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東京中心の演劇界に一石を投じる劇場が、愛媛県東温市にある。“奇跡の劇場”とよばれる「坊っちゃん劇場」だ。
ミュージカル役者の誕生するまちづくりを目指し、
2006年の『坊っちゃん!』を皮切りに『龍馬!』『鶴姫伝説』など、愛媛はもちろん、四国・瀬戸内地域に密着したテーマのミュージカルを、年間270回ほどのロングランで公演。毎年約8万人の観客を集め、地方都市の劇場としては異例の集客力を誇っている。第6作の『誓いのコイン』では昨年9月にロシア公演も実現させ、現在は日本初の産科女医・楠本イネをモチーフにした『幕末ガール』が好評上演中だ。

413日に始まる“奇想天外☆歌舞音曲劇(ミュージカル)”と冠した新作は、愛媛にゆかりの奇才・平賀源内が主人公の『げんない』。世界初の電気発生器・エレキテルを発明したものの、小さな火花では役に立たず、両国の見世物小屋でショウを始めた源内が、弟子や江戸で出会った人々と繰り広げる物語だ。作・作詞・演出は、『幕末ガール』でも手腕を発揮している扉座主宰の横内謙介。キャストは、源内に劇団民藝の神敏将、書生の吉次郎(のちの司馬江漢)に大沢健など、注目の俳優が、自分の夢を追い続けた人々の生き様に挑む。今回は隣県・香川の協力で、9月に高松公演も予定されている。

この制作発表2月上旬に都内で行われ、横内謙介、音楽の深沢桂子、振付のラッキィ池田、神敏将、大沢健、中村時広愛媛県知事、浜田恵造香川県知事、制作の笹本成子(わらび座)、越智陽一株式会社ジョイ・アート代表取締役、山川龍巳坊っちゃん劇場支配人が出席。それぞれから挨拶の後、質疑応答が行われた。会場には『幕末ガール』を連載中の漫画家・黒沢明世の姿もあった。

 

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【挨拶】
越智 坊っちゃん劇場は、瀬戸内や四国をテーマにした作品を作り、地域や観光客の皆様、次代を担う子供たちに見ていただこうと、日本で唯一、自主制作の作品を1年間やる劇場として7年前に開業しました。今回は、約300年前の天才・奇才、源内の前向きなエネルギーを、現代の人々、また愛媛・香川の子供たちに伝えていきたいと思っています。

笹本 平賀源内の名前が挙がった時、“100年早く生まれた人”“日本のダヴィンチ”と言われ、あまりにも多くのものを遺し、駆け抜けていった人からどんなメッセージを受け取ればいいのかと話し合い、真っ先に浮かんだのが「はやぶさ」の帰還でした。(帰還は)科学と研究の上に成り立っていますが、一番は、関係者の皆様の諦めない情熱だったと思います。志度浦という小さな町で、世界に羽ばたく夢をもつ源内は凄まじいですが、根っこには、人に幸せをもたらす喜びがあったと思います。源内を通じて、夢を実現する、諦めない情熱をもってやり続けることが未来を切り開くということを(テーマに)お願いしました。今回初めて舞台の中で(わらび座のある)秋田と四国が結びついたので、楽しみが一つ増えています。

横内 源内は香川の英雄で、リスペクトすべき人間ですが、言うほど簡単な人じゃないと思ってます。台本を書くのは“死者との対話”みたいなものですが、「お前、真面目にやるつもりじゃないだろうな」と、何度かささやいた気がするんです。源内は、両国の屁っぴり男を論文に書いた人。我々も、お芝居をするのは感動してもらいたい、ある人生に共感してもらいたいという思いはありますが、本に書けば済むことを、貴重な時間を劇場に座っていただくのは忍びない。なので、いかに通り一遍の偉人伝にしないか。身分を超えて自分を発見し、過去・今・未来を見渡し、源内はさらに国の将来を見据えましたが、そういう時代が日本にあったかもしれないということなら、演劇人にとっても描きがいがあります。今回はいい男がキャストにいるので、愛媛・香川の女性をきっちり熱狂させられたらいいなと思います(笑)。

深沢 長年ミュージカルの世界にいますが、おならの曲を書いたのは初めて(笑)。今回は奇想天外、摩訶不思議ということに尽きると思いますが、見世物小屋なので何をやってもOKという逆の発想からとらえ、とにかく世界中の音楽を取り入れながら、一本筋としてはミュージカルの王道を貫き、楽しい作品にできたらと考えています。坊っちゃん劇場では4作目。年間270ステージで、私の曲を1年間聞いてくださる方がいて、8万人の方に感動してもらっていると聞くと、これ以上のことはない。地方発のこのミュージカルが、いつか世界中に広がっていったらいいなと思います。

