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新国立劇場で【美×劇】シリーズの第2弾『イロアセル』が公演中である。
 

古典2つにはさまれた唯一の新作で、倉持裕が書き下ろし、演出は鵜山仁。
キャストは藤井隆、島田歌穂、加藤貴子、剣幸、ベンガルなど多彩な顔が揃った。

劇作家で演出家でもある倉持裕は、どこかシニカルで醒めた目線で現代を俯瞰し、この世界の不条理をやや苦めのユーモアをまぶして描き出してみせるが、今回も「情報」という切り口から人間と現代社会を風刺している。
 

物語は、ある小さな島。その島民の言葉には色があり、それぞれ異なる固有の言葉を持っている。いつどこで発言しても、その色によって誰の言葉かが特定できてしまう。そのためこの島の住民はいつも慎重に発言し、決してウソをつかない。ある日、丘の上に檻が設置され、島の外から囚人と看守がやってくる。この男たちとの会話は無色透明で色が着かない。やがて島民が次々に面会にきて、打ち明け話をしていく。


島民の言葉である「色」を映し出すのは、舞台上方にある白く円いスクリーンで、そこにさまざまな色が映り、うごめく。濃い色、薄い色、汚い色、綺麗な色、強い色、弱い色…言葉が視覚化されて発言者が特定される、そのことの面白さとともに恐怖がひたひたと迫ってくる。

そして思い至るのは、言葉を特定されないでしゃべることの自由と無責任さ、特定されながらしゃべることの責任と不自由である。そのせめぎ合いは永遠のテーマであり、同時にインターネットやTwitterに代表される個人レベルの発信情報が、世界に拡散していく現代社会とその危うさを想い起こさせる。

そんなテーマを寓話的に突きつけるこの物語のエピローグは、ちょうど先頃終わった1人の独裁者の時代と重なって、実に衝撃的である。


囚人の藤井隆は島民を虜にするカリスマ性があり、看守らしい距離感が程よい小嶋尚樹。島の村長の剣幸と議員の木下浩之の尊大さと卑小さのバランス、独占企業の社長のベンガルと下請けの花王おさむの戯画化された面白さ。「カンチェラ」選手の加藤貴子と高尾祥子の島を背負わされる屈託。そして情報で殺された女の島田歌穂、良心に悩むカンチェラ審査員の松角洋平など10人の出演者たちは、ファンタジーな足場に立脚したこの物語世界を、自然に日常的に生きてみごとだ。



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【囲みインタビュー】

 この作品の初日前に公開舞台稽古が行なわれて、藤井隆、剣幸、島田歌穂の3人が記者のインタビューに答えた。


ーー自身の役どころと今回の舞台の見どころをお願いします。

 

藤井 囚人の役をやらせていただきます藤井隆です。意気込みですが、出演者にわりと大人が多くて(笑)、本当に穏やかに進みまして、早くもう本番にならないかな、なんて声もちらほらしております。一生懸命頑張りますので、是非お越しいただけたらと思います。よろしくお願い致します。

島田 ナラという前科のある女の役をやらせていただきます、島田歌穂です。今回は前科のある女ということで、どんな前科だったのか、台本の中では具体的に書かれていなかったので、本当に謎ばかりの役どころです(笑)。本当に藤井さんを中心に穏やかに、本当に素敵なカンパニーの皆さんの中にいながらも、一人ずっと悩み続けて本日に至ってしまった感じです(笑)。でもこの作品を信じて、カンパニーの皆さんとスタッフの皆さんを信じて、しっかり頑張っていきます。 

 大人というか、平均年齢をあげている…

藤井 そんなことないです(笑)。

 囚人がやってくる島の町長のネグロという役をやらせていただいておりますが、島の人たちには色が付いているという作品で、その中でも最も濃いであろう黒の5番という役をさせていただきます。この、色が濃いということが特権として政治家というか、力のあるところなのですが、それが色々な事によって崩壊していく様が、とても面白く不思議に描かれていると思います。それを皆で作り上げてピークへ持って行こうと思っています。

 

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ーー藤井さん、島田さん、剣さんは初共演だと思いますが、お互いの印象は?

