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トム・プロジェクトがプロデュースする作品の好評再々演が、ただいま上演中である。(東京公演は終了。8月20日〜30日演劇鑑賞会公演、9月に九州公演あり)
 

作品は『エル・スール〜わが心の博多、そして西鉄ライオンズ〜』。作・演出は劇団桟敷童子の東憲司で、博多の町にある長屋を舞台に、西鉄ライオンズの選手を目指している少年と、彼を取り巻く人間模様を描く、昭和の色濃いヒューマンドラマである。
 

この作品で、娼婦のユカリを演じているのが、昨年度の紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した林田麻里。演技力とたおやかで美しい姿で、数々の話題作に出演してきた実力派の女優である。今回は初めて参加する東憲司作品で、その力をどう発揮してみせるか、期待は大きい。

 

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さまざまな人間の心を1つにした伝説の球団

 

──たいへん評判の高い作品に初参加されるわけですが、林田さんの故郷、福岡を題材にしてあるのですね。

そうなんです。しかも私が演じるユカリは、大牟田に住んでいたという役で、とてもご縁を感じます。初演も再演も残念ながら劇場では拝見していないのですが、最初に台本を読んだときに、東憲司さんならではのエネルギーを感じました。たった5人しか出ていないのに、いろいろな層の人たちや当時の状況が描き込まれていて、その時代と土地、背景をしっかり背負った人ばかり登場するお芝居だなと思いました。

──5人のキャストのうち、たかお鷹さん、松金よね子さん、,清水伸さんが初演からで、林田さんと岩井七世さんが初参加ですね。

顔合わせの初日に本読みがあったのですが、すでにしっかり世界観ができていました。ここに付いていきたい、この世界観に入っていきたいという思いとともに、自分ができることはなんだろうとか、いろいろ考えました。とにかく今の自分にできることは、素直に心を開いていく、それしかないと思いました。

──この作品は、副題になっている西鉄ライオンズや選手への、東さんのオマージュが描き込まれていますが、林田さんにとって西鉄ライオンズというのは?

私はあまり野球に詳しくないうえに、時代的にはホークスが活躍していたので、ライオンズといえば西武のイメージなんです。でも、祖母や母はその時代の人間なので、きっと懐かしく思ってもらえるのではないかと思います。

──強くて豪快で、野武士球団と言われた伝説のチームなんですよね。

すごく福岡感があるチームだったみたいですね。巨人に代表される東京への対向意識というか、地元意識をすごくかき立てる存在だったんだろうと思います。この物語のなかでも、それぞれ背景を持って生きている人たちが、野球の時だけものすごく熱くなって一体感を持つんです。スポーツって、そういうふうに人の心を1つにする力を持っているんだなと思います。

 

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キャストもスタッフも福岡人が多い座組

 

──林田さんが演じるユカリは、初演で高橋由美子さん、再演で冨樫真さんが演じた重要な役ですね。

赤線で働いている娼婦なのですが、売春禁止法が制定されて居場所をなくすという状況になります。ユカリは炭鉱で好きな男を亡くしているのですが、当時起きた三池争議の話なども出てきます。私は大牟田出身ですから三池炭鉱は地元で、今までも何度か作品でも携わったことがありますし、今回もこの作品のためにいろいろ調べたりしているのですが、知れば知るほどいろいろな思いを感じます。

──東憲司さんらしい作品ですね。林田さんは東作品は初めてだそうですが、東さんの作品にはどんな印象を持っていますか?

とにかくエネルギッシュですよね。生命力溢れる、地に足が着いた人たちを描いているなと。貧しかったり辛い状況にいながらも力強いし、やはり昭和のイメージをすごく感じます。

──同じ九州出身ということで、故郷の話など出ましたか?

顔合わせの日に全員で食事に行きまして、そのときに初めて皆さんとちゃんとお話したのですが、東さんだけでなく、たかお鷹さんは大牟田出身の先輩で、トム・プロジェクトの岡田潔社長も博多の方で、これだけ福岡人が多い座組もそうはないんじゃないかと(笑)。福岡話で盛り上がっていますし、劇中の言葉もそうですけど、稽古場でも福岡弁ばかりです(笑)。

──九州、とくに福岡にはいわばラテン系のような明るさとエネルギーがありますね。林田さんもすごく素直で明るくて。

この性格は福岡だからで、ほかの地方で生まれたらこうなっていないという自覚があります(笑)。5月にシアターコクーンで上演された赤堀雅秋さんの『殺風景』という作品で、私は大牟田弁の指導でお手伝いしたのですが、赤堀さんが実際に大牟田に行きたいというので、ご案内したんです。三池炭鉱のことも書くというので、いろいろなところを見て歩いたのですが、赤堀さんがおっしゃるには、「とにかく人がいい」と。そんなに人がいいと言ってもらえるようなエピソードがあったとも思えないのですが、しきりにそれをおっしゃって、稽古場でもまた、みんなにそのことを言って。私にはいつもと同じで、普通にしか思えなかったのですが(笑)。でも、とても嬉しかったです。

