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青山円形劇場の終幕を飾るにふさわしい舞台が、11月6日から開幕した。(11/10まで)
劇団双数姉妹によって上演されてきた伝説的作品『サナギネ』は、円形劇場の舞台を真っ二つに仕切って、片方の側の観客からはそちら側しか見れないという、円形劇場の特性を生かした作劇によって、観客の想像力を喚起する傑作として知られている。

この作品の物語と構造はこんなふうだ。
【幼生サイド】とある田舎町に暮らす14歳のヨシノが、自分で自分に八つ当たりしながら、都会へ飛び出す物語。割れた世界の向こうに思い出みたいな未来を目撃する。
【成体サイド】都会で暮らす24歳のヨシノが、世の中に八つ当たりしながらほふく前進する物語。割れた世界の向こうに未来のような思い出が湧き上がる。
この2つの物語がそれぞれのサイドで展開し、やがて浸食し合う。
 
今回、この作品を上演するベッド&メイキングスは、これまでの3回の公演でさまざまな空間での上演にチャレンジし、自分たちの演劇表現と場所についてこだわり続けてきた。それだけに主宰する福原充則と富岡晃一郎にとって、この『サナギネ』は、いつか自分たちの手で上演してみたい作品だった。そしてついに今回、「青山演劇フェスティバル・スペシャル〜サヨナラの向こう側 2014〜」の参加作品の1つとして、青山円形劇場での『サナギネ』公演を実現する機会を得た。
その公演の稽古場で、富岡晃一郎と2つのサイドでヒロイン「ヨシノ」を演じる岸井ゆきのと清水葉月に語り合ってもらった。

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岸井ゆきの・富岡晃一郎・清水葉月

円形劇場を半分ずつに割って

──まず富岡さんから、この『サナギネ』という作品への思いを聞かせてください。
富岡 福原(充則)も僕も、もともと双数姉妹の舞台が好きで昔から見ていて、この作品もお互いに2回ずつくらい見ているんです。それでいつも「円形劇場といえば『サナギネ』だよね」と話していて。今回、青山円形劇場ファイナルという企画に参加できることになったので、それはもう『サナギネ』しかないでしょうと。円形でしかできない作品ですし、もともと円形劇場って円として使うのも難しいんですけど、それを円で使いながらあえて半分ずつに割ってるという、円形の使い方としてすごく斬新だなと思いますから。
──福原さんは、今回台本も、2014年用に手を加えているそうですね。
富岡 上演台本ということで、原作をベッド&メイキングスらしい感じに書き直しています。新しい部分も付け加えられていますし、終わり方もちょっと違う形になっています。当時の、90年代の演劇のよさを残しつつ、今を取り入れた新しいものになっていると思います。
──それにしても2つのサイドで同時に物語が進行して、しかも片側だけでしか見られないというのは、今もなお斬新な手法だと思います。ヨシノ役のお2人もびっくりしたのでは?
清水 びっくりしました(笑)。
岸井 カーテンで2つに分けられただけの舞台で同時に芝居しているとかあり得ないですから(笑)。
清水 相手の音も聞こえてくるし(笑)。
──稽古場で相手のサイドが気になりますか?
富岡 どうしても気になるよね。
2人 気になります。
富岡 今はとくにそうですね。稽古場なのでパネル2枚で仕切ってるだけですから、すごく声が聞こえるんだよね。最初はみんなどんどん、声が大きくなっていったりして、たいへんでした(笑)。

ヨシノは中ニ病を引きずっている?