 

藤井 剣さんは本当にコントロールが素晴らしく、なんて僕が言うのも失礼なんですけれども、普段はすごくご陽気だったりとか…。

 ご陽気!?(笑)

藤井 普段はデニムを履かれて稽古場に来られたりとか、そういうところから始めて。

 すいません(笑)。

藤井 いや、やっぱり勝手なイメージがあったので、本当にフランクに話してくださったりとか、ポテトチップスが好きだったりとかね…「え!?召し上がるんですか?」なんてお話しをしたりとかしましたね。ちょっと、どうするか迷っていたらヒントを下さったりして、台本では分からなかったことがすごくクリアになりますね。やっぱり台本の読み方から違うのかなあと思ったりして、すごく尊敬しました。そして歌穂さんは、もう本当に華やかなキャリアをお持ちなのに、先ほどご自身で迷っていらっしゃるとおっしゃっていたのですが、迷うというかセリフの一行一行と向き合って掘り下げるというか、詰めていく作業をされていましたね。稽古場で、横の席にいる僕なんかはテーブルの下に雑誌があったり、甘納豆があったりとかして(笑)。そういうことが申し訳ないくらい真摯に向き合っていらして、反省しました。今回はお菓子を食べながらだったりして活かせなかったのですが、もしまたある時にはその歌穂スタイルを見習って(笑)。

島田 私も甘納豆いただきましたよ(笑)。

藤井 (笑)優しい方ですよね、そういうのも受け取って下さって。出演者の方々と一緒にご飯を食べに行かせていただいた時には、ご自身の心情を吐露されながらロックでどんどん飲まれていく姿が…。
島田 あははは(笑)。飲みすぎました…。 

藤井 いえいえ、とんでもないです! 体調管理とかも含めてすごくこう、ピュアなのかなと思ったら意外とロックが進んでいらっしゃったので、もう本当にプロフェッショナルな方で、次の日なんて稽古は休みでしたけど、また合流した時には全くそんなことも見せずに、クリアにされるので頭が下がる思いでした。 

島田 次の日は本当に反省して(笑)。

藤井 とにかく、出演者の皆さん大先輩ばかりでそれぞれのやり方があって、普段知ることの出来ないことなので本当に良い経験をさせていただきました。


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ーーちなみになんのロックだったんですか?

 

藤井 言っていいですか? 焼酎でした(笑)。

島田 芋の…(笑)。 

藤井 5、6人で飲んでいて一本空いちゃって。

島田 皆さんで飲んだんですからね。もうこの話はいいから(笑)。

 もちろん藤井さんはテレビでは拝見していて、昔からすごく好きでした。この作品の中で一番大変な囚人さんで、他の役それぞれに対応して心を解いていくという様がとても自然なのと、藤井さんの中に引き出しが一杯あるから、あの小さな檻の中だけで、ものすごく表現していらっしゃるので、すごいなあと思います。やはり、生の現場でやっていらっしゃる方の感性というか、持っているもので、全部藤井さんがこの芝居を引っ張っていっていると思います。私たちの役は囚人に会いに行って、解きほぐされて自分たちが変わって行くので、藤井さんが発信する側なんです。とても見事に演じられていて、皆さんにもお気遣いいただいて、私がポテトチップスが好きだと言ったら3袋も買ってきてくれました(笑)。そういう配慮とかも心得ていらして、本当にすごいなと思っています。

島田 もう剣さんが全ておっしゃって下さいましたので(笑)。あ、こういう方にはお会いしたことないなっていうくらい、本当に素敵な方です。とても謙虚で、心配りもされるんですけど、時々お稽古の合間に気づくと踊っていらっしゃったりするんですよね(軽く踊る)。何かの練習なのかと思ったら趣味で「少女時代」の振りを踊っていらっしゃったんです(笑)。大変な役でいらっしゃるのに、持ち前の感性で力を抜いて演じられていましたね。最初から藤井さんの世界が見えていました。藤井隆、ここにありというかんじです。
 

ーー今回はスクリーンに色が映し出されますが、演じられる上での苦労は?


 色に関してはスタッフの方がやってくれるので特に苦労はしないですね。

藤井 言う言葉のボリュームや感情が、映し出される色のサイズなどにも反映されるし、一度も同じものではないので、観ていて面白いんじゃないかと思います。またその色が邪魔になったり、楽しくなったりもするのですごく不思議な舞台だなと思います。家では子供がいたりしてなかなか台本を覚えられないんですけど、演出の先生にそろそろ覚えましょうかって言われて(笑)読んでましたけど、妻が驚いてましたね。

  

ーー最後に意気込みを

  

藤井 怪我の無いように、千秋楽まで頑張りたいと思います。アクセスもいいので、観劇後もご飯が食べられますし、来る前も来た後も楽しめる新国立劇場の『イロアセル』に是非いらして下さい! よろしくお願いします。 


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『イロアセル』
●10/18〜11/5◎新国立劇場 小劇場
作◇倉持裕 
演出◇鵜山仁
出演◇藤井隆、小嶋尚樹、島田歌穂、剣幸、木下浩之、ベンガル ほか
〈料金〉A席5250円/B席3150円/Z席1500円
〈問合せ〉
ボックスオフィス 03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/play/


【インタビュー取材・撮影/冨田実布  レビュー/榊原和子】