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鈴木勝秀と田口トモロヲ、このどこかマニアックな匂いを持つ2人のアーティストが、実に10数年ぶりにコラボレートする。
作家、演出家の鈴木勝秀ことスズカツが、早稲田演劇研究会の時代から描いてきたスタティックで美意識の強い舞台、スズカツワールド。
ここ数年は小人数の男優たちばかりで、『LYNX〜リンクス』などに代表される独自の濃密な劇空間を生み出してきた。
そのシリーズの最新作ともいうべき舞台が今回の『
クラウド』。
ネットのシステムと人間を絡めた現代そのもののような作品になりそうだが、その物語の中心となるオガワを演じる田口トモロヲに、稽古場の様子やスズカツワールドについて語ってもらった。
 

 


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【ネット用語が飛び交う稽古場】
 

ーー『クラウド』の背景となっているのは郊外の荒れ果てた団地で、そこで事件のようなものが起きるということですが、田口さんが演じるオガワはどんなイメージなのでしょう?
 

オガワは多分演出家のスズカツが、自分自身とSF作家のフィリップ・K・ディックを投影しているもので、これまで不定期なシリーズとして上演してきたなかで、30代、40代のオガワを作ってきた。今回は50代のオガワはどうなったかという話を書こうということになって、この前の作品でオガワは自殺したらしいんですが、もし自殺しないで50代になっていたらどうなっていたんだろうか?という発想で書かれているそうです。
 

ーーそこに他の出演者4人がそれぞれのキャラクターで絡んでくるようですが、そこでどんな物語が描かれそうですか?
 

オガワという人間は最先端のところで生きている。と同時に非常に孤立して孤独な人間でもあるんです。その彼にさまざまな人間が関わってくることによって生まれる、いわゆるコミュニケーション、あるいはディスコミュニケーションの物語です。スズカツは常にそのテーマを表現しているんだと思いますが、バーチャルでコミュニケーションをしていることが、実際にコミュニケーションしていることになるのだろうか、そんなことを描きたいんだと思います。
 

ーー『クラウド』というタイトルもクラウドコンピューティングから取ったということで、インターネットについての用語などが劇中で頻繁に出てきますが、田口さんはネットについては?
 

僕はほとんどやってなくて、どちらかというとアナログな人間なんです。それなのに役はわりとそういうのが多くて(笑)、今回もスズカツの中で「オガワの50代」というイメージで、僕が頭の中に浮かんだらしいんですが。けっこう専門用語が多いので、なんとかそれを把握して肉体化できるようにという最中です。
 

ーーライフログとかコアなネット用語も使われているとか?
 

それとクラウドがキーワードだと思います。僕も初めて聞く言葉が多いんです。でもスズカツ、粟根(まこと)さん、伊藤ヨタロウさん、みなさんそっちに強い人たちなんで、僕が聞いててもわからないような用語が稽古場に飛び交ってます(笑)。でもこれを上演するまでには、なんとかデジタルな人物になってないといけないので、本番にはちゃんとネットマニアになっていたいなと思っているんですが(笑)。


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【硬質だけど柔軟な演出】
 

ーー演出家鈴木勝秀との芝居はかなり久しぶりですね?
 

1994年に『SWEET HOME』というのに出て、そのあとに97年に『ウエアハウス』というZAZOUS THEATER時代の作品に出て、それ以来です。
 

ーーまた出会うことになったスズカツワールドについてはいかがですか?
 

以前もフィリップ・K・ディックの世界がモチーフになっていたんですが、その頃はディックの世界は未来だった。今では現になってることに驚かされるし、時代がディックに追いついたというかスズカツに追いついたというか。
 

ーー確かに以前はSF的だったスズカツワールドが今はリアルな演劇という気がします。スズカツさんとは実生活では?
 

