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横田栄司×吉田鋼太郎


1月11日から劇団AUNがシェイクスピアの『十二夜』が、赤坂レッド・シアターで幕を開ける。

劇団AUNは1997年に旗揚げして、以来15年間、シェイクスピア作品を上演し続けているカンパニーである。
劇団員は25名、主宰の吉田鋼太郎は蜷川幸雄のシェイクスピアには欠かせない俳優で、2011年の『アントニーとクレオパトラ』では主演をつとめた。また他の舞台でも活躍、若年性アルツハイマーの苦しみを描いた『リタルダンド』のリアルな演技は記憶に新しい。 

今回の『十二夜』は、劇団公演としては19作目で、客演に安寿ミラと文学座の横田栄司を迎え、劇団員で声優としても人気の大塚明夫も出演という豪華な顔合わせでの上演となる。
 

昨年末、『十二夜』の稽古場を訪ねて、演出家兼マルヴォーリオ役で奮闘する吉田鋼太郎と、サー・トービー役で稽古場を沸かせている横田栄司に話を聞かせてもらった。


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『十二夜』とは縁がある吉田鋼太郎


ーー劇団AUNはシェイクスピア作品を次々に上演していますが、今回『十二夜』を選んだわけは?

吉田 まず僕が大好きな戯曲だということと、すごく縁があるんです。高校時代に最初に観た芝居が劇団雲の『十二夜』で、初舞台は大学のサークルで『十二夜』、役はセバスチャンでした。それから、のちに入団するシェイクスピア・シアターで初めて見た作品も『十二夜』、とにかく面白い戯曲だなと。ただ面白い『十二夜』ばかり観てきたので、自分で作るのはもう1つ自信がなかったんです。劇団でも10年ぐらい前に1度上演したんですが、やはりどこか物足りない思いがあった。できればもう1度ちゃんと作りたかっし、前回の劇団公演が『ヴェニスの商人』で「喜劇は面白いな」と思ったところでしたから、「そうだ、また『十二夜』に挑戦してみようかな」と。
 

ーー横田さんもシェイクスピアにはよく出ていますが、『十二夜』は?

横田 初めてなんです。蜷川(幸雄)さんの舞台でのシェイクスピアでもまだ出合ってなくて。もともと面白い作品だとは思っていましたが、鋼太郎さんの稽古場に入って、また認識が変わりましたね。出てくる人間のへんてこりん加減が深くて(笑)、かなり個性的なキャラクターが揃ってて面白いです。

吉田 シェイクスピアは基本的にそうなんですが、この『十二夜』は、何回やっても飽きないんです。僕はセバスチャン、オーシーノ、フェステ、アントーニオ、サー・トービー、そして2回目のマルヴォーリオ。6役もやってるんですが、やるたびに変わって見えるんです。
 

ーー6役ですか! しかも道化から二枚目、中年の酔っぱらいまで演じるというのはすごいですね。

吉田 いや、節操がないだけで(笑)。役によっても話の見えかたが違うし、光の当て具合で微妙に違って見えるんです。そのたびにこういうふうにやりたいという自分の思いも変わるし、セリフの解釈もきりがない。

横田 鋼太郎さんがおっしゃるように、『十二夜』に限らずシェイクスピアはいろいろな解釈ができるし、どこまでもイマジネーションを働かせることができるので、僕もそれほど出演経験はいないんですが大好きです。


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実体が見えない人たちが出て来る


ーー稽古を拝見していて、吉田さんの演出はセリフのモチベーションを大事に指導されていて、レトリックとかダジャレでも意味を把握してきちんと喋るようにされてますね。

吉田 『十二夜』という作品はシェイクスピアが書いた喜劇としては最後で、そのあと悲劇の時代に入るんです。だから1人1人の造形が深い。一見おかしな人たちに見えるけど、それぞれの動機がちゃんとあるしそれぞれの思いがある。同じ双子の取り違い物で『間違いの喜劇』という作品がありますが、あちらのほうが登場人物が記号的ですね。そのぶん若さとかエネルギーで乗り切れる部分があるんですが、『十二夜』はもっと大人でないとできない芝居という気がします。ダジャレや掛け言葉がすごく多いんですが、それを言っても成立するように、洒落のめしていても裏にはちゃんと人生がある人たち、それを作っていかないとちゃんとした『十二夜』にならないんじゃないかと思ってます。
 

ーーその点、横田さんのサー・トービーなんてまさに深い役ですね。チャランポランなようで実は悲しい人というか

横田 本当に面白い役です。人を操ったり画策したり、そういうことばかり考えているんですよね。時間もお金もあるから、毎晩のように酒を呑んで、気に入らないマルヴォーリオとかアンドリューを懲らしめたり意地悪をして大騒ぎをする。でも鋼太郎さんの解釈では、いろいろなことに厭きていると同時に飽き足らないところがある人だと。

吉田 トービーは金があるし仕事はしなくていい。高等遊民みたいなもので、人生をまだ見つけられないのかなと思うんです。ですからトービーのやりどころでもあるんですが、あれだけいろいろなことをやる動機、なにが彼をあそこまで駆り立てるのか、そこに『十二夜』の秘密が隠されている。
 