ラッキィ まだ深沢先生からその“おならの音”は届いていませんが、一生懸命振付したいと思います。本日は愛媛県の中村知事、香川県の浜田知事にお越しいただきましたが、“香川県はうどん県”という凄いキャッチコピーがありますね。冗談かなと思ったら結構本気で、“土用は丑の日”に近いものがある(笑)。「元は平賀源内?」と思うようなとてつもない発想が大好きで、それを見習いながら、横内さんと一緒で源内と話をしながら、これから曲をどう振付するか楽しみです。

CIMG7307神敏将
 奇想天外な、かなりエキセントリックな平賀源内という男を演じさせていただきます。劇団民藝の男がなんでここにいるのかというのが不思議ですが、民藝は大滝秀治という大黒柱を失い、劇団として正念場の年になると思います。その中であえて他流試合を挑み、劇団に違った風を持ち込もうという気持ちで、この役に挑ませていただこうと思いました。坊っちゃん劇場は、縁あって今回で3度目。僕は青森県弘前市出身ですが、なぜか四国とか西の方に縁ができ、愛媛は第二の故郷と言っても過言ではありません。源内がいろいろな種をまいて、小さなエレキテルの輝きを大きくしていったように、微力ながら何とか『げんない』を成功させて、今後の役者人生につなげていきたいと思います。


CIMG7346大沢健
大沢 吉次郎は源内の用心棒をやりながら役者をして、今のところ女形ということなので、ちゃんと成立するのかなと不安です(笑)。源内はかなりいろんなことに挑戦して、とてつもない発想をもった人で、吉次郎は源内のそういう部分を尊敬して、ずっとついていきました。僕も若い頃は何も考えずまっしぐらでしたが、年をとるにつれて、いろいろ考えすぎて保守的になっているので、源内の凄さに触れて、自分も吉次郎と重なると思います。今回はミュージカルですが、あまりやったことがなくて新たな挑戦。これだけ地方に長く滞在して同じ演劇をやるのも初めて、出演者もスタッフの方も初めてで、初めて尽くし。源内のような挑戦する精神を改めて呼び覚まして、素晴らしい舞台に立てるようにがんばりたいです。

中村 10年前のわらび座の『つばめ』がきっかけで坊っちゃん劇場が誕生し、8年間、本当に素晴らしい歴史を刻んでくれました。今回の『げんない』は、良き隣人、良きライバルの香川県とのコラボレーションで、それも面白い切り口になるのでは。“天下の自由人”源内にはとても生きにくかった時代、そこに立ち向かって自由奔放に生きたところに最大の魅力を感じます。今は当時よりよほど自由なのに、引きこもりや草食系男子など、自由を求めようとしない生き様が広がっているので、そこに喝を入れるメッセージを発していただけたらと期待しています。

浜田 源内さんは本当に奇想天外で、おそらく彼が生きていれば、自分の劇にこういうキャッチコピーを付けるかなというくらい、相当突き抜けた人。マルチなタレントをもった人が、鎖国の中で出現しているというのは驚くべき事実。これをどうやってミュージカルに仕立てるか、非常に興味深くお話をうかがいました。出演の皆様も含め、熱い思いを込めて作っていただけるので、非常にありがたいです。ちょっと毛色は違いますが金丸座があり、芸術は香川県もさかん。そこに坊っちゃん劇場のミュージカルが来てもらえると、相乗効果になると思います。

 

CIMG7273横内謙介

――この作品を源内の出身地・香川県で上演できることについていかがですか?

横内 地元の方がどう思われるかはさておき、源内は、僕のイメージでは“江戸っ子の始まり”みたいな気がしています。近松(門左衛門)が浄瑠璃で名を上げますが、浄瑠璃を初めて江戸弁で書いたのが源内で、それが今も歌舞伎で残っている。志度浦から出て見事に江戸の人間になり、江戸の文化を牽引した。地元からすると離れていった人かもしれませんが、離れていったからこそ大きくなった。両国の見世物小屋には讃岐の人も出てきますが、故郷を描くことよりも、当時の最先端を走っていた人間として描こうと思っています。ある意味、“凱旋”になるといいですね。故郷に錦を飾りたいという狂歌もひねっていますから、それをうまく吸ってあげられたら。

 

 

奇想天外☆歌舞音曲劇(ミュージカル)『げんない 平賀源内』
作・作詞・演出◇横内謙介
作曲◇深沢桂子
振付◇ラッキィ池田・彩木エリ
出演◇神敏将 大沢健 ほか
4/1320143月中旬予定◎坊っちゃん劇場
9/1021は出張公演としてアルファあなぶきホール(香川県県民ホール)
〈料金〉一般3,800円(前売り3,500円)(全席指定・税込)
高校2,600円(前売り2,300円)(全席指定・税込)
中学校以下2,100円(前売り1,800円)(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉坊っちゃん劇場 089-955-1174

 

【取材・文/塩田史子】

 

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