今回の作品はお客さんへのラブレター
ロ字ック 山田佳奈インタビュー


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劇団「ロ字ック」のインパクトのあるフリーペーパーに惹かれ、公演まであと2週間という時期に、主宰で作・演出・出演の山田佳奈に今回の公演『タイトル、拒絶』(サンモールスタジオ◎2/9〜17)について話を聞いた。


表紙













女の人が一番さらけ出している瞬間を描きたい。

――今回インタビューをさせていただくのに台本をお借りしました。いつもこの時期にはできているんですか?
 ロ字ックはわりと一か月前には完本、ないしは後半あと何ページかだけの状態で台本を役者さんにお渡しできてますね。顔合わせの状態で大体の大枠はできていて、そのあと役者さんの役の作り方と感情の流れを見て、自分が納得いかないと直します。

――稽古をしていくなかで俳優たちとのディスカッションがあるわけですね。
 あります。ロ字ックは私のやりたい世界観がはっきりしているんですけど、役者さんに一個人、人間として、「どう見える?」とか「どう思います?」という話はよくしますね。うちの作品って全作品通してそうなんですが、誰かの人生の一瞬だったりとか、誰しもが手に届く範囲内の世界のお話なので、私ひとりの世界になっちゃいけないなという意識がすごく強いです。

――ロ字ックの舞台は風俗っぽい話が多いかなと思いますが、これはなぜなんですか。
 生活に対して納得のいってない人、そこにいてもがいている人、そういう人たちの生きざまに美しさを感じることがあって。で、女性として社会と関わっていることへの葛藤だったりとか、自分の弱さを痛感する瞬間だったりとか、そういう瞬間を描きたいなと。そうなってくると人間の三大欲求じゃないですけど、性欲という部分も切り離せないかなと思うんです。単純に興味があるだけかもしれないんですけど、そこに行きついてしまうというのが多いですね。女の人が一番さらけ出している瞬間というか。

デリヘル嬢のブログがすごくおもしろい。

――具体的な話にするときは取材とかはするんですか。
 いままでは、自分の実体験のものもあるんですけど、今回はデリヘルの話なので、デリヘル嬢はやってないんで(笑)。私は他人のブログを観るのが好きなんですけど、デリヘル嬢のブログがすごくおもしろいんですよ。女の人って、どこかで自分を見てほしい、さらけ出したい、誰かにわかってほしいという気持ちがすごく強いので、それを身の回りに言える人がいないと全部文字にぶつけるんですね。だからすごく面白いブログが多くて。客にこういうことを言われたからこう返してやったとか、一人ひとりが葛藤しているさまがすごく如実に描かれていたりするんですね。自分が生きてきた過程だったり、私が体験しえないことがたくさん文字になっているんです。それを読んでいるだけですごく感情が動くので、だったら私はこれに興味があるので今回はこれをやります、ということです。

――今回の作品だと男の人はきついことも言っいても、表面的な感情表現が多い。女の人は言ってることは平面的ですけど、もっと別のなにかに通じている言葉なのかなと思いながら台本を読ませていただきました。
 今までとはちょっと違う書き方をしているんです。今までは一人の女の人を描いてその女の人が今後どう生きていくんだということに対して、希望とかしても思い通りにならない事のが多いけど、生きていくというのは死ぬまで続くから、そこに対してちゃんと向き合わないといけない、だからそれに対して背中を押したいなという作品だったんです。でも、今回は一人の女の人を描くというよりは、場所というか、集団としての女の人という人間を描きたいなという気持ちがすごく強くて。女の人は表面的なところではキラキラと自分を見せていたりするし、感情の部分であの子よりも私がとか、いろいろなプライドも渦巻いていたりと難しいんですが、もっと奥の奥では単純で、女としてのカテゴライズ、女性性という部分は一緒なんだなというところが書きたくて。いろんな人間が全部つながっている、感情や言葉は自分以外の誰かとも共通している部分が多いのではないかと思って書きました。