──岸井さんと清水さんは、それぞれ14歳と24歳のヨシノを演じるわけですが、台本を読んで抱いた印象は?
岸井 私は、14歳の私もこんなだったなと思うので、すごく苦しいんです。よくいう中二病みたいな感じだと思うんですが、こうだったなと。ヨシノは自分の憤りとか胸に秘めた怒りとか、あまり人に当てないんです。自分のなかに持っている。誰かにどうするというのではなく、自分自身に憤りを感じている。私も、それが抜け切っていないんです、22歳になっても(笑)。稽古で毎日毎日、お父さんに「お前は、だからそうなんだ」と繰り返し言われるんですけど、そのたびに悔しくて悔しくて、疲れます(笑)。
富岡 出番が終わった直後とか、目に涙がいっぱいだったりするよね。成体サイドはわりと陽気だから、なんか申し訳なくて(笑)。
──岸井さんに14歳のヨシノそのものみたいな資質があるというのは、わかって選んだわけですか?
富岡 いや、ここまで中ニ病を引きずっているとは思わなかったですね(笑)。『墓場・女子高生』に出てもらったけど、当時はまだ殻にこもっていたのか、こんな一面は見てなかったというか、気づかなかったですね(笑)。
岸井 今はちょっと感情がこぼれすぎちゃうんです(笑)。『墓場・女子高生』のときは、まだ殻に収まるくらいのエネルギーしかなかったというか、今は抜けてきちゃって隠しきれないんです(笑)。
──そのヨシノが24歳になった成体サイドのヨシノが清水さんですね。
清水 私は成体サイドの台本を先に読んでいたので、この子はどんな道を歩んできたんだろうと、ちょっとわからなかったんです。ヨシノと同じ年なのですが、やっていることも考えられないことだし、どうやったらここに行き着くのかなと。あとから幼生サイドのヨシノを見たら、ちょっとわかる部分もあったのですが。きっと10年の間に覚えたこともあったり、でも変わってないところも沢山あったりした。そこのバランスをどう見せようかと考えているところです。
富岡 最初は別々に稽古していたので、清水さんは早めにきて、幼生サイドの稽古を見ながら、自分の履歴を探っていたんだよね(笑)。
──富岡さんはヨシノと関わりを持つカサイという男の役ですね。
富岡 双数姉妹では、僕が憧れていた今林久弥さんが演じていた役です。今林さんとは10年以上前に一度共演させてもらって、あの美声とか面白さとかそばで感じて、すごく魅力的な俳優さんだなと思っていたんです。その人のやった役なので、ちょっと重いなと思いながらやってます(笑)。

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ここに私を嫌いになる人はいないんだ

──ヨシノ役を演じるこの2人の女優さんですが、魅力はどんなところにあると思いますか?
富岡 稽古を見ていても感じるのですが、この年齢の彼女たちにしか出せない危うさとエネルギーがあるんです。僕は(清水)葉月ちゃんの相手役なのですが、芝居の中ではこういうふうになるんだと。それは今の彼女にしか出せないものだし、なんかドキドキするような、そういう感じがありますね。それは2人ともある魅力で、ちょっと大人になった女の子たちが出すエネルギーというか、それはマネできないものがあるんです。僕らオーバー30のキャストたちは、稽古場の隅に固まって、それを見ながら「あの感じはあの世代にしか出せないよね」とか言ってます(笑)。この人たちの年代ならではのエネルギーとか輝きみたいなものを、お客様にも体感してもらえたらと思っています。
──女優としての才能もすごそうな2人ですよね。
富岡 葉月ちゃんとは会話するシーンが多いんですが、ちゃんとキャッチボールできてやりとりが楽しい。すごく柔軟だし、僕は若いときに出来なかったような、現代口語的なセリフが得意で(笑)。でも、もうちょっと声を張るところは張ってね(笑)。
清水 はい(笑)。
富岡 岸井とは今回絡んでないんですが、以前の公演では、福原の台詞で、ちょっと面切ってやるところが得意でないとか言ってたけれど、だいぶ理解して言ってるなという気がします。
岸井 はい。好きなんですけど、自分でやるとなると得意ではないと思ってて。普通の声量ではないことや、相手にではなく客席に向けて言うことなど、あまりやったことないので自信がなかったんです。今回も最初はわからなくて、それをやる理由を求めていたんですが、あるとき吹っ切れたんです。
富岡 いつ頃?
岸井 野口(かおる)さんと(玉置)玲央くんと一緒のシーンで2人のエネルギーがすごくて、「私はできない」と思って、そこから3日かくらいできなくて、落ち込んだり、ふてくされたりしていたんです(笑)。その頃、玲央くんと話しているときに、彼はいろいろ思い切ったことを稽古場でもやるんですが、でもだからって嫌う人なんかいないんですよね。そういう話をしていて、「玲央くんがどんなことをしたって、ここには嫌う人なんかいないよ」と。私が言ったその言葉が、その瞬間、そのまま自分にも返ってきて、「そうか、私が何をやっても、ここには私を嫌いになる人はいないんだ」と思ったんです。そしたらなんでも出来る気になって、次の日、すごく陽気なパンクロックを聴きながら稽古場にきて(笑)。それ以来なにか変わりました。

