観劇予報 : 舞台裏のスタッフが大活躍！『BACK STAGE』相葉裕樹・池田鉄洋インタビュー

スタッフさんは俳優よりカッコいい！

舞台裏で働くスタッフたち、その姿にスポットをあてた舞台『BACK STAGE』が、6月にシアタークリエで上演される。
脚本・演出は、コントユニット「表現・さわやか」の主宰であり、個性派俳優の池田鉄洋。そして楽屋裏のキーパーソン、舞台監督を演じるのは人気若手男優の相葉裕樹。公演中の舞台上で主演女優に何かが取り憑いて芝居はめちゃくちゃ。だが「ショー・マスト・ゴー・オン！」、スタッフたちが持てるスキルと勇気で立ち上がる。
このエキサイティングなコメディについて、相葉裕樹と池田鉄洋に語り合ってもらった本誌インタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

二度と舞台を止めたくないという舞台監督

——池田さんがこの作品を書こうと思ったのは、どんな動機から？

池田　僕は作･演出もやっているので、ツアーなども含めてスタッフさんたちと一緒に行動することが多いんです。それで搬入とか搬出とか見ていると、なんか俳優よりカッコいいよなと。ドラマの撮影現場でもいちばんモテるのは照明さんだったりするので。でも、そのカッコよさをドキュメントとして作るのは俺の役割りではないなと。だったらスタッフが活躍する話をカッコいい俳優さんに演じてもらったら、すごくカッコいい話になるのではと思ったんです。

——確かにスタッフ役はカッコいい俳優さんばかりですね。

池田　なかでもいちばんカッコいい舞台監督の役を、相葉くんにやっていただこうと。でも普通にカッコいいだけでは面白くないので、前半、舞台がひっちゃかめっちゃかに荒れていく。でもなんとか続けたい。そこから大活躍するんです。

——舞台というのは、始まったら止められませんよね。

池田　でも僕も経験があるんですが、止まることもあるんです（笑）。まあ、滅多にないことですが。今回相葉さんがやる舞台監督は、あの3・11で本番中の舞台が止まってしまって、「僕は二度と舞台を止めたくないんだ」というポリシーを持っているんです。

相葉　舞台監督は、舞台を止める止めないの権限を持っているのですか？

池田　今は変わってきている部分もありますけど、昔は舞台監督が絶対でした。それを今回は若い俳優さんにやってもらうというのが面白いのではないかと。

——相葉さんは信念がありそうな感じでぴったりですね。

池田　でもさっき聞いたら、カッコいい役より、いじられ役をやりたいそうで（笑）。

相葉　そうなんです。せっかくコメディなので、カッコいいだけじゃないのをやりたいんですよね。

池田　大丈夫です。カッコいいだけじゃないので。

役者より寝てなくて何倍もたいへん！

——この役に決まってから舞台監督さんが気になるのでは？

相葉　やっぱり見てしまいますね。けっこういろいろなタイプの方がいて、サウンドチェックのとき、「歌います」といって熱唱してくれた人もいて（笑）。それは前の晩にみんなで飲みにいった流れだったんですけど（笑）。観察するようになって思ったのですが、演者の何倍もたいへんかなと。

池田　比べられる仕事内容ではないけれど、寝てないと言えばスタッフさんのほうが寝ていないでしょうね。

相葉　打ち上げでも演者は先に集まっていたりしますけど、スタッフさんたちは舞台をバラしてから駆けつけてくるので、終わる寸前にやっと顔を見せて、ちょっと飲んでみたいな感じで、なんか申し訳なくなりますね。

——好きでないとできない仕事ですね。

池田　いい作品を作りたいという意識を持っている方でないとつとまらないですよね。スタッフさんたちの愛情がなければ無事に千秋楽を迎えられないと思います。

——舞台の生命線ですね。今回はその方たちが主役で、素敵ですね。

池田　演劇の表しか見たことのないお客様に、ぜひ裏を見ていただきたくて、そこにカッコいい相葉裕樹の力を借りたいわけです（笑）。

相葉　重要な役目ですね（笑）。でも、生き様というか、スタッフさんの熱さが出ればいいなと。どうにか舞台を成功させたいという必死さを出せれば。

池田　役者としてカッコいい人は沢山いると思うんですけど、相葉くんなら、わかりやすい「決まったぜ」ではないカッコよさをわかってくれると思ったし、任せられるなと。裏方のカッコよさは、そうそう簡単には出せないので。

