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歌舞伎の若手俳優としてめきめきと頭角を現してきた二代目・尾上松也が主催し、若手役者たちが舞踊や古典などに文字通り「挑んで」いく『挑む』シリーズ。09年の第一回を皮切りに始まった公演も三回と場を重ねてきた。

そして第四回の今回は、歌舞伎界から同世代の人気歌舞伎俳優・中村七之助、狂言の世界から三宅右矩・近成を迎えて、歌舞伎演目と狂言のコラボとなる『挑む〜外伝〜』を開催する。

場所もセルリアンタワー能楽堂という特別な空間で、新鮮なチャレンジになりそうだ。その公演への意欲や抱負を、主催の尾上松也と初出演のゲスト・中村七之助の対談で話してもらった。


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尾上松也

アクションを起こさないと始まらない


ーーこの『挑む』というシリーズですが、どんな動機で始めたのでしょうか?

松也 かなり前から勉強会のようなものをやりたいと思っていて、自分だけでなく、そういう志を持った人たちが集まって活躍できる場が持てればという思いがありました。でも、待っているだけではなく自分からアクションを起こさないと何も始まらないと思い、4年前に思いきって始めました。おかげさまで沢山の出会いがあって、共感してくれる人たちが集まって、四回目を数えることになりました。そして今回は七之助さんも初参加してくれることとなりました。

七之助 自分の会を開催したり勉強会に参加することは大切だし、若手はみんなやりたいと思ってるんです。でもなかなか形にできるものではないので、それができる松也さんはすごいなと思っています。僕も前から機会があれば出たいなと思っていたところなので、今回は楽しみです。
 

ーー製作も自分たちということで、何から何までやっているそうですね。

松也 そうです。歌舞伎を知らない人にもスタッフとして参加してもらっています。最初は全員が何も知らないような状態からスタートしましたので、第一回目など嵐のように通りすぎて(笑)、自分の舞台の記憶がないくらいです。

七之助 僕は実際に参加するのは初めてなのですが、そういうたいへんな思いをしているのはそばで見て知っていたので、何か助けになればいいなという気持ちはありました。でも今回はあくまでも彼がやってることに乗っかって出演させてもらうので、気心の知れた友だち同士ではあっても馴れ合いにならないようにと思っています。
 

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中村七之助

能楽堂という場にふさわしい演目


ーー演目は毎回、松也さんが決めるのですか?

松也 一応自分で考えますが、いつも一緒に出るメンバーがいますので、彼らと相談して出来ること、やりたいものを考えながら決めていきます。基本的には初めてのことに挑戦したいと思っています。やったことのない演目とか役どころに挑戦するのが趣旨ですので。
 

ーー今回は『外伝』ということですが、いつもとの違いは?

松也 あえて『外伝』という形にしたのは、まず会場が普通の劇場ではなくセルリアンタワー能楽堂であること。それからいつものメンバーに加えて、七之助さんがたまたまスケジュールが空いたので、ぜひ参加したいと言ってくれたこと。また、狂言の三宅右矩(すけのり)さん・近成(ちかなり)さん兄弟という同世代の仲間も協力したいと言ってくれたので、では一緒に狂言をやりましょうと。かなり面白い公演になると思います。狂言の『樋の酒(ひのさけ)』には僕が出て、『素襖落(すおうおとし)』には七之助さんに出てもらいます。

七之助 能楽堂ですから「松羽目物(まつばめもの)」(注:能・狂言を原作として舞台様式などもそれに近い形の物)と限られてきますし、登場人物もいっぱい出ますし、狂言らしい話なのでいいなと思いました。同じ『素襖落』でも狂言と歌舞伎では表現がこんなに違うのだという、そこを見ていただけるのではないかと思っています。それに女の役があるのは「松羽目物」では珍しいので。

松也 やはり七之助さんに出てもらうなら女形でと思っていましたから。


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高め合う仲間がそばにいる


ーーお二人は同世代で気心が知れているということですが、批評し合ったりするのですか?

七之助 批評という形ではないんですが、ここはこうしたらいいんじゃないかとか、アドバイスし合うのは毎回やっていて、高め合うというか、なるべく見て感じたことは正直に言い合うようにしてます。

松也 高校も同じ学校だったり友だちも共通だったりするので、お互いの舞台についても遠慮なく言い合えて、それは有り難いことだし、すごく感謝しています。
 

ーーお互いについて、役者としての魅力はどんなところにあると?

