カムカムミニキーナの新作『Ｇ（ギガ）海峡』が、11月７日に座・高円寺で初日を開ける。（16日まで。大阪公演もあり）
疾走感と荒唐無稽に広がる世界、どこまで連れていかれるか予想もつかないのが、カムカムの舞台の面白さ。今回は劇団メンバーに加えて２人の若手俳優が客演する。
１人は映像や舞台で活躍、NHK大河ドラマの『軍師官兵衛』にも出演中という武田航平で、松村作品の『詭弁・走れメロス』や『有頂天家族』に出演、大きな存在感を示した。もう１人はドラマ『S〜最後の警官〜』『花咲舞が黙っていない』などに出演、舞台は『テニスの王子様』以来８年ぶりという夕輝壽太で、今回初めて松村武ワールドに挑む。
彼らが生きるという１万年前の縄文の時代とは？ そして環太平洋を結ぶ連環のなかに浮かび上がるスピリットとは？
この舞台について語り合ってくれた演劇ぶっく12月号の鼎談を、誌面より先取りしてお届けする。
武田航平・松村武・夕輝壽太
浅草と南米、ルーツが決め手？
──武田さんは３度目の松村作品ですね。
武田 今回は非常にメッセージが大きいというか、テーマの大きさに責任を感じています。僕らが生きている世界で意外と見失いがちになっていること、とくに僕らの世代やそれに近い世代が鈍感になっていることがたくさん詰まっていて、それをちゃんと伝えなくてはと思っているので。
──夕輝さんは、舞台は８年ぶりだそうですが？
夕輝 出たいなとずっと思っていて、今回はワークショップがあったので参加させていただきました。
松村 いつものカムカムのワークショップは演劇初心者がメインなんですが、今回は事務所や劇団に所属していて、なかなか出会わない種類の役者さんと出会うために、１日だけワークショップをやったんです。壽太くんに会ったとき、今回の作品にぴったりだなと。（武田）航平は出てくれた2作がすごくハードな舞台で、最初から最後までしゃべってるし、体力もすごくいるという。でもその作り方に付いてきて、ちゃんと結果も出したからね。あと、僕が一番信頼しているところは浅草っ子ということで、浅草そのもの（笑）。
武田 え、そのもの？（笑）。
松村 義理人情の人でしっかりした根っこがある。服とかダラッとしてるけど（笑）、中身はキリッとしてる。
縄文人の「争わない」という概念
──今回の「縄文」という発想はどこから？
松村 縄文人、つまり稲作以前の日本人が持っていて、今も持ち続けている概念に焦点を当てたかったんです。縄文人には「争わない」という遺伝子があって、農耕民族が渡来してきたとき、「あっち行こうぜ」とどんどん逃げていく。その一部がベーリング海峡を渡り、アメリカ大陸に入ってネイティブアメリカンになった。ネイティブアメリカンの憲法というか掟は、徹底的な話し合いなんです。それをもとにワシントン大統領がアメリカ憲法を作ったという説もあって、だとすると、日本の平和憲法はアメリカが作ったものですよね。つまり縄文の概念が環太平洋を回って戻ってきた。しかも縄文時代って同じ価値観で一万年続いたんです。そのあとはたかだか三千年ぐらいでしょう。一万年続いた文明の方が上ですよ。それはすごいことだと思うんです。
──武田さんや夕輝さんはどんな形で出てくるのですか。
松村 それぞれ縄文時代の人であり現代人であり、そういう概念を表わす人になります。航平は、先ほども言ったように浅草生まれで、下町の義理人情って、あまり争わなくて、まあまあまあと自分は引く。寅さんとか「あんたのおかげだよ」と言われる前に消える。そういう心意気が航平にはあるので。壽太はハーフだと聞いていて、会ってみたら南米みたいで。
夕輝 ブラジルとのハーフなんです。運命を感じたのが、あらすじを読んだら、南米の青年が出てくるんですよね。
松村 この作品のモチーフの１つでもある映画の『飢餓海峡』の三國連太郎の役は逃亡者なんです。そこで現代の物語としての逃亡者を考えたときに、日本に働きに来た南米の人が、苛酷な労働で帰国していったり、日本で行方不明になったりする話はけっこうあるので、壽太ならやれるんじゃないかと。
アクセル踏みながら下り坂を行く感覚
──カムカムの役者さんは達者な方が多いから、共演が楽しみですね。
武田 以前、八嶋さんの舞台を観ていて、アドリブっぽく見せているけど全部台本通りなんだよと聞いて、さすがだなと。そんな方たちと同じ舞台に立つのですから、とにかく走り続けないと勝てるわけない。もちろん勝ち負けじゃないんですけど。何ができるかといったら一生懸命やるしかないので。
松村 航平は２作経験しているのが大きいよね。うちの芝居は、芝居のスピードとはまた別のドライブ感がどんどん上がっていって、役者の感覚としては、下り坂をアクセル踏みながら障害物をよけて、一歩間違うとぶつかるというのを全員でやってるんです。だから一瞬も気が抜けない。それを航平は体でわかってる。下りハンドルを切りすぎたらダメとか。
武田 でもアクセルは踏んでるんですよね。
松村 今のカムカムの劇づくりがそんな感じで、今回も同じだと思います。
夕輝 僕もアクセル踏んで付いていきます。
松村 こういう元気な人たちが入ってくれることで、さらに舞台が面白くなるんです。
まつむらたけし（中央）○70年生まれ、奈良県出身。90年、八嶋智人とともにカムカムミニキーナを旗揚げ。以降、劇団主宰として全作品の作･演出を担当。自らも俳優として出演。外部出演作には『斉藤幸子』『第17捕虜収容所』阿佐ヶ谷スパイダース『少女とガソリン』NODA・MAP『ロープ』『ゲゲゲのゲ』KAKUTA『痕跡』など。
たけだこうへい（左）○86年生まれ、東京都出身。第14回JUNONスーパーボーイコンテスト審査員特別賞を受賞。TVドラマ『仮面ライダーキバ』『ウェルかめ』『理想の息子』『闇金ウシジマくんSeason2』『そこをなんとか2』、映画『クローズZERO』『ROOKIES-卒業-』など。松村武作品は青春音楽活劇『詭弁・走れメロス』、七変化音楽劇『有頂天家族』に続いて3作目。現在は大河ドラマ『軍師官兵衛』（NHK）に宇喜多秀家役で出演中。
ゆうきじゅった（右）○85年生まれ、ブラジル出身。主な出演作品にドラマ『ごくせん』『メイちゃんの執事』『任侠ヘルパー』『鈴木先生』『恋愛ニート〜忘れた恋のはじめ方〜』『てふてふ荘へようこそ』『モメつ角には福きたる』『S〜最後の警官〜』『花咲舞が黙っていない』など。舞台は『テニスの王子様』以来、8年ぶりの出演となる。
〈公演情報〉
カムカムミニキーナ2014本公演
『Ｇ（ギガ）海峡』
〜禍福はあざなえる縄の如し〜
脚本・演出◇松村武
出演◇武田航平、夕輝壽太、八嶋智人、藤田記子、松村武、未来、田原靖子、米田弥央 ほか
●11/7〜16◎座・高円寺
●11/29〜30◎大阪・ABCホール
〈お問い合わせ〉アトラス 03-5413-4815（平日12時〜18時）
http://www.3297.jp/g/
【文／宮田華子 撮影／岩田えり】