こうやって生きていくんだね

──清水さんもこの稽古場で新しい発見とかありました?
清水 私も今回、すごく刺激を受けていて、例えば三土幸敏さんなんですけど、まだ完璧に台詞が入ってなくても、台本を手放してやってるんですね。そして喋っている途中で台詞がわからなくなって、すごく混乱したことをしゃべっているのに、絶対に役から抜けようとしないんです。
富岡 なるほどね。
清水 どんどん違う台詞になっていって、最後に福原さんに止められるまで役でいるという、その姿勢がすごいし、素敵だなと。
富岡 素に戻らないんだよね。
清水 そうなんです。何が起きても役なんです。
──すごいキャストばかりの公演ですが、手法も斬新なこの作品で、2014年の今、伝えたいことはどんなことでしょう?
富岡 この『サナギネ』って、こうやって生きていくんだねという話だと思うんですよね。基本的にベッド&メイキングスというか、福ちゃんの書くものは、若さゆえのキラキラしているものやロマンチックなものが得意なんですが、そういう年代を書きながらも、大人になった自分たちが今感じていることとか、そのとき感じていたこととかを描いている。この作品も、若い人はすごく共感できると思うし、俺たちと同じような世代の人たちも、自分たちの若い時代をそこに見て、同時に、今、自分にも起きていることとして感じてもらえる作品だと思います。
──幼生サイドと成体サイドとに分かれている作品ですが、その2つが最後のシーンで大きく俯瞰されて、それがとても素敵な眺めになりますね。
富岡 昨日、最後のシーンで僕も感動しました。できれば2つのサイドを観ていただくと、よりそれを感じられると思います。

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清水葉月・富岡晃一郎・岸井ゆきの

とみおかこういちろう○東京都出身。阿佐ヶ谷スパイダース、柿喰う客などの劇団公演から、音楽劇『それからのブンとフン』(こまつ座&ホリプロ)、早乙女太一明治座特別公演などのプロデュース公演までジャンルを問わず幅広く活動。舞台以外にもCM『新生銀行レイク』、NHK『シャキーン!』出演ほか、雑誌やコラムなどの執筆。アニメ『GO!GO!家電男子』には声優として出演するなど多方面で活躍。12年に作・演出家の福原充則と自身初の演劇ユニット“ベッド&メイキングス”を旗揚げし、これまでに『墓場、女子高生』『未遂の犯罪王』『野外劇 南の島に雪が降る』の3作品を上演。

きしいゆきの○92年生まれ、神奈川県出身。ドラマ『小公女セイラ』でデビュー。舞台『ヒッキー・ソトニデテミターノ』(作・演出:岩井秀人)、『身の引きしまる思い』(作・演出:山内ケンジ)など注目の演出家の作品に続けて出演。東京ガス企業CM『母からのエール篇』、日清CM『カップヌードル/壁ドン篇』で見せる幅広い演技で話題となる。映画『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』(犬童一心監督11/22全国公開)、映画『サムライフ』(森谷雄監督2015年公開)の公開を控えている。ベッド&メイキングスは『墓場、女子高生』に続き2回目の参加。

しみずはづき○90年生まれ、愛知県出身。特技はピアノと長距離走。高校在学中に受けたオーディションに合格し初舞台を踏み、以降、舞台を中心に出演。近年は映画やドラマなどの映像作品やスチールにも活動の幅を広げている。最近の主な出演作は、舞台イキウメ『片鱗』(作・演出:前川知大)、映画『SHARING』(監督:篠崎誠/東京フィルメックス特別招待作品)など。2015年2月末、趣向『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』(シアタートラム)出演予定。

 


〈公演情報〉
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青山演劇フェスティバル スペシャル 〜サヨナラの向こう側2014〜 参加作品
ベッド&メイキングス『サナギネ』
原作◇小池竹見(双数姉妹)
上演台本・演出◇福原充則
出演◇
【幼生サイド】岸井ゆきの、野口かおる、町田マリー、中丸シオン、玉置玲央、井筒大介、中村たかし、佐伯新、片岡礼子
【成体サイド】清水葉月、富岡晃一郎、玉置玲央、冨森ジャスティン、三土幸敏、町田マリー、野口かおる
●11/6〜11/10◎青山円形劇場
〈料金〉前売り¥5000/当日¥5500
学生割引¥3500/高校生以下¥1500 ※劇団のみ取扱い、要学生証提示
〈問合わせ〉プラグマックス&エンタテインメント 03-6276-8443



【取材・文・撮影/榊原和子】


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