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虚実ないまぜの駆け引きが生む、男女の愛憎劇── 
名声を得ようともくろむ1人の青年と、人気に翳りの出た美貌の大女優との関係を軸に繰り広げられる人間ドラマ、『渇いた太陽』が12月に上演される。
この作品の原作は、『ガラスの動物園』や『欲望という名の電車』などでお馴染みのテネシー・ウィリアムズが59年に書き下ろしたもの。映画にもなって、世界的にヒットした小説である。
往年の大女優アレクサンドラ役を演じるのは、60年近いキャリアを誇る今も、第一線で活躍する浅丘ルリ子。この作品について語るその姿は、新たな挑戦を続ける意欲と輝きに満ちている。
演劇ぶっく12月号に掲載のスペシャルインタビューを、いち早くこのコーナーでお届けします!



テネシー・ウィリアムズは俳優の精神にまで影響する

──最近も『三谷版 桜の園』(12年)をはじめ、たくさんの舞台に出ていらっしゃいますが、テネシー・ウィリアムズの作品は?
蜷川(幸雄)さんの『欲望という名の市電』(88年)で一度経験しています。これまで泉鏡花からチェーホフまで、いろいろな作家の戯曲を演じてきましたが、本当はシェイクスピアとチェーホフとテネシー・ウィリアムズはあまり好きではないんです(笑)。なぜなら台詞が多くて、それに、もって回った言い方とか”たとえ”が多いでしょう? チェーホフは、三谷(幸喜)さんに引っ張り出されて、結局は楽しかったんですけど(笑)。でも今回のテネシー・ウィリアムズは、役に入り込めば入り込むほど役者の内面までおかしくなる作家で、『欲望という名の市電』のときは、38度の熱が10日間くらい下がらなくて、蜷川さん「これ以上続けると私、死ぬわ」と言ったら、「いいですよ。僕も一緒に死んであげます」とおっしゃって(笑)。それを聞いたら、次の日、熱がコロっと下がりました(笑)。でも似たようなエピソードをあちこちで聞きますから、役者の身体や精神に影響力の強い作家なのでしょうね。
──演じられるアレクサンドラ役についてのイメージは?
すごくエキセントリックな女性だと思います。いつもウォッカを飲んで酔っぱらっている(笑)。彼女の台詞の中に出てくる名詞が、すごく言いにくいものが多くて、「トラベラーズ・チェック」とか「アドレナリン」とか、そもそも「アレクサンドラ・デル・ラーゴ」っていう自分の名前も言いにくいんです(笑)。でも、酔っぱらっているシーンが多いので、ちょっとろれつが回らないくらいで、ちょうどいいかもしれませんね(笑)。
──浅丘さんはすごく華奢なのに声がすごく通って、滑舌も美しいですね。
でも今回は、ちょっと自分を崩してみようと思っているんです。いつもどおり滑舌よく綺麗に声を張るようなやり方は、役にそぐわないと思うので、少ししゃがれ声にするとか、低くするとか、繰り返して言うとか、咳を入れるとか、いろいろ工夫をしたいなと思っています。それでも、台詞はきちんと聞かせるものだということが、体に染み込んでいるので、つい張ってしまうかもしれませんが(笑)。


上川さんは、動きも声も滑舌も素晴らしい!

──アレクサンドラは美貌に衰えがきている女優という設定ですが、演技プランはどんなふうに?
気が強くてちょっとあばずれっぽい、そして、だらしなさを出したいのですが、そこがすごく難しいですね。私はなんでもハッキリ、シャッキリ、くっきりでないと嫌な性格なので(笑)。対照的な彼女を演じるには、きちんと“芝居”として作っていくことが必要で、声以外でも、たとえば寝方や体の崩し方、薬の飲み方など仕草で工夫しながらと思っています。ただ、お芝居は相手の出方でも変わりますからね。今回は、チャンス役の上川(隆也)さんと2人だけの場面が55ページもあるんです。こんな台本、初めて(笑)。
──上川さんとは舞台では初共演ですね。
テレビでは市川崑さんのドラマ、『逃亡』(02年)で一度共演しているのですが、ほとんど一緒のシーンはなかったんです。でも、テレビドラマの『大地の子』(95年)も拝見していますし、先日も、主演した舞台『真田十勇士』を観に伺いました。もう、素晴らしく良くて! 動きも声も、滑舌も素晴らしいなと! 決してオーバーな芝居はなさらないし、とても心地がいいんですよね。「この人とご一緒できるんだわ、嬉しいな」と思いながら楽屋へ伺ったら、着替えて出ていらした姿があまりにも普通の方で、「上川さん?」と思わず確かめてしまいました(笑)。
──いい意味でふだんは役者さんらしさを出さない方ですね。
ふだんはどうでもいいんですよね。舞台であれだけ華やかで魅力的になれれば。それに、あれだけ存在感を出せるということは、奥底に本当にたくさんのものを持ってらっしゃるのだと思います。

年齢を重ねても輝きを求めて生きていく

──作品テーマについてはどんなことを感じられますか?
なかなか深い話ですよね。誰にでも言えることですが、若さはお金では買えないんです。でも、この作品には、時が経って年齢を重ねていくことの残酷さも描かれていますが、それでもなお輝きを求めて生きていく、そういう人間の姿とか、生命力も描かれているように思えます。
──そういうエネルギーは、浅丘さんは強烈に持っていらっしゃるなと。
そうかもしれませんね。私、気力があるんです。たとえどんなに疲れても、気力、パワーはなくならないんです。年を重ねるということも全く気にならないし、気にしていません。さすがに台詞覚えが悪くなっていて、それは仕方がないのですが(笑)。手も足もどこも悪くないし、ストレッチをしているので体は柔らかくて、だから怪我もしないし。「本当に私、この年齢?」と、自分で思うくらいなので(笑)。
──そういう点でもこの役は浅丘さんしかできない役ですね。そして今回は、声や演技なども含め、”新しい浅丘ルリ子”の可能性に挑戦されているのを感じます。
そう考えています。どんなふうに演技しても成立すると思っていますし、上川さんが相手なので、どう出てもちゃんと受け止めてくださると思っています。これまでの芝居の癖とか、やりやすい方法というのはどうしても出てしまうかもしれませんが、できるだけ今までの私とは違った表現の可能性を探ってみたいんです。ですから1日も早く、上川さんと稽古場で向き合いたいですね。



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あさおかるりこ○満州国新京(現長春)出身。55年『緑はるかに』で銀幕デビュー後、『戦争と平和』、『男はつらいよ』シリーズなど150本以上の映画に出演。またテレビドラマや、『恐怖時代』、『墨東奇譚』、『夜叉ヶ池』、『鶴屋南北悪の華』など数々の舞台でも確かな演技力と独自の存在感を見せつけている。紫綬褒章、旭日小綬章など受賞多数。



チラシ のコピー
『渇いた太陽』
作◇テネシー・ウィリアムズ
演出◇深作健太
出演◇浅丘ルリ子/上川隆也 貴城けい 川久保拓司 内田亜希子 後藤光利 井坂俊哉 渡辺哲
12/21〜29◎日比谷シアタークリエ
<お問い合わせ>
サンライズプロモーション東京 0570-00-3337
http://www.ntv.co.jp/kawaitataiyou/

【文◇塩田史子 撮影◇岩田えり】


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