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9月には小劇場発としては異例の“夏のフェスティバル”「鬼(ハイパー)FES.2013」を主催。そして11月には自らが作・演出を担当するロ字ックの劇団公演と、振り幅の広い表現活動を展開する山田佳奈の考える、“演劇”とは?

もっとはっちゃけてもいいんじゃないかなと。


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──まず9月にある演劇フェスのお話から

音楽にはフェスという文化があって、毎年夏になるとあちこち全国50か所以上でフェスがあるんですって。音楽を聴いて見ず知らずの人と肩を並べて体を動か すというのは素晴らしい文化だなと思って。私はもともと音楽がすごく好きなので、演劇を今やっていて、演劇にはそこがないというか。個人個人のカルチャー になってしまっている感じがしていて、すごくさみしいなと思うんです。時には丁寧じゃなくてもいい、もっとはっちゃけてもいいんじゃないかなと。それで演 劇でフェスを企画したのがハイパーフェスの発端なんです。今年で4年目なんですけど最近では「夏といえば鬼フェスだよね、うちも出たいね」と言ってもらえ たりしてすごくうれしいことだなと思っています。今年は22団体参加で、3ステージ同時に、3日間やります。
──参加する劇団は3日間のうちで、1回きり30分だけやる?
贅沢ですよね。それを見逃しちゃったら次はいつ観られるの? ということですから。
──一人芝居などもありますね。
今注目されている若手団体、学生団体で鬼フェスに賛同してくれている人たちも選抜で出演していただくことになっています。

全部観ようと思ったらダメです、これ。

──観る人は大変ですね、全部見ようと思ったら。
イベントの取材でこんなこと言うのもなんですが、全部観ようと思ったらダメです、これ。フェスなので、朝から晩まで演劇観るってキツイですよ。なんですけど、やっぱり演劇好きな方は全部観たいとなるみたいで。ダメですよ!!フェスなんで(笑)。
──30分公演があって、インターバルがあって…
メインステージは30分あって、30分お休みして、30分あって…
――それがいくつですか?
それが一日5団体ですね。
──高校演劇の大会みたいですね。
その裏で一人芝居があったり、地下のエリアで学生団体がお芝居をしたりとか。フードエリアもあります。屋台も出るのでご飯も食べられます。さらに今年は整 体と占いもあるので、マッサージも受けられます! 物販エリアもあるのでお土産のことでも悩めます(笑)。 ひと会場でたくさんの夏が楽しめる、演劇の夏が楽しめます。
──商店街など地域も巻き込んでると書いてありますが。
会場になる風姿花伝さんが、「せっかくやるなら地域も巻き込んでやりたい」と言ってくださって。地元商店街の方々に呼びかけていただき、フードを出品していただいたりとか。

私は私のやり方で成長していきたいなと思います。

──どんどん広がっていくといいですね。賑わいもできて、商店街の皆さんにもいいだろうし。
演劇って閉鎖されたカルチャーだなと常々感じていて。きっと今ってそれだと生き残れない時代だと。他カルチャーの若い才能同志が何か新しいことを生み出さ なくちゃという時代になっていると思いますね。演劇って若い力が頑張っているとは思いますけど、どうしても先輩方が築いたもともとあるフォーマットに則っ てでしか、大きく動けていない気がしていて。もっと探せばいろいろあるんじゃないかなと思うんです。なので私は私のやり方で別の文化、音楽や映画と一緒に 成長していきたいなと思います。
──私は私のやり方というのがいいですね。そこからしかそれぞれの文化は始まらないですもんね。
演劇と いうものが、世の中にもっと馴染めばいいなと思いますね。優等生の文化でもなんでもないし。それがなんだかお堅い文化というか、襟を正してしっかり劇場に 向かわなきゃいけないと思っている人のほうが多い気がして。別にTシャツ短パンでもいいのになって。でもきっとそういうイメージにしちゃってるのは私たち なのかなと。
──もっと気軽に、というのはありますよね。
今難しいですよね。小劇場の団体が旗を振ったところでというのはあるので、やっぱり絶対数集めていかないといけないんだなという。圧倒的な支持がないと何かことを起こそうとするときに山本太郎にはなれないというか(笑)。
──でも山本太郎も最初は個で始まったんですよね。自分のやりたいことをやっていく以外に広がっていく術はないかもしれないですね。
残していくのは大変な作業ですよね。つくるのはわりと簡単なんですけど、残すというのがね。