──福岡のかたは血が熱いという気がします。歴史的にも地理的にも人や物が流れ込んでくるので、開放的というか。 
嘘か本当か知りませんけど、博多は「新しもの」や人を受け入れるのがうまい文化だそうです。でもそのぶんすぐ飽きるそうなんですけど(笑)。

 

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初舞台を踏んだ大牟田の文化会館で

  

──昨年の紀伊國屋演劇賞受賞以来、ますます充実していて、15年間女優を続けてきたことが、一気に花開いている感じですね。

私は劇団にも入っていませんし、いまだにどこか根無し草みたいな感じがあるんです。演劇科出身の舞台畑で、踏んだ舞台の数は多かったのですが、東京に来た当初は映像メインでやっていて、でも映像のほうでは舞台の人だと思われて、舞台に行くと映像の人だと思われて、ジャンルとしてもすごく自分が中途半端な感じがありました。14年前、福岡から東京に移ってきたときも、ゼロからのスタートでしたが、いろいろな方たちと繋がりが生まれて、そのおかげでだんだんお仕事も広がって、というなかでの受賞でした。想像もしなかったことで嬉しいけれどそれ以上に驚きました。腐らずに真摯にやっていると、見てくれている人がいてチャンスをくださるんだなと。その方たちのご縁で今の私があるので、受賞したことで、そういう方々にお礼を言える機会をもらえたことが、何より嬉しかったです。

──3月に出演したTRASH MASTERS の『虚像の礎』も話題作で、高い評価を受けました。

TRASH MASTERSは私にとってホームみたいな感じで、気を使わずにものが作れる仲間がいるのは、本当にありがたいなと思います。今回の東さんの作品とは、まだ共通言語がないのですが、だから難しいというのではなく、逆に初めての出会いだからこそ面白いなと。周りの方々からいろいろ吸収したいし、そのうえで私が出せるものがあるといいなと思っているんです。

──林田さんは、本当にまじめな女優さんですね。

そんな(笑)。でも、やっぱり芝居をしているときが一番私らしいんです。小さいときから女優になることしか考えてなかったので(笑)。

──今回は大牟田でもこの作品を上演するそうですが、演劇少女が故郷に錦を飾るわけですね。

はい(笑)。初舞台を踏んだ大牟田文化会館に、この作品を持って帰ります。これまで福岡の作品に呼んでいただいて出たことはありましたが、東京で公演したものを大牟田に持っていくのは初めてです。このあと、また大牟田に作品を持っていける機会はあるかどうかわからないので、そういう意味でも、地元の方々に喜んでいただける良い機会を作っていただいたと感謝しています。

──確か、おばあさまも元気でいらっしゃるんですよね。福岡の話ですから楽しみにしているでしょうね。

まだあまり内容は言わずにいるんです。観て、びっくりして喜んでほしいので(笑)。
 

 

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はやしだまり○福岡県出身。最近の主な出演作品は、映画『桜並木の満開の下に』『アキレスと亀』『R100』、ドラマ『相棒』『明日、ママがいない』、舞台『来訪者』『極東の地、西の果て』『虚像の礎』(いずれもTRASH MASTERS)。このあとの予定は、映画『小川町セレナーデ』(2014初秋公開予定)『シャンティ・デイズ365日、幸せな呼吸』(2014年公開予定)。

 

〈公演情報〉

宣材㈰(セピア)

トム・プロジェクト プロデュース

『エル・スール〜わが心の博多、そして西鉄ライオンズ〜』

作・演出◇東憲司  

出演◇たかお鷹 松金よね子 林田麻里 岩井七世 清水伸

公演スケジュール
※東京公演は終了 

8月20日 新潟演劇鑑賞会 芸術文化会館 025-223-1444

8月21日 本庄虹の演劇鑑賞会 本庄市民文化会館 0495-71-7456

8月22、23日 前橋労演 前橋市民文化会館小ホール 027-232-2863

8月26日 宇都宮演劇鑑賞会 宇都宮市民文化会館小ホール 028-633-7646

8月27日 高崎演劇鑑賞会 高崎市文化会館 027-323-0955

8月28日 いせさき演劇鑑賞会 伊勢崎市文化会館小ホール 0270-23-5100
8月29日 熊谷虹の演劇鑑賞会 熊谷文化センター 048-527-4305

8月30日 深谷虹の演劇鑑賞会 深谷市民文化会館 048-573-2282


以上は演劇鑑賞会の公演なので、会員のみご覧になれます。

9月5日◎福岡県北九州市黒崎ひびしんホール 093-621-4566
9月7日◎福岡県大牟田市大牟田文化会館 0944-55-3131
〈問合わせ〉 トム・プロジェクト 03-5371-1153  

http://www.tomproject.com/



 
【取材・文/榊原和子 撮影/アラカワヤスコ】

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