NAOTORA,井伊谷軍(1)

扉座の横内謙介が戦国時代の女武将、井伊直虎を主人公にした歴史劇を、劇団メンバーと客演の有森也実の出演で上演中である(座・高円寺では11月3日まで。そのあと厚木公演あり)

時はまさに群雄割拠する戦国時代。今川・織田・武田などの巨大勢力がせめぎ合い、小国の遠江国の井伊谷(いいのや/現在の静岡県浜松市)はその動静に翻弄されている。
井伊直盛の娘として生まれた蓮(のちの井伊直虎)は、家と自身を守るために一度は出家をして次郎法師という尼になるが、許嫁者だった井伊直親の死によって、その子息の虎松を守るために女性ながらも領主となり、ついには徳川の譜代大名筆頭の家柄に押し上げる。 
そんな史実をもとに、直虎と彼女を取り囲む人々が「国盗りのための戦」ではなく「人を守るための闘い」を、逞しく、強く、誠実に闘い抜く姿を、時代の大きなうねりを感じさせながら描き出している。

NAOTORA有森単独写真

主人公の直虎が実に魅力的だ。次郎法師という名の尼でありながら、経済にも政治にも通じる賢い女性であり、夫同然の男もいる。そんなスケールの大きな女性像を、客演の有森也実が生き生きとチャーミングに演じている。
周辺の人間たちが、またそれぞれに魅力的で、幼い蓮に次郎法師という名を付けて、生きることの面白さを教える僧侶の南渓(岡森諦)、最下層で育ちながら、その心根の優しさから蓮の恋人になる牛丸(犬飼淳治)、懐の深い領主の井伊直盛(上原健太)と奥方の静(鈴木里沙)、さらに、蓮の許嫁者だったが若き当主として誠実に生きる井伊直親(高木モトユキ)、その妻で世継ぎを生む重責に苦しむ桂(高橋麻理)、姫を生む側室の沙耶(砂田桃子)などが、直虎の周辺を彩る。
また、家臣たちも家老の佐野助(鈴木利典)、直親の側近の勝重(新原武)などには戦国の忠臣の姿を書き込み、一方で、今川と通じてお家乗っ取りを画策する但馬守(累央)と彼に悪知恵を吹き込む赤猿(岩本達郎)には悪の部分を映し出すなど、巧みに描き分けている。
そのほかに蓮の乳母お沢(伴美奈子)や荒天(江原由夏)をはじめとする尼たち、また市井の人々などの生き生きとした存在感が印象的だ。

NAOTORA有森舞台写真

この作品では膨大な台詞を書きたかったという横内の言葉通り、松を描いた襖だけという能舞台のようなシンプルな舞台だけに、起きるドラマはまさに役者たちの動きと言葉に頼るしかない。そんな「演劇の原点」のような演出で、井伊谷の日常風景から桶狭間の戦いまで、台詞だけで鮮やかに浮かび上がらせる脚本も、その言葉をあますとろこなく伝える
役者たちも見事だ。

歴史上の実在の人物をモチーフに作劇し、登場人物たちに熱い血を通わせ息を吹き込む力は、歌舞伎や時代劇で鍛え上げられた横内謙介ならではで、今回も史実の裏側で起きた出来事を、想像力と説得力で立体化させ、現代の我々の「生」に引き寄せ、重ね合わせてみせる。
どこかシェイクスピアの『マクベス』を彷彿とさせるようなシチュエーションも組み込んで、直虎という女性の生き様を描き出す物語でありながら、戦いに賭ける男たちの死に様をも映し出す。骨格の大きな傑作舞台として仕上がった。
 

〈公演情報〉
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厚木シアタープロジェクト ネクストステップ第5回公演 

劇団扉座第56回公演
劇団扉座イカサマ歴史劇シリーズ第1弾

『おんな武将NAOTORA』

作・演出◇横内謙介
出演◇有森也実(客演)、岡森諦、杉山良一、伴美奈子、犬飼淳治、高橋麻理、累央、鈴木利典、岩本達郎、上原健太、鈴木里沙 ほか  
●10/23〜11/3◎座・高円寺1
●11/8・9◎厚木市文化会館 小ホール
〈問合わせ〉扉座 03-3221-0530 劇場 03-3223-7500
〈HP〉http://www.tobiraza.co.jp/



【文/榊原和子 写真提供/扉座】


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