七之助 松也さんは、やはり女形も立役も両方できるところですね。お父様(二代目尾上松助)もそうでした。それにどんな役でもできる幅がある。そして芸に対してすごく一生懸命です。

松也 七之助さんは…とくにないです。

七之助 おい(笑)。

松也 (笑)。本当は、すごく大きくなっているなと。とくにここ数年、正統派の女形さんになってきていて、僕が言うのもナンですが、安心して見ていられます。それは役者としてきちんと修業してきているからだと思いますし、彼がそういう姿勢で歩んでいることで、僕も引っ張られている部分があります。一緒に成長していける人がそばにいることはすごく有り難いです。
 

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ーーまだ20代後半ですが20年以上舞台を踏んでいるお二人で、そのキャリアだからこそ、わかることもあるのでは?

七之助 今、いろいろな役をやらせていただけるようになってきて、やはり演じてみてこそ面白さがわかるなと思います。自分の修業ももちろん大事ですけど、舞台で役をやらせてもらう、しかもその年では到底やらせてもらえないような役をさせていただき、そのときは不完全燃焼だったりというような経験をたくさん積んできて、そろそろ、その1つ1つにどう取り組んできたかとの結果が見えてくる頃だと思うんです。それもあるから、こういう『挑む』のような公演をすることは大切だなと思います。みんな力はあるけど場がない。それを作る、場を与える、それでどんどん変わりますから。そういう意味でも、松也さんがやっていることは意味があると思います。

松也 確かに、「場を作らないと」という意識がすごくあります。7年前に僕の父が亡くなって一門の当主になり、地に足つけて生きていかないといけないと気づいた時期がありまして、そこから意識が変わりました。この自主公演を始めたのもその頃からですし。メンバーもそうですが、僕自身ももっともっといろいろな役を演じたい。そして、僕たちが少しでも自分たちの場を広げることで、あとに続く人もやり易くなればという気持ちもあります。それには七之助さんも言っていたように積み重ねが大事だと思っています。そういう意味では、この『挑む』を始めてから、役というものへの取り組みはもちろん、舞台の裏側に関わることで1つ1つの舞台への思いも違ってきました。

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男も女もお化けも動物もできる歌舞伎


ーーこの公演を観てもらえることで、新しいお客さんもきてもらえそうですね。

松也 チケット価格も少しは低く設定しておりますし、セルリアンタワーのような素敵な場所を楽しんでいただいて、若いメンバーということで親しみを持っていただければと。それが歌舞伎の本公演にも観にきていただく、良いきっかけになっていただけたら嬉しいです。とにかく『挑む』には、いろいろな思いが詰まっているんです。

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ーー七之助さんはコクーン歌舞伎『天日坊』で、松也さんは『男の花道』とか蜷川幸雄さんの『ボクの四谷怪談』など、それぞれ新しいチャレンジも続いていますが、これからの歌舞伎についての抱負を。

七之助 歌舞伎はとにかく幅が広いところが面白いんです。古典狂言から野田秀樹さんや宮藤官九郎さんの脚本作品まであるし、男も女もお化けも動物もできる(笑)。そこはすごい魅力ですね。難しい演目もありますけど、まず、こういう若手の会を気軽に観ていただいて、そこからどんどん歌舞伎の世界の面白さを知っていただきたいです。

松也 遠い世界というイメージの方もいるかもしれないですけど、同じ演劇で、日本人ならではの「情(じょう)」とか、本当に良いものが見られる世界です。僕らはその良さを受け継ぎながら、そこで落ち着くのではなく、いつも挑戦し続けていきたいと願っています。


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なかむらしちのすけ(左)○83年、東京生まれ。父は十八代目中村勘三郎、兄は六代目中村勘九郎。87年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎』で初舞台。以後、子役時代から海外公演に参加するなど活躍、女形として数々の歌舞伎演目で大役を演じている。歌舞伎以外でも映画『真夜中の弥次さん喜多さん』や、テレビドラマ、バラエティと幅広く活躍中。
 

おのえまつや(右)○85年、東京生まれ。父は六代目尾上松助。90年5月歌舞伎座『伽羅先代萩』で初舞台。以後、子役として活躍。最近の歌舞伎の舞台では若女形だけでなく立役も演じている。09年から自主公演『挑む〜若き歌舞伎役者の舞〜』を毎年主催。歌舞伎以外でも映画『源氏物語 千年の謎』、大河ドラマ、ラジオ、舞台と活躍の場を広げている。



『挑む 〜外伝〜』

1、舞踊「翁千歳三番叟」

2、狂言「樋の酒」

3、歌舞伎十八番の内「素襖落」

出演◇尾上松也

澤村國矢、市川左字郎、尾上音一郎、尾上徳松、尾上松五郎、尾上隆松

中村七之助

三宅右矩、三宅近成

●8/6、7◎渋谷 セルリアンタワー能楽堂

〈料金〉7500円(全席指定・税込)発売日 7月6日

〈問合せ〉キョードー横浜 045-671-9911(月〜土 10時〜18時)
 挑むHP   http://www.idomukabuki.com/






【取材・文/榊原和子 撮影/大倉英揮】

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