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あのジョナサン・ラーソンの傑作ロックミュージカルが、みずみずしい若い才能たちとともに帰ってきた。
オペラの名作『ラ・ボエーム』をもとに、さまざまな困難にぶつかりながらも、夢に向かって全力で生きる若きアーティストたちの姿を描いた『RENT』。
ブロードウェイでの初演以来12年4ヶ月のロングラン、世界15ヶ国での上演、映画化と、世界中で愛され続けている、この伝説的なミュージカルが、10月30日にシアタークリエで幕を開けた(12月2日まで。大阪公演は12月6〜9日)。2年ぶりの上演は、オリジナル版の演出家マイケル・グライフによって新たに生まれ変わっている。


キャストは、マークに賀来賢人、ロジャーにジュリアンと中村倫也(Wキャスト)、ミミに石田ニコルとJennifer(W)、エンジェルにヨウスケ・クロフォードと田中ロウマ(W)、コリンズにTAKEと加藤潤一(W)、モーリーンに上木彩矢とソニン(W)、ジョアンヌに西国原礼子、ベニーにSpiのほか、千葉直生、伊藤友樹、海宝直人、小林由佳、セキグチタケオ、高城奈月子、田代絵麻など、この青春群像劇の名作にふさわしいフレッシュな顔ぶれが集まった。


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【あらすじ】

マークとロジャーは、夢はあっても金がなく、古いロフトで共同生活中。クリスマス・イブなのに、家賃(レント)滞納で電気も暖房も止められる始末。ロジャーは、恋人が自殺して以来引きこもり、自分も恋人と同様にHIVに感染、死ぬ前に後世まで残る名曲を残したいと願っている。そしてイブの晩、下の階に住むダンサー・ミミに出会い惹かれていく。マークは、カリスマ的なパフォーマンス・アーティストのモーリーンに振られたばかり。彼女の新しい恋人は、女性弁護士・ジョアンヌだった…。

クリスマス。パーティ中のマークたちのもとへ、元同居人で今は管理人のベニーが家賃を取り立てにきたことで、仲間同士のもめごとが起きる。だが、彼らは若き芸術家の溜まり場「ライフ・カフェ」に集まり、貧しくとも自由に生きる芸術家の誇りと喜びを歌う。ついに結ばれるロジャーとミミ。だが彼らの前にはさらに悲劇が待っていた…。



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空間をフルに使い、上下左右に組まれたスチールのセット。センターにはマークとロジャーの住む一室。あるのはテレビのモニター、粗末なイスとテーブル、ギター、くべる薪がなくて役に立たないストーブだけ、まさに“どん底”。外では華やかにクリスマス・イルミネーションが輝く。このシンプルな装置から、若者がアーティストとしての成功を夢見る大都会ニューヨークのスタイリッシュさと、力及ばぬ者への非情さが入り混じった空気が漂う。可動のブロックを作ったことで、話の転換や歌唱の場面などで舞台に立体感がある。


まだ薄暗いステージにキャストたちが音もなく登場すると、賀来賢人演じるマークが、彼らの現状を音楽に乗せて語りだす。マークが話す内容は酷いものだが、不思議と絶望感がないのは、賀来の天性の明るさだろう。『RENT』の大きな魅力であるミュージカルナンバーをメインに、せりふのやり取りや、電話や留守電メッセージを効果的に使ったシーンチェンジなど、舞台運びのテンポも早く、疾走感がある。
 

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マーク、ロジャー、ベニー、ジョアンヌたちが歌う『Rent』は、タイトル曲。家賃も払えないほど貧しくても充実した様子を、舞台いっぱいに駆けまわるキャストたちが体現する。マークの賀来とジュリアン(初日)のロジャーは声質も近く、息も合っている。

『You Okay Honey?』はコリンズとエンジェルの恋。この日はコリンズがTAKE、エンジェルはヨウスケ。他のカップルは時に反目するが、この2人だけは終始穏やかで甘いハーモニーを聞かせる。

『One Song Glory』はロジャーのソロで、死ぬ前に名曲を作りたいという渇望を強い歌声でアピールし、ミミとロジャーが出会う『Light My Candle』のコミカルさとの対比もきいている。嫉妬やいらだち、しっとりした『Your Eyes』など、ロジャーの心の動きを繊細に描く。ミミはJenniferで、ソロの『Out Tonight』で、あふれる情熱をセクシーなダンスとパンチのある歌声で表現、後半とのギャップを印象づける。

上木のモーリーンの初登場は、パフォーマンスの長丁場。映像を使い、ジョアンヌの口伴奏で歌い、アジり、語り、動く姿は実際のライブのよう。自由奔放な女性を華やかに演じる。

『Tune Up』や『Rent』などはあるが、ほぼ狂言回しに徹していた前半に比べ、後半は賀来のマークが輝きを増していく。生きるために働く後ろめたさ、本来の夢を取り戻した力強さなどを鮮やかに表現。作品を引っ張ろうという意気も感じる。

Spiのベニーには、対立相手だが心の底では彼なりに2人を応援する優しさが滲む。西国原のジョアンヌは強い女性をハリのある声で演じ、『Tango:Maureen』でのコメディエンヌぶりもいい。


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登場人物をクローズアップすることで、ドラッグ、HIV、貧困、同性愛など、さまざまな側面に光を当てながら問題提起する作品だが、もっとも伝えたいことはやはりキャストたちが全身のパワーを込めて歌う『Another Day』と『Seasons Of Love』の中にあるといっていいだろう。歌詞の「No day but today」(今日という日を精一杯生きる)という確かなメッセージが、重層的でソウルフルなハーモニーを通じて観客の心を激しく揺さぶる。現状がどんなに辛くて、死がそこまで迫っていても、自分を信じ、仲間を信じ、夢をあきらめずに全身全霊で生きる…。作者ジョナサン・ラーソンが、最後の最後まで自身の「いのちの火」を精一杯燃やして生み出した『RENT』。その魂は今も変わらずここに息づいている。



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『RENT』

脚本・作詞・音楽◇ジョナサン・ラーソン

演出◇マイケル・グライフ

出演◇賀来賢人 中村倫也/ジュリアン 石田ニコル/Jennifer TAKE ヨウスケ・クロフォード/田中ロウマ 上木彩矢/ソニン 西国原礼子 Spi 千葉直生 伊藤友樹 海宝直人 小林由佳 セキグチタケオ 高城奈月子 田代絵麻

●10/30〜12/2◎日比谷シアタークリエ

※11/20〜25はLGBT Pride Weekとして開催(協力:アルファロメオ)

●12/6〜9◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

〈料金〉

東京公演/S席11000円 A席8500円 エンジェルシート(当日抽選席)5000円 学生シート4500円(全席指定・税込)

兵庫公演/11500円(全席指定・税込)

〈問合せ〉

東京公演/東宝テレザーブ 03-3201-7777

兵庫公演/キョードーインフォメーション

 公式HP http://www.tohostage.com/rent2012


【文/塩田史子 写真提供/東宝(株)】