ーーこの作品のテーマということですね。

吉田 それに、ヴァイオラがシザーリオに変身して、つまり女が男の格好をしていることに誰も気がつかない。じゃあ人というのは服を変えただけで惑わされるのかと。つまり実体が見えていない人たち、自分の実体さえも見えていない人たちが集まって馬鹿騒ぎを繰り広げているのかなと。それは僕たち自身もそうで、初めて会った相手がどんな人間なのかわからないまま恋して結婚してしまったりする(笑)。だからこそ人間というのは面白いわけで、『十二夜』はそういう深いことを内側に隠した喜劇という気がします。


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感情の振れ幅を表現する


ーー横田さんが稽古ですごく自由に動いているのがすごいなと。

吉田 おまかせ状態です。

横田 いやいや、出る前に思いついたことをやってるだけで(笑)。とりあえず自由にやらせていただけるのがいいですね。最初にこの劇団の芝居を観たときの第一印象も、自由で楽しそうだったんです。その流れでもう5本目の客演で、毎回好きにやらせてもらってます。

吉田 もう劇団員みたいなもんです(笑)。うちの劇団員はまだ経験が少ないので、台本を読んだ次元で、膨大な台詞の量やレトリックを消化する時点で精一杯で、なかなか解釈と表現が追いつかないんです。それでただ流暢に言うだけになったりする。また、それが一見上手いように聞こえたりするから。

横田 それはありますね。

吉田 そうすると芝居が弾まない。だからちゃんと理由とか動機を見つけていってほしいので、そこは細かく注意しているんです。さっき稽古していたシーンなど、オリヴィアが兄の死を悲しんで引き籠っていたはずなのに、ほんの5分も経たないうちにシザーリオに恋してしまうんですよね。その振れ幅たるやたいへんなもので、そこをちゃんと演じ切らないといけない。そこまで振れ幅がある芝居ってそうはないし、そこがシェイクスピアならではの魅力なんです。

横田 でもいつも感心するのは、みんなシェイクスピアのセリフに慣れているし、達者にしゃべるんです。それが僕にはすごく刺激になっていて、それで客演させてもらう部分もあるんです。
 

ーー吉田さんはマルヴォーリオ役も演じるわけですが、こちらもいろいろ考えられる役ですね。

吉田 シェイクスピア・シアター時代に、出口典雄さんの演出で1度やっているんですが、難しいですね。僕がやると強い人になってしまう。でも全然強い人ではないし、最後なんか悪いことをしていないのに、酷い目に遭うんです(笑)。

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まず言葉をきちんと伝える


ーー劇団AUNならではのシェイクスピアをアピールするなら?

吉田 まずセリフをきちんと届ける舞台であること。そして劇団はそんなに予算がありませんから、装置や衣装はシンプルにしてあります。それでも成立するのがシェイクスピアの懐の深さでしょうね。とにかく基本は言葉を伝えていくことで、言葉を伝えるための訓練を大事にしています。ちゃんとしゃべると一見回りくどいようなレトリックでも、意味をちゃんとお客さんは汲んでくれるんです。ですからなるべく訳をカットせずにできるだけそのまま使いたいと思っています。 

横田 僕はこの劇団で小田島先生の訳を初めて経験したんですが、楽しいですね。ダジャレがたくさん出てくるし(笑)。
 

ーー今回は、横田さんと安寿ミラさんが客演して、劇団の重鎮の大塚明夫さんも出演ということで豪華ですね。

吉田 大塚さんはアントーニオで出てくれます。客演3回目になる安寿さんはヴァイオラ役でまさに男装の麗人でぴったりです。先日も立ち稽古に付き合ってくれて感じたのですが、すごく動きが綺麗なんです。そういうところを劇団員の子たちに見習ってほしい。それに横田は出てくるだけで空気がふっと変わる。そういうすごさを羨ましいと皆が思って勉強すればいいと思っているんです。
 

ーー劇団員のかたが25人、それも若い人が多いですね。

横田 鋼太郎さんが情が深いというか、愛情があるんです。稽古場の指導は厳しいですけど本当に温かい。だからこれだけ若い人が集まってくるんだと思います。

吉田 まだまだですが、とにかくちゃんとシェイクスピアをしゃべることだけは教えていって、そのうえで生まれてくる、今回なら喜劇の面白さ、そこを見ていただけるようにがんばります。

横田 シェイクスピアはとつっきにくいという人が最初に観るのにいい作品だと思いますよ。

吉田 そう、俺も『十二夜』でシェイクスピアの虜になったんだから(笑)。

 

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劇団AUN 第19回公演

『十二夜』

作◇W.シェイクスピア

訳◇小田島雄志

演出・出演◇吉田鋼太郎

出演◇安寿ミラ、横田栄司、大塚明夫 ほか劇団AUN

●2012/1/11〜22◎赤坂レッド・シアター

〈料金〉当日5500円/前売5000円

〈問合せ〉03-6327-4232 劇団AUN

http://homepage2.nifty.com/aun-company/


【取材・文/榊原和子 撮影/冨田実布】

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