視したのは初めてかもしれないです。それは長時間、丁々発止をし続けなければいけない。そういう部分があるからです。
二人は全く見た感じも違いますし、おそらく勘三郎さんが言ったみたいに、稽古場で実際立ってみると、およそ違うものができると思うんですよね。その時に、彼女達の問題より、おそらく我々がどう受けて、別の父親、別の母親になれるか。そこが大変だけど、楽しみですね。

勘三郎 大変ですよ(笑)。親父は娘とお母さんにタッグ組まれたりするんですけど、この強力タッグにこっちも立ち向かわなきゃいけないんで。また台詞が面白いんですけど、覚えにくいんですよ、日常会話で。一昨日、楽屋でちょっと声を出して読んでたんですよ。隣が中村扇雀の部屋だったんですが、そうしたら扇雀が芝居が終わってから、「勘三郎さん、だ、大丈夫ですか?」って「あんなにしつこく喧嘩なさってましたけど。」って(笑)。ずっと喧嘩してるんで、テンションの上げ方が大変ですよね。それも台本見てるからやれるんで、あれを台本なしでみんなを相手にしたら、本当に大変なことで、それも2人、いや3人を相手にしなきゃいけないから、大変ですよ。

ーー舞台から新しい人が出て来て欲しいというお話でしたが、今回オーディションをなさっての印象と、選ばれなかった人に何が足りなかったのか等ありましたら。

野田 書類で落とした人っていうのは、実際に会っていないわけで、そんなことは本当は人間ができることじゃないんですけど、でもこうして出会いを求めてますので、そうやらざるを得なかった。だから、オーディションに落ちた役者さんの中にも、かなり可能性がある人がたくさんいたとは思います。たまたま今回、この役には、この二人が素晴らしかったんですけど。でも「あ、これだけ、やる気がある役者さんたちがいるんだな。」というのは、正直ビックリしましたね。やる気があって、能力があるっていうのかな。このオーディションに受からなかった女優さんの中でも、今後何かの時に、キャスティングできたらいいなっていう、そういうズルい(笑)収穫もありました。今回選んだこの二人は、言葉に強いんですね。最近の若い人と会っていると、言葉に弱いのを感じます。言葉っていうのは、本当はどうにでも読めるのに、通り一遍にしか読めない。書かれている文字はこう読まなきゃいけないという頭で読む人が多いんですが、彼女たちはそういう所がなかったんですね。

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会見後のフォトセッションでは、ポーズを求められた勘三郎がまず黒木の肩に手を回し、会場が笑いに包まれた。
更に登場した4人の中で一番の長身である太田が、野田に促され、野田の肩に手をそこでまた笑いが起こった。最後は4人で手を繋ぎフォトセッションは終了。
期待に胸を膨らませ、物怖じしない堂々とした雰囲気を感じさせた太田に、透明感や初々しさの中に芯の強さがあるような、不思議な存在感の黒木。この二人が野田秀樹と中村勘三郎という両親を持ち、演劇の世界の中でこれからどう生きていくのか。
予想外のWキャストに、より期待が高まった『表に出ろいっ!』。劇場で見られる日が楽しみだ。

 

太田緑ロランス(おおた・みどり・ろらんす)
81年、北海道生まれ。フランス人を父に持つ。99年早稲田大学在学中に初舞台。以降舞台・映像ジャンルを問わず数十本の作品に出演。

黒木華(くろき・はる)
90年、大阪府生まれ。京都造形芸術大学3回生。現在 、NODAMAP『ザ・キャラクター』にてアンサンブルとして初舞台。

NODAMAP番外公演『表に出ろいっ!』
作・演出◇野田秀樹

出演◇中村勘三郎/野田秀樹/太田緑ロランス・黒木華(Wキャスト)

●9/528◎東京芸術劇場 小ホール1

〈料金〉一般7,500円/サイドシート4,000円(25歳以下2,000円 要身分証)/高校生割引1,000円(要学生証)  (全席指定税込)

〈問い合わせ〉NODAMAP 03-6802-6681

【取材・文/岩見那津子】