あなたのことをきっと愛しますよ、と言える作品にしたい。

――なんでもない会話のやりとりが注意深く書かれていて、それを俳優さんがうまく受け止めて演じるとおもしろいなと思いました。では最後に、観に来てくださるお客さんに向けてのメッセージを。
 演劇ってメッセージをお客さんにぶつけて、感じとってもらう、自分の思ってることを、お客さんに「こうだよ」とぶつける作業になると思うのですが、今回の『タイトル、拒絶』という作品は、そこに一コ足されているんじゃないかなと思っていて。お客さんにぶつけてもらうために「こう思ってますよ」と、逆転している作品じゃないかと思うんです。自分が思っていることをただお客さんにぶつけるのではなくて、お客さんに対して自分が欲しい言葉を期待しないラブレターを書いたみたいな。

――ではお客さんの答えがほしいですね。
 私は一コの答えをもっているけれども、その答えは必ずしも正解じゃないんじゃないかなと思ってる作品なんです。お客さんなりの答えでいいんじゃないかなと。まあどの作品も結局はお客さんありきなんでそうはなってしまうんですけど、今回は特にその気持ちが強くて。観に来る人、いろんな方がいらっしゃるし、いろんな葛藤があると思いますが、それでも大丈夫ですよじゃないですけど、それでも私はあなたのことをきっと愛しますよ、と言える作品にしたいです。それをぶつけたい。作品としてのこういう気持ちがありますよ、というのをぶつけるというよりは、とりあえず私は絶対あなたのことが好きですよ、絶対愛せますよという感情のほうが強い作品というか。作品の中身よりは、対人間同士の関係性みたいなものをぶつけたいなという気持ちが強いです。

男の人と女の人と笑うポイントが全然違う。


――台本を読みながら、中高生も観たらおもしろいんじゃないかと思いました。
 ロ字ックのお客さんはすごく女の子が多くて。いわゆる女の人の劇団だと男の人のファンのほうが多いのでしょうけど、ほとんど女の子で。別に泣かせることを意図しては書いてないんですけど、自分の生活とリンクさせて、ぶわっと泣いて帰ってくれたりするんです。それはすごくおもしろいなと思うことがひとつ。
 もうひとつ、ロ字ックって男の人と女の人と笑うポイントが全然違うんです。稽古場では女の人の視点で書いているので、「ここでくるでしょ」と思ってるんですけど、本番に入ると意外なところで笑いが起きていて、それが男の人の視点で笑いが起きているんですね。お客さんがある情報サイトに書いてたのは、自分が気持ちを寄せている男性とロ字ックを観に行くと、笑う場所や観方によって、その男性が女性に理解がある・なしが決まるから、おもしろいと書いていて。なるほどねとこっちも気づかされたりしました。

――男の人は気を付けないといけないですね。
 油断しないでいただいて(笑)。



山田佳奈

SABU













やまだかな◎劇団「ロ字ック」代表。作家・演出家・俳優。高校生時代からの“高円寺”体験を基盤に、レコード会社プロモーターなどの経験を積み上げ、演劇に至る。「人間の本能・性質・悪意を独特のロッキントークでポップに描く。(劇団HPより)」 4月よりウェブサイトでの小説執筆も予定されている。

公演情報◇「タイトル、拒絶」

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作・演出/山田佳奈
出演◇川原真衣 山田佳奈(以上、ロ字ック)

大数みほ 踊り子あり(はえぎわ) 熊野善啓(チャリT企画) 堤千穂 長井短(劇団半開き)
野田慈伸(桃尻犬) 
葉湖芽 日高ボブ美 もなみのりこ(チェリーブロッサムハイスクール) 
竜史(20歳の国)  東ゆうこ

2013年2月9日(土)〜17日(日)◎新宿サンモールスタジオ

前売り:2800円 学生割:2300円(要学生証) 高校生以下:800円
 
リピーター:1500円/当日:3000円

ロ字ックHP  http://www.roji649.com/