相葉　今言っていただいたことを、全部ちゃんと打ち返していきたいですね。食らいついていきたい。できないとは言いたくないので。

池田　役者のかっこよさはそこですよね。できないと絶対に言わない。

吉本の芸人さんに突っ込んでました！

——相葉さんは池田さんに会う前は、どんなイメージがありましたか？

相葉　強烈な個性の俳優さんというイメージでした。

池田　やなヤツだと思われることが多いんです（笑）。役がそういう役が多いし、変わった人間に見られるんです（笑）。

相葉　実際にお会いするとまろやかというか（笑）、優しさが滲み出てます。

池田　多少は世間に揉まれてまろやかさが出てきたのでしょうか（笑）。

——ユニットではコント集をやっていますが、コメディがお好きなんですね？

池田　大好きです。コメディで育ってきたのでコメディしか書いてません（笑）。シアタークリエのお客さんが戸惑ったり、相葉くんのお客さんたちがびっくりしないかと心配してます（笑）。

相葉　実は僕もコメディが好きなんです。２月に神保町花月の公演に出て、吉本の芸人さんに突っ込んでました。

池田　それは恐いな（笑）！

相葉　恐いですよ。台本があってもまったくその通りにいかないし、全然進まなくて（笑）。話がどんどんそれていくのを僕が本線に戻すという。今、なんの話をしてたのかなというときもけっこうあって。勉強になりました。

——お客さんがどっかんどっかん笑ってくれそうですね？

相葉　それが楽しいんです（笑）。

池田　素晴らしい！

相葉　年１本はコメディをやりたいなと思ってて。

池田　頼もしい。コメディが好きって大事ですよね。たまに「コメディってこうでしょ」みたいに手を抜く俳優さんもいますが（笑）、勘弁してって思います。コメディを好きな人はすべてに対して手を抜かない。すごい現場で揉まれてきたんですね。嬉しいなあ！（笑）。

本データ9749s のコピー

——池田さんはなぜコメディが好きなのですか？

池田　重い話になりますよ、いいですか（笑）。家庭環境が複雑で笑いに救われたんです。「ひょうきん族」とかドリフとか、海外でいうと『裸のガンを持つ男』とか。母も亡くなる前は綾小路きみまろさんばかり見てました。

相葉　僕もよくお笑いのDVDとか録画とか見てます。共演するとファンになるし、2月にやった舞台でシソンヌさんも面白くて。

池田　ああ、面白いですね。でも芸人さんと一緒にいると、どう接していいか悩むんですよね。

相葉　わかります。居方が難しいというか、「あれ、俺どっちの立場で？」みたいな。

池田　俳優でしょ！（笑）。

相葉　そうなんですけど、芸人さんたちの空気感が大好きなんで、そっちにいっちゃうんです（笑）。乗りたいし突っ込まれたい（笑）。すごいカッコいいと思うんですよね。

——そういう笑いのセンスは今回生きますね。

相葉　新たな一面が出せそうです（笑）。

池田　シアタークリエのラインナップのなかでも異色でユニークな舞台になりますからね。楽しみにしていてください。

あいばひろき（左）○87年生まれ、千葉県出身。05年、ミュージカル『テニスの王子様』の不二周助役を機に本格的に俳優活動を始め、TVドラマなど多岐にわたって活躍中。最近の主な出演作品は、映画『王様とボク』『闇金ウシジマくんPart2』、舞台『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『3150万秒と、少し』『SEMINAR―セミナー―』『ちぬの誓い』、2015年上演のミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール籠の中の道化たち（日生劇場）』に出演。

いけだてつひろ（右）○70年生まれ、東京都出身。劇団「猫のホテル」に20年間所属し12年に退団。舞台、映像で俳優として活躍。また、コントユニット「表現さわやか」を主宰し、脚本・演出も手がける。主な出演作品は、TVドラマ『トリック』『医龍』、映画『トリック』『サラリーマンNEO』『大奥～永遠～』『サンゴレンジャー』『行け！男子高校演劇部』（脚本・出演）、舞台『4 four』『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』『IZO』『悪魔の唄』『労働者Ｍ』など。

0000000044882

『BACK STAGE』