スーパーマーケットの、ど深夜が好き

文字とロック

──11月の本公演『退カヌコビヌカエリミヌヌ』ですが。これは今までの作品のテイストとは少し変わるようですが?
今回はスーパーを描きたくて。今、食にすごく興味があるんです。私、個人的にスーパー行くのが好きなんです。とくに深夜のスーパー。お客さんがほとんどい ないようなスーパーで、何もかもに半額、20%、30%オフのシールが貼ってあるような、ど深夜が好き。そのスーパーに行ったときに、野菜、お肉、魚、レ トルトだったりが棚ごとに陳列されていて、食品が部類分けされているのはすごいことだなとあるタイミングで思って。でもこの食品たちには数字のつけられた 時期には捨てられちゃうんだなというのがすごいアイロニーだなと。そこで買われなきゃいけない。でも食品だからもちろん死んでるものというか、息をしてな いものだから、アピールする、自分を買ってもらうことを主張することもなく、ただただ買われるのを待っていて、数字までの時期に自分の運命が変わるのはす ごいなと思って。まずそこに興味があって。単純に好きから興味になって。そうなってくると、スーパーのいろんなことに目がいくようになるんですね。スー パーの働いている人がどういうふうに生活をしているんだろうとか、いろいろ興味が出たときに、ひとつ気づいたのは、たとえばうちの近所のスーパーだとした ら、私が住んでいる距離にしかその人たちは住んでないんだなと。スーパーって地域ごとにあるものじゃないですか。だからそこに働くために通うとなると、千 葉県とかから来ない。社員さんなら別かもしれないけど。パートやバイトだったら近所に住んでいる。何で働いている若い人たちは、大学生だったらまだわかる けど、わざわざスーパー選んだんだろうと。もっといろいろあるだろうに。もしかしたら彼らは、自分の生活する半径何メートル以内での生活を求めてるからこ そスーパーを選んだのかもしれないと思ったときに、その人たちのその場所でしか生きられない悲しさというか。そこに根付いた、固執する意思みたいなものを 描きたかったんですよね。なんでそこに固執するんだろうと。
──それはご自分の中ではある程度答えが出てるんですか。
ある程度筆を進めると、自分なりの答えというのは出るんじゃないかと。だから現状まだ答えは出せてないですね。ただ、今考えている話の中で言えるのは、そこの地域でしか生きられないということは、自分を守る作業と、自分が守れなかったときの脆さがすごいんだろうなと。
「棄民」という言葉があって。大きな組織から逸脱した人たち。ある意味の社会から脱落した人たち。そういう言葉もキーワードかなと思います。
──私も山田さんも危ないところですよね。
やばいですよね(笑)。だからこそ書けるんだと思いますけど。年代によってだったり、身分によっても絶対変わるはずなんです。

スーパーの陳列棚のように、町を描きたい

──前作よりもイメージとしては地味な話になりそうですね。
前がデリヘルの話でしたからね。でも私は毎回書く前にウキウキするというか、「これいいぞ!」という感じになるんですけど、今回もその感じはすごくあるん ですよ。というよりも、どこの地域も人も関係性も、話を作る上で基になりそうな場所はいっぱいあるわけで。今作に関して言えば、スーパーで働く主婦や社員 のコミュニティのあり方とか、地域の中学生・高校生から育って、その地域でしか育てなかった同級生同士の嫌な感じのさぐり合いとか。それがひとつのスー パーの中で全部うごめいているとなったら、これは絶対わたしにとっては物語にしかならなくて。それが本になったらものすごいことになるんじゃないかなと思 うんです。やっぱり人間関係が一番のドラマだから。私はそういうのに興味があるし。前回はデリヘル嬢の楽屋という聞いただけで何かが起こりそうな要素で組 み立てましたけど、ただ描いているのは誰しもに通用する、人間が生きていく上での葛藤や切なさとか、愛しくなるような部分しか書いてないですから。入り口 の足場が低いか高いかだけで、やることは一緒だったり。逆に超えやすいというか、入り口の足場が低くなっただけで、入ってみたら前作よりもきつい部分もあ るかもしれないですね。身近すぎちゃうから。
──身近な世界をどうやってエンタテイメントにするのか、とても興味があります。
けっこう 俗的な話をずっと書いてきたので、今回もたぶん私が書くのでそういう要素はきっと出てきてしまうと思うし、きっと生きていくための目線という部分では描き 方はブレていないんですけど、でもそこが話の中心部じゃないというか。第二次興味(?)みたいなものに向かった感じがしています。
別に場所は スーパーでなくてもいい話にはなると思うんですけど。スーパーの陳列棚のように、町を描きたいんです。町は番地ごとに家が区分けされてますよね。あの感じ がすごくスーパーに似ている。スーパーからの町を描きたい。前回はデリヘルからの駅、人が一番乗り入れする電車を描いたので、今回もそういう部分で描きた い。まだどうなるかわからないですけどね。

音楽企画集団「THEラブ人間」が新曲を書き下ろす


──この公演では、気鋭の音楽企画集団とのコラボレーション企画があるようですが。
そ うなんです。今回THEラブ人間というバンドさんとコラボレーションすることになっているんです。以前『鳥取イヴサンローラン』を下北沢で上演した際に、 メンバーが観にきてくれたことがきっかけで仲良くなって。一緒に何かやりたいね、なんて話をずっとしていて今回念願叶いました。新曲もこの公演のために書 き下ろしてもらうことになっているので、わたしがいちばん楽しみです。きっと(笑)。

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THEラブ人間 http://loveningen.jp/


山田佳奈
山田新

やまだかな〇東京を中心に活動している劇団ロ字ックの作家・演出・役者。
2012年SSTV内「ナンダコーレ」にて企画映像を制作、吉本神保町花月での舞台脚本の提供やTHEラブ人間主催「下北沢にて2012」出演など、演劇界隈以外からのラブコールも多く、若手女性脚本家としての評価も高い。 「人間の本能・性質・悪意を独特のロッキントークでポップに描く(劇団HPより)」。9月には演劇だけでなく、音楽やお 笑いファンなどを巻き込んだ夏フェス「鬼 (ハイパー)FES,2013」プロデュース。そして待望の本公演「退カヌコビヌカエリミヌヌ」を予定している。ウェブ・マガジン日刊☆えんぶで小説「煩悩サンスクリット」を連載中。


ロ字ック×風姿花伝10周年プロジェクト
『鬼(ハイパー)FES.2013』

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●9月14日(土)〜16日(祝・月)◎シアター風姿花伝
22出演団体参加の今夏最大の演劇フェスです。


ロ字ック公演『退カヌコビヌカエリミヌヌ』
文字とロック
作・演出:山田佳奈
出演:小野寺ずる 川原真衣 日高ボブ美 山田佳奈 ほか
●11月2日(土)〜10日(日)◎サンモールスタジオ
ロ字ック
http://www.roji649.com/


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