いや、しばらく会ってなくて、3年前に宮本亜門さんの『三文オペラ』に出ていたときに、挨拶にきてくれたんですが、すっかり髪の毛がなくなってるから誰だかわからなくて(笑)。「誰?」って言ったら「スズカツ、スズカツ」って(笑)。風貌からしてすっかり重鎮になってました(笑)。
 

ーーすごく幅広いジャンルの演出で活躍されてますよね。
 

過去にミュージカルに誘われたんですが、残念ながらスケジュールが合わなくて、そういう大きい作品まで演出しているんだなと。でも僕が一緒にやっていた小劇場系のたちが、今の演劇界ではメインになってるわけですから。
 

ーーケラリーノ・サンドロヴィッチさんや松尾スズキさんの作品にも、よく出演されてましたからね。10数年ぶりのスズカツ演出は変化していますか?
 

昔の演出がどうだったか比較出来るほど記憶ははっきりしてないんですが、この作品について言えば、ちょっと抽象的ですが「柔軟だけど硬質」っていうのかな。自分の世界観がはっきりしていて、ビジョンが明確で確信的に演出するけど、実際に立ってみてそこにズレがあったら柔軟に直していく。そういう感じです。
 

ーー現場でフレキシブルに演出されるということですね?
 

頭の中で自分が描いたイメージと、それが実際に肉体化されたときに生じるズレを、たくさん経験してきたんでしょうね。そのへんの調整の仕方はさすがだなと思います。


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【人間がSFを身体に入れてしまった】
 

ーースズカツさんはすごく美意識の強い舞台を作ると思うのですが、絵も描かれる田口さんから見ていかがですか?
 

現代美術の1つの形態のような作品だと思うんです。インスタレーションというか以前ならパフォーマンスと呼ばれていたような。そして、昔ならそういう演出をしたときに、これはどういう意味があるの?と聞かなければわからなかったようなものが、今は感覚的にわかっやってるし、観客も意味を見出している。いわばSF演劇が成熟したような世界になったと思います。やってても昔なら意味がわからなかったり質問していたようなことが、疑問もなく動くことができるし面白い、そういう時代になった。人間がSFを身体の中に入れている、人間って進化してるんだなと思います。それがいいことか悪いことかはわからないけど。
 

ーー音楽的な面でも独自のテイストがあるのがスズカツワールドですが、ミュージシャンでもある田口さんにとっていかがですか?
 

スズカツの音楽性というか、彼のチョイスするものを稽古場で聞いたりすると、それだけで身体が導かれるような気がしてくるんです。それによくノイズを入れたりするんですけど、ノイズが入ることでイメージが自由に触発される部分はあります。だから作品における彼の音楽性というか、音への感覚というのはすごく大きいなと思います。
 

ーー田口さんは映像の仕事を多くされていて舞台は3年ぶりですが、舞台に出ることについては?
 

確かにいっときは映画が好きで映画に集中してる時期もあったんですが、舞台はライブですから好きですし、稽古でいろいろな実験を積み重ねられるのがいいと思ってます。
 

ーー今回は男ばかり5人の稽古場ですね。
 

ヨタロウさん以外は皆さん初めてで、でも男5人だからきがねなくエロ話ができそうです(笑)。男子校の文化祭みたいなワクワク感がある。これからディープな関係になるのが楽しみです。
 

ーー最後に、10数年ぶりのスズカツワールドで、田口トモロヲにどんな変化が生まれそうですか?
 

IT革命ですかね(笑)。この作品をきっかけに、遅まきながら俺にもようやくITがやってきた!やあやあやあ!という(笑)。

 


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青山円形劇場プロデュース

クラウド

構成・演出◇鈴木勝秀

出演◇田口トモロヲ、鈴木浩介、粟根まこと、山岸門人、伊藤ヨタロウ

●6/23〜7/3◎青山円形劇場

〈料金〉4800円(全席指定/税込)

〈問合せ〉03-3797-5678 こどもの城劇場事業本部 


【取材・文/榊原和子 撮影/冨田実布】